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ソフトバンクが次期中期経営計画を発表、AI投資は「種まきから収穫フェーズ」に

 ソフトバンクは11日、2026年3月期(2025年4月~2026年3月)の決算説明会を開催した。

 連結決算の売上高は前年比+7.6%の7兆386億8000万円、営業利益は同+5.4%の1兆425億7600万円、当期利益は同+10.9%の7266億2300万円だった。

過去最高の売上高

代表取締役 社長執行役員兼CEOの宮川潤一氏

 今年度の売上高は、同社過去最高になった。代表取締役 社長執行役員兼CEOの宮川潤一氏は、「7兆円突破は来年度に持ち越しになりそうだと思っていたが、なんとか7兆円を突破できた」とコメント。一方、営業利益ではアスクルのシステム障害が影響しメディアEC事業で減益となったが、そのほかの事業では増益した。

 期初の業績予想も、売上高、営業利益、純利益のすべてで上回って達成した。

 続いて宮川氏は、2023年5月に発表した中期経営計画の達成状況を説明する。営業利益と純利益はともに、2023年度~2025年度の3期連続で予想を上回って達成。事業目標もすべての目標を達成した。

 コンシューマ事業とエンタープライズ事業の設備投資は、3300億円水準でコントロールする目標を立てていた。2025年度は「円安や物価高の影響を少なからず受けてしまった」(宮川氏)として上振れたものの、3年平均で目標の3300億円を下回った。

 宮川氏は「環境が激しく変化したが、なんとか乗り越えて結果を出せたと安堵している」とコメント。携帯電話料金の値下げの影響で「相当厳しくなる」と覚悟していたものの、「重要基盤を毀損することなくV字回復させ、最高益を達成できたのは大きな自信になった」と宮川氏はアピール。基盤となる通信品質を維持しながら業績向上を果たせたとした。

次期中期経営計画

 宮川氏は、次期中期経営計画にあたり、AIが取り巻く事業環境を説明する。

 過去5年間はAIの頭脳開発が中心で、人間で言うと「子育て」の段階だった。今後5年間はAIの社会実装が中心で、「成人」のフェーズに入ったと宮川氏は話す。今後の世界を「自動運転やヒューマノイドロボットがサービスとして普及する」としたうえで、これらのデバイスで瞬時に推論し判断するため、「使われていない時間はAIデータセンターとつながって、自動で賢くなり続ける」時代になるという。宮川氏は「これまでAI領域で種まきを行ってきたが、ついに収穫フェーズに移る」とした。

 同社の長期ビジョン「デジタル化社会の発展に必要な次世代社会インフラを提供」の第3フェーズにあたる次期中期経営計画では、通信事業の基盤に加え、AIインフラとAIサービスがその上に乗り、さらにファイナンスやメディア・ECの層が乗る形で戦略を進める。これまでの「Beyond Carrier」から「Activate AI for Society」に進化させ、長期ビジョン実現に取り組みを進めていく。

 具体的には、連結営業利益は年平均成長率10%を目指し、2030年度は1.7兆円、連結純利益は7000億円を目指す。また、1株あたりの配当金も2025年度の8.6円から増配を目指し、利益が上振れた場合は追加の株主還元も検討する。

 セグメント別にみると、エンタープライズ事業は、AI計算基盤やAIデータセンターを組み込んだ形で売上高を伸ばし、特にクラウドとAIでは2025年度から2030年度までで倍増させる。事業全体の利益も倍増させるという。これまで投資してきたAI計算基盤は、2026年度以降は回収フェーズに移行、苫小牧や堺ではAIデータセンターの整備を進めており、26年度以降順次外販を進める。

 ハード面だけでなく、国内でデータが保管されるソブリンクラウドをはじめとしたAIデータセンターや国産LLM「Sarashina」の提供で、収益化を進める。さらに、さまざまな部署のAIが連携し企業経営を変革させる「クリスタル・インテリジェンス(Crystal intelligence)」を提供するなど、あらゆる規模や業種の企業に対して一気通貫で提供する体制を整えるとした。

コンシューマ事業でもAIプラットフォーム中心に

 通信サービス売上では、具体的な数字は示さなかったが継続的な増収を目指すと説明。事業全体の営業利益も、継続的な増収を目指すとした。契約数など具体的な目標を示さなかった理由を、宮川氏は「コンシューマ事業の取り巻く環境は、人口減少や競争環境の激化、ホッピングユーザーの問題など、5年先をすべて読みきるのが難しい」と指摘。一方で、増収増益を堅持した背景に「我が社のプライドがある」とコメント。4月に就任した副社長執行役員兼COO コンシューマ事業統括の高島謙一氏は「ホッピング対策は、他社と比べて先手を打つ対策を実現できている。増収増益は必達する」と説明した。

副社長執行役員兼COO コンシューマ事業統括の高島謙一氏

 成長の継続にあたっては、「新料金プランの浸透」と「グループ経済圏の活動」、「長期利用ユーザーへの注力」を挙げる。2030年に向けて宮川氏は「現在はスマホアプリを中心としたサービス展開だが、これからは生涯記憶を持ったAIがユーザーに寄り添い、生活のあらゆるシーンを支えるサービスを展開していく」と話す。

 コンシューマーとの接点の1つであるキャリアショップでも、「AI時代に合ったライフスタイルを提案していく」と宮川氏はコメント。これまでのスマートフォンや固定回線、電力や経済圏のほか、AIサービスやスマートデバイスなど、AI関連サービスの提案を増やしていくとした。

 2030年に向け、ネットワークも進化していく。音声をつなげるためのネットワークからインターネットに進化したように、今後5年をかけてネットワークとAI計算基盤が融合した「最終形態のインフラの総仕上げを行っていく」と宮川氏はコメントした。

ファイナンス事業でもグループ連携を強化
メディア・EC事業でもAI活用を進める

データセンターと革新型バッテリーの取り組み

 中長期的な成長に向けた取り組みとして、堺AIデータセンターを中核拠点として取り上げる。東京ドーム10個分の敷地があるデータセンター内に、開発・製造拠点「AXファクトリー」「GXファクトリー」を建設し、さまざまなプロジェクトを進めていく。

 たとえば、AXファクトリーでは、1階で衛星やHAPSに関する開発、2階ではAI-RANや通信機器、3階で次世代メモリーやGPUサーバー、4階でAIデータセンターの取り組みを進める。AIデータセンターには、計算能力110エクサFLOPSのAI計算基盤が2027年度に完成する。

 一方、GXファクトリーでは、革新型バッテリーや次世代太陽光パネルを製造する。革新型バッテリーは、液体電池と固体電池の発展形となるもので、安全性やエネルギー効率が高い「亜鉛ハロゲン電池」の開発から製造まで一気通貫で進める。家庭用から業務、産業、系統用までさまざまな規模に合わせた製品をラインアップし、まずは基地局など同社設備に導入し、順次外販、海外展開を進める。2030年度には売上高1000億円以上を目指し、取り組みを進める。

 電池事業参入の目的について、宮川氏は「日本全体のエネルギーの見える化をやりたい」とコメントする。全体の需給バランスを見るべく、まずは同社のデータセンターで試験を実施し、将来的には日本全体の見える化まで進めていきたいと話す。そのためには、大量の蓄電池が必要になるが、宮川氏は「今ほとんどを輸入に頼っている日本でこれを推し進めるのはなかなか難しい」と指摘する。現在普及しているリン酸鉄リチウムイオン電池は、材料のほとんどを中国からの輸入に頼っているが、今回の亜鉛ハロゲン電池は、国内で材料を調達できるものだという。10年~20年の長期で見ると、国産バッテリーの製造は必要だとし、将来的には輸出により外貨を稼げるような会社を目指すとした。

 AIデータセンターの至近にハードウェアの製造工程を置く理由を宮川氏は「AIの恩恵で産業を成長させること」だと説明する。広大な堺のデータセンターには、すべてAIデータセンターで埋めるには「怖さもある」としながらも、「いつかは日本の産業がAIで新しい産業に生まれ変わっていくビジネスモデルにしたい」とし、電池に限らずさまざまなビジネスモデルを模索していきたいと話した。

2026年度の業績予想

 これら次期中期経営計画のスタートとなる2026年度の業績予想は、売上高が+7%の7兆5000億円、営業利益は+6%の1兆1000億円、純利益は+2%の5600億円とした。成長投資などを進めつつ、コンシューマを含めてすべてのセグメントで増益を目指す。

 四半期ベースで見ると、第1~第2四半期では一過性のプラス要因がなくなることや過去の獲得費用が影響し前年度を下回る一方、第3~第4四半期にかけて前年度を上回り、通期で増収増益を目指す。

通信設備投資も増加へ

 2026~2028年度の通信設備への投資も、年3300億円を下回る水準から年4100億円水準へと引き上げ、強靱なネットワークを構築し、競争力を維持するとした。宮川氏は「海底ケーブルの需要が大きく先行投資をしていく。国内のネットワークにおいても、基地局の分散や増強など既存のネットワークも強化していく」と説明。この数字には「AI-RANの巨大投資は含んでいない」とした。

 また、オンライン専用ブランド「LINEMO」について宮川氏は「料金値上げは考えていない」とコメント。具体的な名称は挙げなかったものの「他社がなかなか頑張っているところがあり、(値上げをしないことが)牽制になるので、ちょっと辛抱しようと考えている」とした。コンシューマ事業を牽引してきた取締役会長の榛葉淳氏は「ソフトバンクの携帯事業も20年、LINEMOのリリースから5年が経過する。ユーザーの動向や意見を反映しながら、常に是々非々で考えていきたいと思う。今日の段階で特段発表する内容はない」とした。

取締役会長の榛葉淳氏

 一方、ソフトバンクやワイモバイルでの料金値上げについては「ギリギリなんとか値上げしないように、値上げをした他社の動向も見ながら考えていた。ただ、世の中の物価上昇が著しく、値上げをしなければ我々の会社の構造も壊れてしまうと考え踏み切った。企業努力をもっとすべきというのは理解しているが、限界まで来た」と話した。