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アプリもAIも終了した「Honda e」、「スマホのようなクルマ」の切ない現実

 いまから6年半ほど前のCES 2020で、ソニーが「VISION-S」を発表した。「これからはクルマがスマホ化する」というプレゼンに感銘を受けたのだった。確かにクルマにカメラやセンサーが搭載され、通信が載るコネクテッドカーはまさにスマホと一緒のように感じた。クアルコムもプラットフォームを手掛けるとなれば、スマホジャーナリストがコネクテッドカーを追い続けるのも必然のように感じた。

 すぐに着手したのがEVの購入だ。やはり、実際に通信につながるEVに乗ってみないことには実用性が見えてこない。いずれ、ソニーがVISION-Sを商品化した暁には乗り換えようとも鼻息を荒くしていた。

 購入したのはホンダの「Honda e」だ。見た目が未来っぽいデザインなだけでなく、インパネ周りが巨大なディスプレイとなっており、アプリもダウンロードしてインストールできる。

 「OK、ホンダ」といったようにAIアシスタントにいろいろ頼めるのも魅力だった。慌てて、ホンダのディーラーに問い合わせ、すぐに5年のローンを組んで購入したのだった。

 コンパクトカーの割にお高い価格設定ということで、国内では1700台程度しか売れなかったらしい。そもそも、ホンダは「Honda e」を赤字になると分かっていながら売らなくてはならなかった。

 当時、欧州では自動車メーカーはEVの販売比率を増やさなくてはならないという規制があったため、それをクリアするためにやむを得ず、赤字になるにもかかわらず、Honda eを売ったのだ。

次々と失われていく機能

 国内で1700台程度しか売れないとなると、ホンダはHonda e向けのサービスを次々と終了させていった。2023年3月、アプリストアが終了した。これにより、Honda e向けのアプリを新たにインストールするという、スマホのような使い方ができなくなった。

 そもそも、1700台分しかユーザーがいないので、新しく配信されるアプリも数本程度しかなかった。ただ、大きなディスプレイを水槽に見立て、熱帯魚を飼えるアプリもなくなったのは悲しかった。

 2024年12月をもって、AIアシスタントが消えた。車内で「OK、ホンダ」と呼びかけても、誰も返事をしてくれない。

 2026年3月末、車内Wi-Fiサービスもなくなった。1GB330円で、その後は使い放題サービスも出たが、スマホのテザリングがあれば十分で、実際のところほとんど使ったことはなかった。

 Honda eを使っていて、特に気に入っていたのがアプリでの遠隔操作だ。夏場、クーラーをガンガンに効かせたHonda eで出かけるのが最高に贅沢なのだが、Honda eは乗る前にアプリからクーラーを入れておくことができるのだ。

 今年も暑くなってきたので、さっそく遠隔操作をしてみたら、なぜか全くつながってくれない。「ソフトバンク回線なのになんでつながらないのだろう」と思って、しばらく様子を見ていたが、直る気配がない。

 別件でディーラーに行く機会があったので、通信周りを見てもらうために数日間預けたところ「セルラー通信周りが壊れている可能性があり、通信できていない。直すには10万円程度かかる」とのことであった。

 「SIMカードを交換すればいいのでは」とお願いしてみたら「安全性にもかかわる問題。そもそもeSIMなので書き換えは無理」という。

 コネクテッドカーから、AIが消え、アプリを入れられなくなり、Wi-Fiも消滅。ついにセルラー通信が逝ってしまった。もはや、Honda eは単なるEVになってしまった。

新型EVの買い時なのか

 5年落ちのEVに10万円を注ぎ込んで修理するのはちょっと気乗りしない。「しばらくこの状態で使ってみて、困るようなら修理を考えます」と整備の人に伝えたところ、Honda eを営業してくれた人が笑顔で近づいてきて「Super-ONE、補助金モリモリで買えますよ」とカタログを持ってきた。

 Super-ONEは車両価格は339万円なのだが、国と東京都から補助金が最大190万円出るので、実質149万円で購入できると、都内で人気なのだ。

 すでに7000台が売れているようで、今から発注すると手に入るのは来年の5月になるらしい。デザインや居住性など、Honda eはとても気に入っているだけに、なんとも悩ましいのだ。