|
|
|
大画面表示できるPDA「PC-EPhone II」
|
|
|
|
広野忠敏 昭和37年新潟に生まれる。仕事はライターとプログラマの2足のわらじを履いている状態。どちらかといえばハードウェアよりはソフトウェアや技術的なものが得意である。ちなみに、2足はきこなしているかどうかはちょっと疑問。また、怪しげな小さいものと怪しげなプログラムと新しいものには目がないけど最近はちょっとパワーが落ちてきているかな。 (写真:若林直樹) |
|
これはPocket PCなのか、それともHandheld PCなのか、それともどちらでもないのか。PC-EPhone IIは、韓国サイバーバンク社のPDAを日本市場向けにチューンナップした製品で、Windows CE 3.0を搭載している。発売前ではあるが、評価機をお借りすることができたので、「これっていったいなにもの?」という部分を中心にレビューしてみよう。
Pocket PCでもHandheld PCでもない
Windows CEが搭載されたPDAというと、Pocket PCや最近は影が薄くなりつつあるHandheld PCがそれにあたる。前者はiPAQやGENIO eに代表されるように、ポケットに入るサイズのPDA、後者はハーフVGAやSVGAなど大画面の表示とキーボードが搭載された、どちらかというとパソコン寄りにあたる製品だ。Pocket PCとHandeld PCのことを念頭に入れて、PC-EPhone IIを見て見ると、ちょっと戸惑いを感じることになると思う。VGA(640×480ドット)表示の4インチカラー液晶を搭載。画面を良く見るとHandheld PCでおなじみのタスクバーとスタートメニューもある。しかし、大きさはPocket PCをひとまわり大きくしたサイズで、Handheld PCほど大きくない。Handheld PCというよりは、純粋なPDAの大きさだ。また、キーボードはない。これは、いったいどういうモノなのだろうか。Pocket PCではないことはわかるけど、「キーボードのない」Handheld PCなのだろうか。
実は、PC-EPhone IIはPocket PCでもHandheld PCでもない独自の製品なのである。独自といっても、ベースになっているのは Windows CE 3.0 Embedded。画面を見てもらえばわかるとおり、ユーザインターフェイスはHandheld PCのそれである。文字を入力するためのキーボードは搭載されていないため、入力には画面に表示されるソフトウェアキーボードをタップしたり、文字認識パレットを利用して入力する。なお、日本語変換システムとして「ATOK Pocket for PC-EPhone」を標準搭載しているため、スムーズな日本語の入力も可能だ。ちょっと使って見た感じでは、Pocket PCのようにスタイラスで使うことができるHandheld PCモドキといった印象だ。
PC-EPhone IIの最大の特徴は、手のひらサイズのPDAでありながらVGA表示(640×480ドット)の液晶を搭載していることに尽きる。画面が広いということは、それだけ情報の見通しがよくなるということだ。付属のアプリケーションにはPocket WordとExcel互換のBSpreadsheetがあるが、こうしたオフィスアプリケーションを使う際も、PDAのそれではなくパソコンのような感覚で利用することができる。また、Webのブラウジングの際も威力を発揮する。たとえば、Pocket PCやそれに順ずるサイズのPDAで、Pocket PCやPDA用ではないWebページを見ると、画面が崩れたり、正しく表示されなかったりでまともに情報を閲覧できないことが多い。ところが、VGAサイズならばPDA用にカスタマイズされていないWebページだとしても、快適にブラウズすることができるのだ。ちなみに、ブラウザはPocket Internet Explorerを搭載している。
4インチという比較的小さいサイズでVGA表示を実現しているため、実際に画面に表示される文字はかなり小さい。デフォルトのサイズだと漢字2文字分の文字の横幅が大体5mm程度。1文字あたり2.5mmとかなり小さい。さすがにこのままの状態だと、老眼入りかけ状態の人が使うのはしんどいだろうと思われる。ただ、コントロールパネルでメニューバーやポップアップメニュー、そのほかの場所で表示されるフォントの大きさは、個別に5段階で調整することができる。デフォルトよりも小さくして、全体の情報量を増やすこともできるし、文字のサイズを大きくして見やすくすることもできる。このあたりの仕組みは使う人にとってはうれしい配慮だといえるだろう。
カード型のPHSで通信もOK
Webブラウジングの話題に振ったところで、通信機能についても語っておこう。PC-EPhone IIに搭載されているインターフェイスは、Type2のCFカードスロット、赤外線インターフェイス、USBインターフェイスの3つ。これらのインターフェイスのうち、USBインターフェイスは専用ケーブルや付属のクレイドル経由でパソコンに接続することで、パソコンとデータをシンクロをさせることができる。また、赤外線によるシンクロも可能だ。本体のみでインターネットに接続するためには、Type2のCFカードスロットを利用しなければならない。具体的には、P-in Comp@ctやP-in m@ster、AirH" Card petit、C@rd H"64 petitなどのPHSカードを使った方法が最もお手軽で利用範囲が広い。他社製のPDAでは、携帯電話接続ケーブルを使って、携帯電話を利用した通信ができるものもあるが、残念ながらPC-EPhone IIでは携帯電話接続ケーブルなどのオプションは用意されていない。元々が韓国向けの製品をローカライズして販売しているためだということもあるが、単に利用している言語を日本語にローカライズするだけではなく、携帯電話接続ケーブルなどの通信環境も含めたローカライズをしなければ、国内のPDA市場に食い込むことはできないのではないかとも思ってしまうわけだ。
ちなみに、そのほかのスペックはというと、CPUとしてはStrongARM(SA1110/206MHz)を搭載。これはWindows CEベースのPDAとしては十分の性能を持つ。本体メモリはシステムメモリ、ユーザーメモリ共に32MBを内蔵。CFスロットにメモリカードなどのストレージカードを挿入すれば、ストレージを増やして持ち歩くデータの量を増やすこともできる。だが、インターネットなどの通信をPHSカードなどのCFカードに頼らざるを得ないため、CFスロットは通信のために残しておきたい。そうとなると、64MB程度のユーザメモリを搭載しているとか、CFスロットとは別にストレージのためのスロットがあれば便利なのになあと思ってしまうわけだ。
本体にはさまざまなアプリケーションが内蔵されている。「連絡先(アドレス帳)」、「予定表(スケジュール)」、「仕事(ToDoリスト)」といったPIMとしてのアプリケーションは、パソコンのOutlookのデータをそのまま取り込むことができる。標準の「電子メール」はOutlookとのメールをシンクロさせるだけではなく、それ単体でメールの送受信が可能。「メモ帳」はテキストを入力するだけではなく、手書きのメモを取ることもできる。さらに、前述のPocket WordとExcel互換のBSpreadsheet、Pocket Internet Explorer、ボイスレコーダー、さらには独自のMP3プレーヤーなどのツールも含まれている。
本来は電話機能も……
ところで、韓国の本家PC-EPhoneには、CDMA方式(最大64kbps)を利用した通信機能および携帯電話としての機能が内蔵されているのである。つまり、本当はPDA付きのケータイという製品なのだ。今回リリースされたPC-EPhone IIは、そこからケータイの機能をばっさりと切り取った形でのリリースなのである。ちなみに、本体のフリップを閉じると、フリップの上部にはいかにも「これはスピーカーですよ」という部分が、フリップの下部にはいかにも「これはマイクですよ」という部分が存在する。さらに、本体サイドにはオンフックボタンもあったりする(日本版ではオンフックボタンを押すとリモートネットワークが起動する)。で、「スピーカー」であろう部分を耳元に持っていくと、やや横に太った感じではあるけれど「ああ、これって本当はケータイだったのね」ということになるのである。「EPhone」というネーミングも、本来は単体で電話ができるということから来ているのだと思われる。
今回リリースされた製品は、電話ができない「EPhone」ということで、残念ながら名前負けしているという感じを受けるのだが、後続のモデルとして電話機能や通信機能が搭載される見込みということなので期待したい。というか、はじめのモデルで韓国でリリースされているものと同じ機能が内蔵されていればとても面白いと思うし、かなりインパクトがあってウケると思うんですけどいかがなもんでしょ。
■ 評価(最高点は★5つ)
イバリ度 |
★★★★★ |
PDAといえばザウルスかPocket PC、あるいはPalmという状況なので持っていれば間違いなく目立ちます。
|
実用性 |
★★★ |
難しいところ。画面が広いのはたしかにとても使いやすいです。とはいえ拡張性が乏しいのがネックでしょうねえ。
|
お値段 |
★ |
スペックを考えるとやや高めか?
|
価格 |
7万円前後 |
面白い使い方をひとつ。まず、Windows XP ProfessionalのターミナルクライアントをPC-EPhoneにインストールします。で、PHSカード経由でWindows XP Professionalのリモートデスクトップに接続。そうすると、どこでも手のひらの上で使えるWindows XP環境が簡単に作れるわけですねえ。液晶表示がVGAなのでそこそこ使い物になります。無線LANカードを入れて、LAN内のWindows XP Professionalに接続して使うのも面白いと思います。トイレに篭りつつリビングのPCをPC-EPhone経由で使うなんてことも可能なわけですね。
|
利用期間 |
3日
|
1日あたり単価 |
2万3333円
|
・ ニュースリリース
http://www.cyberbank.co.jp/info/press/index.html
・ 製品情報
http://www.cyberbank.co.jp/products/pcephoneII/index.html
・ VGA表示の4インチTFT液晶搭載PDA「PC-EPhone II」
(広野忠敏)
2001/12/05 12:06
|
|
|
|
|