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メモ機能のついた英語重視の電子辞書 シャープ「PW-S7000」
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広野忠敏 昭和37年新潟に生まれる。仕事はライターとプログラマの2足のわらじを履いている状態。どちらかといえばハードウェアよりはソフトウェアや技術的なものが得意である。ちなみに、2足はきこなしているかどうかはちょっと疑問。また、怪しげな小さいものと怪しげなプログラムと新しいものには目がないけど最近はちょっとパワーが落ちてきているかな。 (写真:若林直樹) |
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シャープの「PW-S7000」は、4.3インチ(320×240ドット)という電子辞書としては比較的大きなサイズの液晶を搭載しているのにもかかわらず、キーボード部をたたんだときの厚さが9.9mm(最薄部)という非常にスリムな電子辞書なのである。PW-S7000と同クラスの電子辞書は、カシオやキヤノン、セイコーなどからもリリースされているが、ここまで薄いのは他機種にはない大きな特徴のひとつだ。
また、この手の電子辞書は、筐体にプラスチックが使われているものがほとんどだが、PW-S7000はアルミ筐体が採用されているため、非常に質感が良い。アルミを使うことで、薄くても十二分な強度が確保されているというわけだ。キーボードの大きさやキーのクリック感も非常に良好。本体を開き両手で持って親指でタイプするという使い方になると思うが、本体の大きさ、キーの大きさともに丁度いい大きさで、とても使い易くレイアウトされている。
メモ機能を搭載
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PW-S7000
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PW-S7000の最大の特徴は、電子辞書にメモ機能を搭載したことである。メモの保存用に90KBのメモリを搭載してあり、ユーザーが自由にメモを記録できる。メモは、あらかじめ何種類かのテンプレートが用意されていて、テンプレートの空欄を埋めるというスタイルが採用されている。内蔵されているテンプレートは「時刻表」「備忘録」「出費メモ」「情報メモ」「会議メモ」の6つ。たとえば、「時刻表」のテンプレートを選ぶと左に時刻、右にダイヤの欄が表示され、タイトルや数字を入力するだけで時刻表をメモすることができる。また、出費メモでは内容と金額、情報メモはタイトル、ジャンル、情報源、内容など、会議メモでは時間、場所、メンバー、内容といった欄から構成され、空欄を埋めていくだけで簡単にメモが取れるように配慮されている。また、テンプレートを使わずに自由にメモを取れる「フリーメモ」も用意されている。記録したメモは、時刻表、出費メモといったジャンルで一覧表示できるほか、キーワードや日付で検索もできるため、非常に使い易い。ちなみに、メモは1件につき600文字の記録が可能だ。もちろん、こうした機能はPDAには劣るが、ちょっとメモを取りたいときなどに便利に使うことができるだろう。
また、電子辞書ならではの機能として、辞書のページに「添付メモ」を貼り付けることができるようになっているのが面白い。従来の電子辞書では、たとえば覚えたい英単語を単語帳に登録できるようになっているといった学習向けの機能を持っているものもあったが、PW-S7000では、辞書のコンテンツに自由にメモ書きできるため、非常に自由度の高い使い方が可能だ。たとえば、英和辞典の特定の単語に、辞書には記載されていない用例をメモするとか、さらに詳しい情報をメモするといった使い方ができる。ちょっと大げさだが、ユーザーが辞書を自由にカスタマイズしてゆくという感覚で使うことができる。
この添付メモの登録、閲覧も非常にスピーディーにできる。たとえば、英和辞典「impress」の項目に用例をメモするとしよう。まず、英和辞典で「impress」を検索する。画面には「impress」の意味や用例が表示される。このときに、キーボードの[切り替え]ボタンを押せばメモを添付できるのである。メモが添付されている単語「impress」を再度辞書で検索すると、画面上部の「メモ」マークがマークされる。この状態でさきほどと同様に、キーボードの[切り替え]ボタンを押せば、自分で作成したメモを閲覧することができるのである。もちろん、メモの加筆修正も可能だ。
さらに、保存しているすべての付箋メモを一覧できる機能があるのも嬉しい。先ほど「impress」に添付メモ登録したわけだが、このようにメモを登録してから、「添付メモの一覧」を選ぶと「1 英和:impress」のように、メモを添付した辞書の種類と見出し語が一覧表示されるようになっている。たとえば、用例や用法をメモしてもいいし、単語帳として使うこともできる。非常に原始的な機能ではあるが、アイディア次第ではさまざまな使い方ができるだろう。
英語を重視したコンテンツを収録
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薄さが際立つ「PW-S7000」(上)。下の端末は、同時に発表された「PW-9600」
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PW-S7000に収録されている辞書は14冊。「広辞苑(第五版)」「逆引き広辞苑(第五版対応)」「オックスフォード現代英英辞典(第6版)」「ジーニアス英和辞典(第3版)」「ジーニアス和英辞典」「パーソナルカタカナ語辞典」「学研監修漢字辞典」「英語類語使い分け辞典」「英文ビジネスレター事典」の9冊を丸ごと収録(図・表・付録を除く)しているほか、「人名」「地名」「作品名」「季語」「慣用句」の分野別小事典5冊も収録している。
このように、PW-S7000の内蔵コンテンツを見ると、英語関連の辞書が充実していることがわかる。「オックスフォード現代英英辞典(OALD)」は英語学習者向けの英英辞典、また「ジーニアス英和」も英文法や用例、用法などが豊富に収録されているもので、こちらも英語学習者向けの辞典だ。英語ネィティブということならば、こうした辞書では物足りないと感じるかもしれないが、辞書を引きつつ英文を読まなければいけない、あるいは辞書を引きつつ英文を作らなければいけないと言う人にとっては最適な辞書だといえるだろう。
ところで、英語をマスターするには「英英辞典」を読むことだ。これは割りと良く言われていることなのだが、英語素人な人たちが実際に紙ベースの英英辞典を読むのは非常に骨の折れる作業となる。まあ、英英辞典に限った話ではないのだけれど……。英英辞典で単語を1つ引くと意味がわからない単語がたくさん登場。さらに、辞書を引いているうちに、わけがわからなくなって英英辞典を投げ出してしまったという経験を持っている人は私だけではないハズ。このように単語を辞書で引いて、さらにそこに載っている単語をまたまた辞書で引くといったことは、電子辞書が最も得意とする分野なのである。
多くの電子辞書は、辞書に記載されている単語をさらに引くといったジャンプ機能を有している(シャープの電子辞書ではSジャンプと呼ばれている)。たとえば、英英辞典で調べた単語の説明の中に、さらにわからない単語があるといったときも、その単語をワンタッチで調べるといったことが可能になるのである。こうしたジャンプ機能は、大抵の電子辞書でサポートされているものだが、どちらかというと英英辞典などを搭載した英語重視のモデルの方が充実しているという傾向にある。
PW-S7000では、辞書が表示されているときに[Sジャンプ]キーを押すと、カーソルがフリーになり[上下左右]キーで動かせるようになる。単語がハイライトしているときに[検索]キーを押すと、そのすべての辞典からその単語が含まれてる見出しを一覧表示してくれる。たとえば「have」でジャンプすると、英和、英英、類語、英文レターなどに記載されている見出しが別ウィンドウで一覧表示、さらに項目を選ぶと、その単語の意味がウインドウに表示される。つまり、2つの単語の意味を別々のウインドウに表示させることができる。ちなみに、こうしてどんどん単語をジャンプしたあとでも、[戻る]ボタンを押せばひとつずつ戻すことができる。この機能を活用すれば、単に辞書を引くだけではなく、辞書を読むために電子辞書を使うことができるのである。
なお、広辞苑など日本語のコンテンツが表示されているときでもジャンプ機能を使うことができる。英単語の場合は、[上下左右]キーを押すと自動的に単語がハイライト表示するが、日本語の場合は引きたい部分を自分で指定する必要がある。こちらも、和英や広辞苑など日本語見出しとする辞書の見出し一覧が表示され、別のウインドウで次々と意味を調べることができるようになっている。
ただ、残念なのはSジャンプは辞書のコンテンツ間でしか使えないこと。メモの単語をハイライトさせて辞書引きするといったことはできない。辞書の見出しに添付メモを追加できるのならば、メモの内容からも辞書引きできてもいいんじゃないかと思ってしまうのだが、残念ながらこれもできない。つまり、メモはあくまでもメモ。単に電子辞書にメモがついただけなのである。ベースが電子辞書なのだから、電子辞書の機能をさらに有効に使えるようなメモ機能にすればさらに便利になるハズだ。
また、PW-S700には、こうした辞書としての機能だけではなく、消費税計算、通貨計算、単位換算、年号計算、年齢計算などの計算機能、カレンダーや世界時計、お知らせや案内などの手紙文をメニューから選んで作成できる手紙文作成機能などさまざまな機能がある。ビジネスユースだけじゃなく、英語圏の国々に旅行に行くときも必携のツールだといえるだろう。
評価(最高点は★5つ)
イバリ度 |
★★★ |
電子辞書としてはイバり度は高め。機能をイバるのもいいし、大きさや薄さをイバるのもいいでしょう。 |
実用性 |
★★★★★ |
英語を重視した電子辞書には、広辞苑や日本語関連の辞書が充実していないものもあります。PW-S7000では英語重視モデルながら広辞苑や漢和辞典など日本語関連の辞書が充実しているのがいいですね。デスクサイドで使うのもいいし、海外に行ったときにコミュニケーションを円滑にするためのツールとして使うのもいいでしょう。 |
お値段 |
★★★★ |
電子辞書としては値段はやや高め。中には新モデルが出たら次々と買っちゃう人もいますが、普通はそうそう買い換えるものではないだろうと思われるので、コストパフォーマンスはかなり良い方だといえるでしょう。 |
価格 |
29,800円(量販店にて) |
非常に手軽にわからない単語の意味をいつでも調べることができるのが電子辞書の最大の特徴。さらに、PW-S7000ではメモ機能を搭載することでPDAライクに(あくまでもライクですが)使うこともできるようになっています。PDAに辞書ソフトを入れて使えば完璧じゃ?という声もあるかもしれません。たしかにPDA向けの辞書ソフトもいくつかありますが、使い心地や機能はまだまだ専用の電子辞書の方が上。電子辞書が欲しいと思ったときは、素直に専用機を購入しましょう。まあ、PDAと電子辞書両方使いこなすのが一番便利かも。 |
利用期間 |
半年 | |
1日あたり単価 |
163円 |
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・ ニュースリリース
http://www.sharp.co.jp/corporate/news/021118-1.html
・ 製品情報
http://www.sharp.co.jp/products/pws7000/index.html
・ シャープ、メモ機能がついた厚さ9.9mmの電子辞書「PW-S7000」
(広野忠敏)
2003/01/16 11:06
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