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Graffitiが苦手でも安心 ソニー CLIE「PEG-TG50」
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広野忠敏 昭和37年新潟に生まれる。仕事はライターとプログラマの2足のわらじを履いている状態。どちらかといえばハードウェアよりはソフトウェアや技術的なものが得意である。ちなみに、2足はきこなしているかどうかはちょっと疑問。また、怪しげな小さいものと怪しげなプログラムと新しいものには目がないけど最近はちょっとパワーが落ちてきているかな。 (写真:若林直樹) |
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ソニーのCLIEといえば、オーソドックスなスタイルのものから、NXシリーズやNZシリーズのように大画面の液晶とハードウェアキーボードを搭載したものまでと、従来の枠を超えた魅力的なラインナップを誇るPalmデバイスだ。そして、またしても全く新しい形のPalmデバイスが登場した。その名は「CLIE PEG-TG50(以下TG50)」。標準的な液晶を搭載しつつ、Graffitiエリアの変わりにハードウェアキーボードを搭載した、今までにない形のPalmデバイスなのだ。
■ Graffitiを使いこなせなくとも安心なのだ
“Graffiti”(グラフィティ)とは、ほぼすべてのPalmデバイスが採用している入力方式の1つ。簡略化されたアルファベットのシンボルをシルクスクリーンに描画することで、文字入力ができるというものだ。この“Graffiti”であるが、Palmデバイスといえば“Graffiti”、“Graffiti”といえばPalmデバイスというように、今までは両者は切っても切り離せない存在の1つだった。
実際のところ、バリバリにPalmデバイスを使っている人ならば、ほとんどの人は“Graffiti”シンボルを完璧にマスターしているだろうし、“Grafitti”を知らないPalmユーザーはきっと世の中には存在しないだろう。紙に英文やアルファベットを書くときに、ついついGraffitiシンボルになってしまい、他のPalmユーザーに笑われてしまった、という経験をしたことがある人は私だけではないハズだ。
さて、使い慣れた人にとっては“当たり前”のGraffitiであるが、それがPalmデバイスを使う上での障害になってしまうことも多いという話を聞く。たとえば、量販店などに展示されているPalmデバイスの多くは、訳の分からない文字が入力されていることが多い。Palmデバイスを初めて触って、自由自在にGrafittiを使って文字を入力できる人なんてのは世の中には存在しないだろうし、どうしてもGraffitiに慣れることができなくて、結局Palmデバイスを使いこなすことができなかったという人もいるだろう。
そうした、Graffitiを使いこなせない人々にとって、福音になるといえるPalmデバイス、それが「TG50」なのである。それはなぜかというと、TG50の外見を見れば一目瞭然。Palmデバイスに必ずといってもいいほど存在するシルクスクリーンがTG50にはなく、本来シルクスクリーンがあるべき場所に、ハードウェアキーボードが装備されているのである。つまり、Graffitiをまったく知らなくても、ハードウェアキーボードのみで文字の入力ができるのだ。
今までもソニーからは、NRシリーズ、NXシリーズ、そしてNZシリーズのようにハードウェアキーボードを搭載したモデルはあった。これらのPalmデバイスは、折り畳みができるスタイルに大画面の液晶とハードウェアキーボードを搭載しており、サイズが比較的大きく、価格も比較的高価な部類に入っていた。実際のところ、サイズや価格の問題でちょっと手を出しにくいと思っていた人も多いのではないだろうか。しかしながら、TG50は非常にコンパクトなボディにハードウェアキーボードを搭載。液晶ディスプレイは320×320とハイエンド機に比べると解像度は低いが、これもPalmデバイスとしては標準的なもの。さらにPalm OS 5.0を搭載し、価格も手ごろとなかなか魅力的である。
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ジョグダイヤルや電源ボタンなどが配された本体左サイド
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メモリースティックスロットは本体上部
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スタイラスは本体下部
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ヒンジ部には、状態を示すLEDが配されている
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■ 実際の使い心地はどうだろう?
「TG50」の詳しいスペックなどは、ソニーの製品情報ページを見てもらうものとして、実際の使い心地はどうなのだろうか。TG50の最大の特徴であるハードウェアキーボードは、NRやNXシリーズのような丸いキートップではなく、NZシリーズと同様に四角いキートップが採用されている。実際にキーボードで入力をするときは、両手で持って、親指で入力をするという形になる。さすがにタッチタイピングをするのは無茶だが、慣れてしまえば、そこそこのスピードで文字を入力できる。
もちろん、文章はGraffitiよりずっと素早く入力できるハズだ。また、キーボードにはバックライトが装備されていて、バックライトをオンにすると、携帯電話のようにキーボード全体が光るギミックも搭載されている。バックライトを点灯すれば、真っ暗な闇の中でもキーボードでの入力が可能だ。
確かにハードウェアキーボードの搭載で、文字入力はスピーディーに行なうことができる。しかし、Grafittiがなくなったことによるデメリットも少なからずあるのを忘れてはいけない。たとえば、Graffitiを利用すると文字の入力だけではなく、メニューコマンドの実行や、アプリケーションに割り当てられているショートカットでコマンドを実行できる。
TG50のハードウェアキーボードでは、CTRLキーによるコンビネーションで一部のショートカットが実装されているが、画面をタップして操作するのが基本であるため、そうしたショートカットを使うためには、TG50を持ち替えて、いちいちキーボードから実行するという面倒なことになってしまうわけだ。
100%キーボードだけで全ての操作ができればまったく問題はないし、むしろ快適に使うことがきるとは思うが、多くのアプリケーションはスタイラスで操作するのが基本である。そのため、キーボードでメニューコマンドやショートカットコマンドを素早く実行することはできないと思ったほうがいい。むしろ、Graffitiで操作をしたほうが、持ち替えることもなくスマートに操作できるというわけだ。
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ディスプレイ下部のハードウェアキーボード。NZシリーズと同様の四角いキートップ
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バックライトを装備したことで、暗いところでも入力が行なえる
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また、Palmデバイスでは、スタイラスで操作をしているときに、何文字かの数字を入力したいというシチュエーションもある。Graffitiならばそういったときでもなんら問題なく操作ができる。ところが、TG50の数字キーはFNキーとのコンビネーションでしか入力できないため、わざわざ持ち替えて、両手でキーボードを打たなければならないのである。たしかに、ハードウェアキーボードは文章の入力には向いているが、ちょっとした操作をしたいときはGraffitiの方が断然便利なのも事実だ。そのため、Graffitiに慣れているユーザーがTG50を使うと、かなり戸惑うことになるはずだ。
ただ、TG50ではまったくGraffitiが使えないのかというとそうではない。ハードウェアキーボードの「Graffiti」ボタンを押すと、液晶画面にソフトウェアGraffitiが表示されるようになっている。一見するとGraffiti大好きユーザのための救済措置に見えるが、そうではないのである。なぜならGraffitiエリアは液晶画面の下半分以上を完全に占有してしまうからだ。入力エリアが見えているならば問題はないが、入力エリアがソフトウェアGraffitiのエリアによって隠されてしまうと、入力している文字が見えないため、お世辞にも使いやすいとは言いがたいのである。ソフトウェアGraffitiはTG50のコンセプトから見るとあくまでも「オマケ」以上の機能は持たないと考えた方がよいだろう。
■ Graffitiアレルギーの人にはオススメ
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ジョグダイヤルと連動したランチャーは直感的な操作が可能
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このように、普段からGraffitiを使っていたり、Grafittiの入力に慣れている人がTG50を使うと、かなり戸惑うことになってしまう。これは普段操作している方法とは違った操作をしなければいけないためだ。そのため、「GraffitiじゃなければPalmデバイスじゃない!」と思っている人は、TG50を購入すべきではない。いくらハードウェアキーボードで文章が入力し易くなるといっても、いつもいつも文章を入力するわけではないはずだし、文章を入力していないときの操作性が、Graffitiがなくなったことによって若干スポイルされてしまっているのがその理由だ。
それでも、今までPalmデバイスを使ったことがない人やPalmデバイスを使ってみたいけれどGrafittiが苦手な人、GraffitiでPalmデバイスを使うのを挫折してしまった人、そういった人は是非ともTG50を購入して欲しい。なぜなら、TG50は、Graffitiなんて覚えなくたってPalmデバイスを使うことができることを教えてくれる唯一のPalmデバイスだからだ。
評価(最高点は★5つ)
イバリ度 |
★★★★★ |
キーボードが光るギミックあたりがイバり度をさらに向上させています。質感もいいし、デザインもいいのでかなりイバれる製品だといえるでしょう。。 |
実用性 |
★★★ |
Graffiti=Palmデバイスと思っているPalm信者の人々からは石を投げられそうですが、ソニーに拍手! 新しいPalmユーザーの開拓ができる可能性のある製品だと言えるでしょう。ただ私にとっては、やっぱりちょっと使いにくいので星は3つにしてみました。まあ、そういうものだと思って慣れちゃえば問題ないんですけどね。 |
お値段 |
★★★★ |
Palm OS 5.0搭載機としては、最も安価です。 |
価格 |
39,800円 |
ハードウェアキーボードの搭載だけではなく、ジョグダイヤルが回し易くなってたり、BACKボタンが押し易くなっているなど、細かい改良もされています。私は紙に英文を書くときにGraffitiになっちゃうというかなりGraffitiの人なので、ちょっと使いにくく感じました。キーボードいらないから全面液晶でソフトウェアGraffiti搭載機とか出ないんでしょうかね~。 |
利用期間 |
1日 |
1日あたり単価 |
39,800円 |
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■ URL
製品情報
http://www.sony.jp/products/Consumer/PEG/PEG-TG50/
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(広野忠敏)
2003/03/26 14:07
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