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ドッキング可能なタブレットPC 富士通「FMV-STYLISTIC」
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広野忠敏 昭和37年新潟に生まれる。仕事はライターとプログラマの2足のわらじを履いている状態。どちらかといえばハードウェアよりはソフトウェアや技術的なものが得意である。ちなみに、2足はきこなしているかどうかはちょっと疑問。また、怪しげな小さいものと怪しげなプログラムと新しいものには目がないけど最近はちょっとパワーが落ちてきているかな。 (写真:若林直樹) |
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今までのようなマウスとキーボードではなく、液晶ディスプレイをスタイラスでタップすることにより操作できるパソコン「タブレットPC」が昨年末より各社から発売されている。今回は富士通より発売されているタブレットPC「FMV-STYLISTIC TB-80」についてレビューしてみよう。
高い自由度が魅力
現在発売されているタブレットPCは、大きく3つの種類に分けることができる。1つは「ピュアタブレット」と呼ばれるもの。液晶ディスプレイ部にパソコンとしてのすべての機能が搭載されていて、パソコンの操作は液晶をスタイラスでタップすることによる。たとえば、NECのLaVie TBなどがピュアタブレットPCだ。もう1つは、ノートパソコンのようなスタイルを採用している「コンバーチブル」タイプ。形状は一般的なノートパソコンで液晶ディスプレイ、キーボード、ポインティングデバイスを装備している。普通に液晶ディスプレイを開くとノートパソコンのように使うこともできる。また、液晶ディスプレイを開いた状態で液晶を回転させることでピュアタブレットPCのように使うこともできるものだ。たとえば、東芝DynaBook SS3500などがこれにあたる。そして最後が、今回紹介するFMV-STYLSTICのようなタイプ。ピュアタブレットとしても使うことができることに加え、ドッキングステーションに接続することで、デスクトップのような感覚で使うことができるものだ。
まずは、FMV-STYLISTICのスペックを簡単に紹介してみよう。詳しいスペックについては、FMV-STYLISTICのホームページなどを参照して欲しい。まずはCPUについて。CPUはPentium III-Mを搭載、800MHzで駆動する。チップセットはIntel830MGだ。メモリは標準で256MB、最大768MBまで拡張可能だ。ディスプレイは10.4インチTFT液晶で1,024×768ドット、1,677万色表示が可能。内蔵HDDは40GBだ。タブレット部には、そのほかに100BASE-TX対応LANポート、IEEE802.11b準拠の無線LANモジュール、Type2のPCカードスロット、USB1.1ポートが2つ、外部ディスプレイ端子、IEEE1394ポートなどが搭載されている。また、ドッキングステーション部にはCD-R/RW/DVDコンボドライブ、外部ディスプレイ端子、ネットワークコネクタ、USB1.1ポートが用意されている。
こうしてスペックだけを羅列してみると。タブレットPCということ以外に目新しいところは「なーんにもない」。性能的には現在のノートパソコンのエントリーモデルや、1年ほど前にリリースされたノートパソコンのハイエンドモデルのそれに近い。もはや40GB超のハードディスクを搭載しているノートパソコンは当たり前だし、CPUの性能も上がってきている。さらにはUSBの規格も新しい“2.0”にシフトしつつある。しかし、そうした性能の部分を凌駕する自由度の高い使い方ができるのが、FMV-STYLISTICの最大の特徴なのである。
デスクトップパソコンとして使う
FMV-STYLISTICには、ドッキングステーションが付属し、接続することで、デスクトップパソコンのように利用することができるようになる。これが第一の使い方だ。前述のようにドッキングステーションにはLANポート、USBポートなどのインターフェイスが搭載されているが、これらのインターフェイスは、タブレット本体がドッキングしたときに、即座に利用ができるようになっている。たとえば、ドッキングステーションにさまざまな周辺機器を常に接続している状態でも、タブレット本体を装着するだけで使えるようになるのは嬉しい。また、USBマウスも付属しているため、一般的なマウスを使ったパソコンのオペレーションも可能になる。ちなみに、キーボードは赤外線を利用したワイヤレスキーボードが採用されている。
面白いのが、ドッキングした状態でディスプレイ(タブレット本体)を回転できること。元々タブレットPCに搭載されるOS(Windows XP Tablet PC Edition)は、ディスプレイが横向きでも、縦向きでも使えるように配慮されており、ディスプレイを回転させることで、その表示も自動的に切り替わるようになっているのである。たとえば、通常は違和感のない横向きの状態で使い、ドキュメントの閲覧をするときや、Webページを閲覧するときは縦に向ければ一層快適に使うことができるだろう。
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パッケージに同梱されるドッキンググステーション
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縦横を自在に切り替えて使用できる
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ピュアタブレットとして使う
ドッキングステーションからタブレット本体だけを取り外すと、ピュアタブレットPCとして使うことができる。ちなみに、パソコンとしてのすべてのハードウェアはタブレット本体に含まれる。ドッキングステーションは単なる周辺機器だと思って欲しい。
ピュアタブレットとして使うときは、スタイラスによる操作が基本。液晶画面を付属のスタイラスでタップすることにより操作をする。このあたりの操作方法はPocket PCなどの操作に近い。タブレット上でスタイラスを動かせば、同時に表示されているマウスポインタも動く。スタイラスでタブレットを軽く押せばクリック、スタイラスをタブレットに押し付けながら移動すればドラッグといった操作ができる。また、スタイラスでタブレットをしばらく押し続けていると、右クリックと同様の操作をすることができる。
文字の入力は、ソフトウェアキーボードや文字認識を使う。このあたりの操作もPocket PCなどのPDAのそれに近いため、普段PDAに慣れている人ならば違和感なく使うことができるハズだ。なお、Windows XP Tablet PC Editionには、標準で音声認識の機能が搭載され、音声による文字の入力もできるようになっている。タブレット本体にはマイクが付いているため、内蔵マイクによる文字入力ができそうに思えるかもしれないが、これは全然だめ。周囲の雑音を拾ってしまうため、さっぱり認識してくれないのである。音声認識機能をきちんと使うためには、ヘッドセットなどを購入して使う必要がある。ただ、これを人前でやるとかなりマヌケな姿に見えてしまうため、回りに誰もいない静かな環境でやるのが良いだろう。
ちなみに、タブレット本体には画面を回転させるハードウェアボタンがついていて、このボタンを押すと、即座に表示画面が回転するようになっている。メモを取るときや、情報を閲覧するときは、画面を縦表示に、エクセルなどのワークシートで作業をするときは横表示で使うことができる。
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タブレット部にパソコンとしての機能を搭載。そのため様々なポートを装備している
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画面右側(縦使用時)にハードウェアボタンや赤外線ポート、内蔵マイクなどを装備
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スタイラスはかっちりとホールドされる
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ピュアタブレット+キーボードでノートパソコン並みの使い易さ
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付属するキーボードは、軽く小さく薄くと3拍子揃っている
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FMV-STYLISTICを実際に使ってみて、非常に気に入った点が1つある。それは、ピュアタブレットにした状態でも付属のキーボードが使えることだ。先にも書いたとおり、付属のキーボードは赤外線によるワイヤレス方式を採用している。この赤外線の受光部は、ドッキングステーションではなく、タブレット本体に装備されているのだ。つまり、タブレット本体とキーボードを一緒に持ち出せば、タブレットとしても使えるし、キーボードを使ったオペレーションも可能になるのである。
たとえば、ピュアタブレットだけで長文を入力するのは非常に面倒。文字の入力は断然キーボードの方がやりやすいのは周知の事実だろう。そんなときは、キーボードも一緒に持って行って、それをバッグなどからささっと取り出して使えば使えばいいのである。また、Webページの閲覧やドキュメントの閲覧をしたいだけならば、キーボードは無用。タブレット本体だけのほうが断然使い易い。そういうときは、キーボードを使わなければいいのである。ちなみに、キーボードの大きさはタブレット本体よりも全然小さいので、タブレット本体が携帯できるのであればプラスアルファのキーボードを一緒に持って言ってもまったく苦にならないはずだ。
ただ、残念なのはタブレット本体にはスタンドがないこと。つまり机においてちょっと立てた状態で使うのは困難なのである。なにかに立てかけてキーボードと併用して使えばいいのだが、コンパクトに折り畳みができるスタンドなりが付属していたら、もっと便利に使うことができるのではないだろうか。
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画面を直接タッチして操作したり、書き込めたりするため、直感的な操作が可能
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編集部スタッフが即興で描いたイラスト。拡張子は「.jnt」。タブレットPC以外のパソコンではWindows Updateなどから専用ビューワーをダウンロードすると閲覧できる
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評価(最高点は★5つ)
イバリ度 |
★★★★★ |
どのタブレットPCを買ってもイバり度はバツグンです。なんといってもあまり普及していないのが最大の理由でしょうか。 |
実用性 |
★★★★★ |
一体型デスクトップ、ピュアタブレット、ピュアタブレット+キーボードとして使え、さらにこのようにさまざまな使い方ができるタブレットPCの中では非常にコンパクトです。実用性はバツグンだといえるでしょう。 |
お値段 |
(★なし) |
実売価格30万円というのが最大の問題ですね。ノートパソコンならハイエンドなものが、デスクトップパソコンならばフラッグシップモデルが買える価格です。 |
価格 |
300,000円前後(オープンプライス) |
タブレットPCって面白そうと思っている人は多いと思いますが、値段が高すぎるのが最大の問題。めちゃめちゃ面白そうでとっても欲しいけど買えないという人がほとんどなのではないでしょうか。実は私もそう思っています。聞くところによるとタブレットPCのタブレットの部分が高価になってしまう理由だそうですが、それでもこの価格帯は高すぎ。このスペックで10万円安かったら即座に買っちゃうんですけどねえ。 |
利用期間 |
2年くらい |
1日あたり単価 |
411円 |
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・ 製品情報
http://www.fmworld.net/product/frame/pcpm0210/stylistic/index.html
(広野忠敏)
2003/02/12 13:35
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