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大幅にパワーアップした NTTドコモ「シグマリオンII」
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広野忠敏 昭和37年新潟に生まれる。仕事はライターとプログラマの2足のわらじを履いている状態。どちらかといえばハードウェアよりはソフトウェアや技術的なものが得意である。ちなみに、2足はきこなしているかどうかはちょっと疑問。また、怪しげな小さいものと怪しげなプログラムと新しいものには目がないけど最近はちょっとパワーが落ちてきているかな。 (写真:若林直樹) |
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同じWindows CEベースのOSを搭載してはいるが、Handheld PCはPocket PCよりも影が薄い存在になりつつある。以前は新製品ラッシュともいえるほどHandheld PCがリリースされることもあったが、最近ではさっぱり新製品もリリースされていないため、歯痒い思いをしているファンも多いハズだ。そんな状況の中で登場したのがNTTドコモの「シグマリオンII」である。初代シグマリオンとの違いを中心にレビューしてみよう。
で、「シグマリオンII」はどうよ?
初代シグマリオンとシグマリオンIIを比較すると、外見にはさほど変わりはない。ちょっと配列がヘンなキーボード(慣れると結構打ちやすい)もそのままだし、微妙に色は違うが、もちろんゼロハリバートンデザインもそのままである。
ところが、中身については初代とは大きく違う部分が多い。最も大きな違いはOS、CPU、メモリ、ディスプレイの4つ。OSはWindows CEをベースにした「Windows for Handheld PC 2000」を搭載。もちろん、Windows for Handheld PC 2000に搭載されるPocket Outlook、Pocket Word、Pocket Excel、Pocket Internet Explorerなどのアプリケーション群はすべて含まれているため、PDAとして使うこともできるし、Officeドキュメントを編集することも、Windows Media Playerで音楽を再生することも可能だ。
CPUに関しては初代シグマリオンがVR4121(168MHz)だったのに対して、シグマリオンIIではVR4131(200MHz)を搭載。実際に使ってみると、明らかにパワーアップしているのがわかる。アプリケーションの起動については、初代ではややもたつきが感じられたが、シグマリオンIIはかなりクイックな印象を受ける。
メモリについては、内蔵の32MBのRAMはそのままだが、新たに16MBのフラッシュROMを搭載している。標準ではこのフラッシュROMにはシグマリオン独自のアプリケーションがインストールされているが(12MBを占有)、独自アプリケーションを消去すればユーザが利用することもできる。フラッシュROMなので、本体の二次電池が完全になくなってしまっても格納されたデータは消えることがない。使ってる時間よりも充電時間の方が短い「充電を怠りがちのユーザー」にとってはとてもありがたいハズである。さらに、液晶ディスプレイはディスプレイが6万5536色表示対応のHPA液晶に変更されているのが特徴だ。
ソフトウェア面では、Windows for Handheld PC 2000以外の部分については、通信関連のアプリケーションの充実が目立つ。たとえば、ホームページを自動的に保存して、回線切断後にブラウズするための「Auto Web Recorder」、標準の受信トレイよりもかなり高機能なメーラ「MPメール」、通信のバイト数を計測する「バイトカウンタ」など。さらに、P-in m@sterやP-in Comp@ctと組み合わせることで、受信可能状態になったときに「MPメール」でメールを自動受信する「Wake on Ring」機能やドコモ通信網経由で絵や文字を使ってシグマリオン同士がチャットできる「ECOT for sigmarion II」など、ドコモならではのアプリケーションも多数用意されている。
こうしたアプリケーションはすべてシグマリオンII本体に内蔵されている。この点はかなり評価できるポイントのひとつである。それは「買ってすぐにすべて使える」からだ。多くのHandheld PCは基本的な機能は本体に内蔵しているけれど、その他のアプリケーションはCD-ROMで提供というスタイルをとっている。CD-ROMからのインストールはWindowsパソコンが必要になるため、買ってすぐにすべて使えるというわけではない。
シグマリオンIIならば「買ってすぐにすべて使える」ので、Windowsパソコンを持っていない人が、インターネットやメールを楽しむための1台目のマシンとして使うことができる。ノートパソコンなんかよりは全然値段も安いし、とりあえずインターネットを経験してみたいという人が選んでも、決して間違った選択にはならないハズである。もちろん、シグマリオンIIはHandheld PCなのでWindowsパソコンと接続することは可能。だが、オプションの接続ケーブルを別途購入しなければならない。
ちなみにマニュアルは3分冊。1冊目はハードウェアの基本機能についての「はじめましてシグマリオンII」、2冊目がメールやブラウザなど基本的な通信方法を解説した「通信をしよう」、そして3冊目が本体に内蔵したアプリケーションの使い方を説明した「アプリケーションガイド」。ちなみに、他社製のHandheld PCの場合、通信とアプリケーションは同じマニュアルだったり、アプリケーション編が通信編よりも先ってこともある。シグマリオンIIでは、マニュアルやアプリケーションの構成を見ても、通信をするためのHandheld PCという意図がうかがえる。まあ、Handheld PCなんだから通信をしなくても十分に実用になるんだけどね。
Type2 CF互換インターフェイスではない?
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FOMAポート
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さて、シグマリオンIIの外部インターフェイスに目を向けてみよう。外部インターフェースは初代シグマリオンと同様に、シリアルポート、携帯電話・PHS接続ポート、Type2 CFスロット、赤外線ポートの他に、FOMAと接続するためのFOMA端子を備えている。カタログスペックだけを見てみると、標準以上の拡張性が備わっているという印象をうけるかもしれないが、実はここに意外な落とし穴がある。
携帯電話・PHS接続ポートについては、シグマリオンIIがドコモの製品ということもあり、正式に対応しているのはドコモ製の携帯電話とPHSのみである。当然のことながらcdmaOneなどほかの事業者の端末には対応していないので注意が必要だ(cdmaOneは物理的にムリ)。携帯電話とPHSポートなんてもともとはキャリアやメーカー独自の規格だし、シグマリオンIIはドコモ製なんだからしょうがない。たとえば、ドコモのブラウザボードがcdmaOneに繋がらないからといっても誰も文句は言わないし、そういうものではない。
問題はType2のCFスロットだ。シグマリオンIIのスペックを見てみると、Type2 CFスロットを搭載しているとあるが、このCFスロットは厳密な意味でのType2 CF規格かどうかは疑問が残る。それは何故か。ちゃんとしたType2 CF規格のスロットを搭載しているなら、ドライバの有無など実際に使えるかどうかは別にして、同規格のカードならばどのような種類のものでも認識されるのはしごく当然のことだと思うし、実際そうだろう。ところが、Type2に対応したカードがまったく認識されないというケースがあるのだ。
既にいろいろなところで話題になっているDDIポケットの「C@rdH"64 petit」が利用できないというのがこのケースにあたる。何故利用できないか。それはドライバが動作しないとかそういう理由ではなく、特定のハードウェアを認識しないようにシグマリオンIIが作られているからなのだ。「C@rdH"64 petit」がType2に準拠したCFカードであるにもかかわらずである。もちろん、ドコモ製のP-in m@sterやP-in Comp@ctや、他社製であってもメモリカードは使えるし、ネットワークカードもドライバがあれば問題なく使える。たぶん、これからリリースされる無線LANカードも問題なく使えることだろう。
他社製のPHSカードにだけプロテクトをかけるというならば、カードは認識するけど使えないようにするとか、CFスロットではなくP-in m@ster、P-in Comp@ct専用スロットにしてしまうとか、PHS機能を内蔵してしまうとか、インターフェイスを独自規格にするとか、など別のアプローチをとればよいのではないだろうか。シグマリオンIIのハードウェアやソフトウェアが魅力的だからこそ、こういうことがとても残念である。
FOMA端子に関しては、私も早々とFOMAユーザになってしまったので、実際にどんな感じなのか使ってみたかったのだが、残念ながら接続ケーブルが存在しないので試すことはできなかった。まあ、使えたとしてもFOMA端末のバッテリがすぐなくなっちゃうので、出先で使うときはあんまり実用にはなんないですけどね。
そんなわけで、シグマリオンIIはとても魅力的なアイテムではある。だが、値段や、一見拡張性が高いように見えるスペックに惑わされて安易に購入するのはやめよう。シグマリオンIIを買ってもいい人。それは、ドコモ端末のユーザや既にP-in Comp@ctやP-in m@sterを持っている人、シグマリオンIIで通信するためにP-in Comp@ctやP-in M@terを買ってもいい人。そして、シグマリオンIIでは携帯やPHSを使った通信をしないという人だけだ。
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これが疑惑のCFスロット
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携帯電話/PHS接続コネクタとパソコン/プリンタ接続用シリアルポート
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■ 評価(最高点は★5つ)
イバリ度 |
★★★★ |
あいかわらずゼロハリバートンなのできっとイバれるでしょう。でも5万円出すなら本家ゼロハリバートンのグルーミングキットが欲しいなあ。
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実用性 |
★★ |
既にP-inな人とか、ドコモのPHSや携帯を持ってる人、シグマリオンIIを使って携帯電話・PHSで通信をしない人ならとても実用的。
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お値段 |
★★★★★ |
Handheld PCとしては破格な安さ。たとえば、同じくらいの大きさのJornada 710は7万5000円くらい。機能や拡張性がかなり異なるので同列には比較はできないですが、とにかく安くHandheld PCを買いたい人にはいいでしょう。
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価格 |
5万円くらい |
私はcdmaOne&FOMAユーザなので利用期間は2日。だって、cdmaOneじゃシグマリオンではインターネットにアクセスできないし、メールも読めないもの。FOMAに関してもFOMAサービスの開始にあわせて接続ケーブルが欲しかった。既にP-in Comp@ctやP-in m@sterを使っているっていう人なら、値段も安いのでとてもお買い得感はあります。P-inユーザなら間違いなく買い! ただ、先日Pocket PC 2002の発表もあり、そろそろHandheld PCの次期バージョンの声も聞こえてくると思うので、今、Windows for Handheld PC 2000搭載機を購入するよりは、次期バージョンのHandheld PCを待った方がいいのかもしれません。
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利用期間 |
2日
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1日あたり単価 |
2万5000円
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・ シグマリオンII ニュースリリース
http://www.nttdocomo.co.jp/new/contents/01/whatnew0821.html
・ シグマリオンII 製品情報
http://www.nttdocomo.co.jp/mobile/lineup/sigmarion2/index.html
・ ドコモ、キーボード付きPDA「シグマリオンII」を発売
(広野忠敏)
2001/10/10 12:17
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