|
「Touch Diamond」(S21HT)レビュー
|
|
「TouchFLO 3D」搭載のWindows Mobile端末
|
|
|
イー・モバイルから10日に発売された「Touch Diamond(S21HT)」は、OSにWindows Mobile 6.1を搭載したHTC製のスマートフォン。タッチパネルを活かしたUI「TouchFLO 3D」による分かりやすい操作体系が実現され、VGA液晶やHSDPA、加速度センサー、GPS、Bluetooth、無線LANなど機能面でも充実した内容だ。今回は、Touch Diamondの実機によるレビューをお届けする。
■ 外観・デザイン
|
イー・モバイル 「Touch Diamond」(S21HT)
|
|
背面はシンプル
|
|
4つのキーと、中央には方向キー・決定キー
|
「Touch Diamond(S21HT)」は、メインディスプレイとして2.8インチ、640×480ドット(VGA)のタッチパネルを搭載する。正面に見えているキーは、発話、終話、ホーム、戻る、の4つのキーと、中央に方向キー・決定キーのシンプルな構成。右側面は下部にスタイラスペンがあるのみで、キー類は無し。左側面に音量ボタン、上部に電源ボタンを備え、キーの数は最小限にとどめられている。受話口の左にある透明なパーツは光センサーで、液晶パネルの輝度を調節する際に使われる。下部にはUSB端子と、その右に送話口、左にストラップ用の穴を設けている。ストラップは背面のカバーを外して装着する。USB端子はイヤホンマイク端子を兼ねており、パッケージに同梱されるイヤホンマイクを利用できるが、一般的な携帯電話で使われる平型のイヤホンマイク端子は搭載されていない。スタイラスペンは真ん中あたりが磁石になっており、本体には磁力で吸い込まれるように収納される。リセットボタンはスタイラスを外した部分からアクセスできるようになっている。
液晶側は必要最低限のキーのみが配置されたシンプルなデザイン。背面はカメラ部分にツヤのあるパーツが使われるだけで、大部分はサラっとした手触りの、つや消しのブラックに仕上げられている。本体カラーは1色のみ。
厚さ11.9mmでコンパクトなデザインは扱いやすいが、コンパクトであるがゆえに、約98gと数字の上では軽量であっても、中身が詰まっているな、と感じる程度に重さは感じる。
前面のキー部分はシームレスなデザインのため一見すると分からないが、決定キーの周辺が4方向キーで、決定キー周辺をなぞることで画像の拡大・縮小や音楽再生のシーク操作なども行える。中央の決定キー自体もタッチセンサーを備えており、バックライトが暗くなった際、液晶パネルだけでなく決定キーに軽く触れることでも元の状態に戻すことができる。
初期設定では操作しない状態が40秒続くとスリープモードに移行し、電源ボタン以外はロックがかかる。電源ボタンを押すとスリープからすぐに復帰するほか、収納したスタイラスペンを引き出すことでもスリープを解除できる。また、通常の状態からは、電源ボタンを1回押すとスリープモードに移行できる。なお、終話ボタンの長押しによるキーロック機能も用意されている。
加速度センサーを搭載することで、縦位置、横位置を自動的に認識し、画面を切り替えられるソフトウェアもある。例えば、画像・動画の閲覧やブラウザは縦・横表示が携帯電話の状態に応じて自動的に切り替わる。また、着信があった際、端末をひっくり返して画面を下にすると、着信音がミュートされるといったユニークな機能も用意されている。
外部メモリスロットは搭載されず、microSDカードなどを利用できないが、4GBの内蔵メモリが搭載されている。
|
|
左側面には2つの音量ボタン
|
上部の電源ボタンはスリープのオン・オフでも使用
|
|
|
右は海外版Touch Diamondで、ボディデザインは微妙に異なっている。画面は「TouchFLO 3D」のホーム画面
|
iPhone 3G(右)と大きさを比較。中央は海外版Touch Diamondの背面
|
■ TouchFLO 3D
OSはWindows Mobile 6.1 Professional。ユーザーインターフェース(UI)としてHTC開発の「TouchFLO 3D」を搭載しており、初期設定では、端末起動直後にTouchFLO 3Dが起動し、基本機能はすべてTouchFLO 3D上で操作を行える。TouchFLO 3Dには大きく分けて、ホーム、アドレス帳、EMnetメール、Eメール、インターネット、カメラ、音楽、天気、設定、プログラムランチャーの10の機能が用意されている。画面下部には横一列で10のアイコンが配置されており、アイコンをタップするか、アイコンの列の上で指をスライド、あるいはメインの画面の上で指をスライドさせることで隣のメニューに移動できる。このほかにも、画像の拡大したいカ所で円を描くとその場所が拡大されるといった、タッチパネルによるまざまな操作方法が用意されている。
TouchFLO 3Dではメールや画像はプレビューのような状態で先頭の内容が表示され、アプリを立ち上げなくても概要を確認できる。指を上下にスライドさせれば、次のページに移動できる。TouchFLO 3Dのそれぞれの項目はWindows Mobileの各機能を呼び出すランチャーの役目だが、通話、画像閲覧、音楽再生、天気、設定などの項目は多くの操作をTouchFLO 3DのUI上で済ませられる。また、TouchFLO 3Dのプログラムランチャーには任意のプログラムを登録でき、ユーザーがインストールしたアプリケーションを登録することも可能だ。
TouchFLO 3Dの動作は、連続してタップやスライドを入力するともたつくことがあるものの、落ち着いて操作している分には十分に実用的な動作速度だと感じた。タッチパネルをなぞったりスライドしたりする操作は、力の加減などユーザー側の慣れも重要な要素となるが、慣れてくればスムーズに操作できる。操作する上でのポイントは、なでるように軽く操作するのではなく、しっかりとタップすること。スライド操作は、最初に指を置いた時点で一呼吸置くと操作が認識されやすい。なお、液晶パネルはマルチタップに対応していないので、操作は基本的に指1本で行う。
■ 基本機能
|
通話中は、できる操作がアイコンで表示
|
|
日本語入力はAdvanced Wnn。10キー入力以外にも、画面上にQWERTY配列のキーボードを表示することも可能
|
通話は、画面上に表示されるテンキーからダイヤルする。画面下部のサブメニューから履歴やアドレス帳を呼び出せるほか、通話中には画面上にメモや保留、ミュート、通話の終了といったボタンが表示される。メールはTouchFLO 3Dの「EMnetメール」からSMSとEMnetメールの2種類を利用できる。アドレスや件名によるフォルダ振り分けにも対応する。
メール作成時にはタッチパネル上のテンキーやフルキーボードからAdvanced Wnnによる日本語入力が行え、推測変換、絵文字入力にも対応する。指での操作はテンキー表示での入力が現実的な選択となるが、画面上のテンキー自体は比較的大きな表示で入力しやすい。
WebブラウザはOpera MobileとInternet Explorer Mobileが搭載されており、別途YouTube閲覧専用アプリも用意されている。なお、TouchFLO 3Dの「インターネット」のメニューから呼び出せるのはOpera Mobileとなっている。Opera MobileはVGAの解像度を活用した表示に加え、縦・横位置の自動認識、ダブルタップで拡大・縮小を手軽に行えるなど、タッチパネル主体の端末で使いやすい内容になっている。
カメラは撮影モードを起動すると、ファインダー表示のみの画面で起動し撮影が可能になるが、画面を1度タップすることで設定メニューのアイコンなどが表示されたファインダー画面になる。シャッターボタンは決定キーで、端末を横にして利用することを想定しているようだ。オートフォーカス対応で、決定キー押下後にフォーカスしシャッターが切れる。撮影後は保存したりメールに添付したりといった操作が行える。
プリインストールアプリの「NAVITIME」ではGPSを利用したルート検索などが行えるほか、バーコードリーダーアプリや英語辞書アプリも用意されている。オフィス系アプリとしてWord Mobile、Excel Mobile、PowerPoint Mobile、Outlook Mobile、Adobe Reader LEが搭載され、パッケージにはパソコン用のOutlook 2007(試用版)も同梱されている。
|
|
Opera MobileでのPCサイト表示例。VGA液晶によりPCサイトを一覧できる
|
加速度センサーにより縦・横を自動的に認識する
|
■ 位置付け
イー・モバイルのHTC製スマートフォンとして3番目に投入された端末で、フルキーボード以外の要素を詰め込んだHTCの意欲作。同社のラインナップの中では、「EMONSTER(S11HT)」はフルキーボードを搭載し差別化が図られているが、「EMONSTER lite(S12HT)」に対しては上位機種と位置付けられるだろう。なお、イー・モバイルの携帯電話端末として7.2MbpsのHSDPAに対応するのは、現在Touch Diamondのみとなっている。
HTCが海外で展開している「Touch Diamond」との差は、主なところで対応周波数帯、EMnetへの対応、日本語版ソフトウェア、背面パネル、わずかに弧を描くボディのライン、ディスプレイ外周のフレーム素材、前面の4つのキーの並び順、といった点になる。
タッチパネル主体の操作体系を「TouchFLO 3D」として前面に押し出したことで、アップルの「iPhone」対抗馬として位置付けられることも多いが、iPhoneがマルチタッチのタッチパネルを前提にUIが設計されている点に対して、「TouchFLO 3D」はあくまでWindows Mobile上で動作する、広義のランチャーだ。もちろん、通話、メール、カメラ、基本的な設定変更など、日常的に利用する機能はTouchFLO 3D上の操作で済むようになっており、加速度センサーなどと連携し、Windows Mobileのタッチパネルでの使いづらさがうまくカバーされている。しかし、何かの設定で階層をたどり、スクロールバーやクローズボックス、小さく並んだタブなどWindows Mobileの伝統的なUIの領域に入ると、タッチパネル主体のTouch Diamondでは操作しづらいのも確か。そういった意味では、Windows Mobileを使いこなすユーザーより、これまでWindows Mobileを敬遠していたユーザーに向けた端末といえるのではないだろうか。
オフィス系アプリも一通りプリインストールされているが、ビジネスユーザーよりもカジュアルな一般ユーザーにオススメしたい端末。YouTubeやフルブラウザ、Windows Liveとの連携、メッセンジャー、画像共有といった利用を楽しみたい。
■ URL
製品情報(イー・モバイル)
http://emobile.jp/products/ht/s21ht/
製品情報(HTC)
http://www.htc.com/jp/product.aspx?id=63962
■ 関連記事
・ HTC、「TouchFLO 3D」や国内戦略を解説
・ HTC Nippon社長に国内戦略を聞く
・ イー・モバイルが「Touch Diamond」公開、10月10日発売
(太田 亮三)
2008/10/16 11:28
|
ケータイWatch編集部 k-tai@impress.co.jp
Copyright (c) 2008 Impress Watch Corporation, an Impress Group company. All rights reserved.
|
|
|
|
|
|