法林岳之の「週刊モバイルCATCH UP」

「au HOME」で新しいライフスタイルの可能性を紹介したau 2017年夏モデル発表会

 auは5月30日、「au 2017 SUMMER COLLECTION」と題し、2017年夏商戦へ向けた新商品と新サービスの発表会を開催した。auはこの1~2年、通信サービスを提供する事業者から、ライフスタイルを提案する「ライフデザイン企業」への進化を模索し、ハードウェアだけでなく、さまざまなサービスの拡充を図ってきている。

 その一方で、「格安SIM」「格安スマホ」の影響も少しずつ見え始め、事実上の身内(親戚?)と言えるUQモバイルに対抗させることで、グループ全体としての勢いを失わないようにしている。

 今回auは、2017年夏モデルとして先行発表した3機種を含め、スマートフォン7機種とフィーチャーフォン2機種の計9機種を発表した。同時に、家庭向けIoTサービスとして、「au HOME」も発表するなど、新しい取り組みも展開してきた。発表会の詳細については、本誌の速報記事をご覧いただきたいが、ここでは今回の発表内容の捉え方、それぞれの製品やサービスの印象などについて解説しよう。

通信事業者という立ち位置

 私たちのスマートフォンや携帯電話などは、いずれも各携帯電話事業者やMVNO各社と契約することで、利用できている。現在、国内の契約数は1億6000万を超え、国内の人口もゆうに超えている。携帯電話普及の流れを継承し、この10年弱で急速に進化してきたスマートフォンもここ数年は端末の完成度が高められ、サービスの内容も充実してきたことで、市場が成熟したと言われることが多い。

 今後、人口が減少する傾向が予想され、市場が成熟してきたことを考慮すれば、当然のことながら、各社とも成長戦略を見直さなければならない時期に来ている。ある会社はM&Aで成長を目指し、ある企業は他社との“共創”で新しい道を切り開こうとしているが、auは通信事業者という立ち位置を超え、ライフデザイン企業への進化を模索している。

 そのひとつが2015年8月にサービスを開始した「au WALLET Market」だ。auショップやオンラインショップで、そこでしか買えない「ちょっとイイモノ」を販売することで、新しいビジネスを確立させようとしている。サービス開始当初はややつまづいた感もあり、現在でもAmazonや楽天市場など大手オンラインショップにはかなわないものの、ユニークな品揃えやおトクなタイムセールで少しずつ浸透しつつあるような印象だ。また、「auの損害ほけん」や「auの生命ほけん」や、じぶん銀行が提供する「auのローン」など、これまでの通信事業者では踏み込みにくかった金融サービスという新ジャンルの事業も展開し、より生活に密着したサービスを提供する企業へ進化しようとしている。

 さまざまな事業において、新しい取り組みを進めようとしているKDDIだが、今年1月の「au発表会 2017 Spring」では「やってみよう」を2017年のテーマに掲げ、社内外に向けて、新しい取り組みや動きを活性化させることをアピールしていた。今回の「au 2017 SUMMER COLLECTION」のプレゼンテーションの冒頭でも再び「やってみよう」が掲げられ、通信事業者という立ち位置を超えて、ライフデザイン企業へと進化するために何度もくり返し、アピールしていかなければならない状況をうかがわせた。

 さて、今回の「au 2017 SUMMER COLLECTION」では、スマートフォン7機種、Androidベースのフィーチャーフォン2機種の合計9機種が発表され、auの新しい取り組みとして、IoTサービス「au HOME」の内容もあわせて発表された。端末については他社でも扱われるものが先に発表されていたため、あまり大きなサプライズはなかったが、本格的なホームIoTに取り組むau HOMEは、タッチ&トライ会場にデモコーナーを設置するなど、何とかメディア関係者や関係各社に理解してもらおうという姿勢が感じられた。

 また、ちょうど5月29日に発表された「Google アシスタント」の日本語版との連携が明らかにされた。ステージには米GoogleでDirector of Product Management Google Assistantを務めるSteve Cheng(スティーブ・チェン)氏も登壇し、これまでのauとの取り組みに触れながら、日本語に対応したGoogle アシスタントの「Actions on Google」を紹介した。

 Google アシスタントは今回発表されたスマートフォン7機種も対応するが、端末の仕様を満たした従来の端末にも、グーグルから順次、各端末に提供される。6月~7月初旬までには、標準的に利用できるようになる見込みだ。

 端末ラインナップやau HOME、Google アシスタントの発表には力が入っていたものの、残念ながら、5月24日にNTTドコモから発表された「docomo with」に対抗するような料金施策は発表されなかった。発表会後の囲み取材では田中孝司 代表取締役社長が「auでも久々にガツンと行こうと思う。もう少しお待ちを」と答えていたため、おそらく、この数カ月以内に何らかの発表が行われるようだ。

ホームIoTを実現する「au HOME」

 今回の「au 2017 SUMMER COLLECTION」では、スマートフォン7機種、フィーチャーフォン2機種が発表され、Google アシスタントの対応などが明らかにされたが、新しい取り組みとして注目されるのはホームIoTサービスの「au HOME」だろう。

 IoTについては今さら説明するまでもないが、「Internet of Things」の略で、「モノのインターネット」を指す。これまでインターネットにはスマートフォンやパソコンなどのデバイスが接続されてきたが、今後は人と人、人とモノだけでなく、モノとモノ、機械と機械など、もっと幅広いものが接続されるようになり、その上で今までにない新しいサービスが提供されることなどを目指している。IoTに関するサービスはすでにさまざまな業種で実現されているが、auとしてはモバイルネットワークや固定回線といった通信インフラを持ち、数多くの一般消費者を契約者として抱えていることから、一般家庭向けのIoTサービス提供する企業として、非常に適した位置にいると言えそうだ。

 今回のau HOMEでは対象となる光回線(auひかり)のゲートウェイに、専用のIoTゲートウェイ(USBドングル)を装着し、そのIoTゲートウェイに対応するIoT製品が家庭で利用できるようにするものだ。

 サービス開始当初は対象がauひかり契約者に限定されるが、動作検証などの関係上、auひかりが先行しているためで、将来的に他回線でまったく望みがないということではないようだ。たとえば、KDDIと資本関係があり、全国でケーブルテレビサービスを提供するJ:COMなどは、契約者宅に機器設置などで訪問してきた実績があり、こうしたサービスの取り次ぎがしやすいだろう。

 au HOMEで利用できるIoT機器は、いずれもau WALLET Marketで販売される。IoTサービスにはさまざまな通信方式があるが、au HOMEで提供される機器は「Z-Wave」と呼ばれる規格に準拠したモノで、規格上は200kbpsの通信速度で、約50m程度の距離を伝送できるという。機器によっては既存のWi-Fiなどを併用するものもあるが、まだ一般的になじみの薄い規格であるため、実際の利用環境でどのように使えるのかは、今後の正式サービス開始を見たうえで確認したい。

 競合するIoTサービスにはアップルのHomeKitのように、さまざまなメーカーの対応製品を自由に選んで利用するものもあるが、au HOMEは基本的にau自身が販売する対応製品のみを利用できるという形態を選ぶようだ。おそらく接続の確実性やセキュリティなどを考慮しての判断だろうが、ある程度、サービスが拡大した段階で、サードパーティの機器などを取り入れていくことができるのかどうかが気になるところだ。

 今回発表された機器は、窓の開閉センサー、窓の開閉や室温、湿度、照度などがわかるマルチセンサー、人感及び室温、湿度、照度などがわかるマルチセンサー、鍵の開閉センサー、ネットワークカメラといったラインナップ。今後、家庭用のエアコンや照明、TVなどをコントロールできる赤外線リモコン、利用電力量がわかるスマートプラグなども提供される予定だという。

 これらの機器を利用する環境のシナリオとして、今回のデモでは共働きの家庭をイメージした実演が披露された。帰宅した子どもをセンサーが検知すると、保護者に連絡が届き、ネットワークカメラを通じて保護者と会話ができるという内容だ。

 実際の利用シーンでもありそうなシナリオだが、イジワルな見方をすれば、こうした使い方は既存のサービスの組み合わせでもある程度、実現することが可能であり、もう少し「IoTらしい工夫」や新しさを感じさせる内容の活用例も期待したいところだ。

 au HOMEの基本使用料は月額490円と、比較的、リーズナブルと言えるが、いかに契約者が便利だと感じさせるシチュエーションをどれだけ見せられるかで、今後の拡大を大きく左右することになりそうだ。

スマートフォン7機種、フィーチャーフォン2機種をラインナップ

 さて、ここまでは発表内容とau HOMEについて説明してきたが、ここからは今回発表された2017年夏モデルの端末ラインナップを見てみよう。

 今回の「au 2017 SUMMER COLLECTION」では、スマートフォン7機種、フィーチャーフォン2機種の合計9機種がラインナップに加わった。ただ、このうち、サムスンの「Galaxy S8+ SCV35」と「Galaxy S8 SCV36」、ソニーモバイルの「Xperia XZs SOV35」の3機種は、NTTドコモの発表会前日の5月23日に先行して発表されていたため、当日、発表されたスマートフォンは4機種のみ。

 しかも、その中の2機種については先に他事業者からも同型のモデルが発表されていたため、実質的にauオリジナルの新しいスマートフォンは「Qua phone QX」と「TORQUE G03」の2機種のみという見方もできる。

 シャープが今年4月に先行して、各社向けに供給するスマートフォンのフラッグシップモデルを「AQUOS R」に統一することを発表したことからもわかるように、従来のような各端末メーカーが各携帯電話会社向けに個別のモデルを開発するというスタイルは減少しており、特にフラッグシップは共通モデルが中心になってくる。裏を返せば、各携帯電話会社ごとの個性が打ち出しにくくなるわけだが、auとしてはターゲット層が明確なオリジナルモデルを投入することで、auらしさを主張したいようだ。

 スペック面では各メーカーのフラッグシップモデルがクアルコム製の「Snapdragon 835」(MSM8998)、ミドルレンジモデルが「Snapdragon 625」(MSM8953)や「Snapdragon 430」(MSM8937)を搭載する。ミドルレンジ向けのSnapdragon 625やSnapdragon 430は昨年以降、いくつかの製品に搭載されてきており十分な実績がある。一方、「Snapdragon 835」は2017年の夏モデルから各社のハイエンドモデルに搭載されはじめたチップセットだ。最新の10nmのプロセスルールで製造されていることから、従来よりも消費電力や発熱が抑えられていることが期待されている。

 フラッグシップモデルはメモリーが4GB、ストレージが64GB、バッテリーが3000mAh以上、ディスプレイ解像度はWQHD(2560×1440)以上が主流という印象で、昨年の冬モデルをベースにカメラを改良した「Xperia XZs」のみがフルHDのディスプレイを搭載する。ミドルレンジのauオリジナルモデルは両機種ともHD対応ディスプレイに抑えられているが、コストと省電力性能のバランスを考えての判断だろう。

 ここからは今回発表されたスマートフォン7機種、フィーチャーフォン2機種について、個別に説明するが、各機種の詳しい内容については、本誌の速報記事を参照していただきたい。それぞれのモデルはすでに発売されているものも含め、発表会時点で試用した印象に基づくもので、最終的な製品と差異があるかもしれないことはお断りしておく。

Galaxy S8 SCV36/Galaxy S8+ SCV35(サムスン)

 今年3月、米ニューヨークでグローバル向けに発表されたサムスンのフラッグシップモデル。Galaxy Sシリーズはこれまで国内向けには1機種のみが供給されてきたが、今回はディスプレイサイズなどが異なる2機種を投入してきた。

 チップセットやメモリー、ディスプレイの解像度、カメラなど、基本的な仕様は共通。Galaxy S8は5.8インチ、Galaxy S8+は6.2インチのSuperAMOLED(有機ELディスプレイ)を採用し、両機種とも解像度は1440×2960ドット表示が可能。

 Galaxyシリーズの特長のひとつであったホームキーをソフトウェア表示に変更し、表示エリアを上下に拡大。指紋認証センサーは背面に移動し、新たに虹彩認証にも対応した。ディスプレイサイズは6.2インチと5.8インチと大きいが、ボディ幅はGalaxy S8で68mm、Galaxy S8+で73mmに抑えられており、ライバル機種に比べ、格段に持ちやすい。すでに販売が開始されているが、スペック的にもデザイン的にもこの夏、もっとも注目度の高い一台と言えるだろう。

AQUOS R SHV39(シャープ)

 主要3社向けのフラッグシップモデルを統一したAQUOS Rシリーズのau向けモデル。昨年のAQUOS SERIE SHV34からデザインを一新し、ラウンドさせた背面と丸みを帯びたボディデザインに仕上げられている。

 背面は見る角度によって、見え方が異なる多層膜蒸着によるコーティングが施され、独特の光沢感を持つ。ボディの左右側面部分は机に置いたときにも持ち上げやすいように、わずかに突起した形状で仕上げられており、質感などもこれまでのスマートフォンAQUOSと印象が異なる。

 ディスプレイは5.3インチのIGZOを採用するが、スマートフォンAQUOS初のWQHD対応となっており、タッチパネルの応答速度も従来の1.5倍に高められている。カメラはメイン、サブ共に、約90度の広角になっており、風景や自分撮りを美しく撮影できる。シャープ製スマートフォンでおなじみの「エモパー」にも対応するが、au向けはエモパーと連動する「ロボクル」が同梱される。トップクラスのハイスペックを実現しながら、毎日使う楽しさをしっかりと演出するシャープらしい一台と言えるだろう。ちなみに、ジュエリーブランド「ete(エテ)」とのコラボレーションモデルが8月上旬にauオンラインショップ限定で、100台販売される。

HTC U11 HTV33(HTC)

 昨年、夏モデルとして発売された「HTC 10 HTV32」以来、久しぶりのHTC製スマートフォン。auの発表会が行われる前々週、グローバル向けに発表されたばかりのモデルをベースに、おサイフケータイなどの日本仕様を搭載する。本体側面に内蔵された感圧式センサー「エッジ・センス」により、本体を握ると、アプリを起動したり、自撮りのシャッターを切るなどの操作ができる。

 ボディは昨年のHTC 10の流れをくみ、ラウンドさせた背面は光沢感のある美しい仕上げで、手にフィットする印象。USB Type-C外部接続端子に接続するステレオイヤホンマイクが同梱されており、ノイズキャンセリングだけでなく、ユーザーの耳に合わせた音質に調整する機能が搭載される。カメラはF1.7の明るいレンズに、画素ピッチ1.4μmの1200万画素イメージセンサーを組み合わせる。サブカメラはメインカメラよりも高画素の1600万画素のセンサーを搭載する。別売の「LINK」と呼ばれる端末を接続することで、モバイルVRも楽しめる。端末のスペックや機能は十分に魅力的だが、他メーカーに比べ、市場での存在感が急速に薄らいだ印象は否めず、今後、どのような形で日本市場に取り組んでいくのかも含め、メーカーとしての動向が気になるところだ。

Xperia XZs SOV35(ソニーモバイル)

 今年のMWC 2017で発表されたXperiaシリーズの最新モデル。昨年発売されたXperia XZをベースに、メモリー積層型イメージセンサーによる新開発のカメラ「Motion Eye」を搭載することで、最大960fpsのスーパースローモーションの撮影を可能にする。動きのある被写体を撮影するとき、シャッターチャンスを逃さず、4枚の写真を撮影して、ベストショットを選べる「先読み撮影」にも対応する。

 従来モデルに搭載されていた「いたわり充電」には、新たにユーザーの生活パターンに合わせた充電機能を追加。アラームと連動して、アラーム設定時刻にバッテリー残量が100%になるように充電する。同じモデルはすでにNTTドコモとソフトバンクからも発売されており、背面のロゴや対応バンドなどを除けば、共通仕様となっている。ベースモデルが昨年発表のXperia XZということもあり、デザイン的にはやや見慣れてしまっているうえ、目新しさや先進性はあまり感じられない。ディスプレイのスペックが他機種よりもひとつ低い(と言ってもフルHDだが)ことなど、やや仕様面で他機種に譲る部分があるのは気になるところだ。「Xperia Z5」や「Xperia Z4」など、買い換えのタイミングを迎えたXperiaのユーザーには、選びやすいモデルと言えそうだ。

TORQUE G03(京セラ)

 2015年夏モデルとして発売された高耐久スマートフォン「TORQUE G02」の後継モデル。「MIL-STD-810G」(MILスペック)に準拠した耐久試験に加え、京セラ独自の試験を追加し、耐海水や耐氷結、塩水耐久、低圧対応などにも対応する。ボディは従来モデルから基本的なデザインのコンセプトを継承しながら、四つの角のバンパーを強調したデザインで仕上げ、テクスチャー加工などにより、持ちやすく、しっかりとグリップ感のある形状にまとめている。

 特徴的なのはディスプレイ周りで、表面ガラスにDragontrail Xを採用しながら、ガラス割れを防ぐため、表面に耐擦傷性の高いコーティング済みアクリルスクリーンを重ねたハイブリッドシールド構造を採用する。アクリルスクリーンは市販の保護フィルムなどでもカバーできるが、キズが付いたときは前面パネルの一部を取り外し、容易に交換できる構造を採用している。ボディ側面にはTORQUEシリーズ初の指紋認証センサーを備えるが、従来モデルで採用していた物理キーによるナビゲーションキーはソフトウェア表示に切り替えられている。メインカメラは1300万画素イメージセンサーを採用するが、これとは別に、超広角レンズを組み合わせた「スーパーワイドアクションカメラ」を搭載する。カメラで撮影中、移動速度や高度、加速度、移動距離などの情報を映像に組み合わせて、録画や撮影、表示ができる「アクションオーバーレイ」も搭載される。アクティブにスマートフォンを活用したいユーザー、屋外などで利用するシーンが多いユーザーにおすすめの一台だ。ちなみに、HELLY HANSENとのコラボレーションモデルがauオンラインショップ限定で、300台販売される。

Qua phone QX(京セラ)

 2016年2月の初代モデル以来、auオリジナルモデルとして展開されてきたQua phoneシリーズの第3弾モデル。フィーチャーフォンからの乗り換えユーザーを意識し、音声通話機能に注力している。従来の京セラ製端末にも採用されてきたディスプレイ全体が振動するスマートソニックレシーバーを搭載し、耳の当てる位置を気にすることなく、クリアで聞きやすい音質で通話ができる。

 相手の音質を「やわらかく」「はっきりと」「おさえめに」の3つから選んで、自分が聞き取りやすい音質に調整する機能も備える。着信に気づかないことを考慮し、10分以内に同じ電話番号から再び着信があったときは徐々に着信音量を大きくする機能も備える。この他にも画面内の表記をアイコンだけでなく、わかりやすい文字でも表現することで、はじめてのユーザーでも戸惑わずに操作できるようにしている。ボディのデザインはシンプルでクセのないもので、年齢層や性別を問わず、誰にでも持ちやすいものに仕上げられている。防水防じん耐衝撃など、機能面も充実しており、フィーチャーフォンからの乗り換えユーザーだけでなく、長く同じ機種を使いたいユーザーにも安心しておすすめできる一台と言えそうだ。

MARVERA KYF35(京セラ)

 Androidプラットフォームをベースにしたフィーチャーフォンで、2014年発売の従来型ケータイ「MARVERA2」の後継に位置付けられる。4G LTEやau VoLTE、Wi-Fiなどに対応するほか、ワイドFM対応のFMラジオ、ワンセグ、おサイフケータイに対応し、防水防じん性能も備える。

 プラットフォームがAndroidベースになったことで、バッテリーは従来モデルよりも大型化され、1700mAhの大容量バッテリーを搭載する。特徴的な機能としては、家族から送られてきた写真をテレビに映し出す「テレビde写真」が挙げられる。テレビのHDMI端子に別売のMiracast端末を接続し、セットアップしておくと、本体のテレビde写真ボタンを押すだけで、端末に表示されている写真をそのままテレビに映し出すことができる。デザインや仕上げも上質感のあるもので、大人のユーザーが持つ新しいフィーチャーフォンとしておすすめできるモデルだ。

かんたんケータイ KYF36(京セラ)

 昨年の夏モデルとして発売された「かんたんケータイ KYF32」の後継モデル。Androidプラットフォームをベースにしたフィーチャーフォンで、4G LTEやau VoLTE、Wi-Fiなどに対応する。大きな文字とわかりやすいメニュー構成の「でか文字」、サブディスプレイも時刻がわかりやすい「でか時計」に対応するなど、シルバー世代のユーザーのニーズにも応えられるモデル。

 テンキーのキープリントもコントラストの高いものに変更することで、視認性を向上させている。ディスプレイ下のワンタッチキーで、家族や友だちにすぐに連絡を取ることができる。MARVERA KYF35にも搭載された「テレビde写真」に対応しており、メールやLINEなどで送られてきた写真を別売のMiracast端末が接続されたテレビに写し出すことができる。音声通話の仕様などは基本的にMARVERA KYF35と共通で、ディスプレイ全体で音を伝えるスマートソニックレシーバーなども搭載する。防水防じん耐衝撃性能も実現しており、長く安心して使える一台と言えそうだ。

隠しネタが控えている? 夏商戦の先も気になるau

 ここ数年、国内の携帯電話市場が大きく変化してきたことで、各携帯電話会社は新しい方向性を模索する時期に入ったと言われている。冒頭でも触れたように、その模索する方向性は携帯電話会社によって違い、KDDIはライフデザイン企業としての進路を推し進めようとしている。au WALLET Marketやじぶん銀行、au損保など、新しい取り組みを次々と展開してきたが、今回発表されたIoTサービス「au HOME」は、まだ未知数の部分が多い感は否めないものの、auひかりという固定ブロードバンド回線を持つKDDIらしいサービスと言えそうだ。

 ただ、その一方で、前週にNTTドコモが発表した「docomo with」に対抗する施策は、田中社長が囲み取材で「やります」と明言したものの、詳細は別の機会ということで、ユーザーとしてはやや肩すかしを食った格好だ。もちろん、同じタイミングで発表すればいいというものではなく、auのユーザーにとって、本当にメリットが感じられる施策が継続的に提供されることが望ましいわけで、現段階では待つしかないわけだ。

囲み取材に答える田中孝司社長

 また、質疑応答では今年中に国内向けに各社が発売すると予想されているスマートスピーカーについても「ノーコメント」と答えるのみで、将来的な発表の可能性に含みを残した。普段から田中社長はちょっとリップサービスが過ぎると社内で言われているのか、今回は記者のきわどい質問に極力、ストレートに答えないようにしていたのが印象的だった。いずれにせよ、施策にしろ、製品にしろ、何らかの隠しネタが控えていることは確実で、ユーザーとしては今後のauの発表から目が離せなくなったようだ。

 今回発表された夏モデルは、すでに一部のモデルの販売が開始されており、今後、7月へ向けて、他の新機種も発売される見込みだ。「au SHINJUKU」などの直営店をはじめ、各地のショップではすでにデモ機も展示されているので、ぜひ一度、店頭に足を運んでいただき、実機を手に取って、自分に合った一台を選んでいただきたい。

法林 岳之

1963年神奈川県出身。携帯電話・スマートフォンをはじめ、パソコン関連の解説記事や製品試用レポートなどを執筆。「できるゼロからはじめる iPhone 7/7 Plus超入門」、「できるゼロからはじめるAndroidスマートフォン超入門」、「できるポケット HUAWEI P9/P9 lite基本&活用ワザ完全ガイド」、「できるWindows 10b」、「できるゼロからはじめる Windows タブレット超入門 ウィンドウズ 10 対応」(インプレス)など、著書も多数。ホームページはこちらImpress Watch Videoで「法林岳之のケータイしようぜ!!」も配信中。