法林岳之の「週刊モバイルCATCH UP」

Infinity Displayで新しいスマートフォンの基準を目指した“史上最強”「Galaxy S8/S8+」

NTTドコモ、auから発売された「Galaxy S8」(左)と「Galaxy S8+」。ディスプレイサイズやバッテリー容量などを除けば、基本的な仕様は共通

 今年3月、米・ニューヨークで開催された「Unpacked 2017」で発表されたサムスンの「Galaxy S8+」と「Galaxy S8」。国内ではNTTドコモとauから6月8日に発売された。改めて説明するまでもなく、世界的にも常に高い支持を集めてきたスマートフォンの定番シリーズであり、そのフラッグシップモデルに位置付けられるのが今回の「Galaxy S8+」と「Galaxy S8」だ。ひと足早く実機を試用することができたので、その内容と仕上がりをチェックしてみよう。

NTTドコモ/サムスン「Galaxy S8+」。約160mm×73mm×8.1mm、約173g。ボディカラーはアークティックシルバー(写真)、ミッドナイトブラック(au版も同仕様)
au/サムスン「Galaxy S8」。約149mm×68mm×8.0mm、約150g。ボディカラーはミッドナイトブラック(写真)、オーキッドグレー、コーラルブルー(NTTドコモ版も同仕様)

本気で巻き返しを狙うGalaxyシリーズ

 サムスンのGalaxyシリーズと言えば、グローバル市場で常に高い人気を得てきたスマートフォンのシリーズであり、国内市場においてもAndroidスマートフォンの定番として、2010年10月に国内向け初代モデル「GALAXY S SC-02B」を投入して以来、ライバルとの激しい争いをくり広げながら、市場をリードしてきた。

 そんなGalaxyも国内市場が順風満帆だったかというと、そうでもない。たとえば、2013年にNTTドコモが採った“ツートップ”戦略で、「GALAXY S4」まではたいへん好調な売れ行きを記録したが、次の「GALAXY S5」は今ひとつ奮わず、デザインを一新して挑んだ「Galaxy S6 edge」も一時期の勢いを取り戻すことはできなかった。昨年の「Galaxy S7 edge」は待望の防水対応などが評価され、久しぶりのヒットを記録したが、昨年9月にはその流れを止めてしまうアクシデントが起きてしまう。

 そう、「Galaxy Note 7」のバッテリー発火問題だ。結局、国内では発売されなかったが、実は直前まで発売する方向で各社とも準備を進めており、グローバル市場での販売中止を受け、国内の携帯電話事業者も急遽、Galaxy Note 7の発表を見送り、準備していたカタログなどもすべて刷り直したと言われている。こうしたトラブルは国内でも過去に例がなく、関係者の間では「このままでは次期Galaxyも危ないのでは?」などとささやかれていたほどのインパクトだった。

 しかし、今年1月にはバッテリー発火問題の原因を解明し、その内容を全世界に向けてプレスカンファレンスで明らかにし、バッテリーに関する徹底した品質管理を行うことなどをアナウンスしている。その影響もあって、MWC 2017でのお披露目が予測されていた「Galaxy Sシリーズ新モデル」の発表を3月末まで遅らせ、万全の体制で製品を発表することを明らかにしていた。

 そして、3月29日に米・ニューヨークにおいて、プライベートイベント「Unpacked 2017」を開催し、フラッグシップモデル「Galaxy S8」「Galaxy S8+」が発表された。国内向けについては当初、何もアナウンスがなかったが、着実に準備が進められており、5月に入り、auとNTTドコモから相次いで発表された。しかも昨年はGalaxy S7 edgeのみだったが、今年はディスプレイサイズなどが異なるGalaxy S8とGalaxy S8+の2機種が国内向けに投入されることになった。サムスンとしては今回のGalaxy S8とGalaxy S8+をグローバル市場だけでなく、日本市場においても本格的に巻き返しを狙うモデルと位置付けており、その内容もこれまでのGalaxy Sシリーズの系譜にとらわれず、さまざまな進化を遂げ、新しいスマートフォンのスタンダードを目指した“史上最強のGalaxy”に仕上げられている。

Galaxy S8(左)とGalaxy S8+の背面。サイズが異なるだけで、基本的には同じ。NTTドコモ版(右)は中央上寄り、au版は下寄りにそれぞれロゴを表記している

 今回は国内向けに発売されたau向けの「Galaxy S8」、NTTドコモ向けの「Galaxy S8+」をそれぞれ試用することができた。両社で販売されるモデルはモバイルネットワークなどへの対応を除けば、基本的に同じ内容になっており、Galaxy S8+とGalaxy S8もディスプレイやボディサイズ、バッテリーなどを除けば、基本仕様は共通となっている。両機種の共通部分と違いなども含め、解説しよう。

ライバルよりも大画面なのにスリムな未来的デザイン

 今回のGalaxy S8+とGalaxy S8を目の前にして、まず最初に驚くのがそのデザインだ。これまでスマートフォンのデザインと言えば、フラットなスレート(板)状のボディを採用していることもあり、どれも似たような形状になってしまう傾向にあったが、Galaxy S8とGalaxy S8+はGalaxy S6 edgeから続いてきたデュアルエッジデザインをさらに進化させ、机の上などに置いた状態でも非常に存在感のあるデザインに仕上げている。

 前面に搭載されたディスプレイはGalaxy S8+が約6.2インチ、Galaxy S8が約5.8インチで、「Infinity Display」と名付けられており、両側面のデュアルエッジスクリーンだけでなく、上下もこれまでのモデルに比べ、グッと表示エリアが拡げられている。ここ数年、「まるで画面だけを持っているような~」と形容するデザインのスマートフォンがいくつか登場したが、それらを上回るほど、圧倒的にディスプレイの存在感が大きい。ちなみに、本体前面の画面占有率は両機種とも約84%となっており、従来のGalaxy S7 edgeの約76%を大きく上回る。おそらく国内で販売されるスマートフォンではトップクラスの画面占有率と言って、差し支えないだろう。

Galaxy S7 edge(左)とGalaxy S8+を並べてみたところ。ホームキーがなくなり、フラットな前面に仕上げられている

 ただ、ディスプレイが大きくなると、当然のことながら、ボディの持ちやすさが気になるところだ、他のスマートフォンでも「大画面が欲しいけど、手があまり大きくないので、小さい画面の機種を選んだ」といった声を耳にするが、Galaxy S8+とGalaxy S8はそういった言葉を過去のものにしてしまっている。ボディ幅はGalaxy S8+が約73mm、Galaxy S8が約68mmに仕上げられており、約5.5インチディスプレイを搭載した従来のGalaxy S7 edgeのボディ幅が約73mmと比較してもスリムに仕上げられている。ちなみに、iPhone 7は約4.7インチディスプレイで約67.1mm、iPhone 7 Plusは約5.5インチディスプレイで約77.9mm、Xperia XZsは約5.2インチで約72mmとなっており、ライバル機種よりもひと回り大きなディスプレイを搭載しながら、ボディ幅はほぼ同等か、それよりもスリムに仕上げているわけだ。

ボディは高さがほぼ同じだが、幅は狭くなり、ディスプレイサイズはひと回り大きくなった

 他製品を圧倒する大画面ながら、スリムなボディを実現しているのは、縦横比率が18.5:1のディスプレイを採用し、全体的に縦長の形状に仕上げられているためだ。縦方向に伸びた画面は戸惑いそうだが、実際に使ってみると、ブラウザやSNSなど、多くのコンテンツは縦方向にスクロールするものが多く、全体的な情報量が増えるため、快適に使うことができる。逆に、他機種に戻ると、縦方向が足りなく感じられてしまうくらいだ。

 また、本体を横向きにすれば、映像コンテンツなどをより迫力のある画面で楽しむことができる。今回のGalaxy S8+とGalaxy S8に採用されているSuperAMOLED(有機EL)ディスプレイは2960×1440ドット表示が可能で、モバイルHDR(High Dynamic Range)に対応しているため、さまざまなコンテンツを色鮮やかに表示することができる。HDRと言うと、スマートフォンのカメラのHDR機能を思い浮かべるかもしれないが、ディスプレイのHDRは家庭用テレビなどに採用が増えてきた技術で、より広いダイナミックレンジの映像を表示できるという特長を持つ。Galaxy S8+とGalaxy S8に採用されているモバイルHDRは、米国家電協会が定めた「HDR10」規格に対応したもので、HDR対応のコンテンツはAmazonプライムやNTTドコモのdTVで配信され、今後もコンテンツが順次、拡大していく見込みだ。

HDR対応コンテンツはAmazonプライムで配信されており、dTVでもまもなく配信がスタートする予定

 ボディ全体の形状としては、一見、従来のGalaxy S7 edgeと同じように見えるが、背面側の形状が変更され、前後面がシンメトリー(対称的)な形状で仕上げられている。そのため、手に持ったときのフィット感が前述のボディ幅とも相まって、非常に良く、全体的にも未来感のある新しいデザインとしてまとめられたという印象だ。ちなみに、従来モデル同様、本体にはオプションのカバーが純正でも用意されており、NTTドコモとauのそれぞれのアクセサリーとして販売される。映像コンテンツを視聴するとき、スタンドとして使えるCLEARVIEW STANDING COVERが中心だが、グローバル向けには純正でアルカンターラ素材を採用したケースなど、さまざまなバリエーションがラインアップされており、これらも国内向けに販売されることを期待したい。

Galaxy S7 edge(左)に比べ、Galaxy S8+のディスプレイは格段に表示エリアが広い
Galaxy S8+(左)とGalaxy S7 edgeの背面。縦方向に長くなったが、幅はまったく同じ
背面のカメラ部を比べてみると、Galaxy S7 edge(右)に比べ、周囲の枠も高さが抑えられている。カメラ部の隣には指紋認証センサーとフラッシュが備えられている
Galaxy S8+の右側面には電源キーのみが備えられる。デュアルエッジの部分に備えられているため、電源キーそのものも薄い。Galaxy S8と同じレイアウト
Galaxy S8+の左側面には上端側に音量キー、そのすぐ下にBixbyキーが備えられている
Galaxy S8+の下面には3.5mmイヤホンマイク端子、USB Type-C外部接続端子が備えられている。キャップレス防水なので、安心して使える
Galaxy S8+のSIMカードはトレイ式を採用。microSDメモリーカードはトレイに載せるというより、枠にはめるようにして固定するため、少し慣れが必要
Galaxy S8もSIMカードトレイを採用。microSDメモリーカードは枠にはめ込むようにして固定する

進化を遂げたユーザビリティ

 Galaxy S8+とGalaxy S8の外見で、もうひとつ眼をひくのが従来のGalaxyシリーズで採用されてきたハードウェアキー(物理キー)によるホームキーがなくなっていることが挙げられる。GalaxyシリーズではGalaxy SシリーズやGalaxy Noteシリーズ、Galaxy Aシリーズなど、ほとんどのモデルで前面に物理キーによるホームキーが備えられ、Galaxyシリーズの特長のひとつとして認識されてきた。しかし、今回のGalaxy S8+とGalaxy S8ではハードウェアキーをなくし、その代わりに画面内にナビゲーションキーを表示する仕様に切り替えている。ハードウェアキーをなくすことで、画面を一段と広く利用でき、破損や故障などのトラブルも少なくできるなどのメリットがあることに加え、Androidプラットフォームの標準的なユーザービリティに近づけるという側面もある。

ホームキーがなくなり、ナビゲーションキーはソフトウェア表示に変更されたが、ホームキーの位置には感圧式センサーを内蔵し、ハプティクス機能による反応が得られる

 ホームキーなどのナビゲーションキーをソフトウェア表示にすると、実際にタッチできたかどうかがわかりにくいこともあるため、Galaxy S8+とGalaxy S8では内部に感圧式センサーを内蔵。ハプティック技術によるフィードバック(振動)を伝える仕様を採用している。さらに、Galaxyシリーズのナビゲーションキーは中央のホームキーに対し、左に履歴キー、右に戻るキーというレイアウトを採用していたが、ソフトウェア表示に切り替わったこともあり、左右の履歴キーと戻るキーを入れ替えられるようにしており、他機種から乗り換えるユーザーもスムーズに順応できる環境を整えている。

 また、Galaxyシリーズは従来から「TouchWiz」と呼ばれるホームアプリを採用してきたが、今回はTouchWizも使い勝手が変更されている。ホームにアプリ一覧ボタンが表示されなくなり、上方向へのフリックでアプリ一覧が表示される。アプリ一覧が一画面に収まらないときは、左右方向にフリックすることで、ページを切り替えて表示できる。ホームからの画面遷移については、右方向へのフリックで後述する「Bixby Home」、左方向へのフリックでホームの続きを表示でき、ショートカットなどを貼り付けておくことも可能だ。画面が縦方向に長くなったことを考慮しての仕様変更と推察されるが、ボタンからアプリ一覧ボタンを呼び出すスタイルは、今後、Android標準でも少なくなると見られ、Galaxy S8+とGalaxy S8としてはそのトレンドをいち早く対応したという印象だ。

Galaxy S8+(NTTドコモ)のホーム画面。上方向にフリックすると、アプリ一覧が表示される
アプリ一覧は横方向に画面単位でスクロールする仕様。最上段から検索も可能
NTTドコモ向けは「docomo LIVE UX」と「Touch Wizホーム」を選択可能
au向けは「auベーシックホーム」と「Touch Wizホーム」を選択可能
「ホーム画面のみ」を選ぶと、ホーム画面にアプリのアイコンが表示される。「ホーム画面とアプリ画面」を選ぶと、ホーム画面とアプリ画面が別々に表示される
出荷時設定はホーム画面で上方向にフリックすると、アプリ一覧が表示されるが、従来モデル同様、アプリ一覧を表示するためのボタンを別途、表示することも可能
従来モデルから継承したエッジスクリーン。よく使うアプリや連絡先をすぐに表示できる
ナビゲーションキーは並び順を変更できる。他機種からの乗り換えのユーザーも使いやすくなる
Galaxy S8+の指紋認証センサーはカメラ部の横に備えられている。指紋認証でレンズに触れてしまうことが多いので、撮影時にはきれいにするように心がけたい
指紋の登録は対話形式でわかりやすい。カメラのレンズを汚さないようにするためのガイドも表示

 ホームキーがソフトウェア表示に切り替わったことで、従来モデルではホームキーに内蔵されていた指紋認証センサーは背面のカメラ部横に移動している。背面に指紋認証センサーを備える機種は増えているが、カメラ部の横というレイアウトは好みの分かれるところだろう。たとえば、筆者のように、手が大きいユーザーの場合、片手で持ったとき、背面に伸ばした人さし指がGalaxy S8では普通に届くのに対し、Galaxy S8+ではようやく届くというサイズ感だ。手のあまり大きくないユーザーは端末を持ち替えないと、指紋認証センサーにタッチできないかもしれない。

 その代わりというわけでもないが、Galaxy S8+とGalaxy S8にはもうひとつの生体認証として、虹彩認証が搭載されている。国内向けでは富士通製arrows NXシリーズでの採用が知られているが、サムスンとしては昨年のGalaxy Note 7で採用した実績があり、今回はそれを継承する形となる。認証のレスポンスはかなり高速で、虹彩を登録してあれば、端末の前面に顔を持ってくるだけで、瞬時にロックが解除される。ただし、虹彩認証は眼鏡やカラーコンタクトレンズなどを装着しているとき、正しく動作しないケースがあるため、その場合は他の認証方法を利用する必要がある。

虹彩認証の設定画面は対話形式で、画面で内容を解説してくれる
虹彩認証でロックを解除するときは、画面の上段部分にカメラのプレビューが表示される
虹彩認証の説明画面。視覚的でわかりやすい
虹彩認証のプレビュー画面は着せ替えにも対応する
実際に、着せ替えを設定して、虹彩認証でロック解除を試みたところ

 ややセキュリティが低くなってしまう面もあるが、顔認証を利用することも可能だ。顔を登録しておけば、ロック画面を解除できるというもので、虹彩認証と変わらないほどのレスポンスでロックを解除することが可能だ。この3つの認証のうち、虹彩認証と顔認証が排他利用になるが、季節や状況に応じて、使い分けることもできる。たとえば、普段は指紋認証センサーだが、冬場は手袋を使っているので、虹彩認証や顔認証を利用するといった使い方ができるわけだ。ちなみに、dアカウントの生体認証をはじめ、FIDO対応の認証として利用できるのは、現時点で指紋認証のみで、虹彩認証や顔認証は対象外となっている。

 日本のユーザーにとって、ユーザビリティで気になるものと言えば、日本語入力が挙げられる。Galaxy S8+とGalaxy S8には従来からGalaxyシリーズで採用されてきたオムロンソフトウェア製の「iWnn IME for Galaxy」が搭載されている。辞書登録や予測変換のカスタマイズ、キーサイズの変更、バックアップと復元など、ユーザーの利用環境に応じたカスタマイズが可能だ。従来モデルに引き続き、日本語入力では8方向フリックもサポートされており、記号などを含めた文字入力が使いやすくなっている。ちなみに、個人的に従来モデルから気になっていた事象として、テンキーでの日本語入力時、左列の[あ]や[た]の左方向へのフリックが左斜め下方向や下方向へのフリックとして認識されてしまうことが多く、今回のモデルでもあまり変わっていない印象を受けた。同じ使い方でも他機種では正しく入力できており、デュアルエッジスクリーンのクセなのか、筆者の手との相性なのかは何とも言えないが、今後もユーザーの声をピックアップして、ブラッシュアップを続けて欲しいところだ。

日本語入力はiWnn IME for Galaxyを採用。さまざまな機能をカスタマイズできる
日本語入力と英数字入力を併用できる8方向フリック入力
キーボードは自分の使い方に合わせ、サイズや外見などをカスタマイズすることが可能
端末のメンテナンス機能も搭載され、メモリーの最適化などができる

 そして、ユーザビリティのベースとなるスペックは、ベースバンドチップセットに10nmプロセスで製造されたクアルコム製の「Snapdragon 835」(MSM8998、オクタコア)を採用し、4GBのメモリーと64GBとストレージを搭載。最大256GBまでのmicroSDメモリーカードに対応する。バッテリーはGalaxy S8+が3500mAh、Galaxy S8が3000mAhのものを搭載しており、ワイヤレス充電と急速充電に対応する。ワイヤレス充電についてはサムスン製の「折りたたみ式ワイヤレス充電器」も販売される予定だが、最近では市販のサードパーティ製ワイヤレス充電器も数多く販売されており、自宅とオフィス、出張用など、複数のワイヤレス充電環境を整えやすくなっている。

 また、本体はIPX5/IPX8の防水、IP6Xの防じんに対応しており、下面のUSB Type-C外部接続端子はキャップレス防水となっている。濡れた状態でのケーブルの抜き差しは注意が必要だが、水を扱うことが多い場所でも安心して利用することができる。

 ちなみに、Galaxy S8+とGalaxy S8はディスプレイサイズやバッテリー容量などを除けば、基本的に共通仕様となっているが、モバイルネットワークの対応にも少し違いがある。auの場合はどちらを選んでも受信時の最大速度が590Mbpsとなっているが、NTTドコモの場合はGalaxy S8+が受信時最大788Mbpsであるのに対し、Galaxy S8は受信時最大500Mbpsまでとなっている。これは両機種で内部に実装されたアンテナの仕様に違いがあり、対応するバンド(周波数帯)の関係上、Galaxy S8+のみが受信時最大788Mbpsとなっている。788Mbpsでの利用は今年の8月以降にソフトウェア更新をすることで可能になるが、利用できるエリアは東名阪の一部に限られており、それ以外のエリアのユーザーはあまり気にしなくてもいいという見方もできる。もっともauについても今後、ソフトウェア更新などで受信時最大速度が向上することも十分に考慮されるため、ネットワークの速度を最優先で考えるなら、Galaxy S8+を選ぶべきという考え方もある。

暗さにも動きにも強いGalaxy史上最強のカメラ

 Galaxyシリーズと言えば、いち早く最新の技術に対応したり、快適なユーザビリティを実現することで、グローバル市場でも高く評価されてきたが、筆者が個人的に昨年のGalaxy S7 edge以降、高く評価しているのがカメラだ。スマートフォンのカメラにはいろいろな方向性があり、各メーカーごとにこだわりがあるが、Galaxy S7 edgeのカメラは暗いところでも明るく撮影ができ、発色も非常に良く、いわゆる「SNS映え」のする写真を撮ることができる。

背面に備えられたデュアルピクセルセンサーによるカメラ。センサーの仕様は従来モデルと共通だが、画像処理などは最新のソフトウェアが搭載されているという

 今回のGalaxy S8+とGalaxy S8のメインカメラには、Galaxy S7 edgeに続き、1220万画素の「デュアルピクセル技術」を採用したCMOSセンサーを採用する。デュアルピクセル技術については昨年のGalaxy S7 edgeのレビューでも解説したが、少しおさらいをしておこう。多くのスマートフォンのカメラはオートフォーカスシステムとしてコントラストAFに対応するが、最近は位相差AFにも対応するものが増えている。この位相差AFを実現するため、カメラの心臓部であるイメージセンサーには位相差センサーが組み込まれているが、実は多くのスマートフォンで作用されているイメージセンサーには画素全体の1%程度しか位相差センサーがないため、被写体の状態によっては、オートフォーカスの速度が遅くなってしまうケースがある。

 これに対し、デュアルピクセル技術によるイメージセンサーは、画素を2つのフォトダイオードで構成し、それぞれの画素が取り込んだ光信号を基に、位相差オートフォーカスを機能させている。そのため、すべての画素でピント合わせが行なわれるため、高速なオートフォーカスを実現するというわけだ。ちなみに、このデュアルピクセル技術はキヤノンのEOSシリーズなどのデジタル一眼レフカメラのイメージセンサーに採用されていることから、サムスンとしては広告などで“デジタル一眼レフカメラ技術搭載”と表記している。レンズについてもF1.7のものを組み合わせており、暗いところや夜景なども美しく撮影することができる。スマートフォンのカメラについてはさまざまなシチュエーションで撮影を試してきたが、今回のGalaxy S8+とGalaxy S8は筆者が個人的にもっとも重視している暗いところでの撮影に非常に強く、現時点でもっとも評価できる2台だと言える。

撮影サンプル(リンク先は無加工)
いつもの薄暗いバーでのワンショット。中央のウイスキーのボトル、後ろのタンブラーのメタル感なども美しく映し出せている。スマートフォンのカメラで、これだけ撮れる機種は非常に少ない
屋外での撮影。スマートフォンのカメラとしては周囲の歪みも少なく、きれいに撮影できている

 従来のGalaxy S7 edgeと比べて、基本仕様を継承し、画像処理エンジンを強化するなどのリファインを図ったメインカメラに対し、大きく改良されたのがディスプレイ側に装備されたサブカメラだ。最近のスマートフォンは美しい自撮りを実現するため、さまざまな工夫を盛り込んでいるが、Galaxy S8+とGalaxy S8は800万画素のイメージセンサーに、メインカメラと同じF1.7の明るいレンズを組み合わせ、サブカメラ初のオートフォーカスにも対応する。実は、多くのスマートフォンのサブカメラ(インカメラ)はレンズから30cm~50cm程度の位置にピントが合うように調整されており、腕をいっぱいに伸ばして、少し斜めに人が並んだ写真を撮ると、もっとも離れた位置の人はあまりピントが合わず、ぼんやりした写真になってしまうことが多い。しかし、Galaxy S8+とGalaxy S8であれば、さまざまな角度や位置の自撮りでもしっかりとピントが合った写真が撮れるわけだ。

リアルタイムフィルターを使えば、被写体の顔に合わせ、さまざまな装飾が可能

 また、自分撮りでも他人を撮るときでも同じだが、スマートフォンならではの工夫として、肌などを補正して撮影できる機種が増えている。Galaxy S8+とGalaxy S8ではサブカメラに「美顔モード」を搭載しており、肌の色合いや眼の大きさ、顔のスリムさなどを補正できるようにしている。メインカメラとサブカメラの両方で利用できる補正機能としては、「美肌モード」が用意されており、肌の色合いを調整することが可能だ。

 さらに、人物などを撮影するとき、顔などに飾り付けやフェイスマスクを設定できる「リアルタイムフェイスフィルター」という機能も利用できる。現在、若い世代を中心に人気のアプリ「SNOW(スノー)」と同様の機能を取り込んだものだが、単純に撮影するだけでなく、虹彩認証の認証画面にもエフェクトを表示できるようにするなど、広く応用されているのも面白いところだ。

リアルタイムフィルターはサブカメラの自分撮りだけでなく、メインカメラでの撮影や複数の人も同時に認識して、装飾ができる
Bixbyをはじめて起動したときに表示される画面

 そして、カメラとの連携も含まれた機能として、Galaxy S8+とGalaxy S8にはアシスタント機能「Bixby(ビクスビー)」が搭載されている。サムスンとしてはスマートフォンを便利に活用するためのインテリジェントなアシスタント機能と位置付けており、今回は「Bixby Home」と「Bixby Vision」の2つが提供される。Bixby Homeはユーザーの位置情報、時間、カレンダーに登録されたスケジュールなど、スマートフォンで扱うさまざまな情報に基づき、的確な情報をユーザーに対して、リマインドしてくれるというものだ。

 Bixby Visionはさまざまなものにカメラを向けることで、その対象物に関する情報得ることができる。たとえば、街中で見つけた気になる商品にカメラを向ければ、その商品に関する情報をオンラインで検索したり、旅先で観光スポットにカメラを向ければ、その場所がどんなところなのかを知ることができる。検索対象は買い物、場所、画像、ワイン、テキスト、QRコードなどとなっている。商品情報をカメラで検索する機能はAmazonのアプリなどでも実現されているが、それ以外の情報も含めて検索できるのはあまり例がなく、なかなか便利だ。ワインについては残念ながら英語表記のままだが、ワイン情報アプリとして知られている「vivino」と連携しており、そのワインの生産地や合う食事なども表示される。Bixbyの今後の進化とユーザーの活用シーンの拡大が期待される。Bixby Visionはカメラを起動して、呼び出すこともできる。

 ちなみに、リマインダーについても時間や場所の情報に基づいた登録が可能になっている。たとえば、「自宅に帰ったら、○○さんに電話する」といった登録ができるため、今まで以上に便利に活用できるようになりそうだ。

Bixby HOMEでは現在地やスケジュールなどに合わせた情報が表示される。使い方によっては、もうひとつのホーム画面のような存在になりそうだ
Bixby Visionはワインの銘柄と評価を調べることができる

次なるスマートフォンの進化を目指したGalaxy S8+とGalaxy S8は「買い」!

 国内向けにNTTドコモからGALAXY S SC-02Bが発売されてから、6年半が経過する。その間にGalaxyシリーズはもちろん、各社のスマートフォンも完成度が高められ、市場の半数を超えるところまで普及が進んできた。ユーザーはスマートフォンを手にしたことで、さまざまな新しい発見や体験をすることができたが、最近は製品の完成度とサービスなどの充実もあり、市場が成熟し、「もう新しいと思えることはないのでは?」といった見方も散見されるようになってきた。

 しかし、今回のGalaxy S8+とGalaxy S8と手にすると、そんな不安が杞憂ではないかと感じさせられる。Infinity Displayによる新しい映像体験をはじめ、未来的なデザインのボディ、Bixbyによるインテリジェントなアシスタント、さまざまなシーンでの美しい撮影が楽しめるデュアルピクセルカメラ、ユーザービリティを向上させた新しいユーザーインターフェイスなど、スマートフォンをリードしてきたGalaxyならではの進化が随所に盛り込まれている。この他にもGear VRによるVR体験、Gear 360による360度撮影など、オプション類でも新しいGalaxyの可能性を拡げられるようにしているのもユーザーとして楽しみなところだ。スマートフォンの新しい世界、新しい可能性を拡げるモデルとして、Galaxy S8+とGalaxy S8を手に取って、ぜひ楽しんでいただきたい。

Galaxy S7 edge、Galaxy S8、Galaxy S8+を並べてみた。基本デザインを継承しながら、Infinity Displayでより未来的な外観に進化を遂げている

法林 岳之

1963年神奈川県出身。携帯電話・スマートフォンをはじめ、パソコン関連の解説記事や製品試用レポートなどを執筆。「できるゼロからはじめる iPhone 7/7 Plus超入門」、「できるゼロからはじめるAndroidスマートフォン超入門」、「できるポケット HUAWEI P9/P9 lite基本&活用ワザ完全ガイド」、「できるWindows 10b」、「できるゼロからはじめる Windows タブレット超入門 ウィンドウズ 10 対応」(インプレス)など、著書も多数。ホームページはこちらImpress Watch Videoで「法林岳之のケータイしようぜ!!」も配信中。