iPhone駆け込み寺
コミュニケーション機能がいろいろ強化されてる「iOS 17ベータ版」を試してみた
2023年7月25日 00:00
正式版が今秋公開予定の次期iOS、「iOS 17」のパブリックベータが公開された。注目の機能をいくつかピックアップし、取材に基づく許可を得た上で実機で試した内容をご紹介する。
なお、パブリックベータは、参加登録すれば誰でも簡単にインストールできるが、普通の人が使うものではない。ベータ版は未完成なので、アプリや周辺機器と互換性がないことがあるし(開発者が互換性を確認するためのベータ版である)、ときとしてiPhone自体が使い物にならなくなることがある。
複数の端末を所持し、そのうち1つを使えない状態にしてでもベータ版を試したい、という筆者のような人以外は、正式版の公開を待とう。ベータ版にアップデートしてしまうと、元に戻すのは難しい。
今回レビューするのは、Public Beta版のiOS 17だ。ベータのナンバリングはないが、Developer Betaが先行してリリースされているので、完全な初期版ではないと思われる。しかし、一部機能が未実装だったり、見た目や機能なども正式版と異なる可能性があるのでご注意いただきたい。
なお、watchOSについては、まだパブリックベータが公開されていないようで、ベータ版へのアップデートはできなかった。「iPadOS 17」は公開されていて、筆者もインストールしてみたが、主な変更点はiOS 17と共通のコミュニケーション関連なので、とくに取り上げない。
ちなみに、ほぼ同じタイミングで「iOSセキュリティ対応 16.5.1(c)」というアップデートが配信されている。ちょっと変なバージョンナンバーだが、これは緊急のセキュリティ対応なので、パブリックベータを利用しない人も、“ナルハヤ”で適応しよう。
アップデートの目玉はコミュニケーション機能
アップル公式Webサイトに掲載されている「iOS 17プレビュー」のページでは、「電話」と「メッセージ」、「ステッカー」、「FaceTime」といったアップル純正コミュニケーションアプリの新機能が大きく掲載されている。このあたりのコミュニケーションアプリの強化がiOS 17の目玉という扱いだ。
まず、「ポスター」という新機能。
自分自身の「ポスター」を作って連絡先に登録しておくと、電話をかけたとき、相手の着信画面に表示される。「ポスター」は背景となる写真やミー文字、表示する文字の色なんかを設定できる。アイコン類なども表示されるので、試行錯誤して上手い表示になるポスターを作るのが楽しそうだ。
といってもこれ、着信した側のアドレス帳データを参照しているので、誰にでも電話をかければ表示されるというものではなく、あらかじめ「ポスター付きの連絡先」を交換しておく必要がある。
ポスターを含む自分自身の連絡先データ(マイカード)には、「自動的に共有」や「自動アップデート」といった新しい設定項目が追加されているので、なんらかの方法で変更が反映されると思われる……が、筆者のメインのApple IDでは、この設定画面に入れなかった。後述の「NameDrop」含め、このあたりは現状のベータ版では未完成ということだろう。
「メッセージ」アプリは、UIが変更されてステッカーや位置情報を送信しやすくなったほか、未読部分へのジャンプ、検索機能強化、オーディオメッセージの書き起こし、といった細かい機能強化も入っている。
「メッセージ」アプリの位置情報共有は、送信した瞬間の位置を送るのではなく(それも可能)、1時間/翌朝/無期限といった期間限定で自分の場所を追跡できるようにするという機能だ。友人との待ち合わせで、場所を指定するのではなく、「先に行くけど位置情報共有するから追いついて!」といった使い方が想定される。
なかなかに便利だが、iOS 17でも標準規格のRCSには対応しないようで、iMessageでしか完全には使えないことになる。
メッセージで使える「ステッカー」は、オリジナルのものを作成できるようになった。写真ライブラリから被写体を自動で切り出してくれるので、簡単なステッカーならば一瞬で作れる。簡単なエフェクト追加もできるが、文字とかは書き込めないので、スタンプ的に使うにはちょっとした表現力が必要かもしれないが、けっこう遊べそうな機能である。
ほかのアプリでも、絵文字が使えるならステッカーが使えるようになるという。
AirDropは「近づける」ことで送信可能に
iPhoneを、ほかの人のiPhoneもしくはApple Watchに近づけたとき、自身の連絡先を交換できる「NameDrop」という機能が追加されている。
使い方がとにかく簡単で、ロック解除したiPhone同士を近づけるだけで、共有するかどうかの確認画面が表示されるので、そこで「共有」をタップするだけで良い。
交換されるのは「電話」アプリの「連絡先」の一番上にある「マイカード」になる、と思われる。ただし、今回のパブリックベータでは、ポスターとアイコン用の画像と氏名、メインのメールアドレスしか共有できず、共有範囲を設定する項目も見つけられなかった。
まだ未完成のようだが、使いこなせばかなり便利そうなので、正式版では使いやすく実装されていることを期待したい。
このほかにも、iPhoneを近づけるだけでAirDropの送信先とする機能が追加されている。
iOS 16ではAirDropの受信設定は「受信しない」「連絡先のみ」「すべての人(10分間のみ)」の3つしか選べなくなっている。連絡先にない人からAirDropを受け取る場合、一時的に「すべての人(10分間のみ)」を選択してから送ってもらう、ということになるが、iOS 17ではAirDropを送信する際、送りたい相手のiPhoneに自分のiPhoneを近づけるだけでいい。お互いの連絡先が登録されていない状態でも、AirDropの送信先とすることが可能になった。
「NameDrop」も同様だが、このときの近づける必要のある距離は本当に近く、“iPhone同士が接触するような距離”に数秒とどまらないと反応しない。近くにiPhoneを検出したときの画面エフェクトやハプティックフィードバックもわかりやすく、いたずらや誤送信はかなり防げそうだ。
この近づけるだけでAirDropの送信先にできる機能、接客業や学校など、連絡先を交換しづらい環境でファイル交換するときに便利な機能となるだろう。
スマートディスプレイになる「スタンバイ」機能
iOS 17では、iPhoneを横向きにする充電スタンドで充電する際、待ち受け画面が専用のものとなる。これは「スタンバイ」という新機能で、時計を大きく表示したり、カレンダーや天気を表示したりと、iPhoneを置き時計やスマートディスプレイのように使うための機能だ。
スタンバイの表示は何種類かある。ベータ版のデフォルト設定だと、1ページ目がウィジェット(左右に1つずつ)、2ページ目が写真アルバム表示、3ページ目が時計表示となり、左右スワイプで切り替えることができた。
表示させるウィジェットは、上下スワイプで選択できるが、ここで選択できるウィジェットを追加/削除することもできる。「スタンバイ」に表示できるウィジェットは、ホーム画面向けのものと共通のようだが、「スタンバイ」用に最適化されているものが優先的にリストに表示される。確かに、表示サイズが縦横2倍ずつになるので、最適化されてないとデカいだけで使いづらそうではある。
スタンバイ表示中、Siriを使うと、返答はちゃんと横画面に合わせた表示となる。iPhoneを手に持って使うときよりも大きめの表示となるので、卓上や枕元に置いたままでも使いやすくなっている。
さらに「スクリーン」には「ライブアクティビティ」をフルスクリーン表示させることもできるようだ。
「ライブアクティビティ」はiOS 16で追加された待受画面専用のウィジェットで、「フードデリバリーサービスの配達状況を確認する」、「プロスポーツ試合のスコアを確認する」といった用途に使われている。正直、対応アプリがまだ少なくて使われていない機能だが、活用できるシーンが増えることで、対応アプリが増えるという好循環につながることを期待したい。
らくらくアイフォーン? 「アシスティブアクセス」
アクセシビリティ系の機能としては、新たに「アシスティブアクセス」という機能が追加されている。これは操作や表示が極端にシンプルになるモードだ。
アシスティブアクセスに切り替わると、ホーム画面だけでなくロック画面もシンプルなものとなり、コントロールセンターや通知センターは使えなくなる。
また、スクリーンショットは撮れず、音量ボタンを無効にしたり、通知音を鳴らなくしたり、Siriを使わないようにも設定できる(Siriはデフォルトで無効)。ホーム画面は大きなアイコンによる表示だけでなく、リスト表示にも対応する。
アシスティブアクセスは、初期設定時にApple IDパスワードが必要だったり、オン/オフに専用パスコードが求められたりと、簡単には切り替えられないようになっている。
アップルは、このアシスティブアクセスについて、「認知に関する障がいがある方をサポート」としている。いろいろな機能が制限されるので、普通の高齢者をターゲットとするシニア向けスマートフォンなどとはちょっと異なるように感じられる。
アクセシビリティ系機能としては、ユーザーの声を取り込み、そっくりの声で音声を作れる「パーソナルボイス」という機能が搭載される。発話に障がいがある人が、入力した文字を自分に似た声で読み上げるという、という使い方をするようだ。
同様の機能は、パソコン向けのアプリ/サービスでもあるが、スマートフォンが標準搭載するのはちょっと面白い。しかし残念ながら、執筆段階では日本語が試せなかったので、筆者も試していない。
ちなみにサンプリングに15分くらいかかるようだ。
iOS 17、細かな部分での改善が多数
今回ご紹介したような細かい部分の改善は、使っている人には便利なものが多い。今回試せていないような細かい改善点はまだまだたくさんある。
小さくない新機能としては、「ジャーナル」という、まったく新規の日記アプリが追加される。こちらは「年内に登場」となっていて、iOS 17の初期リリースには含まれない見込みだ。現状のベータ版にも含まれていない。
iOSではここ数年、ホーム画面ウィジェットやロック画面カスタマイズ、Appライブラリなど、基本となるUI周りで大きな追加・変更が続いていた。しかし、今回のiOS 17はというと、そういった基本部分の追加や変更は少なく、コミュニケーションアプリ関連やAirDropの改良など、細かい部分の改善が多い。
なお、iOS 17では「iPhone 8/8 Plus/X」の3モデルがアップデート対象外となる。いずれのモデルも「A11 Bionic」搭載だ。今回ご紹介したような機能というよりも、機械学習処理などの負荷が影響している可能性はある。対象外の機種を使っている人は、今後、新たな世代への買い替えを検討してもよいだろう。