「F-04B」レビュー

携帯が分離する“セパレートスタイル”の可能性


F-04B

 NTTドコモの富士通製FOMA端末「F-04B」が3月26日に発売された。同端末は、ディスプレイ部とキー部分が分離するという、ユニークな構造を採用した端末となっている。端末が分離することで、さまざまな利用方法にも期待されるところだ。本稿では「F-04B」の使用感などをお届けする。

外観

 F-04Bは、タッチパネル液晶を搭載したディスプレイユニットと、QWERTYキーと通常の携帯電話の数字キーが搭載されたキー部分のユニットに分割できる“セパレートスタイル”を採用したFOMA端末。

 ディスプレイユニットに携帯電話としての機能が搭載されており、そこにBluetooth対応のキーユニットが脱着できる構造となっている。ディスプレイユニットには、約3.4インチ、480×960ドット、1677万7216色表示のTFT液晶を搭載。タッチパネルは静電容量式を採用する。ディスプレイの上部に受話口やテレビ電話、自分撮り用の32万画素CMOSカメラ、外光を検知して画面の明るさを自動調整する光センサー、着信ランプなどが配されている。

 ディスプレイ下部にはフロントキーとして、電源ON/OFFおよび機能の終了キーと、1つ前の画面に戻る「CLR」キーがある。周辺には送話口などもある。

 背面部のカメラ機能は約1200万画素CMOS。その横に赤外線通信ポート、撮影時に点滅するお知らせランプなどがある。これらのユニットは凸形状になっており、キーユニット装着時に背面がフラットになる。

 カメラ部の下にはおサイフケータイのマークがある。FeliCaの試験はディスプレイユニット単体で通過しており、その構造上、キーユニットを装着した場合に若干感度が悪くなる。富士通では、キーユニット装着時もおサイフケータイが利用できるとしている。

 このほか、バッテリーカバーの下には、キーユニットや別売のプロジェクターユニットが接続できるユニット接続端子が用意されている。

 ディスプレイユニットの外周には、側面部に誤操作防止用のロックキー、もう一方の側面部に外部接続端子がある。外部接続端子は外部接続端子用イヤホン変換アダプタを装着してイヤホンが接続できる。ユニット上部にはワンセグ用のアンテナが収納されており、下部にはキーユニットを分離する際に押下するセパレートボタンがある。



キーユニット

 キーユニットには、QWERTY配列のフルキーボードが搭載されている。このキーをスライドさせると携帯電話の操作キーや数字キーが現われる。キーユニットは、ディスプレイユニット装着時には、一般的なスライド式端末となるため、フルキーは利用できない。

 分離させるとBluetoothキーボードとなり、キーユニット単体ではフルキーとしても携帯電話の数字キーとしても利用できる。フルキーはゲームアプリ用のキーパッドとして利用しやすいよう、キーが色分けされている。フルキーのF1~F4ボタンは、携帯電話の方向キー左右にある、4つのボタンと同じ役割を果たす。BluetoothはVer.2.0+EDRに対応し、HFP/HSP/DUN/OPP/A2DP/AVRCP/SPP/HIDの各プロファイルをサポートする。ユニット分離時はBluetoothキーボードとHFPおよびHSPが同時に利用できない。

 また、ディスプレイユニット、キーユニットの双方で通話が可能。キーユニットで通話しながらディスプレイユニットを操作するといった使い方も可能となっている。このほか、加速度センサーも両ユニットに搭載されている。

 キーユニットの側面部には、iウィジェット/TVキー、クイック検索機能用のサーチキー、カメラキーが配されている。もう一方の側面部にはストラップの取付口がある。キーユニット背面部には、カメラ用のライトやバッテリーなどが搭載されており、ディスプレイユニットとキーユニットの双方にバッテリーが搭載されている格好だ。バッテリーの形状は異なるが、いずれも容量650mAhとなる。

 このほか、上部には脱着時に光で知らせるランプが用意されている。

利用スタイル

 F-04Bでは、ディスプレイユニットとキーユニットが分離することで、従来の携帯電話よりも幅広い利用スタイルが楽しめる。

 キーユニットを装着したままスライド式端末として、ディスプレイユニットだけで利用するフルタッチの端末として、ディスプレイを見ながらキーユニットを操作リモコンとして利用するスタイルなどもすぐに想像つくところだ。ディスプレイユニットだけで利用する場合、キーユニット側を携帯型充電器としても利用可能だ。

 なお、通話中に分離させると「通話ランチャー」が起動する。これは片手操作しやすいよう大きなアイコンが表示されるモードとなる。通話しながらメールを送信したり、電話帳やスケジュールの確認、カメラ撮影やワンセグ視聴、iモードやフルブラウザなども利用できる。

 また、ディスプレイユニットを机など安定した場所において、キーユニットで離れた場所からカメラのシャッターをきったり、テレビ電話時に周囲に音が聞こえてしまうスピーカーホンにせずに、画面を見ながら通話したりといったことも可能だ。

 さらに、F-04Bに対応する小型のプロジェクターユニットもオプション販売され、この場合もキーユニットをリモコンとして利用できる。富士通では、こうしたアクセサリーなども充実させていきながら、“セパレートスタイル”の取り組みを進めていくとしている。

タッチ機能

 ディスプレイユニットが単体で携帯電話となっているため、タッチ操作用のさまざまな機能が用意されている。待受画面をタッチすると、カメラやワンセグ、未読メールなど、よく使う機能がまとめて表示される待受ランチャーが利用できる。

 また、タッチ操作に非対応のアプリ向けにバーチャルキーが表示される。方向キーだけでなく、数字キーなども表示できる。メニューリストのアイコンにも大きなものが使われている。

 ただし、ディスプレイユニット単体での文字入力については、若干慣れが必要な印象だ。


文字入力画面は行を選んだ上で、文字を選ぶ

 ソフトウェアキーでたとえば「ふ」を入力する場合、「あかさたなはまやらわ」の各頭の行から「は」選び、指を離して「は、ひ、ふ、へ、ほ、M、N、O、6」の中から「ふ」の部分をタッチする。ハードキーのように「は」を3つ押そうとしてしまったり、iPhoneなどのようにタッチしたまま十字に文字選択候補が表示されるのを待ってしまったり、新しい文字入力方法に指が戸惑うような感覚が残った。長文などの入力にはやはり、キーユニットを利用するのが現実的だろう。

 ちなみに文字入力システムはATOKとなる。手書き文字入力機能も用意されており、認識率の高い安定した文字入力が可能となっている。手書き文字入力では絵文字なども選べる。


認識率の高い手書き入力機能文字入力システムはATOK

カメラ機能

 メインカメラは1220万画素のCMOSとなり、レンズは35mmフィルムカメラ換算で28mm相当の広角寄りのレンズを搭載する。オートフォーカス機能のほか、手ブレ防止機能「トリプルブレガード」なども利用可能。

 また、モルフォの被写体追尾技術を使った被写体を追いかけてピントを合わせる「トラッキングフォーカス」機能も用意されている。このほか、顔認識機能も用意されており、あらかじめ登録された顔を認識して、優先的にピントを合わせる機能など用意されている。

 画像処理エンジンは、Milbeaut Mobile(ミルビュー・モバイル)エンジンを採用する。ISO25600相当の「高感度撮影モード」も利用可能で、Milbeaut Mobileエンジンによるノイズリダクション処理された画像が得られる。ただし、高感度モードの撮影可能サイズは1080×1920ドットとなる。

 カメラはこのほか、光の反射を抑えて撮影できる「ホワイトボード撮影モード」、瞳を検出して大きくし、肌の色をより美しく見えるよう調整する「美肌+ひとみ強調モード」、笑顔を認識して撮影できる「スマイルファインダー」機能なども用意されている。

 タッチパネル液晶を活かして、撮影した画像に手書きコメントが付加できる「手書きスナップ」機能なども用意されている。逆光などで暗く写ってしまった部分のみ明るく調節する「局所コントラスト」機能なども利用可能だ。


3000×4000ドットの撮影サンプル。リンク先は無加工

加速度センサー、ワンセグ、セキュリティ機能など

ワンセグ用アンテナ

 加速度センサーを搭載し、地図表示やナビゲーションアプリでは自分が向いている方向が上に向くヘディングアップ機能に対応する。加速度センサーによって画面の縦横も自動で判別するほか、iモードブラウザなどの利用時に、カメラキーを押しながらディスプレイを傾けると傾きに合わせてスクロールさせる「オートスクロール」機能が利用できる。

 センサーを利用した歩数計やエクササイズカウンター、カメラを利用した脈拍測定機能のほか、ゴルフレッスンアプリ「ETGAスウィングレッスン」なども用意されている。

 このほか、ワンセグ機能にはフレーム補完技術で通常15fpsの映像を30fps表示とする「ワンセグなめらか表示機能」が用意されている。音声については「ドルビーモバイル」を搭載し、一部のBlue-rayディスクレコーダーとして連携して、microSDHCカード(最大16GB)に記録した番組がF-04Bでも楽しめる。動画はWMVのストリーミング再生に対応する。

 さらにmicroSDカードにパスワードがかけられる機能や、画面ののぞき見防止機能「プライバシービュー」、指定のユーザーからの新着メールや不在着信などをまとめて非表示にできる「プライバシーモード」なども用意される。

 iモードやフルブラウザ、地図や辞書、電話帳などを1つの画面で検索できる「サーチキー」を使った検索機能や、ドキュメントビューアやPDFビューアなども利用できる。

主なスペック

 通話関連の機能では、周囲の騒音に応じて音声を聞き取りやすく調整する「スーパーはっきりボイス3」や、相手の声がゆっくり聞こえるようになる「ゆっくりボイス」なども用意される。メニュー画面の拡大文字表示にも対応する。

 iコンシェルやオートGPS、iウィジェット、iアプリオンライン、ワンセグ、おサイフケータイ、iアプリタッチ、ポケットUなどが利用できる。

 通信方式はW-CDMA方式に対応し、下り最大7.2MbpsのHSDPAに対応。海外ではW-CDMAのほかGSMエリアでも利用できる。FOMAプラスエリアに対応する。

 3G環境(移動時)での連続待受時間は約360時間、連続通話時間は約300分、ワンセグの視聴時間は約300分。ディズプレイユニット単体で利用した場合、待受時間は約280時間、通話時間は約160分、ワンセグ視聴時間は約200分となる。

 大きさは約114×51×20mmで、重さは約169g(ディスプレイユニット約87g、キーユニット約82g。)。ボディカラーは BLACKとWHITE。

ディスプレイユニットはコンパクトなフルタッチ端末

スライドさせると重さを強く感じる

 F-04Bは、ドコモの高機能モデルとなるPRIMEシリーズの端末で、シリーズラインナップに見劣りすることのない充実した機能と、他の端末とは一線を画す“セパレート”する端末というところが大きな特徴になるだろう。

 国内初の“セパレートケータイ”はやはり、こうしたギミックが大好きな人にとくにオススメしたい端末だ。端末が分離することで、これまでの携帯電話とは違う、新しい利用スタイルを探すなど、いろいろな発見が楽しい端末である。

 個人的には、これまであまりピンと来ていなかった直感ゲームへの熱が高まったのもF-04Bのおかげだ。画面を動かさずにキーユニットのみで操作できるため、任天堂のWiiのような感覚で直感ゲームが楽しめる。端末ソフトウェアは「F-01B」を思わせる部分も多く、クセの少ないインターフェイスに仕上がっている。

 F-04Bはこうした楽しさや新しい発見を提供する一方で、端末の性格上、大きさ約114×51×20mm、重さ約169gと非常に重い。

 特に厳しいと感じるのが、キーユニットを装着した状態で端末をスライドさせ、通常のスライド端末のように利用した場合だ。数字キー側のボディが薄く端末をホールドしにくいため、ディスプレイ側の重さを強く感じてしまう。セパレート利用の際はフルキーボードが使えるなど、それを補う良さがたくさんあるため、店頭のホットモックなどを利用して、使用感を確認するとともに、自分の利用スタイルなども想像しながら購入を検討するとよいだろう。

 一方、ディスプレイユニット側だけであれば、コンパクトで軽量なフルタッチ端末として利用できる。普段はフルタッチ端末として利用し、いざというタイミングだけキーユニットを持ち歩く、そんな使い方ができるところもセパレートの特徴を活かした使い方と言えそうだ。

待受画面メニュー画面
横画面でのメニュー画面待受画面をタッチすると、よく使う機能がすぐに呼び出せる

 



(津田 啓夢)

2010/4/6 14:35