法林岳之の「週刊モバイルCATCH UP」
「Galaxy S23 Ultra」、『撮る』『観る』『描く』で楽しめる史上最強のGalaxy
2023年5月12日 00:00
今年2月のグローバル向けの発表に続き、4月6日国内向けモデルが発表され、4月20日から販売が開始された「Galaxy S23」シリーズ。その最上位モデルに位置付けられるのが「Galaxy S23 Ultra」だ。「Galaxy Note」シリーズの系譜を受け継ぎながら、さらなる進化を続ける人気モデルだが、実機を試すことができたので、レポートをお送りしよう。
受け継がれる「Galaxy Note」シリーズの系譜
この十数年、スマートフォンは猛烈な勢いで進化を続けてきたが、ライバル各社と激しい開発競争をくり広げながら、次々と新しい機能やスタイルを実現し、グローバル市場でシェアNo.1をキープし続けてきたのがサムスンの「Galaxy」だ。
現在、サムスンは国内市場向けに大きく分けて、3つのラインアップを展開している。折り曲げられる有機ELディスプレイの特徴を活かし、『フォルダブル』という新しいスマートフォンのスタイルを追求するプレミアムラインの「Galaxy Z」シリーズ。
幅広いユーザーの多様なニーズに応え、リーズナブルなエントリー向けから実力派のミッドレンジまで、多彩なモデルを揃える「Galaxy A」シリーズ。そして、主力モデルとして、国内外のスマートフォン市場を牽引してきた「Galaxy S」シリーズだ。
「Galaxy S」シリーズについては、2010年にNTTドコモ向けに「GALAXY S SC-02B」を投入して以来、毎年、新モデルが投入されてきたが、2012年からはもうひとつの主力モデルとして、「Galaxy Note」シリーズも展開されていた。
「Galaxy S」シリーズよりも大画面ディスプレイを搭載しながら、本体に格納可能な独自のタッチペン「Sペン」を組み合わせることで、スマートフォンの画面に『描く』(書く)という新しい利用スタイルを提案した。
スマートフォンはボタン操作が中心だったケータイと違い、ディスプレイに表示されたアイコンやメニューなどを指先でタッチして操作する。この指先の代わりに、タッチペンを使うスタイルは、かつてのPDA(Personal Digital Assistant/携帯情報端末)時代から存在したが、単純にタッチしたり、簡単な線を描く程度だった。
そこで、サムスンはペンタブレットなどで知られるワコムの電磁誘導方式による「Sペン」を共同で開発し、「Galaxy Note」シリーズに採用し、それまでのタッチペンとは違ったユーザビリティを実現した。紙に書くように、Sペンで手書き文字を入力したり、絵や図を描いたりすることを可能にした。
世代を追うごとに追従性やレスポンスが高められ、Sペンで書いた手書き文字をテキストに認識できるようにしたり、画面にSペンをかざして、文字を翻訳するなど、新しい機能も次々と追加され、ビジネスパーソンだけでなく、クリエイティブなユーザーにも支持されるほど、高い人気を得た。しかし、フォルダブルスマートフォンの「Galaxy Z」シリーズ登場の影響などもあり、2020年発売の「Galaxy Note20 Ultra 5G」を最後に、「Galaxy Note」シリーズは「Galaxy S」シリーズに統合されている。
今回、発売された「Galaxy S23 Ultra」は、「Galaxy Note」シリーズのDNAを継承したモデルになる。「Galaxy S23」よりもひと回り大きいディスプレイを搭載しながら、「Sペン」を使って、手書きでメモを取ったり、図やイラストなどを描くことができるほか、Galaxyでは初採用となる2億画素イメージセンサーによるカメラを搭載するなど、最上位モデルに相応しいハイスペックモデルに仕上げられている。
同時に発表された「Galaxy S23」がNTTドコモ、au、楽天モバイルで販売されるのに対し、「Galaxy S23 Ultra」はNTTドコモ、auで販売される。価格は本体のストレージの容量によって、複数の種類があるが、約20万円からのスタートになる。「Galaxy S23」に比べると、6万円以上の価格差があるが、昨年の「Galaxy S22 Ultra」の発売時の価格と比べると、10%前後の上昇に抑えられており、昨今の半導体価格や物流コストの上昇、為替レートの急激な変化などを鑑みると、価格上昇を抑えた設定とも言える。
購入については一括払いだけでなく、NTTドコモのいつでもカエドキプログラム、auのスマホトクするプログラムを利用することにより、月々4000~5000円程度の分割払いで約2年間、利用し、2年後に端末を返却することで、実質負担額を10万円前後に抑えることもできる。ちなみに、両社の端末購入プログラムを利用するか否かは、ユーザーの予算次第になるが、2年前に発売された「Galaxy S21 Ultra 5G」は発売時に約15万円だったのに対し、現在の買取価格が約5~6万円程度なので、約1/3程度になることを念頭に検討してみるのも手だ。
また、「Galaxy S23 Ultra」については、今年2月に本連載でグローバル版をひと足早く取り上げている。国内版とは各携帯電話会社のオリジナルアプリ、おサイフケータイ、対応バンドなどに差異がある。内容的に重複する部分もあるが、そちらの記事も合わせて、ご覧いただきたい。
再生素材を感じさせない美しい仕上がりのボディ
外観からチェックしてみよう。今回の「Galaxy S23」シリーズでは、「Galaxy S23」が従来モデルから背面のカメラ部分のデザインを変更したのに対し、「Galaxy S23 Ultra」は基本的に「Galaxy S22 Ultra」のデザインをほぼそのまま継承しており、一見、あまり外観が変わらないような印象を受ける。
上下の両端は切り落としたようなフラットな仕上げで、左右両端は前後面とも少しエッジ部分をラウンドさせたデザインとなっている。
ただ、左右両端のエッジ部分の湾曲はカーブが少し急になり、前後面がよりフラットに仕上げられているなどの違いがある。サムスンによれば、ディスプレイのフラットな領域を増やすことで、Sペンでの操作性を向上させたいという判断だと言う。外観上の違いで、細かい点を挙げると、おサイフケータイのスイートスポットの位置が従来モデルから移動している。
「Galaxy S22 Ultra 5G」では背面側から見て、中段右端に近い位置におサイフケータイのアイコンがプリントされていたが、「Galaxy S23 Ultra」では縦3眼レンズの下側の位置に移動している。「Galaxy」はこれまでも新モデル登場時におサイフケータイのスイートスポットの位置が変更されてきたので、買い換えのユーザーはカバーなどを装着する前に、位置を確認することをおすすめしたい。
ボタン類や外部接続端子、Sペンの格納部、SIMカードスロットの位置などは、従来と基本的に変わりない。本体の外寸は「Galaxy S22 Ultra 5G」と比べ、わずか0.1~0.2mm程度の違いしかないが、カメラ部のレンズ位置が微妙に違うため、ケースは流用できない。
耐環境性能については「Galaxy S23」同様、従来モデルに引き続き、IP5X/IP8Xの防水、IP6Xの防塵に対応する。耐衝撃性能はアナウンスされていないが、純正のアクセサリーでMIL規格の落下試験をクリアした「Rugged Gadget Case」なども販売されているので、そちらを利用するのも手だろう。
5000mAh大容量バッテリーでさらなるロングライフを実現
バッテリーは5000mAhの大容量バッテリーを内蔵する。容量としては従来の「Galaxy S22 Ultra」と同容量だが、AIによる省電力性能の改良などにより、従来モデルに比べ、Webページの閲覧や動画再生、音楽再生などにおいて、20~30%のロングライフ化を実現している。
また、ゲームなどではバッテリーの消費が激しいため、ACアダプター(充電器)を接続しながら、プレイすることがあるが、こうした利用方法はバッテリーへの負荷が大きく、本体を発熱させたり、バッテリー性能を劣化させてしまう。
そこで、「Galaxy S23 Ultra」ではACアダプター接続中の直接給電による動作に対応している。実際の利用では[Game Laucher]アプリ内で設定を変更する必要があるが、直接給電に対応したことで、ゲームプレイ中の発熱やバッテリーへの負荷を抑えることができる。
国内ではシャープ製「AQUOS R7」などがダイレクト給電に対応しているが、ACアダプターを接続しながら、ゲームをプレイするようなユーザーには有用な機能のひとつと言えるだろう。
よりフラットになったディスプレイ
ディスプレイは6.8インチDynamic AMOLED(有機EL)を採用する。対角サイズは従来モデルと同じだが、前述のように、左右両端の湾曲した部分が狭くなり、よりフラットな仕上がりとなっている。
ほぼフラットなディスプレイの「Galaxy S23」に比べ、映像コンテンツやゲームなどをプレイするとき、より没入感を得られる。解像度は3088×1440ドット表示が可能なWQHD+対応だが、出荷時は消費電力を考慮し、2316×1080ドット表示のFHD+対応に設定されている。
リフレッシュレートは表示するコンテンツなどよって、1~120Hzの可変表示(最適化表示)を採用する。バッテリーの消費を抑えるため、設定を標準の60Hzに切り替えることも可能だ。この他にもブルーライトを制限する「目の保護モード」、画面の色彩を変更できる「画面モード」、画面保護フィルムを添付したときにタッチ感度を向上させる「タッチ感度」などの設定項目も用意されている。
ディスプレイには超音波式の指紋センサーが内蔵されており、画面ロック解除をはじめ、対応サイトや対応サービス利用時には指紋認証が利用できる。「Galaxy S23」のレビューでも触れたが、指紋登録時には画面に表示される指紋エリアが微妙に動くため、自然と指先の周囲の特徴点の情報も認識される。
指紋認証を「Samsung Pass」(従来の「Galaxy Pass」)と連動させることにより、他のサムスン製端末で登録したWebサイトや各アプリなどへのログイン情報を同期させることができる。
ディスプレイ上部のパンチホール内に内蔵されたインカメラを利用した顔認証にも対応するが、指紋認証と違い、顔の似ている人や写真などで画面ロックが開場される可能性もあるため、セキュアに使うのであれば、指紋認証のみでの利用がおすすめだ。
米Qualcomm製Snapdragon 8 Gen2 for Galaxyを搭載
チップセットは「Galaxy S23」同様、米Qualcomm製Snapdragon 8 Gen2 for Galaxyを採用する。Snapdragon 8 Gen2は2023年の各社のフラッグシップモデルに採用される見込みだが、「Galaxy S23 Ultra」と「Galaxy S23」にはクロック周波数がより高い専用のものが採用されるため、「for Galaxy」の名が冠されている。
「Galaxy S」シリーズのようなグローバルで展開されるモデルにおいて、こうした別バージョンのチップセットが採用される例はあまりないが、今回の「Galaxy S23 Ultra」では後述する2億画素カメラでの撮影時の画像処理をはじめ、高負荷のゲームでプレイする環境なども強く意識されているため、より処理能力の高いチップセットを米Qualcommに求め、同社もそれに応えた形になる。
ネットワークについては国内外の5G NR/4G FDD-LTE/4G TD-LTE/3G W-CDMA/2G GSMに対応し、国内ではNTTドコモ、auのそれぞれのバンドをサポートする。5GについてはSub6だけでなく、ミリ波にも対応し、NTTドコモに続き、auでも5G SAをサポートする。ちなみに、auの5G SAについてはSIMカードの交換が必要になる。
今のところ、5G SAに切り替えても同じように5Gネットワークに接続されるため、実用面での大きな差はないが、将来的にネットワークスライシングなどのサービスが提供されたときに利用できる見込みだ。
SIMカードはnanoSIMカードとeSIMのデュアルSIMに対応する。昨年の「Galaxy S22」シリーズはシングルSIM対応だったため、国内向けの「Galaxy S」シリーズとしてはnanoSIM/eSIMのデュアルSIM対応ということになる。
NTTドコモとauの回線契約でeSIMを選ぶこともできるが、ネットワーク障害などに備え、バックアップの回線をnanoSIM/eSIMのいずれかで契約できるようになったことは心強い。もちろん、データ通信料を節約するため、各携帯電話会社の別ブランドやMVNO各社の契約を組み合わせる使い方もしやすい。
オンラインショップ限定で「512GB」「1TB」モデルをラインアップ
メモリーとストレージについては、標準モデルがRAM 12GBとROM 256GBを搭載し、microSDメモリーカードなどの外部メモリーには対応しない。「Galaxy S23」のRAM 8GBに対し、より大容量のメモリーを搭載したが、これも2億画素カメラの画像処理やSペンでのアプリ操作など、「Galaxy S23」にはないハードウェアや機能に対応するためのものになる。
ストレージについてはオンラインショップ限定で、NTTドコモでは512GB、auでは512GBと1TBモデルが販売される。発売後の本誌記事「「Galaxy S23 Ultra」大容量モデルで出荷に遅れ、各キャリアに状況を問い合わせた」でもお伝えしたように、大容量モデルの予約が予想以上に多く、出荷に遅れが生じるほどの人気ぶりだったが、これは発売前の予約(4月19日までの予約)に対し、ひとつ少ない容量のモデルとの差額相当のAmazonギフト券をプレゼントするキャンペーンを提供していたことなどが関係している。
スマートフォンのストレージは世代を追うごとに少しずつ容量が増えてきたが、実際のところ、512GBや1TBといった容量が必要なのかどうかは、少し迷うところだろう。
たとえば、「Galaxy S23 Ultra」のように、外部メモリーカード非対応の機種は、データの保存する領域として、本体のストレージを使うため、写真や動画をたくさん撮影するユーザーは、大容量モデルが欲しいと考えるだろう。最近はアプリも大容量化が進んでいるため、数多くのアプリを利用するのであれば、こちらも大容量のストレージが必要という考え方ができる。
しかし、その一方で、Androidプラットフォームでは撮影した写真を「Googleフォト」に保存できるうえ、「Galaxy」はマイクロソフトとサムスンの提携により、マイクロソフトのクラウドストレージサービス「OneDrive」のアプリが標準でインストールされており、Microsoftアカウントを設定すれば、標準で5GBのストレージが利用できる。パソコンなどで「Microsoft 365 Personal」のサブスクリプションを契約していれば、OneDriveの容量は1TBまで増える。
また、かつては音楽や映像をいつでも再生できるように、端末内のストレージや大容量のメモリーカードにデータを保存していたが、現在は音楽も映像も配信サービスが標準となっているため、本体のストレージをあまり必要としない。
たとえば、海外渡航時のフライトなどで、長時間、インターネットに接続できなかったり、機内Wi-Fiなどで通信速度が遅い環境が続くようなシチュエーションであれば、端末内に保存することがあるかもしれないが、そのために何百GBものストレージが必要かどうかはやや微妙なところだ。
スマートフォン本体の内蔵ストレージとしては、アップルが2021年に発売した「iPhone 13 Pro Max」で1TBモデルをラインアップし、話題となった。筆者はかなり大容量のiTunesのライブラリがあり、これをすべて同期するのもアリかと考え、試しに1TBモデルを購入してみた。
iTunesライブラリを転送するだけでなく、Netflixの映画やドラマもダウンロードするなど、かなりストレージのむだ遣いをしてみたが、それでも1TBの半分程度しか消費しなかった。その結果、2022年発売の「iPhone 14 Pro Max」では端末価格がさらに高騰したこともあり、512GBモデルにグレードダウンした。
最終的にはユーザーの使い方次第だが、1TBモデルを必要とするのは、頻繁に4K以上の動画を撮影し、端末上で編集するようなユーザーが中心で、一般的な用途であれば、当面、512GBでも十分と言えそうだ。むしろ、「Googleドライブ」や「OneDrive」などのクラウドストレージサービス(オンラインストレージサービス)を上手に活用することを考えた方がベターなのかもしれない。
Android13ベースのOne UI5.1を搭載
プラットフォームはAndroid 13をベースにした「One UI 5.1」を採用する。Androidスマートフォンは各端末メーカーごとにホームアプリやUIが少しずつ異なるが、「One UI」は使い勝手やカスタマイズ性に優れており、「Galaxy」シリーズの人気を支える要素のひとつとなっている。出荷時設定ではホーム画面にウィジェットやショートカットが並び、上方向にスワイプすると、アプリ一覧が表示される。
アプリ一覧は左右にフリックすることで画面を切り替えることができ、アプリ一覧内では並べ替えたり、フォルダへまとめることもできる。設定を切り替えることで、iOSなどと同じように、ホーム画面にすべてのアイコンやウィジェットが並ぶユーザーインターフェイスに切り替えることができる。
[設定]アプリの[ディスプレイ]-[エッジパネル]を有効にすると、ホーム画面やアプリを起動中、画面右側の上部を内側にスワイプして表示される「エッジパネル」が利用できる。よく使うアプリや連絡先などを登録しておくと、どの画面からでも起動できるので、ぜひ活用したい。
日本語入力はiWnnベースの「Samsungキーボード」(旧Galaxyキーボード)が搭載されている。Androidプラットフォームでは多くのメーカーが独自の日本語入力ソフトウェアの開発をやめ、Google提供の「Gboard」に切り替えているが、AQUOSの「S-Shoin」、arrowsの「Super ATOK ULTIAS」などと並び、独自の日本語入力ソフトウェアの開発を継続していることは評価できる。
[設定]アプリの[一般管理]-[Samsungキーボード設定]-[日本語入力オプション]を選ぶと、自分の好みに合わせて、入力スタイルをカスタマイズすることも可能だ。
また、「Galaxy S23」のレビュー記事でも触れたが、iOS上で「One UI」を試すことができる[Try Galaxy]というWebアプリも公開されている。iOSのホームアプリを変更するアプリではなく、仮想的にユーザーインターフェイスを体験できるものだが、[カメラ]アプリを起動すると、カメラで撮影するシーンのデモが流れたり、[ギャラリー]アプリで撮った写真の編集デモを見ることができるなど、内容もなかなか凝っている。
iPhoneからの乗り換えを検討するユーザーには、ぜひ一度、試してみて欲しい。[Try Galaxy]はSafariで「Try Galaxy」と検索するか、本誌記事に掲載されているQRコードを読み取り、表示されたWebページでSafariの共有ボタンから「ホーム画面に追加する」を選ぶと、Webアプリがホーム画面に追加される。
対応アプリも充実したSペン
「Galaxy Note」シリーズから継承したSペンについては、本体下部の左側に格納されており、ワンプッシュでSペンのトップ部分が飛び出し、すぐに引き出すことができる。画面ロックが解除された状態で、はじめてSペンを取り出すと、デモが表示され、「スマート選択」「翻訳」「Sペンでテキスト入力」「エアアクション」の説明が表示される。
2回目以降はSペンのメニューが表示され、「Samsung Notes」の作成や表示、「キャプチャ手書き」「翻訳」などの各機能が選ぶことができる。Sペンは電源が必要になるが、本体に格納されているときに充電され、バッテリー残量はSペンメニューの最上段に表示される。
Sペンは一般的なタッチペンと違い、前述のように、ワコムの電磁誘導式の技術を採用しており、なめらかな動きで追従性も良く、非常に書きやすい。基本的な使い方は従来と変わっておらず、「ノートを作成」で手書きのメモを取ったり、書き込んだメモの一部を指定して、テキストに変換したりといった使い方ができる。画面ロックされた状態でSペンを取り出したとき、すぐにメモが取れる「画面オフメモ」も利用できる。
「PENUP」で絵を描いたり、キャプチャした画像に手書きで書き込みをする機能もサポートされる。Webページを表示しているときに、「翻訳」を起動し、わからない単語に文字にSペンを近づけると、エアアクションで翻訳された単語がポップアップで表示される機能も便利だ。
こうしたSペンを利用した数々の機能は、「Galaxy Note」シリーズから継承してきたことで、内容も充実しており、他のスマートフォンにはない新しいユーザビリティを体験できる。
ただし、新機能ばかりではなく、基本となる手書き入力も非常に有用で、本誌でもおなじみのご同業のライター諸氏には、取材時にいつもSペンでメモを取る人がいるくらいだ。パソコンと違い、立ったままの状態でも気軽にメモを取れるSペンの環境は、一度使いはじめると、手放せなくなる存在でもあるわけだ。
2億画素イメージセンサーを含むクアッドカメラを搭載
前述のように、今回の「Galaxy S23 Ultra」が従来の「Galaxy S22 Ultra」に比べ、もっとも大きく異なる点は、やはり、2億画素イメージセンサーを含む背面のクアッドカメラだろう。
2億画素のイメージセンサーについては、ひと足早くシャオミの「Xiaomi 12T Pro」に採用されているが、元々、2億画素イメージセンサーはサムスンのグループ内で製造されているものであり、「Galaxy」シリーズではそのポテンシャルを最大限に引き出すように、開発されている。
背面カメラの構成としては、背面の最上段に1200万画素/F2.2の超広角カメラ(13mm)、その下に2億画素/F1.7の広角カメラ(24mm)、最下段に1000万画素/F4.9の光学10倍望遠カメラ(230mm)、縦3眼レンズの内側の下段に1000万画素/F2.4の光学3倍望遠カメラ(70mm)となっている。
一見、スペックだけに注目すると、従来の「Galaxy S22 Ultra」と比較して、広角カメラのイメージセンサーを2億画素に変更したものの、超広角カメラと2つの望遠カメラ(3倍と10倍)は従来モデルを継承したように見えるが、サムスンによれば、実際の内容は大きく異なるという。
まず、広角カメラについては、イメージセンサーが2億画素にバージョンアップしたことに合わせ、レンズが新開発のより明るいものに変更されている。2億画素イメージセンサーはそのままフルの画素数で撮影することも可能だが、基本的には複数の画素を1つの画素として使い、より多くの光を取り込むピクセルビニングを採用している。
今回の「Galaxy S23 Ultra」では「ナイトグラフィー」として、暗いところでの静止画や動画の撮影に強いことがアピールされているが、これはピクセルビニング技術の活用が大きく寄与している。ピクセルビニングは「Galaxy」シリーズをはじめ、ここ数年のスマートフォンカメラで採用されている技術だが、その多くは4画素(2×2)を1つの画素として扱って、撮影をしている。
これに対し、「Galaxy S23 Ultra」の2億画素イメージセンサーでは16画素(4×4)を1つの画素として撮影しており、より多くの光を取り込むことができる。これに加え、4つの画素を使い、水平と垂直方向に位相差を比較して、ピントを合わせる「Super Quad Pixel Auto Focus」を採用しているため、暗いところでも従来モデルに比べ、フォーカス速度が向上している。
また、「Galaxy S23 Ultra」をはじめ、多くのスマートフォンのカメラでは撮影時に複数のイメージを取り込み、これらを合成して、写真を生成しているが、イメージセンサーの画素数が多くなれば、当然のことながら、画像処理にも時間がかかる。そこで効いてくるのが前述のSnapdragon 8 Gen2 for Galaxyの処理能力の高さになる。同様の効果は超広角カメラと2つの望遠カメラにも効いており、従来モデルとハードウェアとしての仕様は同じだが、より高品質な写真を撮影できるとしている。
動画についても同様に処理能力の高さが活かされており、これまで暗いところではノイズが多かった動画撮影も夜景のライトアップなどを活かしながら、人物を撮影できるようになっている。この他にもおなじみの月の撮影をはじめ、新たにサポートされた天体ハイパーラプスなど、明るいシーンだけでなく、暗いところでの撮影には静止画も動画もかなり強化されている。
インカメラについてはディスプレイ上部のパンチホール内に1200万画素/F2.2のサブカメラ(26mm)を内蔵する。インカメラはセルフィーのニーズに応えるため、これまでも機能強化が図られてきたが、「Galaxy S23 Ultra」ではデュアルピクセルAFに対応し、AIを利用したオートホワイトバランス、オートHDRなども搭載するほか、室内などの暗いところでの明るく撮影できるナイトセルフィーも強化されている。
撮影した写真は[Googleフォト]ではなく、標準では[ギャラリー]アプリで確認する。アプリ内から編集を選び、背景に映り込んだ余計なものを消したり、Sペンを使って、メッセージを書き込むなど、ライバル製品にはない楽しみも用意されている。
『撮る』『観る』『描く』で楽しめる史上最強のGalaxy
スマートフォンはさまざまなシーンで活用できるが、ライバル製品との競争が激しいのは、やはり、写真や動画を撮影するカメラ、コンテンツやエンターテインメントを楽しむディスプレイなどが中心となっている。
特に、カメラについてはAIを活かした『コンピュテーショナルフォトグラフィ』の進化が著しく、デジタルカメラなどとは違った写真や動画の世界が拡がりつつある。今回取り上げた「Galaxy S23 Ultra」は、こうしたスマートフォンでもっとも注目されるカメラやディスプレイといった機能をしっかり強化しながら、「Galaxy Note」シリーズから継承したSペンによる『描く』(書く)という機能を取り込むことにより、他製品にはないスマートフォンの進化形を実現している。
同じサムスンが販売するフォルダブルスマートフォン「Galaxy Z」シリーズも気になるところだが、スマートフォンの『王道』を突き進む進化形は「Galaxy S」シリーズであり、その最上位モデルである「Galaxy S23 Ultra」は『撮る』『観る』『描く』という機能によって、ユーザーを最大限に楽しませる「史上最強のGalaxy」に仕上げられている。「Galaxy S23」に比べれば、価格は数段、高くなっているが、それに見合うだけの体験が得られる一台という印象だ。
各キャリアショップだけでなく、東京・原宿の「Galaxy Harajuku」、期間限定でオープンする大阪・なんばの「Galaxy Studio Osaka」、東京、名古屋、関西、福岡で開催される「Galaxy Pop-up Studio」などでも実機を試すことができるので、ぜひ一度、現地に足を運んでいただき、その完成度の高さを実感していただきたい。