【IFA2019】

「Galaxy Fold」ファーストインプレッション

 9月6日からドイツ・ベルリンで開催されていたIFA 2019において、サムスンは一部のメディア向けにフォルダブルスマートフォン「Galaxy Fold」の体験セッションを行なった。非常に短い時間ではあったものの、はじめて実機を試すことができたので、その印象をお伝えしよう。

サムスン電子「Galaxy Fold」、サイズ:62.8mm×160.9mm×15.7mm~17.1mm(折りたたんだ状態)、117.9mm×160.9mm×6.9mm~7.6m(開いた状態)、276g

今年2月に発表されながら発売延期

 昨年、サムスンの開発者イベントで予告され、今年2月に米サンフランシスコで開催された「Galaxy UNPACKED 2019」で発表されたフォルダブル(折りたたみ)スマートフォン「Galaxy Fold」。曲げることができる有機ELディスプレイの特徴を活かし、約7.3インチのメインディスプレイを搭載しながら、本体を折りたたむことができるというユニークなフォームファクターを採用したスマートフォンだ。

 今年2月の発表時、プレゼンテーションでは動作する実機のデモンストレーションが行なわれたものの、その後のタッチ&トライでは実機を試すことができず、翌週に開催されたMWC19 Barcelonaでもショーケース内に展示されるのみという厳戒態勢に置かれていた。国内初お目見えとなった「Galaxy Harajuku」のオープニングイベントでも展示されていたが、同じくショーケース内のみの展示だった。

 その後、早ければ、4月には発売されるというニュースが伝えられたが、先行して、貸し出された海外メディアが本体を分解してしまったり(本来、分解は許されていない)、誤って、ディスプレイの保護スクリーン(保護層)を剥がしてしまったなどのトラブルが起きたため、設計をもう一度、見直すことになり、発売が延期されていた。

改良版Galaxy FoldをIFA 2019に出品

 そして発表から約7カ月が過ぎ、ようやく今回のIFA 2019に「Galaxy Fold」が出品されることになり、プレスカンファレンスでは9月6日、韓国を皮切りに発売されることが明らかにされた。ちなみに、関係者によれば、発売日の9月6日には約2000~3000台が出荷され、即日完売になったという。価格は約24万ウォン(約21万円)に設定されていたそうだ。

 IFA 2019への出品は単なる展示ではなく、サムスンブース内において、時間限定ながら、係員付きで来場者が実際にGalaxy Foldを操作できるタッチ&トライコーナーが設けられた。タッチ&トライコーナーには連日、常に数十人以上が行列を作って、体験を待つほどの人気ぶりだった。

フォルダブル(折りたたみ)で大画面を実現

 まず、外観からチェックしてみよう。

本体の中央部分から折れ曲がる構造
本体を開いた状態で、ブラウザで本誌ページを表示。パソコンのブラウザで表示したような印象

 Galaxy Foldは端末を開いた状態の部分に、約7.3インチのQXGA対応Dynamic AMOLED Infinity Flexディスプレイを搭載する。解像度は2152×1536ドット表示が可能で、縦横比は4.2:3の大画面で利用することができる。ただし、画面は有機ELディスプレイはフィルム状の保護スクリーンで覆い、本体の上下左右で固定する構造になっているため、一般的なスレート状のスマートフォンに採用されるガラスのようなフラットさはなく、保護スクリーンの一部がわずかにうねるように見えることもある。実用面では何ら問題ないが、ガラスによるフラットな画面を見慣れたユーザーとしては、少し気になるかもしれない。

これだけ画面が大きければ、パソコン向けWebページを表示してもストレスなく操作できる

 メインディスプレイは内側に折りたたむことができ、画面の上下端のヒンジに近い部分を押すと、比較的スムーズに曲げはじめることができる。折りたたみと言ってもかつてのケータイのような折りたたみとは機構がまったく異なり、どちらかと言えば、ノートパソコンをゆっくりと折りたたんで閉じるような印象に近い。内側に曲げはじめると、中央部分にはわずかな凹みのようなものが見え、折りたたむために両サイドのボディが近付いていくにつれ、ディスプレイが本体の内側に沈み込んでいくように見える。

本体を折りたたもうとすると、メインディスプレイの画面中央部分に凹みができ、画面が湾曲する構造

 メインディスプレイを開いた状態での表示は、Galaxyシリーズのホーム画面をそのまま縦横比4.2:3の画面に拡げたような印象で、画面の最下段の右半分には[戻る]キー、[ホーム]キー、[履歴]キーのナビゲーションキーが並ぶ。

本体を閉じると、開いていたときに表示していたアプリがCover Displayに表示される

 メインディスプレイにはブラウザや映像、ゲームなどを表示すると、これまでのスマートフォンでは体験できなかった迫力ある画面で楽しむことができる。Webページや写真の表示はパソコンやタブレットに近い印象で、ゲームもポータブルゲーム機などを大きく上回る環境で楽しむことができる。

ゲームアプリも大画面で表示すると、迫力ある映像を楽しむことができる
本体を開いた状態では6.7mm~7.9mmというスリムボディを実現
本体下部にはUSB Type-C外部接続端子を備える
実際に手に持ってみると、2台分の厚みが気になる

 本体を開いた状態では、複数のアプリを起動することもできる。ひとつのアプリを起動した状態で、ディスプレイの右側から内側にスワイプすると、縦方向に並んだアプリの一覧が表示され、起動したいアプリをタップすると、元のアプリが画面の左半分、新たに起動したアプリが右半分に表示される。いずれかのアプリのみの動作にしたいときは境界線を左右いずれかにドラッグする仕様となっている。

本体を開いた状態と折りたたんだ状態で連携

 本体を折りたたむと、左側の筐体の表面に搭載された約4.6インチのHD+対応Super AMOLEDディスプレイが操作できるようになる。「Cover Display」と呼ばれるディスプレイは、縦横比21:9で、1680×720ドット表示が可能。この状態では画面をONにすると、ロック画面が表示され、ロックを解除すると、通常のAndroidスマートフォンと同じホーム画面が表示される。画面下にはナビゲーションキーも表示され、同じように操作できる。ちなみに、右側の筐体の背面側にはカメラが備えられているのみで、ディスプレイは搭載されていない。

本体を閉じると、左画面に表示されていた[マップ]が表示される

 端末を開いた状態と閉じた状態の連動も実現されている。本体を開いた状態でアプリを起動し、本体を閉じると、起動中のアプリがそのまま、Cover Displayに表示される。前述の端末を開いた状態で、複数のアプリを起動しているときは、画面の左側に表示されているアプリがCover Displayに表示される仕様となっている。

起動したり、電源をONに切り替えた状態では、Cover Displayにロック画面が表示される
画面ロックを解除すれば、Cover Displayにホーム画面が表示される

 実際に端末を手に取ったときのサイズ感については、本体を開いた状態では厚さが6.9mm~7.6mmと薄く仕上げられているものの、それなりに大きく、コンパクトなタブレットを扱うような印象もある。閉じた状態はライバル機種のXperia 1のようなスリムな縦長ボディだが、厚さは15.7mm~17.1mmと、スリムなスマートフォン2台分に相当する厚みがある。これに加え、重量も276gと重いため、シャツのポケットなどに入れると、シャツが型崩れしてしまうほどのサイズ感がある。

アプリ一覧を表示した状態。一画面に30個以上のアプリを登録が可能

側面に指紋認証センサーを搭載

 本体の右側の筐体の側面には、指紋認証センサー、音量キーなどが備えられており、指紋認証センサーは画面ロックの解除などに利用できる。右側筐体の下部にはUSB Type-C外部接続端子が備えられているが、3.5mmイヤホン端子はない。本体はワイヤレス充電、ワイヤレスパワーシェア(リバース充電)に対応する。

ヒンジ部分も強化が図られた。見えにくいが上部側には同社の名前も刻印されている
側面には指紋認証センサーを搭載。その上部に音量キーなどを備える

 反対側の左側筐体の側面にはピンを挿すタイプのSIMカードスロットが備えられている。SIMカードスロットの仕様は出荷する国と地域、LTEモデルと5Gモデルで異なるとのことだが、LTEモデルはnanoSIMとeSIMのデュアルSIM、5GモデルはnanoSIMカードのみのシングルSIMを基本としている。

前後、内側に合計6つのカメラを搭載

 フォルダブルという形状を採用していることもあり、Galaxy Foldはカメラをさまざまな状態で利用できるように、合計6つも搭載している。

写真のサンプルも大画面で表示され、非常にわかりやすい

 まず、端末を開いた状態ではディスプレイの右上のフレーム内にデュアルカメラを内蔵する。デュアルカメラは10MピクセルのイメージセンサーにF2.2のレンズを組み合わせセルフィーカメラで、これに8Mピクセル/F1.9で構成されるRGB深度カメラを組み合わせている。

スマートフォンで撮影したアクションムービーも大画面で楽しむことができる

 次に、本体を閉じた状態のCover Displayの上側にもセルフィーカメラが搭載される。仕様はメインディスプレイのセルフィーカメラとほぼ同じで、10MピクセルのイメージセンサーにF2.2のレンズを組み合わせている。いずれもディスプレイ周囲のフレームが黒く仕上げられているため、カメラはあまり目立たない印象だ。

花にカメラを向けたときのファインダー画面
本体の右筐体にはトリプルカメラを搭載

 そして、本体の右側筐体の背面にはトリプルカメラが搭載される。ちょうどGalaxy S10+などのカメラを縦向きに装備したようなレイアウトで、16MピクセルのセンサーにF2.2のレンズを組み合わせた超広角カメラ、12MピクセルのセンサーにF1.5/2.4の可変絞りレンズを組み合わせた広角カメラ、12MピクセルのセンサーにF2.4のレンズを組み合わせた望遠カメラから構成される。背面カメラは本体を開いた状態でも閉じた状態でも利用できるようになっており、ファインダー画面も大きく、見やすい。

 カメラのユーザーインターフェイスはいずれもGalaxy S10+などのものを踏襲しており、既存のGalaxyシリーズのユーザーであれば、ストレスなく、使うことができるはずだ。撮影モードも基本的には同じで、細かく設定する「Pro」モード、背景のボケ具合を細かく調整できる「Live focus」モード、「Super Slow」モードなどもサポートされる。

触っていて、楽しくなる一台

 非常に限られた時間であるものの、実機を撮影しながら、触ってみて感じたのは、Galaxy Foldが最近のスマートフォンにはなかった異質な楽しさと探究心を駆り立てるものを持っていることだ。

 「こうやったら、どう動くんだろう」「こんな使い方はできないか」「あんなときに便利ではないか」など、シチュエーションと用途に合わせ、Galaxy Foldを開くのか、閉じるのか、アプリをどのように並べておくのかといったことを考えてしまう。

 確かに、価格は20万円以上と、かなり高く、本体も厚く重い。しかし、スマートフォンの進化と最先端技術を実感できるモデルであり、じっくりといろいろな機能やアプリを使いながら、楽しんでみたい一台に仕上がっていると言えるだろう。