レビュー

発売直後の5G対応モバイルルーター「Aterm MR51FN」を4キャリアで試す、速度と使用感は?

5G対応のモバイルルーター「Aterm MR51FN」

 NECプラットフォームズから5G対応のモバイルルーター「Aterm MR51FN」が登場した。キャリアモデルでなく端末メーカーから登場するSIMフリールーターで、国内4キャリアのネットワークで採用する5Gのバンドに対応していることが特徴となる。

 本稿では、1月19日に発売されたばかりのAterm MR51FNのレビューをお届けする。

国内4キャリアの5Gネットワークに対応

 まず、第一の特徴は5Gに対応するだけでなく、各社が使っているバンドに対応していること。特にNTTドコモの5Gは他社の5Gネットワークよりも高い周波数の4.5GHz帯(バンドn79)を使っているため、ドコモから出ている機種以外では対応があまり進んでいないが、Aterm MR51FNは対応している。

 Aterm MR51FNの5Gの対応バンドはn1/n3/n28/n41/n77/n78/n79で、ドコモを含めた国内4社のネットワークにおいて高速な5Gの通信が可能になる。5Gでの伝送速度は下り最大3.8Gbps、上りは218Mbps。

 ただし、ミリ波には対応していないので、ピンポイント的なエリアだがギガビットを大きく超えるような超高速のモバイル通信はできない。

ドコモの5Gを掴んだ
KDDI(au)も5G
ソフトバンクも5G
楽天モバイルも5G

 設定は自動設定の範囲が広く、手元にあったドコモ、au、ワイモバイル、楽天モバイルといったMNOだけでなく、IIJmio、OCNモバイルONE、mineo、日本通信というMVNOのSIMでも、挿入して少し待てばAPNなどの設定が自動で行われて通信を開始した。

 新しいSIMを挿入した際には、どの設定にするのか機械側が考える時間がややかかるが、2度目以降は内部に保存してあるのか、すぐに通信を開始する。

APNは初期設定でオート設定になっており、挿入するだけで利用できる

 また、SIMはnanoSIMの1枚に対応する。これまでNECプラットフォームズのモバイルルーターは2枚を挿入して切換利用ができたが、Aterm MR51FNではそうなっていない。

SIMは1枚のみ挿入できる

LAN側はWi-Fi 6に対応するが、屋外利用には注意

 5Gでギガビットイーサなみの高速通信が可能になったとして、問題はLAN側の性能だ。これも抜かりなくWi-Fi 6に対応し、伝送速度は最大1201Mbpsとなる。ただし、この速度を出すためには子機側のパソコンがWi-Fi 6に対応していることはもちろんのこと、回線混雑などから無線LANは5GHz帯の利用が望ましい。

 しかし、5GHz帯は屋外利用が制限されている。W52、W53、W56の3つの帯域があるが、屋外利用ができるのはW56と一部条件付きでW52となる。そして、W56なら大丈夫かというと大きな制限がある。W56では使い始めるときに1分間のスキャンが必要で、さっとすぐに使い始めることができないのだ。

本体を操作するメニューから「Wi-Fi周波数」を選択
周波数帯を選ぶことができる

 Aterm MR51FNの場合、モバイルルーターということもあってW53を非対応とし、W52とW56のみ対応。クイックメニューの「Wi-Fi周波数」から2.4GHz帯、2.4GHz/5GHz帯(内)、2.4GHz/5GHz帯(外)、5GHz帯(内)、5GHz帯(外)、オフの6種類から場所に応じて選ぶことで法令に沿った5GHz帯の運用ができる。

 頻繁に移動しながら使う場合は2.4GHz帯を選んでおけば無難で、初期状態も2.4GHz帯に設定されている。

 2.4GHz帯なら場所に応じた切換の手間なく使えるが、問題は速度。混雑の激しい2.4GHz帯ではフルスピードが出る帯域を確保することが難しく、モバイル側よりも速度が低くなってしまう。そこで、速度を出したいなら5GHz帯を使うか有線接続という方法をとるしかない。

無線以外の接続方法は、USBで接続など

 パソコンなどとモバイルルーターとの間を有線で接続する方法で、もっとも簡単なのはUSBケーブルで接続すること。同梱のUSBケーブルをパソコンのUSBポートに繋げばすぐに通信できる。

 USBの規格にもよるが、USB 3.0以上なら速度も十分で確実。しかも、屋外や屋内の関係なしに利用できる。

 問題があるとすれば、ケーブルが繋がっているわずらわしさのほか、接続しているときにパソコンからAterm MR51FNに充電するための電流が流れてしまうこと。場合によってはノートパソコンのバッテリーの消費が早まってしまうかもしれない。

パソコンにUSBで接続して速度テスト、300Mbps近い速度が出た
Aterm MR51FNと付属品。USBケーブルをパソコンにつなぐと有線で通信できる

 また、Windows パソコンではこの方法で接続ができたが、AndroidスマートフォンとUSBケーブルで接続しても通信はできなかった。

 複数のパソコンを接続したい場合は、クレードルに装備された有線LANポートからLANのハブを介せば有線LANでパソコンなどを接続する方法がある。

 本来は自宅などで固定回線代わりに使う場合のものだが、出先でこの方法を使う場合、クレードル側に電源を供給しなければならないので、電源のない場所ではモバイルバッテリーを使うなどの工夫をする必要がある。

クレードルを使うと、有線LANが使える
クレードルの背面
クレードルには電源ランプとLANのアクセスランプがある

いよいよ使い始め、街では5Gらしい速度を記録

 次に本体を箱から取り出して手にとってみる。モバイルルーターとしては大きめのほうで、ひと昔前のスマートフォンの厚みを大きくしたような感じだ。

Aterm MR51FN
側面は全体的にくぼみがあり、掴んで持ち上げる際に手のかかりがよい形状
操作ボタンは電源を含めてこの3つのみ
SIMスロットは上部にあり、爪で開いて取り出しができる

 操作ボタンは上に3つあるのみ。これで設定変更などを行うが、同じネットワークに接続したパソコンからは、通常のルーターなどと同様に、Webブラウザで管理画面を開き、設定することも可能だ。

街に連れ出してみた

 いよいよ街に持ち出し、前述のように、クレードルに電気を供給し、有線LANで接続したスマートフォンで街を歩きながら速度を測定してみたが、場所によってはおおむね200~300Mbps程度の速度が出て、5Gならではの数字を確認することができた。特に上りが200Mbps出ていれば、確実に5Gの速度と言えよう。

ドコモでの速度
auでの速度

 スマートフォンに5G対応のSIMを挿入するともう少し上の速度を記録するので、どこかにボトルネックがあるのかもしれないが、比較的混雑する時間帯や、5Gの高速通信が充実したエリアばかりでテストしたなかでは上々の出来ではないだろうか。

 実は今回、試用しながら通信速度を確認する際、有線LANを介する方法でスマートフォンとAterm MR51FNを接続していた。無線LANの影響なく5Gの高速さを実現するひとつの方法だが、クレードルを持ち歩くのは現実的ではないので、あくまで実験として考えたほうがいいだろう。

街でクレードルを利用し、Androidスマートフォンとは有線LANで接続してみた。後方にモバイルバッテリーがある

 ちなみに、Aterm MR51FNのクライアントとなるスマートフォンはGoogle Pixel 7、有線LANアダプターはGOPPAのGP-CR45Hで、ふだんは光ファイバー回線に有線LANで接続すれば、1000Mbps近くの速度を出す組み合わせだ。

起動は早くない

 Aterm MR51FNが通信に特化し、安定して使えるのはわかったが、使っていて気になったことがある。それは起動が早くないこと。スマートフォンのテザリングなら一瞬で使い始められるのに対して、モバイルルーターは起動まで待たなくてはならない。

 具体的には電源を入れてから1分を少し超えた時間がかかってしまう。「休止状態」からなら短縮して15秒ほどだが、常時電源が入っているスマートフォンのテザリングをオンすればすぐ使えることに比べれば、遅い。そして、SIMの抜き差しごとに必ず再起動がかかるので、SIMを頻繁に入れ替えて使うような人は苦しい。

電源オンは中央ボタンの長押し、電源オフは中央ボタンを長押しのあとに出るメニューから選んでもう一度中央ボタンを押す

5Gが安定して使えるルーター

 起動の遅さなど、気になる点はあるものの、キャリア以外が販売する数少ない5G対応のモバイルルーター。操作方法にしても、実際に使い始めて電源のオン/オフ程度しか使われなくなれば、問題ではなくなる。

 国内各社の5Gにもれなく対応している非常に便利な製品だ。5Gの速度で場所を選ばずネットに接続するためのツールとしては、現時点で唯一のモバイルルーターではないだろうか。