レビュー
ゲーマーが試す! 「ROG Phone II」の実力
2019年11月20日 13:41
現状最高スペックの「ROG Phone 2」の使用感は?
ASUS JAPANのゲーミングスマートフォン「ROG Phone 2(ZS660KL)」の日本展開が決まった。高い評価を得た初代「ROG Phone」を性能面で上回るのはもちろん、常識外れの大容量バッテリーを搭載するなど、さまざまな変更が加えられている。
まずは主なスペックを確認していこう。
項目 | 内容 |
チップセット | Snapdragon 855 Plus(2.96GHz) |
メモリー(RAM) | 12GB |
ストレージ(ROM) | 512GB(1TBモデルもあり) |
通信機能 | IEEE 802.11a/b/g/n/ac/ad |
カードスロット | なし |
ディスプレイ | 6.59インチAMOLED、1,080×2,340ドット |
スピーカー | ステレオ |
バッテリー容量 | 6,000mAh |
充電方式 | Quick Charge 4.0(ACアダプタ付属) |
SIMカード | nano SIM×2(DSDV対応) |
重さ | 約240g |
大きさ(高さ×幅×厚さ) | 約170.99.×77.6×9.48mm |
OS | Android 9 |
価格(税抜) | 10万5500円(512GBモデル) |
Snapdragon 855 Plus、12GBのメモリー、512GBのストレージと、いずれも最高級の性能でまとめられている。「ROG Phone」シリーズが常に最高性能であろうとしているのはこれだけでもよくわかるし、あえて言えば“予想通りのハイスペック”でもある。
その上で、最も注目して欲しいのはバッテリーだ。一昔前は3000mAhを超えたら大容量バッテリーと呼んだものだが、本機はその倍となる6000mAhという超大容量になっている(初代「ROG Phone」は4000mAh)。これは10インチクラスのタブレット端末に匹敵する容量で、ゲームはバッテリー消費が激しいとはいえ、かなり思い切った仕様と言える。
バッテリー容量が増えたことの弊害として、重量は約240gと、スマートフォンとしては相当な重量級となった。これが吉と出るか凶と出るかは、実際試してみるのが楽しみなポイントだ。
ディスプレイはフルHDサイズを少し縦に伸ばした1080×2340ドット。6.59インチというと相当大きく感じるが、片手で持つにも不自由はしない程度のサイズに収まっている。
ハード・ソフトの両面でゲーム向けの独自機能が満載
本機は高性能なだけでなく、ゲームに特化した独自機能がハード・ソフトの両面で多数用意されている。
まずハードの面では、専用のケース「Aero Case」が付属している。何がAeroかは見ての通り、端以外の部分は大きく穴が開けられており、ケースと呼ぶべきかどうか悩ましいほど。端末を保護しながらも、放熱性をできるだけ確保したいという気持ちが見える。それでも端末の四角は保護されており、効果は期待できる。ケースのみで重さ11gという軽さのメリットもあり、デザイン的にもよく考えられたケースだと思う。
もう1つの同梱物は、端末背面にファンを装着して端末を冷やす「AeroActive Cooler II」。熱が気にならないなら不要……と思いきや、ファンの下部にUSB Type-C端子とヘッドフォン端子もついている。両端子は端末下部にもあるのだが、横持ちの時に使うと右手に当たって邪魔になる。「AeroActive Cooler II」を使うと端末左側面、つまり横持ちの時に端末下から接続できるようになり、邪魔にならない。
充電中は端末の熱が上がりやすくなるため、充電しながらゲームを遊びたい時には一石二鳥のデバイスだ。しかも「Aero Case」を着けたままでも使える。ただし縦持ちの時には端末を持つ手の邪魔になるし、外で使うには厚さがありすぎて邪魔なので万能ではない。家で横持ちのゲームを充電しながら遊ぶ時、あるいは発熱が気になる時に使うというイメージだ。効果は絶大で、端末の冷却のみならず、左右の手にも風が当たってとても快適に遊べる。
ディスプレイは120Hzのハイリフレッシュレートにも対応。ゲーム側の対応が必要になるため効果は限定的だが、非対応のゲームは通常どおりの60Hzで動作する。スクロールが滑らかになるなど、ゲーム以外でのメリットもある。また応答速度が1msと高速で残像感が少なく、タッチサンプリングレートが240Hzで一般的なスマートフォン(60Hz)より高速な反応を実現できるとしている。
ソフト面には非常に多くの機能がある。最も特徴的なのは「Xモード」と呼ばれる設定で、メモリーやバッテリーを消費する他のアプリの動作を抑制し、ゲームのパフォーマンスを最大に引き出すという。ワンタッチで切り替えでき、壁紙のデザインが変化するという演出も面白いが、現時点では処理能力とメモリーに余裕があるため効果のほどは不明。将来、よりヘビーなゲームが出た時には、パフォーマンスや安定性が向上するかもしれない。
すぐに使える機能としては、「AirTriggers」が便利だ。横持ちにした時、人差し指が当たる端末上部にセンサーがあり、予め指定した画面の場所をタップしたのと同じ操作を割り当てることができる。たとえばFPSで、右のセンサーに攻撃ボタンの位置をタップするよう設定しておけば、親指では視点を移動させながら、人差し指で攻撃が可能になる。これがあるだけで全く操作感が変わるという、ずるいくらいに強力な機能だ。
ゲーム起動中に画面の左端から中央へスワイプすると、「Game Genie」というゲーム向けのメニューが表示される。「AirTriggers」の設定もここから行うほか、通知や着信を止める設定や、ゲームの録画・配信、処理負荷やメモリー使用量の情報ウインドウの表示など、さまざまな機能が用意されている。
「Game Genie」を使用するアプリは、「Armoury Crate」というコントロールアプリで設定できる。「Xモード」のオン・オフや、「AirTriggers」の感度調整、「AeroActive Cooler II」の風量調整などもここで行える。
スマートフォンでゲームを遊ぶ時、通話や通知でゲームが邪魔をされたり、公衆Wi-fiを拾って通信が切れたり、発熱で不快だったり、メモリ不足で不安定になったりと、ストレスに感じる部分はいろいろある。本機はゲーマーのことをよく研究して、ストレスになるポイントをきっちり解決してきているのがよくわかる。
排熱処理やバッテリーも極めて優秀で快適なゲーム環境
続いては実際にゲームを動かしていく。スペック的に、今あるゲームアプリがどれも快適に動くことは想像できるので、発熱や使い心地など触ってみてわかる部分をチェックしていきたい。
ドラクエウォーク
1つ目は「ドラゴンクエストウォーク」。気温21度の晴天時にプレイした。
ディスプレイは日光が当たるとかなり見づらくなるが、明るさ90%以上なら支障ない程度になる。明るさの自動調整機能を使って、日陰では70%、日向では100%程度になるよう調整しておくと快適にプレイできた。
わざと日光を当てながらプレイしたが、端末の熱はほとんど感じられない。背面の右上部にあるスリット部分は、触るとほんのり温かい程度には熱を持つのだが、左手で端末を持っている時には触れることがないため、結果的に発熱はほとんどわからない。
バッテリー消費は、1時間のプレイで8%ほど。大容量バッテリーの効果は大きく、1%区切りのバッテリー残量を注視しているのが馬鹿らしくなるほど減りが遅かった。
フォートナイト
2つ目は3Dアクションシューティングの「フォートナイト」。画質はもちろん最高のエピックで、プレイ中は快適そのものだ。
プレイ中は横持ちにしているが、やはり発熱はほとんど気にならない。わざと背面を触ってやると、全体的にほんのり温かくなっているのがわかる程度だ。最も温かいのはやはりスリット部分で、横持ちだと左手側の下部の位置になる。
両手で持った時にもこのスリット部分に指が触れることがない。持ち方にもよるとは思うが、筆者は自然に持つと触れなかった。持ち方によらず、手が触れにくい場所から排熱しようという設計のようだ。ゲーマーのことを本当によく研究していると思う。
バッテリー消費は、30分のプレイで6%程度。数時間連続でプレイしても十分な余裕があるし、「AeroActive Cooler II」を使って充電しながら遊べば僅かな心配すらない。
また本作では、先述の「AirTriggers」の機能が効果的に使える。もっとも本作はゲームパッドにも対応しているため、操作感はそちらの方がいいとは思う。
スクスタ
3つ目はリズムゲーム「ラブライブ!スクールアイドルフェスティバル ALL STARS」。3D描画負荷とシビアなタイミングのタップのため、高性能が求められるゲームだが、最高画質の「3D最高」にしてもなお余裕があるようで、動作の不快感は一切なかった。
今回プレイした4作のゲームの中で、本作のプレイ時が最も印象に残った。端末の上下に設けられたステレオスピーカーの音質がとても良いのだ。ボーカルは明瞭で透明感があり、小型端末が苦手とする低音も、端末の中でこもらせるような感じでうまく作っている。小型スピーカーにありがちなノイズ感がとても少なく、低音から高音までのバランスは、このサイズの端末から出る音とは思えないほど衝撃的だ。
ちなみに操作をミスして大ボリュームにしたときには、驚くほど大音量になった。テレビのリモコンを押し間違えて大音量になったくらいの印象で、本機を最大音量で使う人はまずいないと思う。それでも音質は破綻しておらず、音量・音質の両面でただただ驚かされるばかり。音楽ゲームの本作も、ヘッドフォンなしで遊んでも十分快適だ。
バッテリー消費は30分のプレイで4%程度。これだけ消費が少なければ充電しながら遊ぶ必要もなく、置きたい場所に置いて気兼ねなく遊べる。
クラロワ
4つ目は対戦型ストラテジーゲーム「クラッシュ・ロワイヤル」。片手持ちで集中して遊ぶゲームなので、端末の重さがネガティブに働きやすいのだが、やはり筆者が使う普段の端末(約170g)に比べると格段に重く感じられる。長時間遊ぶ時には、スタンドを使うなり休憩を挟むなりした方がいいように思う。
もともとそれほど負荷の大きなゲームではないが、主にスリット部分で排熱されるスタイルは、端末をじっと手に持って遊ぶ本作と相性がいい。プレイ中に熱を感じることはほぼなく、その点では快適だ。
画面も比較的大きめなので、タッチ操作で僅かなズレが発生しやすい本作のプレイもかなり良好。240Hzのタッチサンプリングレートが効果を発揮しているかどうかまではわからないが、素早い操作が求められるシーンでも思い通りに操作できた。
バッテリー消費は30分のプレイで4%程度。1回のプレイが短く、電車での移動中など合間の時間に遊びやすいゲームなので、バッテリー消費がこれだけ少なく済むのは安心感がある。
性能だけでなく音やバッテリーまで考慮した1台
昨今はハイエンドなゲーミングスマートフォンがいくつも登場してきているが、本機はあらゆる面で一歩先を行っているように感じる。チップセットやメモリーなどのスペックだけを見ればは、他社でも同程度のものが作れるだろうとは思うのだが、それ以外の部分でここまで満足度を上げるのは容易ではないと思う。
ゲームプレイには処理能力だけでなく、画質や音質、安定性は常に求められるし、スマートフォンゲームに限れば発熱やバッテリー持続時間の問題もある。人によっては録画や配信もしたいだろうし、手汗が気になるという人もいるだろう。マニアな人なら、メモリーをとことん解放して究極の安定性が欲しいとか、処理能力を極限まで上げたいゲームもあるだろう。
これら全てに標準で対応できるというのは、本当にすごいことだ。繰り返しになるが、ゲーマーのプレイ状況や不満点をよく研究して、きちんと対策を練ってきた端末だということが、使うほどにわかってくる。ASUSはパソコンでもゲーミング向けのハードウェアを提供している企業だけに、ゲーマー向けのノウハウやこだわりがしっかりとあるのだろう。
唯一の欠点は重さだが、ゲーム機として考えればそこまで気にならないかもしれない。たとえば「ニンテンドー3DS LL」は約329g、「ニンテンドー2DS」は約260gあることを思えば、横持ちで遊んで疲れるほどの重さとは思えない。とはいえ片手で持つなら単純計算でも重さは倍の換算。さらに持ち方や重量バランスを考えれば、それ以上に重さや疲労を感じるはず。縦持ちのゲームを長時間遊ぶ人は注意を要する、とは言っておきたい。
40代男性の筆者個人の感想としては、この程度の重量アップならバッテリーの大容量化の方がメリットが大きいと感じる。そして本機で一番気に入ったのは音質の良さ。ゲームプレイはもちろん、動画や音楽の視聴の際にもとても快適に利用できる。ディスプレイもメリハリのある発色でいながら、変にきつい色味にもなっておらず自然な印象だ。スマートフォン単体として見ても、不満点はそう出てこない。
防水やおサイフケータイといった機能や、SDカードスロットがない点を引き合いに出されると辛いが、それさえ許せるなら最高のスマートフォンゲーム環境であると言っていい。価格は決して安くはないものの、1~2年くらいでお役御免になる性能でもないだろう。快適な端末を長く使いたい人には、検討に値する1台だ。