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ソニーモバイルとZMPが産業用全自動ドローンの子会社設立

 ソニーモバイルコミュニケーションズとZMPは、全自動のドローンで地形や現場をデータ化し提供する合弁会社「エアロセンス」を設立し、建築や農業など幅広い分野に向けて、統合ソリューションとして提供すると発表した。2016年前半より法人向けに提供が開始される見込み。

 エアロセンス製のドローンが開発されており、ソニー製のセンサーやロボット技術に加え、通信技術やクラウド関連の技術、ZMPの自動操縦技術が統合され、計測プラットフォームと産業用ソリューションとして提供される。

 特徴とするのは、離着陸から撮影までを、あらかじめ設定したプランに沿って、すべて自動で行える点。ドローンの操作で熟練のオペレーターを必要とせず、飛行時は担当者がタブレットなどでモニターするだけという簡便さを実現した。

 法人向けとして、撮影した画像から生成する2D・3Dデータを解析・運用するのが中心になり、「建築・点検」「土木・鉱業」「監視・警備」「農業」「物流・運搬」などの分野が事業領域とされている。具体的には、土木現場における土量の算出、建設現場における状況把握や資材の計量、水田における生育状況の把握や収穫時期の判断などの例が挙げられている。

 自社製の無人航空機(UAV)は、試作機として2種類が公開された。1つは4基のプロペラを持つマルチコプターで、ソニー製レンズスタイルカメラ「DSC-QX30」を下方に向けて搭載。自立飛行に必要なセンサーが技術が搭載され、パソコンなどにデータを転送する際に利用するTransferJetも搭載している。

 もうひとつは垂直離着陸(VTOL)が可能な飛行機型で、機体中央にあるメインの2重反転プロペラの方向を制御して上昇・下降と飛行を行う。最大時速170km、2時間以上の飛行、最大10kgの積載量を実現し、将来的には物資の輸送などへの応用も検討されている。

 エアロセンスは7月22日に概要を発表、8月3日付けで設立されており、出資比率はソニーモバイルが50.005%、ZMPが49.995%。資本金が1億円、資本準備金は1億円となっている。代表取締役CEOには、ZMPの代表取締役社長である谷口恒氏が、取締役にはソニーでAIBOなどを手がけた佐部浩太郎氏らが就任している。

スマートフォンだけでは成長は望めない

ソニーモバイルコミュニケーションズ 代表取締役社長兼CEOの十時裕樹氏

 24日に都内で記者向けに開催された発表会では、ソニーモバイルコミュニケーションズ 代表取締役社長兼CEOの十時裕樹氏が登壇し、ソニーモバイルが合弁会社に出資する意義や背景が説明された。

 十時氏は、ZMPにイメージセンサーの担当者を紹介したのをきっかけに、ソニーの内部で研究していたドローンの分野で、ZMPと共同研究する話がまとまり、ソニーでロボットなどを担当していたチームが合流、本格的な研究開発が始まり、そのまま合弁会社に組み込まれたことなどが語られた。

 十時氏はソニーモバイルにとってのエアロセンスへの出資の意味について、「スマートフォンを主力にしているが、これだけでは成長は望めない可能性もある。新規事業に積極的に取り組み、投資することは、中期的な経営方針にも掲げており、その一環」と説明。その上で、エアロセンスへの期待として、自動運転やロボット技術を応用する付加価値を提供することとした。

 「一番重要で、成長の鍵となるのは、ベンチャースピリット。事業につないでいく素晴らしい財産になる。エアロセンスの事業開始から成長に向けて、積極的にバックアップ・支援をしていきたい」と、十時氏は同社の姿勢を明らかにしている。

エアロセンス 代表取締役CEOの谷口恒氏

 エアロセンス 代表取締役CEO(ZMP 代表取締役社長)の谷口恒氏は、産業用のUAVに必要なものをプラットフォーム化し、トータルに提供するとした上で、フライトパスの自動生成、離着陸の自動化、飛行の自動化、撮影の自動化により「ユニークで、競争力を持っている。環境認識技術で、GPSが届かない場所でも運用できる」と、特徴を解説した。エアロセンス 取締役 CTOの佐部氏からは、具体的な運用イメージや、試作機が飛行している様子の映像なども紹介された。

エアロセンスについて
エアロセンス 取締役 CTOの佐部氏
マルチコプター型UAV
垂直離着陸型UAV
運用イメージなど

太田 亮三