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ドコモ連携2年目のマネックス証券、口座獲得・維持に効果あり

 マネックス証券は10月22日、NTTドコモとの資本業務提携後の状況を発表し、メディア向けの経過報告会を催し、その内容について、説明がおこなわれた。

NTTドコモとの資本業務提携から2年を経過し、経過報告会が催された

 経過報告会ではマネックス証券 グロース戦略推進部長の田邊湧志氏が登壇し、内容の説明を担当したが、田邊氏が所属するグロース戦略推進部は、2024年1月に資本業務提携をスタートさせたときに開設された部署で、NTTドコモとの連携やプロモーション、プロダクトなどを考える戦略設計を担当しているという。

経過報告会で説明をおこなったマネックス証券 グロース戦略推進部 田邊湧志氏

NTTドコモとマネックス証券の資本業務提携から約2年

 NTTドコモとマネックス証券の資本業務提携は、2023年10月4日に発表され、2024年1月から正式に業務をスタートさせている。2024年7月にはdカードを利用した「dカード積立」、同年9月には証券口座とdアカウントの連携、dポイントがたまる・使える「dポイントで投資」の提供を開始している。

 2025年には「d払い」アプリから、マネックス証券の証券総合取引口座の開設や投資信託の申し込みができる資産形成サービス「かんたん資産運用」の提供も開始している。

NTTドコモとの連携サービスは「dアカウント連携」による「dカード積立」「ポイント投資」「かんたん資産運用」を展開。この他にも「d menu」のマネーで「投資のクイズ」などを展開

 こうした流れの中、実際にマネックス証券がどのように推移してきたか、利用動向がどうなっているのかが説明された。

 まず、dアカウント連携は2024年10月の開始当初に比べ、今年9月の段階で約4倍に増え、dカード積立の利用者数も約9倍に増加。マネックス証券で投資信託の購入に利用されるdポイントの月次利用額も当初の約3倍が利用されるようになり、着実に増えているという。

実数は明かされなかったが、dアカウント連携を設定した口座は開始当初の約4倍にまで拡大している
「dカード積立」の利用者数も順調に伸び、開始当初の約9倍にまで増えた

 新NISAについては2024年1月以降の口座開設者のNISA口座開設率をdアカウント連携の有無で比較したところ、dアカウント連携のあるユーザーの62%が開設したのに対し、dアカウント連携なしのユーザーの開設は40%に留まっており、これまで投資を未経験だったユーザー層がNTTドコモとマネックス証券の提携を機に、マネックス証券で証券口座やNISA口座を開設していることがうかがえる。

dアカウント連携を設定した口座はマネックス証券でのNISA口座開設率も高い

 NISA口座については、年に一度、銀行や証券会社などの金融機関を変更することができるが、他社からマネックス証券に移管したユーザーのうち、64%がdアカウント連携をしているのに対し、マネックス証券から他社へ移管したユーザーではdアカウント連携をしているユーザーが8%と非常に少なく、dアカウント連携が『ドコモ経済圏』にいる個人投資家に魅力的と捉えられ、口座の獲得や維持につながっているという。

NISA口座の金融機関変更は他社から移管が多く、他社への移管が少ない。口座の獲得と維持につながっている

dカード積立で毎月10万円を積み立てている個人投資家が30%

 NTTドコモと資本業務提携を締結したマネックス証券において、もっとも象徴的なサービスである「dカード積立」は、どのように利用されているのだろうか。

 dカード積立で月々に積み立てている金額については、個人投資家の30%がクレジットカード積立の上限である10万円を積み立てているが、月々の積立額が2万円以下の投資家も29%と多い。dカード積立の特典を最大限に活かす人だけでなく、負担を抑えて、手軽に投資をはじめる人も多いようだ。

「dカード積立」の月間積立利用額分布は、クレジットカード積立の限度額の10万円が30%を占める一方、2万円未満の積立も同程度

 NTTドコモのdカードには、昨年11月に発行を開始した最上位カード「dカードPLATINUM」、NTTドコモのユーザーにもっとも広く利用されている「dカードGOLD」、年会費無料で利用できるレギュラーカードの「dカード」、18~29歳限定の「dカードGOLD U」が発行されているが、dカード積立の利用状況をdカードの券種別に見ると、「dカードGOLD」が44%と多く、これに「dカードPLATINUM」の33%、「dカード」の21%が続く。

 ただし、「dカードGOLD U」は今年2月に提供を開始し、年齢制限があることを考慮すると、2%という割合も理解できる。全体的に見ると、カード券種が高ランクであるほど、積立額が高い傾向にあり、NTTドコモ(dカード)とマネックス証券の優良顧客が相互に拡大していると評価している。

カード券種別のdカード積立の利用割合は、発行数の多い「dカードGOLD」が44%を占めるが、カード発行開始から1年に満たない「dカードPLATINUM」も33%と多い

貯めたdポイントを積極的に「dポイントで投資」へ

 マネックス証券では元々、自社サービスの利用に対し、マネックスポイントを付与していたが、NTTドコモとの資本業務提携に伴い、昨年9月からはdポイントを利用して、投資信託を購入できる「dポイントで投資」を開始している。

 ポイント投資については、マネックスポイントとdポイントの利用人数を比較すると、dポイントの利用者が全体の59%を占めているが、利用額で比較すると、dポイントの利用額は87%と非常に高い。

 マネックスポイントがマネックス証券での投資信託の保有やマネックスカードの利用などで貯まるものであるのに対し、dポイントはNTTドコモの利用や日々の買い物などで貯めることができるため、貯めたdポイントを積極的にdポイント投資に使っている傾向が見られる。

dポイントとマネックスポイントのポイント投資の利用人数の比率に比べ、利用額はdポイントが圧倒的に多い。貯めたポイントを投資信託の買付に回す傾向がうかがえる

 また、昨年9月の「dポイントで投資」のサービス開始以降に開設された口座のうち、「dポイントで投資」を利用しているユーザーは約10%だが、そのうち、3割は現金での投資をせず、dポイントでの投資のみをおこなっている。

「dポイントで投資」のサービス開始以降に開設された口座のうち、「dポイントで投資」をしている口座はまだ10%だが、このうち、3割がポイントのみで投資をしている

 今年7月、NTTドコモはマネックス証券と連携し、「d払い」アプリから簡単にマネックス証券の口座開設や投資信託などの積立申し込みなどができる「かんたん資産運用」をスタートさせている。サービスが開始されたばかりなので、速報値に過ぎないが、既存のマネックス証券の口座保有者の年齢別属性に対し、20代と30代の割合が10%ずつ高くなっており、若い世代の投資を拡げるきっかけになっているという。

「d払い」アプリから利用できる「かんたん資産運用」は20代や30代といった若い年齢層で利用が拡大している

引き続き、NTTドコモとの連携を強めていく

 経過報告の説明後、グロース戦略推進部長の田邊氏が質疑応答に応じた。

プレゼンテーションと質疑応答に登壇した田邊氏は、今後もNTTドコモとの連携を深め、より良いサービスを提供していきたいとした

――資本業務提携を発表したとき、500万口座を目標にするとしていたが、現時点で約270万口座に留まっている。何かギャップ(隔たり)が生じているのか?

田邊氏
 口座の獲得計画については、高いものを掲げたのですが、確かに現時点ではまだ目標に届いていないという状況です。

 ただ、証券業界はマーケットの環境なども影響しやすいですし、昨今、セキュリティに対する不安(※証券口座を狙った詐欺)などもありますので、無理に口座を取っていくというより、しっかりとお客様に対して、良いサービスを提供していくことが大事だと考えています。

 あまり焦らず、目標に向かって進んでいきながら、結果に結びつけていきたいという考えです。

――資本業務提携を発表したときに想定されていたサービスは、ひと通りリリースされたという印象ですが、証券会社と携帯電話会社が資本関係を持つ他社のケースを見ると、証券会社側から携帯電話会社側のメリットに結び付くような取り組みがあります。マネックス証券の場合、まだそういったものがないよう見えますが、何か制限があるのでしょうか?

田邊氏
 ドコモさん側のサービスとの連携が制限されているわけではなく、ひとつは実現のしやすさが関係しています。

 たとえば、dカード積立を利用していただくと、dポイントを付与する形になっていますが、これは早く提供できるので、優先していたという背景があります。

 この他にもキャンペーンなどで連携したものもあります。たとえば、マネックスのサービスを利用することで、「d払い」アプリの還元率が高くなるような取り組みは、本当にやりたいと思っていますし、常設的なプログラムの内容も含めて、迅速に検討していきたいと思います。

 もうひとつ付け加えると、経済圏という視点で見ると、やはり、マネックス証券内でポイントを使っていただくことも非常に重要だと考えています。

 dポイントが貯まる証券会社というだけでなく、貯めたdポイントを使っていただくというしくみもしっかり設計していきたいと思います。

――dカードの券種別分布が示されたが、NTTドコモでの発行比率に比べると、どうなんでしょうか?

田邊氏
 dカードの券種別の発行比率は当社でお示しできないのですが、イメージとしては「dカードPLATINUM」の比率が高く出ていると思います。

 長く利用されてきた「dカードGOLD」に対し、「dカードPLATINUM」は昨年11月に発行を開始したばかりですが、それでも33%という割合は非常に多いと言えます。

――マネックスカードやマネックスポイントについては、今後、どのようにしていく考えなのか?

田邊氏
 dアカウント連携をした口座が多く、dカード積立もかなり増えていますが、マネックスカードやマネックスポイントについて、廃止するような考えはまったくありません。

 ドコモさんを経由した口座開設は多いですが、マネックスの他のところに魅力を感じて入っていただけたり、マネックスポイントを貯めている方もいらっしゃいますから、そういった方々にもより良いサービスを提供していく方針です。

――経済圏の競争やNISAの口座獲得など、非常に意欲的に取り組まれていると思いますが、株式や投資信託など、金融商品は各社で扱っているわけで、差別化が難しい側面もあります。今後、独自の投資体験が必要になってくると思いますが、他社との差別化をどのようにお考えでしょうか?

田邊氏
 そうですね。おっしゃる通り、金融商品は差が付きにくい面があると思いますが、当社で言うと、「マネックス・アクティビスト・ファンド」のように、手数料を加味した中でもリターンが提供できるような商品があり、お客様のリターンにつながる商品は、今後も続けていきたいと考えています。

 グロース戦略推進部という目線で申し上げると、ドコモさんとの取り組みについては、引き続き、より良いプロダクトを提供できるように検討していきたいと思っています。

 ただ、「dポイントで投資」のように、ポイントを貯めて、投資するという流れは、今後もしばらく続くと見ていますので、dポイントを絡めたサービスをうまく作り込んで、差別化を図っていきたいと考えています。