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設立5年目のデジタル庁、目指すは「AIフレンドリーな国」

 デジタル庁は設立から5年目を迎えた5日、活動報告会を開き、これまでの活動成果と今後の方針を示した。

4年間の成果を振り返り

 設立から4年間のデジタル改革は、「生活」「事業・地域」「行政」の3分野で成果が出ていると説明した。

デジタル庁資料より(以下同)

 生活面では、行政手続きのオンライン化が大きく進展。マイナポータルの改善により、引っ越しやパスポート申請、子育て支援、納税などが自宅から完結できるようになり、利便性の向上と窓口負担の軽減につながった。

 マイナンバーカードは国民の約8割が取得し、健康保険証や運転免許証、本人確認に利用できるデジタル認証アプリとしての活用が広がっている。救急医療や本人確認の場面で実用されるなど、生活の中での利用シーンも拡大した。

 事業や地域では、従来のアナログ規制を見直し、行政手続きが「デジタル前提」へと転換。ドローンやAIなどの新技術も現場に導入され、行政の仕組みそのものを変える動きが進んでいる。

 行政分野では、国と地方のシステム共通化やガバメントクラウド導入が進み、4000以上のシステム移行が完了。政府共通基盤「GSS(ガバメントソリューションサービス)」は4万人以上が利用しており、安全性と利便性を両立させている。

AIフレンドリーな国家を目指して

 一方で、これまでの取り組みは一定の成果を上げたものの十分とは言えず、国内外に課題が残っていると指摘。今後は行政のデジタル改革を土台に社会全体の改革を進め、AIフレンドリーな国家を目指すとした。

 人口減少や労働力不足、災害対応、国際競争といった課題を背景に、AI・先端技術の活用、データ利活用、安心安全なデジタル環境の整備、人材育成を重点領域に掲げる。

 AI分野では、政府AI基盤「ガバメントAI」を構築し、生成AIを含む業務サービスを政府や自治体に提供する。行政文書作成や問い合わせ対応、政策立案の高度化などに活用を想定し、ガイドラインを改定して透明性や信頼性を担保する。開発はデジタル庁内の専用チームが担い、内部開発で柔軟に推進するとした。

利用者利便性とデータ利活用の強化

 利用者視点の改革も柱に据える。2026年春には、個人向けの「マイナポータル」に相当する事業者向けサービスとして「Gビズポータル」を公開する予定。あわせて個人向けサービスでは、「マイナポータル」と「デジタル認証」アプリを統合した新しい「マイナアプリ(仮称)」を2026年夏にリリースする計画も明らかにされた。

 そのほか、ライフイベントに応じた行政サービスの一括案内や、AIによる問い合わせ対応の導入など、国民や事業者にとって利便性の高い仕組みを整える。

 データ利活用については、国や自治体が保有するデータを安全に共有できる基盤を整備し、医療、防災、教育、産業など幅広い分野での活用を推進。ガバメントクラウドの拡充や共通仕様の整備により、自治体間や官民の連携を加速させる方針を示した。

デジタル庁2.0への進化

 デジタル庁は「デジタル庁2.0」への進化を掲げ、AIとデータを前提とした行政組織づくりを進める。官民一体の強みを生かし、内部からの改革力を高めるとともに、多様な人材の採用を積極的に進め、1500人体制を目指す方針を示した。

 組織全体では「ガバメントAI」を職員が徹底的に活用し、業務効率化や政策立案の高度化を推進。さらに「Japan Dashboard」によるデータ可視化や、人事・会計など内部データの集約を通じて、リアルタイムに近い組織状況把握を可能にする。これにより、データに基づく政策づくりやサービス改善を加速させる。

 また、マイナポータルやガバメントクラウドで実績を重ねてきた内部開発をさらに強化し、品質向上やコスト最適化に加え、政策立案から実装までのサイクルを従来の1~2年から数週間・数カ月へと短縮。「AI時代の行政組織」として変化に即応できる体制を整える考え。

 このほか、国民や事業者の声を施策に反映する仕組みの高度化や、関係省庁への伴走支援を強化し、共に課題を解決する文化づくりにも取り組むとしている。