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京セラ、AIを活用した5G仮想化基地局を開発 O-RAN普及を目指すアライアンスも設立

 京セラは、AIを活用した5G仮想化基地局の開発を商用化に向けて本格的に開始するとともに、アジアの通信ベンダー6社とオープンRAN(O-RAN)の普及を推進し、エコシステムを共創するためのアライアンスを設立すると発表した。

左からKWIC 戦略企画部 戦略推進部 責任者 中川芳久氏、統括部長 福島勝氏、副統括部長 堀正明氏、無線ネットワーク第1開発部 部長 錦戸正光氏

通信インフラ事業参入を目指す、AIを活用した5G仮想化基地局

 京セラは、「NVIDIA GH200 Grace Hopper Superchip」を活用したAIデータセンターの汎用サーバー上に基地局機能(vRAN)を実現し、AIによって通信品質の向上、省電力化、保守・運用の効率化を可能にする5G仮想化基地局を開発する。

 従来の専用vRANでは、通信量に応じた調整が難しく、CPUに無駄が生じていたが、同社が開発を進めるAIデータセンター上のvRANは、空いたリソースをAIが使うことで、無駄なくCPUを使用し、自律的な最適化や電力制御ができるようになるという。

 さらに、基地局の設備を複数のキャリアで共有できるMORAN(Multi-Operators RAN)に対応させる。CU(Central Unit)やDU(Distributed Unit)、RU(Radio Unit)を共有することで、基地局の設置数を減らし、設備投資や電気料金の削減に繋げる。

AI技術などを合わせると44%のTCO削減となる

 同社が開発を進める背景には、現在の専用RANが将来的にAI-RANやCloud-RANへと進化し、ベンダーの入れ替わりや新規参入の機会が生まれるという見込みがある。同社は、現在専用vRANで寡占状態となっている通信インフラ業界において、O-RANの普及を促進する牽引役となることで、この寡占状態を解消することを目指している。

5G RANオープン化の普及促進に貢献する「O-RU Alliance」

 また、同社は3月3日にアジアの通信ベンダー6社と「O-RU Alliance」を設立することを発表した。同日にスペイン・バルセロナで開催されている「MWC 2025」で調印する予定。

ブースイメージ

 アライアンスに参画する企業は、京セラのほかAlpha Networks(台湾)、HFR(韓国)、Microelectronics Technology(台湾)、SOLiD(韓国)、VVDNテクノロジーズ(インド)、WNC(台湾)の7社。

 同社は、O-RUベンダーが優れた製品を開発してもキャリアに採用してもらえないという高いハードルがあると考えており、アライアンス活動を通じて相互運用の向上に取り組むとしている。また、O-RUのグローバル展開を考えると、各国各キャリアごとに使用する周波数が異なるほか、設置場所によって必要とされる基地局のタイプが異なるため、アライアンスを通じてO-RUのラインアップの拡充を目指すという。

 同社やソフトバンクが参画している「AI-RAN Alliance」については、「競合する関係ではなく、力を合わせてO-RAN仕様の普及をしていきたい」と述べた。