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中四国最大の野外ロックフェス「モンバス」、ドコモが実施した通信対策とは
2024年8月27日 00:01
8月24日、25日に香川県の国営讃岐まんのう公園で開催された、中四国最大規模の野外ロックフェスティバル「MONSTER baSH(通称“モンバス”)」。2000年の初開催以来、今年で25回目を迎えたモンバスは、香川県の夏の風物詩として定着している。今年も1日あたり2万5000人、2日間で5万人のチケットが早々に完売するなど、大いに盛り上がった。
ところで、このような大規模な野外イベントで問題となるのが、携帯電話の回線状況だ。通常とは桁違いの人が集まり、スマートフォンや携帯電話を一斉に利用することから、データが流れないといった声を聞くことも少なくない。また、近年は屋外イベント併設の飲食エリアや物販エリアにおけるキャッシュレス決済の利用も増えており、安定した携帯回線の利用が欠かせなくなっている。
そのため各通信事業者は、モンバス開催に合わせて会場での通信対策を実施しているが、今回はモンバスに協賛するドコモの通信対策について取材してきた。
起伏が大きく樹木などの影響も考慮し2台の移動基地局を配置
モンバスが開催される国営讃岐まんのう公園は、日本最大のため池として有名な満濃池のほとりにある小高い丘に位置している。ドコモは公園周辺に5G基地局を設置して、公園のほぼ全域で5Gエリア化しているが、公園自体が起伏に富み、ステージが設営される広場周囲には大きな樹木が生い茂っていることもあって、既存の基地局だけでは5Gの電波が届きにくい場所が存在しているという。
ドコモは、モンバスが中四国最大規模のイベントであることや、モンバスに協賛していることもあって、携帯回線の安定性を向上させるための対策を強化している。例えば、昨年は車両天井に5Gアンテナを備え、4Gだけでなく5Gにも対応する移動基地局を設置して対策を行ったそうだ。ただ、それでもピーク時などにデータが流れにくい状況が見られたという。そのため今年は、より良い電波環境を実現するために、2台の移動基地局を配置。同時にバックアップ用として低軌道衛星「Starlink」を利用した公衆無線LAN「d Wi-Fi」も2箇所設置した。
設置した移動基地局のうち1台は、昨年同様に5Gにも対応する移動基地局を利用。こちらは主に、会場内の物販エリアと飲食エリアに向けて4Gだけでなく5Gの電波が安定して届くようにアンテナを調整。物販エリアや飲食エリアでは、決済にd払いをはじめとしたスマホ決済や電子マネー、クレジットカードなどが利用可能で、物販コーナーではd払い専用レーンも用意してキャッシュレス決済を推進。それらキャッシュレス決済が混雑している中でも安定して利用できるよう、特に5Gを有効活用できる場所として対策を行うことにした。
また、もう1台の移動基地局はステージ周辺をカバーするように配置。この移動基地局は4Gのみの対応となるが、アンテナとしてマルチビームアンテナを採用する点が大きな特徴となっている。
通常の基地局で利用されているアンテナは、3から6セクタで360度の範囲をカバーするため、1セクタあたり60~120度と比較的広い範囲をカバーしている。それに対し今回の移動基地局に設置しているマルチビームアンテナからは1セクタあたり10~15度ほどの狭ビームを発射。そして、セクタ幅を狭め、セクタ間の干渉も最小限になるようにエリアを構築することによって、セクタごとのユーザー数をなるべく少なくしてトラヒックを分散し、より安定した通信環境を実現するという。
細かく見ると、この移動基地局からは2GHz、1.5GHz、800MHzの4G電波を発射しており、このうち2GHzの5セクタと1.5GHzの3セクタをマルチビームアンテナで発射する。
ドコモによると、このマルチビームアンテナ搭載の移動基地局による対策は、モンバス以前にいくつかの四国内の大規模イベントで実施し、高い効果が得られることを確認済みとのこと。今回の取材はモンバス開催前日だったため、実際のイベント時の状況についてはわからないが、ドコモ関係者はモンバスでも通信環境の改善に寄与するだろうと期待感を示していた。
公園内に光回線を敷設しバックボーンとして利用
郊外での大規模のイベントとなると、移動基地局を用意したとしても、余裕のあるバックボーンを確保できなければそれほど大きな効果が期待できない場合もある。ドコモも、以前はマイクロ回線をバックボーンとして利用していたため、移動基地局を置ける場所も周辺の山に設置したマイクロ回線の基地局が見通せる場所に限られるなど、運用に苦労する部分もあったという。
しかしドコモは今回、公園内の地下配管を利用して専用の光回線を敷設し、その光回線と移動基地局を光ファイバーで接続することで、余裕のあるバックボーンを確保できたという。そもそも国営の公園でそういった対策ができるということ自体驚きだが、このあたりは国営讃岐まんのう公園やイベント主催者などとの長年にわたる信頼関係の構築もあって実現できたとのこと。ドコモとしても、モンバスに協賛していることや、重要イベントとして対策に注力していることからも、独自の光回線を敷設できたことは非常に大きいと考えているとのことだった。
会場で8000以上d払いで支払った人に限定NFTを配布
この他モンバスでは、ドコモの新規事業創出プログラム「docomo STARTUP」からスピンアウトしたクロスビジョンによる限定NFTの配布も行った。
昨年のモンバスでは、来場者全員に無条件で限定NFTを配布したが、ウォレットアプリの使い勝手の敷居が高く、5万人の入場者に対して約1%ほどの取得率だったという。そこで今年は、NTT Digitalのウォレットアプリ「scramberry WALLET」を利用するように変更。scramberry WALLETは電話番号のみで初期登録ができ、管理も電話番号で行えるため、非常に手軽に利用できる点が特徴で、こちらを利用することで、より手軽にNFTを受け取れるようにした。
そのうえで、今年は配布数を限定。会場内でd払いで8000円以上の支払いを行った人先着300名に限定NFTを配布することにし、プレミアム感を高めた。さらに、後日リアル限定グッズとしてキーホルダーまたはレコード風ミニタオルが郵送されるというおまけも付いてくる。
ただ、現在はNFTをおまけのようにもらうだけなので、今後はどう付加価値を高めていくかが課題と考えているという。例えば、今後は来年のイベントでの割引券として利用できたり、参加アーティストの協力などが得られれば付加価値を高められるため、様々なチャレンジをしながら次世代の着地点を模索したいとのことだった。