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「これからはIoT、AI、ロボットだ」、孫氏が示す未来戦略

 30日、ソフトバンクグループのプライベートイベント「SoftBank World 2015」が開催された。代表取締役社長の孫正義氏は、競争力を身につけていくためには「情報武装が必要」と指摘。ソフトバンクとしては「IoT(モノのインターネット)」「AI(人工知能)」、そして「ロボット」という3つの分野に注力する方針と語った。

ソフトバンクの孫氏

スマホとタブレット、クラウドが“三種の神器”

孫氏は、情報武装の具体的な手段として、スマートフォン、タブレット、そしてクラウドという3つの要素を挙げる。少なくともスマートフォンを使うことは大前提となり、「前回も一日でも早く情報武装しましょうと呼び掛けた。この会場にスマホを使っていない方はいますか?(数名パラパラと手を挙げた様子)1%くらいいますね。その方はもう化石です(笑)。スマホすら使っていない人は、1日でも早く、自らを進化させて欲しい」と聴衆に語りかける。

 「スマートフォン」「タブレット」「クラウド」を“三種の神器”とした孫氏は、これらを使うことでようやく情報武装したことになる、と解説。その上で、10年、20年と長期的な視点で戦略を練る際には、無謀な賭けではなく、勝算のある武器を手にすべき、と指摘。たとえばソフトバンクの場合は、ボーダフォン日本法人を買収してモバイル事業へ進出する際、2兆円もの資金を要するため、孫氏は「スティーブ・ジョブスに会いに行った。iPodに携帯電話の機能を搭載してくれとお願いしに行った」と当時を振り返り、そうしたアクションがiPhoneを先行して国内販売できたことに繋がり、武器となって2兆円のばくちに挑むことができた、と胸を張る。

ソフトバンクが注力する3分野

 孫氏は、これからの時代に挑むため、ソフトバンクはこの「IoT」「AI」「スマートロボット」の3つに注力する、と語る。たとえばIoTは、ありとあらゆるデバイスがインターネットに繋がる、ということで、現在は1人あたり2個のところ、30年後には1人1000個ものIoTデバイスが存在するようになると予測する。

孫氏
 「あらゆるものがクラウドに繋がる。それがビッグデータになる。ビッグデータを分析して新しいビジネスモデルを構築する。それが戦いに勝つための重要なキーになる。たとえば椅子は、腰掛けるだけだったが、IoTになれば家電の操作、体調管理、姿勢の矯正などの機能を備えるようになる」

 衣服や家具までクラウドに繋がるようになれば、センサーで検知した情報で健康管理もしやすくなり、ユーザーはたとえば保険代が安くなる、IoTを活用する自治体、政府は医療費が安くなる――こうして具体的なイメージを描いた孫氏は、ソフトバンク自身が最先端の技術に挑む企業でありたい、それを周囲に勧めていく存在でありたい、と意気込む。

 2つ目に挙げられた「AI(人工知能)」について、いずれコンピューターの知能は人間を超えていくとの推測を示し、「では知能、知識で人間が勝てるのか、と問いかける。今後30年以内には、現在ある職業の47%が機械に取って代わられるものの、コンピューターにとっては不得手ながら人間であれば取り組める部分もある。コンピューターに任せられるものはどんどん任せて効率化を図り、人間自身は自らが得意な分野で力を発揮する。そうした環境をソフトバンク自身に整えて競争力にしていく、と未来を描く。

 孫氏は、重要視する3つ目の要素「ロボット」はどうか。孫氏は、「これまで“ロボットのような”という形容は決められた動きしかできない、といった場合に使われた」と指摘。AIによって、実際のロボットをそうした制限から解き放ち、今後、人類よりも増えるであろうロボットとの共生時代に向けて登場したのが、“感情を理解する”という同社のロボット、Pepperだと紹介。外部の刺激をもとにホルモンが作用して感情に変換される、という脳の構造をシミュレートし、ディープラーニングによって状況を認知、判断していく仕掛けをPepperでは利用できるようにした、とする。

 「Pepperは月給5.5万円、残業大歓迎」と笑顔の孫氏は、30日に正式発表されたビジネス向けプランをあらためて紹介し、店舗などでの接客では、どういった説明であれば来店客の反応がよいかデータを収集し、今後に活かしたり、店舗の雰囲気やジャンルにあわせてフレンドリーに接したりするなどキャラクターを変更したりできる、とその特徴をアピールした。

いつか来る“シンギュラリティ”

 IoTにより、センサーとして働く装置がいたるところに設置され、AIが発達してそのインターフェイスとしてロボットが広まる。そうした未来を描く孫氏は、いずれ機械が人の能力を超える日、いわゆる“シンギュラリティ(技術的特異点)”の到来に向けて、どういった戦略をとるべきか、と問いかける。

孫氏
 「6歳のころ、テレビアニメで鉄腕アトムを観た。暴走する機関車を止めて悪者をやっつける。そんなヒーローのアトムにたった1つ欠けているものがあった。それは人がなぜ涙するのか、そ意味がわからないというものだった。シンギュラリティを迎えたあと、我々の未来は進化するのか破滅するのか。いつか自分が大人になったらアトムにハートをプレゼントしたいと思った。ロボットは敵ではなく家族。情報革命は単に生産性を向上させるためではなく、人々を幸せにするためのものだ」

Pepperに商品を見せて、認識するかどうか試す孫氏

関口 聖