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KDDIの24年3月期決算は増収減益、「auマネ活プラン」70万契約突破や「Ponta パス」構想など

 KDDIは10日、2024年3月期の決算会見を開催した。同社代表取締役社長 CEOの髙橋誠氏が登壇し、事業の状況を説明した。

髙橋氏

 2024年3月の連結業績は増収減益となった。売上高は5兆7540億円、営業利益は9616億円。マルチブランドの通信ARPU(ユーザーひとりあたりの平均収入)は反転し、+50億円となっている。

 成長領域として、DX領域は+204億円、金融事業は+142億円、エネルギー事業は+160億円ということで「順調に成長している」(髙橋氏)。楽天モバイルによるローミング収入の減収分などを含め、実質の営業利益は1兆806億円となり、期初予想値を達成した。

 5Gの基地局開設計画は完遂し、業界最多となる9.4万局を開設。AI分野では、経産省の助成金を活用しながら、中長期で1000億円規模の設備投資を実施していく。

 ローソンとの協業では、AI・DX活用によって「リアルテックコンビニエンス」を目指すほか、Ponta経済圏の拡大も図る。サブスクリプション「auスマートパスプレミアム」について、「Ponta パス」にリブランドする構想も示された。

 インフラシェアリングでは、ソフトバンクとの協業を全国へ拡大し、2030年度まで累計10万局の構築やコスト削減を目指す。

 今後、スマートフォン+IoTの主要回線数として、2025年3月末には8200万超を目指していく。「auマネ活プラン」はサービス開始から7カ月で70万契約を突破した。通信サービスに付加価値を加えることで、顧客層のさらなる拡大を図る。

 5Gの新周波数について、Sub6の開設基地局は2024年3月末で3.9万局を開設。衛星干渉条件の緩和も受け、今後の急速なエリア拡大を見込む。髙橋氏は「歴史上、このような短期間でエリア拡大をしていくことはなかった。我々としても注目している」と語った。

質疑応答

――NTT法の本丸案件である、特別資産のあり方やユニバーサルサービスに関する議論が進んでいる。これについて受け止めは。

髙橋氏
 NTT法の問題については、「何のために今回この議論をしているのか」っていうのがあると思います。もともとNTTさんが、「国際競争力を上げるためにこういうところが障壁になっているから、NTT法を廃止もしくは改正したい」と言ったわけですよね。

 今回、この要件をすべて盛り込んだNTT法の改正が成立したんです。そうすると、次はNTTさんが、この改正によって国際競争力が本当に強化されるんだというところを示すターンだと思います。

 まずそれをやってもらわないと、本当は次の議論に進めないんだろうなと思っています。

 「環境が変化したからNTT法を廃止すればいい」という議論はありますが、環境が変わっているからこそ、実は逆に強化しなきゃいけない領域も出てきているんじゃないかなと思います。

 ユニバーサルサービスの件もそうですし、基本的にブロードバンドの最終の提供義務をNTTが担保するということは、国にとっても大事です。

 これはもともと特別な資産を持っているNTTさんだからやらなくてはいけないこと。つまり、NTT法はなくすのではなくて、時代とともに環境は変わってきているから、安全保障上の件も含めて強化すべき内容が多くある、と我々は主張しました。

――SIMスワップが問題になっている。KDDIでは現状どのような状況になっているのか。強化の方針は。

髙橋氏
 SIMの問題については2つあると思っていて、ひとつは店頭での扱い、それからネットにおける再発行手続きの問題です。

 まず店頭のほうで、直近ではそのような報告は僕らは受けていません。ですが、やっぱり数年前に同じような疑わしい案件があって、店頭での本人確認の方法はしっかり強化しようということで、きっちり強化をしています。

 ネットについては、うちの場合はeKYCや二段階認証を入れているので、ある程度強固なものにはなっていると思います。ただ、こういうネットの環境においては、いたちごっこ(のような部分)もありますので、たとえばマイナンバーカードの活用など、店頭を含めて強化に取り組みたいと思っています。

 eSIMのところは、ネットでもっと簡易に再発行できてしまうような事業者はいらっしゃると認識しています。このあたりは総務省さんにもしっかりとご指導いただいて、もう少し強固なかたちに……乗換えの推進よりも非常に重要な課題だと思いますので、やっていただければありがたいなと。

――アップルがiPadを発表し、すべてeSIMのみ対応とのことだった。今後KDDIとしてどう取り組むのか。

髙橋氏
 今までも取り組んできていますし、povoでもやっています。ここについては端末のほうが育ってくる以上、当然無視してはいられません。しっかり取り組んでいきたいと思います。

 ただ、一般ユーザーさんにとってeSIMの発行をもう少し簡単に、とかもう少し分かりやすく、という課題はあります。

――今後、通信での競争はどのあたりになってくるのか。

髙橋氏
 競争と協調ということでしょうね。諸外国を見ても、こんなに会社がバラバラとインフラを作っている国なんてないんですよね。5Gインフラの投資はどんどん厳しくなってきているので、協調できる部分は協調していくべきです。

 局舎や、非常時の協力であるとか、こういった部分は協調領域だと思います。

 一方、パラメーターの維持や品質改善、エリアカバレッジみたいなものは競争領域かなと思っています。

――ポイント経済圏に関する考えを聞きたい。

髙橋氏
 ポイント経済圏については、競争としては非常に激化しているので、我々としてもしっかりと対応しなきゃいけないと思います。

 今回は、ローソンさんなどとの話し合いで、Ponta経済圏をしっかり広げていこうという話になっています。Ponta パス(編集部注:auスマートパスプレミアムからリブランド予定)は結構大胆な戦略だと思っています。

 これまでauだけで拡大してきましたが、ローソンさんの特典なんかも加えながらローソンさんで販売してもらえると、結構価値が出てくるのではないかなと。

――Ponta パスについて、ローソンならではの特典というヒントがあったが、店頭に置くだけでは+500万会員(という目標)はピンとこない。どう広げていくのか。

髙橋氏
 夏ごろには公表できるかなと思っているので今詳しくはお話しできませんが、今まで(のauスマートパスプレミアム)でも毎月250円分のローソンで使えるチケットがついて、auユーザーをローソンへ送客できていることを認めてもらっています。同じようなものを、もう少し色濃くやっていくという風に想像していただければいいかなと思います。

 (KDDIとローソンの提携によって)社内もすごく元気です。昔フィーチャーフォンを作っていたころは自分たちで商品を作っていましたし、サービスも作っていました。ユーザー接点を自分たちですごく持っていたんです。

 一方、今では我々通信会社ってiPhoneとAndroidを売ってる会社になっちゃったので、ちょっと寂しい思いをしてたのかもしれませんね。そこにローソンさんとの提携が決まってお客さん接点がすごく近くなった。Ponta パスという存在もあって、お客さんのためのサービスも一緒に作れるということで、ものすごく楽しんでいます。

――端末の出荷台数が前年比で100万台減った。大きな数字のように見えるが。

髙橋氏
 ご存じの通り、特に第4四半期は(総務省の)ガイドラインの影響もあって、廉価端末を中心に(出荷台数は)減りました。流動台数は我々のビジネスの非常に重要な数字なので、もう一度この部分については、できるだけ数字をキープできるようにしたいです。

 解約率の状況を見ていると、解約率を押し上げているのはSIM単体の販売です。我々はやっぱり端末をセットにして販売することにこだわっているので、この数字は、僕からすると少し減らしすぎたかなと思います。

――「マネ活プラン」のところで聞きたい。70万契約を突破したということで、金融事業に対してのプラス影響は。

髙橋氏
 au PAY カードの加入率は約4.4倍、そのうちのゴールドカードの選択率が約3.5倍に増加しました。加えて、auじぶん銀行の口座も、契約数が倍増しています。

――インフラシェアリングについて、10万局で5Gも加えて4Gもとなると、結構なエリアが(ソフトバンクと)重複する気がする。差別化という点でどう考えているのか。

髙橋氏
 確かにエリアカバレッジっていう意味においては、ある程度お互い同等になってきたのかなと思います。

 ただ、差別化のポイントになりますが、ひとつは、我々はSub6を2波持っていること。これはドコモさんと我々だけになります。ドコモさんはいろいろと今課題はお持ちになっているようなので、その意味においては、Sub6の2波を最大限使えるのは我々KDDIだと思っていて、ここは大きいかなと。

 加えて、スターリンクとの関係があって、衛星との直接通信も差別化になります。加えて、山小屋や夏フェスでの対応も差別化のポイントです。

 エリアカバレッジでは協調しますが、そういったところで何とか圧倒的優位なポジションに近づきたいなと思います。

――生成AIの戦略を聞きたい。他社の取組みなどをどう見ているか。

髙橋氏
 生成AIについてはこれからの戦略を皆さんにも共有していかなきゃいけないと思っていますが、流行り言葉で「生成AI」と言っても、各社の取組みの方向性が違うような気がします。

 ソフトバンクさんは、自分たちでLLMをお作りになるとおっしゃっていて、そこに対する投資をかなりするということで、パソコンの世界で言うとWindowsを作るようなイメージなのかなと思います。

 我々はLinuxみたいなイメージを持っていて、オープンなLlama 2のようなものを、スタートアップなどの技術力を持っている人たちと組み合わせることで、ファインチューニングを繰り返していく。事前学習の環境として、まずは1000億円程度のものを2026年度末まで作り上げようということです。

 生成AIをめぐる状況は毎月のように変わるので、ここについては方向性はひとつじゃないんだろうなと思います。

 もうひとつ課題なのは、インフラがこれから仮想化ネットワークに代わっていきます。これがvRANとかO-RANと呼ばれるものですが、仮想化ネットワークのベースの部分を今までのように独自で作るのか、生成AIのインフラと共用するのかというところ。このあたりは世界がいろいろ揺れています。

 このあたりはちょっと先に行き過ぎると失敗するような気もしてまして、我々はこの一年が非常に重要だと思っているので、慎重に検討していきたいと思います。

――5Gの普及に向け、端末と基地局のところで投資はどうあるべきなのか。

髙橋氏
 Sub6については大きな投資は必要ではなく、パワー調整をピピッとやってあげるとあっという間にエリアがバーンと広がりますので、そこをまずやります。

 で、2波目のSub6は我々の武器なので、これはもう武器としてしっかりとやっていきます。

 今のSub6は、5月末までにはエリアをどんどん広げるということになります。

 一方、今後の周波数について、やはりミリ波には取り組んでいかなければいけないなと思っています。ミリ波も開設計画通りにいっていて、そういう意味では設備は持っていますが、全然使ってないような状況が続いているので。

 (これで質疑を終了と司会が述べ、会見が終わろうとするところに髙橋社長が言葉を続けて)通信会社3社ともだと思いますが、やっとトンネルを抜けた感じがあります。やっとARPUが反転してきたのは、非常に明るいニュースだと思います。Sub6もドンと広がったらARPUも上がっていきます。ローミング収入の減少幅も小さくなっていますし、ローソンとの連結によって成長も加速できるかなと。また頑張ります。