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「iOSとはまったく違う」、Googleのキーパーソンが語るAndroidのオープン性
2024年3月8日 00:00
アプリの見た目や機能をはじめとして、スマートフォンの動作の根幹を担うOS(Operating System)は現在、グーグル(Google)の「Android」とアップル(Apple)の「iOS」が主流となっている。日本国内では、両者のシェアがほぼ50%ずつという調査結果もある。
「AndroidとiOSはこれ以上ないほど異なる」――こう語るのは、グーグルの政府渉外・公共政策担当バイスプレジデントであるウィルソン・ホワイト(Wilson White)氏。同氏の来日に合わせてグーグルが開いた説明会では、Androidやアプリストア「Google Play」のポリシーなどがあらためて紹介された。
Androidのこれまで
Androidの特徴は、そのオープン性にある。モバイル向けのOSとして、誰でも無料でAndroidのソースコードへアクセスでき、ダウンロードしたり変更したりできるしくみになっている。
今でこそモバイル向けOSの名として知られるAndroidだが、およそ20年前、それはスタートアップの名前だった。グーグルは2005年にAndroidを買収し、2007年には「Open Handset Alliance」へ参加。以来、AndroidをオープンなモバイルOSとして広める取組みを続けてきた。
これにより、アプリ開発者や端末メーカーは、Androidでアプリやデバイスを自由に開発できるようになった。
「2006年、スマートフォンは高価で、それを手にしていたのは世界の人口のうちわずか1%だった」とホワイト氏。Androidの存在によって、端末メーカーが独自のOSを構築するコストが削減され、結果的に安価なスマートフォンの普及につながったと語る。
端末メーカーやユーザーの自由度を保証
グーグルでは端末メーカーに対し、スマートフォンの基本的な機能を担うものとして、Google 検索やGmail、Google マップといったアプリを、購入時にインストールされている「プリインストールアプリ」として提供している。
一方、端末メーカーや消費者に対して、グーグル製のアプリの使用が強制されることはない。
たとえばサムスン電子の「Galaxy」シリーズには、同社独自のアプリストアとして「Galaxy Store」もプリインストールされている。また、Androidユーザーは、プリインストールされているグーグルのアプリを無効化することもできる。
Google Playのビジネスモデルとは
先述の通り、ハードウェアの低価格化に大きく貢献したAndroidは、開発者が自作のアプリを世界に展開するプラットフォームとしての役割も担ってきた。グーグルではアプリストアとしてGoogle Playを提供しており、月間25億台以上とされるアクティブな端末へのアプリ配信をサポートする。
日本のGoogle Playでは、実に280万以上のアプリへのアクセスが提供されており、アプリの数は2022年時点で前年比10%増となっているという。“日本発”のアプリは主として米国や韓国、フランスでも好評を博しているようだ。
こうした活発な動きは、グーグル独自のビジネスモデルによって支えられている。開発者は基本的に、アプリの配布などのサポートを無料で受けられる。
「アプリ開発者が報酬を得て初めて、グーグルも(開発者からの手数料によって)報酬を得る」とホワイト氏。自作アプリの成功を確信できない開発者にとって、Google Playは基本的にコストがかからないプラットフォームであり、アプリの配信を後押しするものとなっている。
ホワイト氏によれば、Google Playにおけるアプリ開発者のうち97%はデジタルコンテンツを販売しておらず、グーグルへの手数料が発生していない。また、デジタルコンテンツを販売している開発者のうち99%は、手数料率15%もしくはそれ未満となっている。同氏は「アップルやマイクロソフトと比べて競争力がある」と自信を見せる。
最近では、ユーザー選択型の決済も新たに導入されたGoogle Play。ホワイト氏は「公正な環境の整備によって、競争やモバイル・エコシステムにおけるイノベーションを促進していく」と語った。
質疑応答
――OSについて、日本では「(AndroidとiOSの)2つしかない」という声もある。
ホワイト氏
過去10年間で私たちが見てきたのは、AndroidとiOSという2つのモバイル・エコシステムの進化だと思います。しかし、この2つのエコシステムはこれ以上ないほど異なっています。
Androidは非常にオープンなエコシステムで、何百もの端末メーカーがあり、何百万ものアプリがある。ユーザーがこれらのアプリにアクセスする方法は無数にあり、それが代替ストアであれ、直接的なダウンロードであれ、グーグル独自のストアであれ、さまざまです。
私たちは、このようなアプローチが、Androidの平等なシステム内での競争を促進していると信じています。ユーザーがこれらのエコシステム(AndroidとiOS)間を、より自由に行き来できるようになることが私たちの望みです。
アップルのiOSについては、ユーザーが一度iOSを使い始めたら、離れるのが難しくなるという側面があると思います。Androidのような自由な選択肢や柔軟性がなく、日本やほかの国で政府が懸念しているのは、そういった点ではないでしょうか。
――Androidは基本的に無料という話があった。グーグル関連のモバイルアプリ(GMS)を搭載する場合はどうなるのか。
ホワイト氏
私たちAndroidはオープンであり、このOSは誰でも自由に使えます。しかし、開発者(メーカー)が自社のデバイスでグーグルのサービスを利用したい場合、そのデバイスにおけるグーグルのサービスの利用を規定する契約を結ぶことになります。
これは、グーグルのサービスを利用するユーザーに、どのような体験をしてもらいたいかということを強調しているのです。
――GMSを搭載する端末と、搭載しない端末の割合は。
ホワイト氏
正確な答えはわかりません。Androidは無料でオープンなエコシステムであり、Androidの使用者が、わざわざグーグルに連絡しない場合もある。だから、Androidのエコシステムが彼らによって使われているのを知ることは、我々にとって非常に難しいのです。
――サイドローディングについて聞きたい。AndroidユーザーがGoogle Play以外からアプリをダウンロードしようとすると、脅すような文言が表示されるが。
ホワイト氏
これに関しては3つ、お答えすべきことがあります。
まず、直接アプリをダウンロードすることは、非常に大きなリスク要因です。そして、私たちは、オープン性とセキュリティの間にトレードオフがあってはならないと考えており、(警告メッセージは)直接ダウンロードを許可することと、リスクを知らせることのバランスを考慮した方法なのです。
次に、ノートパソコンに対してソフトウェアをダウンロードするときも、同じような警告が表示されますよね。ですから、これ(警告メッセージ)は一貫性のないアプローチではないのです。
最後は、アップルのiOSについて。iOSでは、たとえユーザーがアプリのダウンロード先を知っていても、ダウンロードすることさえ許されません。その点で私たちは、消費者の権利や自由、柔軟性についてバランスを上手く取れていると思います。ユーザーが十分な情報を得て決断できるよう情報を提供することは重要で、その点で警告は正しいと考えています。
――サードパーティのアプリストアの状況について知りたい。セキュリティ対策はどうなっているのか。
ホワイト氏
Androidの代替ストアは、それぞれ独自のブランドを持っています。たとえばサムスン電子のGalaxy Storeは、Google Playとは見た目も使い勝手もまったく異なります。
また、GMSを搭載しないAndroidデバイスのアプリストアもあります。有名なのは、AndroidをベースにしているAmazonのアプリストアですね。
セキュリティについて、各アプリストアは、そのストアにあるアプリが一定のセキュリティ要件を満たしていることを保証する責任があります。
また、グーグルでは「Google Play プロテクト」と呼ばれるサービスを提供しており、Android上のアプリをスキャンすることができます。毎日1250億のアプリのインストールが(Google Play プロテクトで)スキャンされていますが、そうしたインストールのすべてがGoogle Play経由ではない。追加の保護レイヤーを提供することで、Google Play以外のルートも保護できるようにしています。