ニュース

ソフトバンクとJR西日本が取り組む「自動運転×バス×隊列走行」が公道実験へ、その最新状況を見てきた

 ソフトバンクとJR西日本が11月、公道上で、自動運転化したバスの実証実験を開始する。両社では2年前より、テストコースでのノウハウを積み重ねており、社会へのデビューに向けて、いよいよ公道に乗り出す。

 実験開始に先駆け、これまで試験が行われてきた滋賀県野洲市のテストコースで、自動運転できるようにしたバスを複数用意し、隊列走行するデモンストレーションが披露された。公道に出る「隊列を組んで走る自動運転バス」はどういったものか、ご紹介しよう。

自動運転バスは複数のテクノロジーを組み合わせて

 ソフトバンクが取り組む自動運転バス。その車体には、さまざまなテクノロジーが詰め込まれている。

搭載される機器の一覧
車車間での通信も

 たとえば車両の前方にはカメラがある。はたまた道路に磁気マーカーを設置しそれを検知できるセンサーも用意される。衛星測位システムによる現在地の把握もできる。そしてプライベート5Gで複数のバス同士の通信も行えるようにしている。この他ユニークな仕組みとして車の前面と背面に光を使った通信である、“光無線”でやり取りできる装置も備えられている。前方を走るバス、あるいは後ろを走るバスとダイレクトに通信するための装置だ。

上部にあるカメラ
通信する光無線の機器。モバイル通信でも通信するが、光も使って冗長化

 これらのセンサー、そして通信機能を組み合わせることでバスは自分の周囲に何があるか、自分自身はどこにいるのか常に把握する。そして、運転手がハンドルを操作せずとも道路の上をきちんと走れる上に、信号や踏切との連携も可能にしており、バスが近づけば信号が青に変わり踏切も上がるといった運行を実現する。

 今回の実験で示されたのはまさにそうした技術を体験できるもの。用意されたバスは、小型バス、大型バス、連節バスの3種類だ。

 小型バスは住宅エリアでコミュニティバスなどで活用されているようなこじんまりとしたサイズ。そして大型バスはいわゆる路線バスとしてなじみのある形とサイズだ。連節バスは2台のバスをくっつけたかのような形をしており、車長は18m。最も多く人を乗せられるバスでもある

 異なるサイズの車両を組み合わせる、あるいはそれぞれ別のコースを走る。しかも自動運転でそうした柔軟な運行を可能にする。これがソフトバンクとJR西日本が進めてきた自動運転バスの取り組みだ。

 異なる車種を組み合わせるということは、時間帯あるいは日によって異なるバスへのニーズに対して、柔軟に対応できるということでもある。

 たとえば、朝夕の通勤通学帰宅といった時間帯は、同じコースをまとめて複数の車両が走ることで大規模な需要に対応できるようにする。

 一方、需要が少ない時間帯はそれぞれが異なるコースを走る。あるいは運行するバスを減らすといったことが可能になるだろう。

 もちろん、こうした運行は、人が運転することでも実現はできるが、自動運転であれば、運転手が不足するような状況、はたまたそういった地域であったとしても公共交通の担う役割を維持しやすいという期待感がある。

 また、ちょっとユニークなところでは車を道路の端ギリギリに近づけて停車するといった仕組みも用意されている。これは正着制御と呼ばれ、少し高く持ち上げられたバス用の停車場に安全に近づいて段差を減らし、乗降しやすい環境を自動運転でも提供するという仕組み。

 報道陣に今回公開されたデモンストレーションは、自動運転、そして自動運転による隊列走行、信号や踏切との連携といったもの。短い時間ではあったがいずれもスムースに運行されている様子がよく分かり、何も違和感を与えない内容に仕上げられていた。

 運転席には念のためドライバーが座った環境ではあったが、取材中、ハンドルで操作されることはなく、全て自動で運転されている様を実際に乗車して確認することができた。

 もちろん今回はテストコース内での取り組み。本当に実世界での道路でうまく動いてくれるのか。その中で通信もまた、自動運転の実現に欠かせない。両社の取り組みがうまくいけば、そう遠くない将来、運転手不足に悩む地域でも自動運転技術と隊列走行技術を使い、不自由のない暮らしがやってくるという期待が高まる内容だった。