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「マネーフォワード ME」と三井住友の「Olive」が提携へ、オープンでパーソナルな検討中の機能や提携の背景とは

マネーフォワード 代表取締役社長CEOの辻庸介氏と三井住友カード 代表取締役社長兼最高執行役員の大西幸彦氏

 マネーフォワードと三井住友カードは、個人向け事業における資本業務提携合意書を締結した。マネーフォワードの個人向け事業を分社化し、三井住友カードがそこに出資するかたちで資本業務提携を行う(出資比率は51%:49%)。新設会社で12月頭ごろの業務開始を目指す。

 マネーフォワードの個人向け資産管理サービス「マネーフォワード ME」と、SMBCグループのサービス「Olive」、三井住友カードのクレジットカードなどが連携し、今後さまざまなサービスを検討しているが、その背景や具体的なサービスはどのようなものか?

ユーザー起点のオープンな“お金のプラットフォーム”

 マネーフォワード 代表取締役社長CEOの辻庸介氏は、新会社について「これまでにない金融体験を届ける新会社」とアピール。三井住友カード 代表取締役社長兼最高執行役員の大西幸彦氏も「キャッシュレスサービス最先端である(SMBCグループの)Oliveと、家計簿資産管理サービスのマネーフォワード MEを融合させることで、ユーザー起点のオープンな“お金のプラットフォーム”を作っていこうというもの」と、提携への自信を見せる。

 Oliveは、2023年3月のサービススタートから約1年5カ月で300万を超えるアカウントが開設されている。大西氏はOliveについて「決済金融としての進化」と、「非金融への世界の進化」があると説明。今回の提携でOliveとマネーフォワード MEをかけ合わせることで「全く新しい世界を作っていけるのではないか」と提携の背景を語った。

提携でどうなるか?

三井住友カード 代表取締役社長兼最高執行役員の大西幸彦氏

 大西氏は、今回の提携にあたり「オープン」と「パーソナライズ」の2つのキーワードがあると説明。

 たとえば、Oliveのサービスでは「SMBC、SMCCに(金融サービスを)まとめたほうが一番得で便利になっている」(大西氏)とする一方、ユーザーによっては給与振込口座が勤務先から指定されていたり、他行の住宅ローンを利用していたり、趣味などで他会社のクレジットカードを利用したりするユーザーがいると指摘。そのようなユーザーでも、Oliveでほかの金融機関の利用も便利になるような「オープンなプラットフォーム」にしてきたいと語る。

 具体的には、これまでマネーフォワード MEで残高を確認し、それぞれの銀行のアプリから振込手続きをしていた流れから、Oliveアプリで残高を確認できそのままドラッグ&ドロップのような簡単な操作で出し入れできるようなかたちが検討されている。

 2つめの「パーソナライズ」というキーワードについて、「非金融のサービスを提供する際に、オープンで全体が見えるということと、パーソナライズと言うことが欠かせない要素になる」と大西氏は説明し、マネーフォワード MEの「家計・資産データ」とOliveの「決済・金融データ」をかけ合わせたサービスが検討されている。

「経済圏で囲い込むものではない」

 大西氏は、近年さまざまな企業が「経済圏」というキーワードを出していることに触れ、「私どもの考え方は、ユーザーを経済圏に囲い込むという発想とは逆。開かれた世界の中でいろいろなサービスにつなげていこうというコンセプトだ」と指摘。

 SMBCのポイントサービスである「Vポイント」も、世界のVisa加盟店で利用できる点も「ほかのポイントと根本的に違う」とし、金融サービスの囲い込みを狙ったものではなく、ユーザーの目線で開かれた便利なサービスを提供するための提携だと協調した。

 辻氏も「(マネーフォワードは)色々な会社とジョイントベンチャーを作っている。今回の提携は、オープンで中立な立場での事業として、三井住友カードから理解を得られている」とし、マネーフォワード MEのどの金融機関に対しても中立な立場でのサービス運営の流れは変わらないとした。

マネーフォワード 代表取締役社長CEOの辻庸介氏

個人ユーザーの声を受けたサービスを

 辻氏は、「マネーフォワード ME」を運営してきた12年間の間に、さまざまなユーザーの声を受けたという。

 たとえば、ユーザーのうち88.4%がお金について何らかの不安を持っているという。また、67.2%のユーザーが、生命保険や個人年金保険に関する知識がほとんどないという調査もあるという。

 一方で、82.4%のユーザーがポイントサービスを積極的に利用しているとしており、改善検討を進めてきたが「やりたかったことの世界には全然届いていない」と自社だけでの取り組みだけではなかなか進展しなかったという。

 辻氏は「最適な金融サービスを自社だけで提供するには時間がかかる。テクノロジーやものづくりの分野は得意だが、金融サービスを作るところには経験がなくなかなか難しかった」とし、実際にOliveを触ってみて「一連の流れやオープンなサービスである点が、ユーザーとしてもメリットが大きいと感じた」と、今回の提携の意義をコメントする。

 連携では、マネーフォワード MEにOliveの機能を埋め込んでいく形を検討しているといい、先述の振込機能や、カード利用時にすぐに家計簿に反映される機能、事前に借り入れ可能金額がわかる機能、マネーフォワード MEの利用実績に基づいてVポイントが付与されるサービスなどがアイデアとして挙がっている。

 また、家計管理や返済計画、資産運用などをAIがアドバイスしてくれる機能などAIを活用する機能も検討されている。

1つのアプリに集約するかたちではない

両方のブランドは残る見通し

 サービスの展開について、マネーフォワード カンパニー執行役員 マネーフォワードホームカンパニーCOOの木村友彦氏は「どちらか1つというわけではなく、どのプラットフォームでも提供できるサービスとして考えている。ユーザー目線で見たときのサービスを検討する」とコメント。

 また、新会社の名称について辻氏は「未定」と回答。一方、サービスのブランドについて「マネーフォワード ME」と「Olive」のブランドは残るとしている。ビジネスモデルについては、「今後両社で検討していく」(木村氏)としている。

 個人向け事業について辻氏は「10年間やってきた中で本当に収益化が難しいと正直思っている」と説明。一方で「結構環境が変わってきた。金利がない世界から金利がある世界になり、資産運用をやるようになり、かなり個人のお金が動く環境に変わった」とし、今回の提携で「色々な面白いサービスができるのではないかと、個人的には(マネーフォワードの)12年間で一番わくわくしている」とし、提携への期待を寄せた。

 なお、2社では今後、個人向けだけでなく個人事業主向けや法人向けの提携も検討しているという。

マネーフォワード 代表取締役社長CEOの辻庸介氏と三井住友カード 代表取締役社長兼最高執行役員の大西幸彦氏