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通信障害は30分以内に初報、緊急機関や自治体との連携を――総務省がルールを取りまとめ

 総務省は、携帯電話サービスなどで通信障害が発生した際に、電気通信事業者が障害の影響や復旧見込みなどを利用者に周知するための仕組みのあり方を検討する「周知広報・連絡体制ワーキンググループ」の取りまとめを公表した。

 今回のルール整備の背景には、電気通信事業による通信障害が近年多発しており、その影響が社会生活におよす影響が大きくなっていることがある。

 通信障害とその周知広報には、周知広報を行っても利用者への初報に時間を要するもの、必ずしも利用者が必要とする情報が発信できていないもの、警察や消防などへの緊急通報に影響があるにも関わらずそれらの機関へ連絡が行われないものなど、多くの課題がある。

 こうした状況を踏まえ、利用者の利益を適切に保護することを目的に、電気通信分野における周知広報および連絡体制の在り方について、検討が行われ、今回取りまとめが公表された。また、昨年11月に公開した取りまとめ案に対するパブリックコメントも公開された。

取りまとめで検討された内容(全11項目)
  • ガイドラインの主体・位置づけ
  • ガイドラインの対象者
  • ガイドラインの対象とする事故及び障害の範囲
  • 障害発生から初報までの時間の目安
  • 利用者へ周知すべき内容
  • ホームページにおける情報の掲載場所、更新頻度及び掲載期間
  • 相談窓口の設置及びその掲載場所、
  • 設備運用部門等と広報部門等との連携の在り方
  • 情報伝達手段の多様化
  • 連絡すべき関係機関の詳細及び連絡すべき内容・手段の詳細
  • 利用者に誤解を生じさせない情報発信の在り方

ガイドラインの主体・位置づけ

 電気通信分野において、利用者に対して周知広報するルールには、電気通信事業者協会、テレコムサービス協会、日本インターネットプロバイダー協会、日本ケーブルテレビ連盟による「電気通信サービスにおける事故及び障害発生時の周知・情報提供の方法等に関するガイドライン」(以下、事業者団体ガイドライン)が既に存在する。

 事業者団体ガイドラインは、各電気通信事業者にとって合意が形成しやすい内容で策定されるが、学識経験者や有識者、民間団体、電気通信事業者を含む多くのステークホルダーが参加のもと、幅広い観点から議論を行い、社会として望ましいと考えられるス員を政府が示す形態が必要と整理した。

 利用者の利益を保護していくため、事業者団体ガイドラインの内容をベースにしつつ、ワーキンググループで周知広報・連絡体制に関するガイドラインの策定に向けた検討を行い、政府でガイドラインを策定し、既存のガイドラインを発展的に統合することが適当とした。

ガイドラインの対象者

 今回のガイドラインの対象者は、現行の事業者団体ガイドラインと同様に幅広い電気通信事業者が対象となるが、全ての電気通信事業者に対して同じ規律内容にはせず、その内容に応じて利用者の利益に与える影響が大きい「指定公共機関」は、より高い内容を求めることが適当とした。

 指定公共機関に指定されている電気通信事業者は日本電信電話、東日本電信電話、西日本電信電話、エヌ・ティ・ティ・コミュニケーションズ、NTTドコモ、KDDI、ソフトバンク、楽天モバイルの8社。

 電気通信回線設備を設置せずに、無料でコミュニケーションサービスを提供する電気通信事業者もあるが、こうした事業者は原則として技術基準や管理規定など、電気通信役務の確実かつ安定的な提供の確保が求められる設備規律の対象に含まれていない。よって、電気通信事業法における考え方との整合性の観点より、周知広報に関するルールを課す事業者として対象とするには慎重な対応が必要としている。

ガイドラインの対象とする事故及び障害の範囲

 ガイドラインの対象とする事故および障害の範囲は、一部のアクセス回線部分で発生した事故など、軽微な事故や障害を除き、電気通信役務の提供に影響が発生した、または発生すると認識された事故および障害を広く対象とすることが適当とされた。

 南海トラフ巨大地震、首都直下地震など、甚大な被害が想定される大規模災害については、報告書で検討された周知広報を確実に行うことが非常に困難な場合が予測されるため、基本的には対象外とするが、こうした場合でも、報告書の趣旨を踏まえ、可能な範囲で適切に周知広報を行うことが望まれている。

障害発生から初報までの時間の目安

 ガイドラインでは、指定公共機関は事故などが発生した時点から、原則として30分以内に初報の公表を求めた。その際、事故などについて十分な情報が得られていない可能性も高いことから、初報については障害が発生している旨のみを公表することも想定している。

 早急な情報発信を可能とするため、あらかじめ発信用のフォーマットを策定しておくことを求めるほか、また、指定公共機関以外の電気通信事業者についても、できる限り早急な初報の公表を行うことを求めた。

利用者へ周知すべき内容

 利用者へ周知すべき内容は、現行の事業者団体ガイドラインで示されている項目に加え、緊急通報に影響がある場合はその旨、自社の回線を貸している(MVNOなど)卸先の事業者が提供するサービスにも影響がある場合はその旨、公衆無線LANなど代替的に利用可能な通信手段とそれらの手段を利用するために利用者が行うべき内容、復旧操作方法、利用者への依頼事項がある場合はその内容を周知することを求めた。

 また、これらの公表については全ての情報が揃っていない場合であっても、利用者へ早急な情報提供の観点から、その時点で知りうる範囲内で発表することが適当とした。

事業者団体のガイドラインで定める事項
  • 対象事故が発生した日時
  • 対象事故等の影響を受ける地域
  • 対象事故等の影響を受けるサービス、機種等の種類
  • 対象事故等の影響の具体的内容
  • 対象事故等が復旧した場合は復旧した日時、復旧していない場合は復旧の見通し(復旧進捗状況、復旧予定時刻等)
  • 対象事故等の原因や場所等が特定できる場合は、その概要
  • 掲載事項がいつの時点のものかを示す日時
  • 利用者が対象事故等の問い合わせを行う際の連絡先
  • 端末や利用者向け宅内設備等の操作で、事象が回復する場合もしくは事象が
  • 回避できる場合の手順、または事象を悪化させないために避けるべき手順等の案内
  • その他、利用者が対象事故等の状況を確認するために必要な事項

 さらに、指定公共機関は災害などによってサービスに影響が生じている場合は、地図やGISデータによってサービスに支障がある地域を示すなど、影響地域をわかりやすく伝えるとともに、可能な限り速やかに一定の復旧見込みを示し、見通しが立ち次第、地域ごとの復旧見通しも示すことを求めた。

ホームページにおける情報の掲載場所、更新頻度及び掲載期間

 通信障害情報などは、平常時からトップページのわかりやすい位置および大きさでリンクを常設し、利用者が必要な情報へアクセスしやすくすることを求めた。

 事故による通信障害発生時は、定期的な情報の更新が重要である。指定公共機関は深夜早朝を除き少なくとも1時間おきに目安を更新し、それ以外の電気通信事業者もこれに準じて更新することが求めるほか、災害時は、復旧に時間を要することが予想されるが、地図を通じたエリア障害情報の提供を含め、s員や早朝を除いておおむね1日3回以上、3時間~5時間ごとに更新が適当とした。

 障害の回復後も、原因や影響利用者数などの概要をわかりやすい場所で少なくとも1年程度は掲載し、可能であれば過去の障害情報をキーワード検索できるようにすることを求めた。

相談窓口の設置及びその掲載場所

 障害発生時には、報道発表資料などで問い合わせ先を掲載するとともに、対応体制の強化が必要となる。通信障害であることに鑑み、いくつかの問い合わせ手段を確保することが適当とした。

 さらに、指定公共機関は市町村を含む地方公共団体向けの窓口を設置し、その窓口について事前に地方公共団体などに周知することを求めた。

 障害が発生すると、キャリアショップなどの販売代理店への問い合わせが殺到することが予想されるため、代理店にも障害情報を共有することや、その相談窓口の対応マニュアルなども準備が必要とした。

設備運用部門等と広報部門等との連携の在り方

 障害発生時に迅速な周知を行うためには、情報のエスカーレーションルールの策定を含め、事前に社内の情報共有ルール、体制をマニュアル化することに加えて、設備・広報部門間の情報連携に関する定期的な訓練の徹底を求めた。

 また、利用者窓口からの報告や、SNSなどの情報を把握して障害を早期に検知する体制の整備も必要である。

情報伝達手段の多様化

 通信障害が発生した際の情報伝達手段については、販売代理店(ショップ)のデジタルサイネージ活用、報道機関への情報提供、放送事業者による字幕表示などを通じた周知を可能とするための情報提供、自社が有する既存の広告枠の活用など、多様な方法で障害を周知することを求めた。

連絡すべき関係機関の詳細及び連絡すべき内容・手段の詳細

 一般的な利用者に加えて連絡すべき関係機関として、総務省のほかに、緊急通報に影響をおよぼす障害の場合は警察や消防本部、海上保安庁の緊急通報受理機関、自社の卸役務により通信サービスを提供するMVNOなど、他の指定公共機関などが想定される。

 指定公共機関は、総務省に対して原則として障害発生から30分以内に連絡を求めるほか、総務省以外の機関についても、初報の公表後速やかに連絡することが適当とした。

利用者に誤解を生じさせない情報発信の在り方

 復旧の見通しや作業の完了などについて、利用者の体感に基づくわかりやすい言葉を使い、利用者から見て丁寧な情報発信を行うことを求めた。

 たとえば、「復旧作業の完了後に通信制限を解除してから、正常に通信できる状態の確認を経て、本格的に再開する見込み」など、利用者の体感に基づく丁寧な説明の徹底が求められる。周知広報の際に用いる具体的な用語や表現については、指定公共機関を中心とした電気通信事業者間で協議が予定されているが、この結果は同ワーキンググループに報告することを求めている。