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通信障害は30分以内に初報、利用者目線でわかりやすい発信を――総務省が方針案示す
2022年12月2日 18:44
総務省は、携帯電話サービスなどで障害が発生した際に、電気通信事業者が障害の影響や復旧見込みなどを利用者に周知するための仕組みのあり方を検討する「周知広報・連絡体制ワーキンググループ」の第3回会合を2022年11月29日に開催し、取りまとめ案を公表した。
取りまとめ案では、近年に発生した大規模な通信障害について、その影響範囲や障害の発生から利用者への初報までに要した時間、緊急通報期間への連絡の有無を整理した。
その上で、障害発生時の利用者に対する周知広報における課題として、初報の掲載場所がトップページにリンクされていないため、掲載場所がわかりにくい、輻そうの継続中に「一部回復」という表現を使い混乱を招いた、障害の影響が続いていたにも関わらず「復旧作業終了」としたため利用者に混乱を生じさせたなど、通信障害発生時における通信事業者のこれまでの対応について課題を挙げた。
電気通信以外のライフラインでは、鉄道・電力・ガス分野で障害やトラブルが発生した際は、政府が定めた指針やガイドラインに基づき、広報内容や広報手段、情報を開示すべきタイミングなどを定めているという。
これまで、電気通信事業者では事業者団体ガイドラインが周知広報に関するルールとされてきたが、利用者の利益を十分に保護し、電気通信事業者が社会から求められる説明責任を適切に果たすためには、事業者団体によるガイドラインではなく、多数の利害関係者の参加のもと、幅広い観点による議論を行い、社会として求められる水準を政府が示していくことが適切であるとし、今回の取りまとめ案を作成した。
対象は「指定公共機関」に指定される8者
事業者ガイドラインでは、幅広い電気通信事業者を対象に、全ての事業者に対して同じ規律内容となっている。一方で、電気通信回線設備を自ら設置する電気通信事業者で、利用者の利益に与える影響が大きい事業者については、防災行政などにおいて重要な役割を有する「指定公共機関」として、災害対策基本法で指定されている。
現在指定されている電気通信事業者は、日本電信電話(NTT)、東日本電信電話(NTT東日本)、西日本電信電話(NTT西日本)、NTTドコモ、NTTコミュニケーションズ、KDDI、ソフトバンク、楽天モバイルの8者。
取りまとめ案では、これらの事業者は、他の電気通信事業者と比べて役務の確実かつ安定的な提供が期待されており、事故発生時などにおける利用者への周知についても一層確実かつ丁寧な対応を求めることが妥当とした。
なお、電気通信回線設備を設置せずに、無料でコミュニケーションサービスを提供する電気通信事業者もあるが、こうした事業者は原則として技術基準や管理規定など、電気通信役務の確実かつ安定的な提供の確保が求められる設備規律の対象に含まれていない。よって、電気通信事業法における考え方との整合性の観点より、周知広報に関するルールを課す事業者として対象とするには、慎重な対応が必要としている。
障害発生の初報を原則30分以内に
取りまとめ案では、指定公共機関に対して、障害発生から初報までの目安として、やむを得ない場合を除いて事故発生から原則として30分以内に初報を公表することを求めた。また、初報の段階では、詳細な情報が得られていない可能性が高いため、障害が発生している旨だけを公表することも想定している。
対象とする事故および通信障害の範囲は、一部のアクセス回線部分で発生した事故など軽微なものを除き、役務提供に影響が発生した、または発生すると認識された事故および障害を広く対象とする方針で、これには自然災害による影響も含まれる。
早期に初報を出すことで、通信障害の影響を直接受ける人だけでなく、その影響を受けている人に連絡を取ろうとしている人にも、電話がつながらない、連絡がとれない事情を理解することができ、安心感に繋がるため、障害が発生している事実だけでも速やかに公表を行うことに重要な意義があるとした。
取りまとめ案で「初報を30分以内に」を求めるのは、先に紹介した8者の指定公共機関に限られるが、それ以外の事業者についても、できる限り早急な初報の公表を行うことが適当としている。
緊急通報への影響の有無、障害の影響範囲を地図などで視覚化
現在、事業者団体のガイドラインではその時点で知りうる情報について、以下の内容をWebサイトで掲載することを定めている。
- 対象事故が発生した日時
- 対象事故等の影響を受ける地域
- 対象事故等の影響を受けるサービス、機種等の種類
- 対象事故等の影響の具体的内容
- 対象事故等が復旧した場合は復旧した日時、復旧していない場合は復旧の見通し(復旧進捗状況、復旧予定時刻等)
- 対象事故等の原因や場所等が特定できる場合は、その概要
- 掲載事項がいつの時点のものかを示す日時
- 利用者が対象事故等の問い合わせを行う際の連絡先
- 端末や利用者向け宅内設備等の操作で、事象が回復する場合もしくは事象が
- 回避できる場合の手順、または事象を悪化させないために避けるべき手順等の案内
- その他、利用者が対象事故等の状況を確認するために必要な事項
こられの項目に加えて、緊急通報に影響がある場合はその旨を示すことや、公衆無線LANサービスなどの代替となる通信手段、復旧のために利用者による操作が必要となる場合にはその操作方法などの依頼事項を公表するように求めた。
さらに、指定公共機関に対して、災害などによってサービスに影響が発生している場合には、地図やGISデータによって対象地域をわかりやすく伝えると共に、可能な限り速やかに一定の復旧見込みを示すことや、見通しが立ち次第、地域ごとの復旧見通しを示すことも求めている。
情報更新は深夜早朝を除いて1時間おきを目安に
通信障害に関する情報は、通常時よりWebサイトのトップページのわかりやすい場所および大きさでリンクを常設し、利用者が必要な情報へアクセスしやすい環境を整えることを求めた。また、事故による障害発生時は定期的に情報を更新することが重要で、指定公共機関においては深夜早朝などの時間帯を除いて1時間ごとを目安に、それ以外の電気通信事業者もこれに準じて更新することを求めた。
災害時は、復旧に時間を要することが考えられるが、地図によるエリア障害情報の提供を含め、深夜早朝を除いておおむね1日3回以上、3時間から5時間ごとに更新を行うことを求めた。
障害の回復後も、原因や影響利用者数などの概要を、わかりやすい場所に1年程度は掲載することを求め、可能であれば障害情報をキーワード検索できるように対応することも含めている。
障害による問い合わせへの対応体制の強化
障害発生時の対応窓口については、初報を含めて報道発表資料などで問い合わせ先を明記することや、障害による問い合わせが増加することを考慮し、対応体制の強化を求めた。また、通信障害であることを考慮し、複数の問い合わせ手段を確保することも求めている。
さらに、指定公共機関は市町村を含む地方公共団体向けの窓口を設置し、その窓口について事前に地方公共団体などに周知することが求められる。
障害が発生すると、キャリアショップなどの販売代理店などへ問い合わせが殺到することが予想されるため、販売代理店にも情報を共有することや、その相談窓口の対応マニュアルなどを準備が必要とした。
情報伝達手段、放送やデジタルサイネージの活用も
情報伝達の手段として、自社のWebサイト、SNS、スマートフォン向けアプリなど、通信を活用した方法に加えて、販売代理店のデジタルサイネージの活用、報道機関への情報提供、放送事業者による字幕表示などを通じた周知を可能とするための情報提供、既存CM枠の活用など、電気通信事業者による通信に依存しない方法を含めて広く周知に取り組むことを求めた。
利用者目線で発信を
通信障害の発生時は、利用者にとってわかりづらかったり、用語の定義が十分されていない状態で情報発信を行うことで、利用者の混乱を招いたケースもあり、障害に伴う周知広報において、利用者に誤解を生じさせない表現方法について整理することが必要であるとした。
具体的には、本年7月に発生したKDDIおよび沖縄セルラーの重大事故について、KDDIが発表した「復旧作業終了」および「本格再開」という表現について、KDDIは復旧作業終了後に流量制限などの解除および正常性の確認を経て、本格再開(回復)することを想定して案内したが、利用者やマスコミが「復旧作業終了」と「本格再開(回復)」の意味で捉えられたために利用者に混乱が発生した。
こうした事例から、障害に関する周知広報において、専門用語を使用する場合にはその解説を加え、利用者の体感に基づく簡単でわかりやすい言葉を用い、利用者から見た丁寧な情報発信の追加を求めた。先の例では「復旧作業終了後に通信の制限を解除し、正常に通信できる状態の確認を経て、本格再開(回復)となる見込み。」など、利用者目線で丁寧な説明による補足を徹底するように求めている。
周知広報で使用する表現や用語の共通化については、指定公共機関を中心に電気通信事業者間で協議が予定されているが、この協議結果については、同WGに報告することを求めた。