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地域経済の起爆剤となるか、ふるさと納税で街に人を呼び込む「PayPay 商品券」

 PayPayとさとふるは、ふるさと納税におけるお礼品「PayPay 商品券」を11月29日から提供する。2022年中にも全国30自治体が対応する見込み。

左=さとふる 藤井氏。右=PayPay 中山氏

お礼品をPayPayで

 PayPay 商品券は、さとふるで希望の自治体と寄付額を選び、寄付することで取得できる。取得後には、自治体の地場産品の基準を満たした商品やサービスを提供する地域内の店舗・施設において利用できる。

 PayPay 商品券の受け取りから自治体での支払いまでをPayPayのアプリ上で完結でき、宿泊券の持ち歩きなどは不要。その場で寄付できるため観光で訪れた先で気軽に利用できるとアピールする。自治体での体験に結びつけられることから、地方経済活性化・観光誘致への寄与が見込まれる。

 さとふるのサイト上でPayPay 商品券を選択し寄付すると、のちに寄付完了の旨がメールで通知される。本文上に記載のURLにアクセスすると、さとふるアプリ内の「寄付履歴」などから受け取りを申請できる。初回のみ、PayPayアカウントとさとふるのアカウントを連携させる必要がある。

 寄付額は1000円~50万円までの全15種の予定で、寄付額の3割の金額がPayPay 商品券として利用できる。有効期限は取得から180日間。PayPay 商品券を導入する自治体のみ対応する。

 2022年内にも北海道小樽市、千歳市、富良野市、登別市、森町、倶知安町、白老町、洞爺湖町、安平町、むかわ町、釧路町、弟子屈町、山形県米沢市、栃木県日光市、石川県七尾市、愛知県岡崎市、南知多町、三重県伊勢市、京都府亀岡市、京丹後市、兵庫県豊岡市、奈良県奈良市、山口県長門市、香川県高松市、愛媛県今治市、福岡県太宰府市、朝倉市、熊本県小国町などで利用できるようになる見込み。

地域経済活性化につなげる

 ふるさと納税のお礼品は、自宅に食材などをはじめとした地元の産品を取り寄せるものと、実際のその土地を訪れて体験するものの2つに分かれる。ふるさと納税をきっかけに、地元を訪問してもらえれば、その土地の地域経済の活性化も見込める。

 しかしさとふる 代表取締役社長の藤井宏明氏は、多くの利用者が「体験」ではなく「モノ」を選んでいると、ふるさと納税の現状を指摘する。発表の場で示された資料によれば、9割ほどの利用者が食品や飲料を選択しているという。

 加えて、現地に訪れる体験型のお礼品が十分に出揃っていないという実態もあるとする。この数年では、新型コロナウイルスによる、観光需要が低下し、地方財政の悪化が顕著になっており、観光や飲食業界などへの地域支援が不可欠とする。そうしたなか、旅行需要回復が見込まれる「全国旅行支援」などを追い風に、今回の新サービス開始に至った。

ふるさと納税をより手軽に

 これまでの体験型のお礼品では、同じ自治体内でも利用先ごとにお礼品を選んだり、事前に申し込んだりと手間がかかり、手続きが煩雑という課題があった。

 さとふる 取締役 サービス企画部 部長の河田裕右氏はそうした、これまでの課題をPayPay 商品券により解決できると説明する。PayPay 商品券の場合、一度の寄付で地域内の多数の店舗や施設で利用できるほか、PayPayユーザーであれば、その場で寄付・利用できるため、かんたんにふるさと納税を活用できる。

 一方で、自治体としてもすでに広く普及しているPayPayを活用したシステムであることから、新たに仕組みの開発などが不要で手間やコストがかからないといったメリットがある。

 河田氏は「(PayPay 商品券が利用できることを示す)シールやポスターは我々が提供する。それを貼ってもらうというところが唯一の(時間的)コスト」と語った。そのうえで「ふるさと納税をきっかけとした訪問者の増加により、地域の店舗・施設での売上が上がることがPayPay 商品券で期待できる効果」とした。

 PayPay 代表取締役 社長執行役員 CEOの中山一郎氏は「さとふるで寄付することで、PayPay 商品券を使って「地域の空気」を現地で味わえる。ふるさと納税の1つしかなかった選択肢を2つ用意するという意味でまったく新しい体験、商品になる」と語る。

 藤井氏は「現地で使えるところが一番(期待として)大きい。現地で体験できるお礼品の利便性が大きく向上する」とコメント。さらに「旅行時にPayPay商品券がある自治体を選ぶという利用が増えれば、自治体来訪のきっかけになり、地域での消費の拡大、地域活性化に貢献できる」とした。

 中山氏によれば、2021年度のキャッシュレス決済の市場はおよそ8兆円で、決済回数はおよそ56億回。PayPayは市場の約7割を占めるなど、すでに多くの人が利用するサービスに成長した。同氏は今後も市場は伸びていくとの見方を示しており、キャッシュレス決済のPayPayを軸にした、PayPay 商品券の利用の伸びも期待が高まる。

 中山氏によれば、PayPay 商品券はさとふるに限定したものではない。「相手がある話なので我々だけでは進められないが、広くこの仕組を活用いただける事業者があれば、API提供を含めてやっていきたい」とさらなる展開にも前向きな姿勢を示した。

左から栃木県日光市 粉川昭一市長、さとふる 藤井氏、PayPay 中山氏、山口県長門市 江原達也市長