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ユーザーごとに最適な回線品質を、Beyond 5G/6Gに向けたKDDI総研の取り組み

 KDDI総合研究所は、Beyond 5G/6G時代に向けた新しい無線アクセスネットワークへの取り組みの一部をメディア向けに公開した。

通信はユーザー中心に

 KDDI総研では、現在のベストエフォート型でのサービス提供から、よりネットワークの高度化が進んでいると見られる2025年ごろには「サービスごとに必要な品質」を提供するといったように、インフラ中心のアーキテクチャーがユーザーセントリックなものに移行していくと見ている。

 その際に課題となるのは、セル境界での通信品質の劣化。局舎間の境界では、互いの基地局からの電波が干渉し、通信速度が遅くなることがある。そこで、Beyond 5G/6Gの登場が見込まれる2030年ごろでは、一歩進んだ考え方として「ユーザーごとに必要な品質」という発想で「セルフリー」なRAN構成が検討されている。これにより基地局同士を連携し、無線信号処理を行うvCPUをユーザーごとに用意するなどして、品質を確保するという。

 カギとなる技術「Cell-Free massive MIMO」は、同じ局舎にある無線信号処理機能に接続する基地局が連携することで、セル境界で起きる干渉問題を解決し、高品質な通信を維持できるというもの。

 しかし、auサービスエリアのように大規模な通信環境では、無線信号処理機能を複数の局舎に分散して配置する必要がある。この場合、局舎が異なる無線信号処理機能に接続する基地局間では連携ができずに通信品質を維持できない問題があるという。

局舎間をまたいで連携できる「CPU間連携技術」

 そこでKDDI総研では「CPU間連携技術」を活用し解決を図るべく研究を進めている。この技術は、ユーザーの移動などで変化する基地局と端末の無線状態を測定。干渉効抑制果が大きい基地局とのみ通信するよう制御することで、干渉抑制効果と信号処理の計算量の削減を実現する。

 5Gでは、局舎間の干渉抑制し品質を維持する仕組みとして、端末と基地局の間で伝搬状態を推定して干渉抑制を行う「Coordinated Beamforming」が用いられているが、Cell-Free massive MIMOとの組み合わせでは、分散配置されたすべての基地局と端末間で信号の伝搬状態の推定と干渉抑制の計算をする必要があり、サーバーに対する負荷や消費電力が課題となる。

 CPU間連携技術では、Coordinated Beamforming技術と比較して、CPU間連携技術では無線信号処理の計算量を1/4に削減できるとされており、これにより負荷や消費電力の問題を解決できることが見込まれる。

必要な数の基地局のみ利用する「AP Cluster化技術」

 さらに、Cell-Free massive MIMOのもうひとつの課題である、基地局間の干渉を抑制するための無線信号処理の計算量を低減する取り組みも行われている。

 「AP Cluster化技術」では、基地局(AP)間の干渉抑止のために発生する無線信号処理の計算量を削減すべく、端末の位置に応じて必要十分な基地局のみ利用するために複数の基地局でAP Clusterを形成することで、計算量を押さえつつも、通信品質を維持する。

 これらの技術を活用したセルフリーなネットワークは、東京都内の山手線の沿線など人口密集地域や野球場、イベント会場といったような場所での利用が想定されるという。