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KDDI総研、通信の高品質化と省エネを図るMIMO技術の実証実験に成功

 KDDI総合研究所は、「Cell-Free massive MIMO」において、ユーザーの端末と連携させる基地局を選択して通信を行う「AP Cluster(エーピークラスター)化技術」を適用したE2E(エンド・ツー・エンド)通信の実証実験に成功した。端末と基地局間の通信の高品質化や、基地局の消費電力削減効果が期待できるとしている。

 現在のセルラーアーキテクチャーでは、基地局ごとに設備や提供エリアをもつ構造で、ユーザーの利用場所や利用時間によっては、隣接するほかの基地局との間で干渉が発生し、通信品質が低下してしまう可能性があるという。

 今回の「Cell-Free massive MIMO」では、多数の基地局アンテナを分散配置し、これらのアンテナを連携させることで、ユーザーの端末と基地局間での干渉による影響を抑えることができる。

 その一方で、「Cell-Free massive MIMO」では、干渉抑止のための無線信号処理について計算量が増大してしまう課題があった。

Cell-Free massive MIMO

 今回、端末ごとにその端末の位置に応じて連携するアンテナを限定して演算処理を行うことで、計算量の増大抑止と通信の高品質化を図る実証実験に成功した。

 具体的には、同じ演算サーバーに接続した4つの基地局アンテナを分散配置し、「Cell-Free massive MIMO」環境を構築。この環境で、端末ごとにその位置に応じて連携する3つの基地局アンテナ群(AP Cluster)を選択し(AP Cluster化技術)評価を実施した。この評価の結果、4つのアンテナを連携させた場合と同程度のスループットが得られることを確認できた。

 連携するアンテナ数の削減により、サーバーの処理負荷の低減ができる。同実証実験の結果を1km四方のエリアでシミュレーションした場合、無線信号処理の計算量が1/5に削減できるという。処理負荷の低減により、必要なサーバー台数を減らせ、消費電力の低減に貢献することが期待できるとしている。

 同社次世代インフラ2部門 電波応用グループ グループリーダーの新保 宏之氏によると、今回の技術を利用するにあたり、ユーザーの端末の改造や交換は、基本的には必要なく実現できるという。実用化にあたって、今後インターフェイスの追加などが伴う可能性があるとしたものの、これによる著しい消費電力の増大などはないとした。

 また、展開する場所については、「地理的要因というよりはトラヒックが集中する繁華街などで展開していくことになるのではないか」という考えを示した。

 同技術は、Beyond 5Gや6G通信で実用化されるものとし、2028年~30年ごろに実用化される見通し。同社では今後、auのサービスエリアのような大規模な通信環境に適用した場合の課題解決などに向けて取り組んでいくとしている。