ニュース

トラブルなしでスマホを、イオンモバイルが店舗でユーザーの相談に乗る理由

 イオンリテールは、MVNOサービス「イオンモバイル」において「スマホメンテナンス」と「スマホ乗換え相談所」の2サービスを発表した。料金は無料。

 スマートフォン本体の不調や料金プランの見直し、イオンモバイル以外の通信キャリアへの乗換相談を受け付ける。スマホメンテナンスは、10月1日から本州と四国の158店舗で、スマホ乗り換え相談所は9月13日からイオンモール船橋で開始している。

イオンリテール 井原氏

スマホのトラブルを解決

 サービス提供の背景について、イオンリテール イオンモバイル商品マネージャーの井原龍二氏は、スマートフォン(携帯電話)契約後のトラブルの多さがあると語る。

 総務省の資料によれば、スマートフォンに関するトラブルのうち、もっとも多いのは料金関連で見に覚えのない請求についてとするものが32.1%。時点で解約の条件・方法(20.4%)、勧めによる契約・乗り換え(19.8%)と続く。

 井原氏は、今回の新サービスによりこうしたトラブルのうちの多くをサポートできるとしており、これにより顧客満足度を向上させる狙い。スマホメンテナンスは2022年6月から一部の地域で実証実験を行っており、その満足度は高いという。

 特にストレージの容量改善と料金見直しのニーズが高く、今後への期待として「スマートフォンの使い勝手」への期待が高い。シニア世代からの需要が根強く、井原氏はこうした結果やメーカーなどとも情報共有しつつ、サービス改善へつなげていきたいとしている。

 乗換え相談所は、総務省による乗り換え相談事業に関する手引に沿ったもの。イオンの携帯電話売り場の一角に相談カウンターを構え、売り場を訪れたユーザーの乗り換え相談を実施する。井原氏は、設置直後に利用者が訪れるといったことから、そのニーズは高いとしている。

 現状では具体的な展開については未定としつつも、今年度中に20店舗ほどでの対応を目標にしている。

22年度は純増に持ち直したイオンモバイル

 井原氏によると、イオンモバイルの契約数の推移は、2021年度で一度純減となったものの、2022年度はふたたび純増へ転じている。

 純減の要因としては、楽天モバイルの1年間無料施策への駆け込み需要が大きかったことに加えて全体的に料金が低廉化したことでの競争力の低下があるという。純増に転じた22年度は、獲得数が伸びたものの、純増数自体にはさほど反映されていないとした。これについては転売目的の短期契約が増加したためと説明。それ以外の解約については、2022年度以前よりも減少したという。

 MVNOへの接続料金改定にともない、イオンモバイルでも各プランの値下げを実施し、商品力の強化を図っている。結果として、20GB以上の大容量プランのユーザーが増加しており、2020年度までは2%台だったのに対して、直近では13.2%となった。

 加えて、2022年度に入ってからの転入元は、楽天モバイルがその割合を高めている。井原氏は「0円プラン廃止というよりも、エリアの問題や1年無料施策が終了したことが影響している」と説明した。加えて「イオンモバイルはメイン回線として利用が多い。0円プラン廃止による転入増は感じられない」とも語った。

 さらに「楽天モバイルからの転入割合が高いのは望ましいことではなく、3大キャリアのユーザーが転入したくなるようなサービスに力を入れたい」とした。今回発表の新サービスもそうした顧客獲得への動きの一環という。

 同社広報部によると、無料での提供ということもあり、直接的な売上は見込めないものの、顧客満足度の向上のほか、スマホメンテンナンスのついでにイオンモール内のほかの売り場で買い物をしてもらうことでの収益が期待できるという。

安心して利用できるスマホを提供

 MVNOがeSIMに参入する動きも増えている。イオンモバイルとしての考えを問われた井原氏は、eSIMについて「当然やりたい。我々はMVNEから回線を借りているので、その協議の中で進めている。なるべく早くやりたいと思っている」とした。

 加えて、各事業者がショッピングモールなどで展開する出張販売については「かなり影響がある」ともコメント。「我々も(キャリアの)代理店をしており、我々の店があるところでは、イオンが出張販売をしている感じ。その中ではバッティングしない。しかしキャリアショップが入る場所では同じようにやっている。競争環境としては厳しくなっているが、仕方ない」とした。

 イオンがMVNO事業に参入した2014年から、市場環境は大きく変化した。大手各社からも低廉な料金が登場するなど、多様な選択肢が提供される時代となったが、料金や端末に関するトラブルは依然として多い。そうした中「スマホの利用でトラブルの発生をゼロにしたい」と井原氏は、新サービスへの意気込みを示した。