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LINEと山口市、情報格差解消を目指し「スマホ・SNS講座」を共同開発

山口市「行政のデジタル化と並行して情報格差解消に努める」

 LINEは、山口県山口市と共同で、地域住民のためのスマホ講座「地域で考えるスマートフォン・SNS活用講座」を開発した。同講座の教材は、サイトで無料公開される。

 地方自治体の多くで、SNSなどを活用した行政サービスのデジタル化が進んでいる。LINE公式アカウントでも、約1100以上の自治体がアカウントを開設しており、情報発信や行政手続きなど、住民の利便性向上につながるサービスを提供している。

 一方で、自治体から「ほかの世代に比べ高齢者のサービス利用が進まない」や「スマートフォンやSNSに抵抗をもつ住民もいる」といった声が上がっており、行政のDX化を推進するにあたり、住民の間のデジタルデバイド(情報格差)が大きな課題となっている。

 今回の取り組みでは、日常の中でスマートフォンやSNSがどのように活用できるかを知ってもらい、具体的な活用方法を身につけてもらい、デジタルデバイドの解消と、自治体のデジタルサービス利用促進を図る。また、講座の開発には東洋英和女学院大学講師の酒井 郷平氏も協力した。

講座の中身

 講座では、はじめに基本編「スマートフォンはどんなときに使える?活用場面診断ワークショップ」を実施し、次に活用編「SNSを活用した暮らしの便利と防災を考えよう!」の順に開催される。

 基本編では、スマートフォンを持つか迷っているユーザーや、あまり活用できていないユーザーを対象に、日常生活のなかでスマートフォンやアプリが活躍する場面を、受講者自身で考えることからスタートする。その後、生活での困りごとや要望をスマートフォンやアプリの活用で解決できることを知ってもらい、受講者にあらためてスマートフォンが必要か知ってもらう流れとなっている。

 活用編では、実際にスマートフォンを操作し使い方を学習していく。講座では、目的に沿った活用方法を身につけられるよう図られており、具体的には「自治体のSNSアカウントで医療など暮らしに関わる情報の調べ方」や「災害時に素早く情報を入手する方法」などをレクチャーする。実際に体験してもらい、今後日常の中でスマートフォンやSNSを有効に活用してもらえるような内容を目指した。

教材の内容

受講者からは「子どもや孫とLINEしてみる」

 15日に行われた講座では、講座用のスライドとワークシートを活用しながら実施された。

 5人程度が1つの班となり、実際にディスカッションしたり、LINEの機能を使って投稿や写真/動画を共有したりなど、受講者が受け身になるだけでなく受講者自身が発信できるような取り組みとなった。

 講座中、QRコードが読み込めないなど受講者が手こずる場面も見られたが、想定されている時間以内に講座は終了し、70分の間に「地域の医療情報の確認」や「防災情報の確認」を講習できた。

講座のようす

 講座後、受講者には持ち帰り資料が配付される。自宅に帰ってみて実際に講座と同じ事をやる際に参考になるよう図られているという。

 実際に講座を受けた女性(75歳)は「70歳になって初めてスマホを持ったが、これまでは電話で連絡が取れれば良いと思っていた。今回の講座に参加して、交流がある韓国の留学生と連絡が取れるようになるかも」とコメント。

 また家族との交流については、「子どもからは素敵な写真が送られてくるが、自分からはどう送って良いかわからずこれまで送れなかった。今回の講座を活かして、(自宅の)庭先に咲いたチューリップの写真を送ってみたい」という。72歳の男性も「孫とコミュニケーションしてみる」と、早速講座の内容を試したいと意気込んでいた。

行政側「より多くのユーザーに使ってもらいたい」

 一方、行政側となる山口市総務部デジタル推進課 主幹の原 幸彦氏は、社会全体でデジタル化が進行しており「行政でもデジタル化を推進している」としているが、「より多くのユーザーに使って頂いて初めてその効果が発揮される」と説明。

 不慣れなユーザーへの支援を、行政のデジタル化と「並行して進めていかなければいけない」という課題認識があり、今回の取り組みに至ったという。

 山口市では、今後市内各地域で住民を対象とした講座を実施する。また、同講座の教材は、山口市のWebサイトで無償公開している。

 LINEは、「LINEスマートシティ推進パートナープログラム」などを通じて、同講座をほかの自治体でも展開していくとしている。