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KDDI2021年3Q決算、増収増益も「ローミング収入が減収分を補う」流れ続く

KDDI代表取締役社長の高橋 誠氏

 KDDIは28日2022年3月期第3四半期決算を発表した。売上高は4兆138億円(前年同期比+2.3%)、営業利益は8746億円(同+0.4%)となった。

 売上高と営業利益について、同社代表取締役社長の高橋 誠氏(高ははしご高)は決算説明会で「年度末の通期予想に向けて順調な進捗」とまとめた。

 営業利益の増減要因をセグメント/領域別にみると、モバイル通信料収入はマルチブランドの通信ARPU収入が料金値下げにより564億円減収となったものの、グループMVNOや特にローミング収入が下支えし、モバイル通信トータルで+70億円となった。

 そのほか、ライフデザイン領域で+100億円、ビジネスセグメントで+68億円となり、成長領域で+168億円となった。

ローミング収入と3G停波

KDDI代表取締役社長の高橋 誠氏

 ローミング収入の多くは、楽天モバイルへのローミングサービス提供によるものだが、楽天モバイルでは基地局整備とローミングの終了を急いでおり、今後ローミング収入が減少することが見込まれる。

 高橋氏は「3Qでも引き続きローミング収入が増えていると思って頂いていいと思う。ローミング収入は、2025年にかけて徐々に落ちていくイメージを持っている」とコメント。実際に通信料の値下げ分をローミング収入で補っている見方は正しいとした。

 一方で、ローミング収入によって、他社に先駆けて3G停波を実行することができることは、今後の増収につながると高橋氏は明かす。

 高橋氏は、3G停波によって「オペレーションコストがどんどん減っていく。消費電力もだいぶ減るので、ゼロカーボンにも貢献していくことを考えると(3Gサービスの早期終了は)大変よかったのではないか」と考えを語った。

 2022年度について高橋氏は「料金値下げ分を5Gで取り返していく、非常に重要な年になると思う」とコメントし、引き続き努力していく姿勢を示した。

順調なUQとpovo、合わせて契約数は約500万

 モバイル通信サービスにおいて同社は、auとUQ mobile、povoの3ブランドで展開している。高橋氏によると、UQ mobileとpovoは引き続き成長を続けており、契約数はUQ mobileで400万程度、povoで110数万程度とあわせて約500数十万契約まで伸びたという。

 高橋氏は、povoの契約数について具体的な数字の言及は避けたものの、「povo 1.0」は減少し「povo 2.0」は増加しているとした。

 また、auについては「UQ→auへの以降が前年から約2.6倍に上がってきた。5Gプランを契約する大体6割の方が無制限プランを選ばれている」とコメント。解約率が上がっているものの「12月に事業者間の競争が激しかったが、全体的には良い形で回復してきている」とコメントした。

 なお、これからの料金改定や新プラン、新ブランドの展開については「各キャリアとも一息ついている感じがある」とし、成長の軸足を「5Gの展開」に注力していきたいとの考えを示した。

5Gの人口カバー率90%は「2022年の早い時期に」

 高橋氏は、5G通信エリアについて、「生活動線を支える安心・信頼のネットワークを目指す」方針でエリア拡大を実施しているとし、3月末には関東の21路線、関西の5路線で5Gエリア化を進めるとした。

 また、災害時にもつながる安心を提供すべく、これまでの東京に加え大阪の運用拠点も東京と同じ機能に刷新し、自動化を取り入れた東西2拠点監視体制を構築したという。

 5G通信の人口カバー率に関して高橋氏は「今年度末までに90%に持って行きたかったが、オミクロン株や半導体の課題もあり若干遅れている。22年のできるだけ早い時期に人口カバー率90%を達成したい」とコメント。

 また、5Gによる地方創生について高橋氏は「いろいろなものに通信が溶け込む時代になる。車がコネクテッドカーになるのは1つの象徴だと思うが、地方にもDXが広がってきて、ドローンなど地方活性化につながるような事業を、5Gの展開と相まって進めていくことは大切」と考えを示した。

DAZNなどエンタメパック料金は今後も強化

 質疑では、先日発表になったばかりのDAZNがセットの新料金プラン「使い放題MAX 5G/4G DAZNパック」に絡み、「パック料金を充実させる理由」が問われた。

 高橋氏は「5Gを展開し始めてからよくわかってきたことは、『利用シーン』をいろいろとご提案することもやっていかなければいけない」とコメント。

 通信スピードの上昇や帯域の拡大に加え、スマートフォン自体の性能も向上してきており、5Gの通信トラフィックは4Gの2.5倍以上に広がってきたと説明。コロナ渦の影響で利用が増えるハイパースケーラーのコンテンツを拡充し、「オールスターパック」をさらに魅力的にしていこうとの想いで料金設定したとした。

 また、これらのセットプランについて高橋氏は「解約率が低い」と話し、引き続き強化していく姿勢を示した。

モバイル通信のARPU上昇と非通信領域

KDDI代表取締役社長の高橋 誠氏

 高橋氏は、モバイル通信の減収幅について年間600~700億の減収を予想していたものの、「実はもう少し膨らんできている」とし、これ以上の減収がある旨を示唆した。

 高橋氏は「民間企業なので『減収したので減益します』というわけにも行かない」としながら「5GによるARPUの上昇」と「成長領域の売上拡大」を目標に掲げた。ユーザーに素晴らしいサービスを提供することや、電力や金融、ライフデザイン領域のコストを下げて売上を上げることで、しっかりと増収の道筋を立てることに努力していくとした。

 会見ではこのほか、モビリティ事業や新会社「KDDIスマートドローン」の設立、コネクテッドカーへのグローバル通信プラットフォームの提供拡大などが取り上げられた。