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「スマホの対応周波数を決めるのはキャリア? メーカー?」――ドコモ冬春モデル発表会の質疑応答で語られたこと

 NTTドコモは10月6日、2021~2022年の冬春モデルの発表会を開催した。8機種のスマートフォンに加え、ノートパソコンやARグラス、新サービスも発表された。

 本記事では、発表会後の質疑応答の様子をお届けする。質疑応答には、プロダクト部の安部成司氏、ネットワーク部の松岡久司氏、営業戦略部の山本明宏氏が出席し、報道関係者からの質問に答えた。

レノボのノートパソコンがラインアップに

――今回のラインアップにレノボ製のパソコンが入っていました。今回コンシューマー向けという意味では初めてだと思いますが、その狙いとか背景を教えてください。あと、キャリアがパソコンを提供する意義に関してもコメントをいただければと思います。

安部氏
 おっしゃるとおり、今回はコンシューマー向けの製品提供となります。コロナ禍において、働き方が大きく変わってきていると感じておりまして。家の中やコワーキングスペースなど、さまざまな場所でリモートワークをされている方が多いのかなと思っています。

 こうした環境の変化なども踏まえて、今回は5G対応パソコンの提供に至りました。我々は5Gネットワークを提供していますが、高速なネットワークを便利に使っていただきたいという考えのもと、レノボさんと一緒になって商品企画をしました。

端末ラインアップの変化

――先ほどのプレゼンテーションの中でハイスペックモデルユーザーの比率のお話がありましたが、あの数字はiPhoneを含めた数字なのでしょうか。また、電気通信事業法改正の影響ではないかと思うんですけども、なぜ2019年からスタンダードモデルが拡大していったのか教えてください。

安部氏
 先ほどの資料におけるハイスペックモデルの中にiPhoneは含まれていません。

 比率の変化に関しては、やはり事業法の改正などがあって、端末の価格が相対的に高騰化したということがあったのかなと思っています。価格にセンシティブなお客さまは、スタンダードモデルを選択されていると思われまして、その結果として先ほどのような比率になったと理解しています。

 一方で高機能を求められるお客さまもいらっしゃるので、そういった方々には特徴的なハイスペック端末を一定数提供すべきだと思っています。

――今回の機種はすべてSIMフリーということでよろしいでしょうか。

安部氏
 我々が8月27日以降に発売した端末に関しては、SIMロックが設定されておらず、(SIMロックを)解除する必要はありません。今後の端末も、すべてSIMロックなしで提供していきたいと考えています。

――SIMロックがなくなって、回線契約をしなくても購入できるようになりましたが、販売状況に何か変化はありますでしょうか。すでにiPhoneを発売されていますが、その状況も踏まえて教えてください。

山本氏
 SIMフリーによる端末販売への影響に関しまして、これからお客さまのニーズなどとあわせて見ていく予定です。iPhoneでアップルが販売するものと、我々の販売価格が少し違っているということがありますので、ニーズによってどこで買うかが異なるケースも出てくると思っています。

 ですから、そうしたニーズを見極めながら割引なども提供していきたいと考えています。

――回線契約がない状況でも割引が受けられる形になると思うのですが、その際のドコモとしてのメリットは何かあるのでしょうか。

山本氏
 回線契約なしで買っていただくということでも、我々を選んでいただかないといけませんので、(我々を選んでいただけるような)戦略に基づいていきたいと思っていますが、回線契約なしで購入された場合に割引をするというメリットは、キャリア側にはないと思っています。

あんしんスマホとらくらくスマートフォン

――シニア層向けに「あんしんスマホ」「らくらくスマートフォン」を発表されましたが、2機種のすみ分けはどのようなものなのでしょうか。

安部氏
 大きな違いとしまして、「あんしんスマホ KY-51B」のほうは約6.1インチの大きな画面がセールスポイントです。一方で「らくらくスマートフォン」に関しては、我々としても長年提供してきた機種で、慣れ親しんだ方に継続的にご利用いただけるスマートフォンになっています。

――らくらくスマートフォンという強いブランドがある中で「あんしんスマホ」を投入する意義は?

安部氏
 らくらくシリーズは、長年提供しておりますが、画面の操作性が変わらないほうがいいという方もいれば、より大画面を求められる方もいます。

 シニアの方により特化した形で提供できれば、あるいは、(らくらくシリーズ以外の)ほかの製品を使ってみたいという方もいますので、そのあたりを意識して今回「あんしんスマホ」を導入いたしました。販売の様子を見ながら、今後の展開を考えたいです。

――「あんしんスマホ」「らくらくスマートフォン」は5G対応ですが、これまでと異なる体験などどういった点を訴求することになるのでしょうか。また3Gサービスは、ドコモではまだしばらく提供されますが、今回の機種をどの程度販売したいと考えているのでしょうか。

安部氏
 販売目標については非開示です。

 5G対応ということについては、今後数年かけて、シニア層に訴求していきたいと考えています。動画や写真なども含めて楽しんでいただけると。

――このタイミングで、これまであまり扱われてこなかった京セラ製端末が登場した経緯などを教えてください。

安部氏
 端末ラインアップを広げることはやっぱり重要です。京セラさんと一緒に検討を重ねていて、採用いたしました。京セラさんからの提案を受けて、ちょうど良いタイミングでの採用となりました。

キャリアがスマホを手掛ける理由と対応周波数

――総務省の意向によって、SIMフリー端末の販売や回線契約なしの端末販売が促進される中で、キャリアが端末を企画して作っていく意義を教えていただけますか。

安部氏
 キャリアが端末を提供する意義ですけども、先ほどの5G対応パソコンと同じく、我々のネットワークを快適に使っていただくことが非常に重要だという思いがあります。

 たとえば同じスマートフォンで、外観としては同じようなものが他社さんからも出ていますが、実際の中身を見ていただくと、対応周波数などが異なります。

 我々のネットワークでいかに快適に使っていただくかということを事前にベンダーさまと協議して開発し、確認して提供することで、お客さまにご不便を与えないかたちで端末を提供していけると思っています。そして、それが我々が端末を提供する意義だと考えます。

――今回のラインアップを見ると、他社ではeSIM対応であっても、ドコモ向けがeSIM対応ではないというところがあるようですが、今の段階でのeSIM対応についての考え方と、今後考え方が変わる可能性について教えてください。

安部氏
 eSIMに関してはご認識のとおりで、今回の8機種に関しては、eSIMに対応しておりません。ただ、9月8日から我々のサービスとしてはeSIMサービスの提供を開始しています。

 また、以前からタブレットやキッズケータイですとか、そういったものはeSIM対応させていただきましたので、お客さまの利用状況などを踏まえながら展開をしていきたいと思っています。

 eSIMの登録などの操作に関してはまだまだ難しい部分もありますので、そういった部分を改善しながら、お客さまがeSIMを必要とされるということであれば、対応を検討していきたいと考えています。

――対応周波数はキャリアごとにあわせた仕様になっていますが、これはドコモ側とメーカー側、どちらの意向が強いのでしょうか。またiPhoneはなぜ幅広いバンドに対応できているのでしょうか。

安部氏
 端末の対応バンドについては、メーカー側との協議の上で決めています。

 たとえば5Gであれば、ドコモでは関東周辺で4.5GHz帯を基本的に用いていますが、端末側でサポートしてもらえなければ、お客さまも使えません。そこで、その周波数に対応できるかどうか、といったことを話し合って決めています。

 そのほかのさまざまなバンド(周波数)も、基本的には端末の価格にも影響していきます。価格とスペックのバランスで最終的に決めている、とご理解ください。

 一方、iPhoneについては、日本に限らず、グローバルでそのモデルが用いられていると思います。

 1機種で多く出荷されていますので、多くのバンドに対応されていると理解しています。

 当社のネットワークに繋がるかどうかも、動作を確認し、問題がないということで提供しております。このあたり(接続性試験の上で提供)はAndroidとiPhoneで違いはありません。

――総務省の有識者会合で、対応周波数の拡大を求める声が出てきているようです。懸念点などはありますか。

安部氏
 さまざまな周波数を対応しようとすることは、端末のコストが相対的に上がっていくんだろうと。そこを懸念しています。

 ただ、一方でやはりSIMフリーで、お客さまの流動性(他キャリアへの乗り換えやすさ)が向上すると、やはり「問題なく他社で使えるようにする」ことがお客さまの利便性に繋がるでしょう。

 いろんな端末で、同じように周波数が対応することは考え方のひとつです。

 そういったコスト面とお客さまの利便性をどうバランスを取るか。そのあたりを考えながら今後の対応を進めていくべきかなと考えております。

5G SAとパケ止まり対策

――今回のラインアップは5G SAに非対応ですか? 今後のソフトウェア更新で対応できるのでしょうか。

安部氏
 ドコモでは、5G SAを年内に導入する目標ですが、対応機種について現在決まったものはございません。発表できるタイミングになればお知らせします。

――今日発表された機種も対応する可能性があるとも思えるのですが、いかがでしょう。

安部氏
 5G SAの初期は、かなり法人に特化したものになるのではないかと思っています。

 最終的にどんな機種で対応できるかは、その発表時に説明いたします。

――10月4日に「パケ止まり」対策が発表されています。あらためてその内容を教えてください。

松岡氏
 いわゆるパケ止まりは、5Gエリアの端で電波品質が悪いときに発生する事象です。6月に一度、対策を発表しましたが、継続的な分析と対策の検討を重ねており、4日に2つの対策を発表したことになります。

 5Gは現在、エリアの拡大機ということもあり、お客さまが「エリアの端」に遭遇することが多く、これはエリア拡大機には起こり得る事象です。ドコモとしては、まずしっかりエリアを拡大するということが対策のひとつです。

 もうひとつが「ネットワーク装置のチューニング」です。電波品質が悪い場合、4Gと5Gのどちらを使うか選ぶのですが、より最適な選択になるよう調整しています。

 そして、基地局から端末に割り当てる周波数の幅が広いと、端末側の電力が限られているため、「周波数あたりの電力」が低くなります。電力が低くなると、電波が届かなくなり、そこでパケ止まりになる。そこで、周波数幅を絞り、電力を集中させることで、繋がりやすくする対策を取り入れました。

 これらの対策は10月中旬までに実施し、スループット(通信速度)の改善や、パケ止まりの改善に効果があると見ています。

kikito

――今回発表された「kikito」のアプリに関して、提供の背景にあるものを教えてください。

安部氏
 4月にレンタルサービス「kikito」の提供を始めたときから、単に端末を貸し出すだけでは(お客さまにとって)不十分だろうということで、並行して検討していたものになります。

 レンタルした商品の使い方紹介や、レンタルした機器の売却のサポートなどを通じて利便性の向上を図りたいと思い、アプリを提供させていただくことにしました。「kikito」も順調に利用者が増えていますので、今後も積極的に対応を進めていきたいと思います。