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バルミューダ寺尾社長が語る新ブランド「BALMUDA Technologies」と“バルミューダスマホ”の狙い

寺尾氏

 家電よりも少し先鋭的、先進的なブランド戦略を採っていく。同じブランドではできない。そして『世界』を見ているんです――

 そう語ったのは、バルミューダ代表取締役社長の寺尾玄社長だ。8月6日、新ブランド「BALMUDA Technologies(バルミューダテクノロジーズ)」を発表した直後の決算説明会での質疑応答に答える形で、新ブランドの狙いを語った。

――5月にスマートフォン開発を発表した後、反響はどうだったか。またヒント、あるいはメッセージがあれば。

寺尾氏
 反響はいろいろいただきました。これまでも、発表前の製品でティザー(予告)などを実施していたが、そのなかでも最大の反響数をいただいたと認識しています。

 反響の中には「パンが焼けるんじゃないか」という声もあったんですけど、パンは焼けません。Twitterでも、「バルミューダはいろいろなものを省いて、シンプルにしていくが、通信機能を省いたりしているんじゃないか」とお声もあったが、通信機能はあります。

 そんな反響を受けつつなんですけれども、いまのところ、業績の見通しに変更はありません。

 メッセージやヒントということなんですが、あの、述べられないんです。なんですけれどもね、ええと、まあ言える範囲で申しますと、私にとって(既存の)スマートフォンはだいたい同じように見えます。

 現代社会で暮らす私たちは、消費者として、たとえば1つの商品を購入する際、とても多くのバリエーションから選べます。しかし世界でもっとも多く使われている道具であるスマートフォンでは、あまりにも選択肢がない状況にあるんじゃないかなというふうに考えております。

 誰もやってくれないなら、自分たちでやろうというのが(参入に至った理由の)ひとつ。今回、スマートフォンを開発するきっかけになった想いです。5月の段階でも申しましたけれども、とても個性的な端末を作っているというつもりでおります。明らかに他の物とは違う。

 デザイナーとして、久しぶりに自分で線を引いてデザインした商品になります。他の物に比べて、私の感覚ではとってもエレガントだなという風に考えている端末になっています。

――新ブランドの「BALMUDA Technologies」では、技術集積度の高い製品を扱うとのことだが、スマートフォン開発が5月に発表され、新ブランドがこのタイミングでの発表となったのはなぜか。また製品同士の連携については、ホームIoTについては、以前の会見でも積極的ではなかったが、今回はどう考えているのか。

寺尾氏
 スマートフォン事業の発表とブランド発表の順番については、だんだんと詳細を明らかにしていこう、できればわくわくさせたいな、という想いを持っています。

 今日、スマートフォンの姿を一部、お披露目しましたが、このように徐々に詳細を明らかにしていこうという順序を考えていました。

 「BALMUDA Technologies」での連携についてですが、引き続きホームIoTなど興味がありません。

 ただ、「BALMUDA Technologies」で発売する商品群での連携ということでは、基本的にはおそらくどの商品も、ネットワーク機能を搭載するでしょう。

 いずれにしろ何らかの連携というのはするだろうなと思っておりますが、「連携によって素晴らしい体験を」というよりも、ひとつひとつの商品を作り込むことによって、たとえばスマートフォンを使うという体験や質を最大限に向上させたい。アプリの開発も旺盛に進めています。

――世界的な半導体不足の影響は?

寺尾氏
 よくニュースで取り上げられるのは半導体ですが、実はですね、今、世界的な材料の取り合いというところにもなっております。非常に広範囲な種類に及ぶ電子部品全般、場合によってはプラスチックの原料となるまあ樹脂原料や顔料なども非常に調達するのが困難になってきています。

 我々には非常に優れた調達チームがありますので、そうした情勢はキャッチしていましたが、この上半期に関しましては、前年に買い付けて材料や部品によってショートさせることなく、出荷できました。そして生産が止まることは、いまのところありません。

 しかし、毎週のように、新しく色々な材料が切れる、あるいは入ってこないだろうという情報が入ってきます。それに日々対応する状況ですね。

 材料、半導体電子部品の調達ができず価格も世界的に上がっています。こちらも技術部門が一丸となって原価を抑えるために一生懸命走り回っています。とはいえ、(業績面で)通期の見通しでは調達の困難度や、原価上昇をある程度織り込んだ数字になっており、修正は必要なく据え置きとさせていただいています。

――生活家電と「BALMUDA Technologies」というブランドをあえて分けた理由、戦略は?

寺尾氏
 白物家電や黒物、という分け方ではなく技術集積度の高さで分けました。技術力が非常に高い割合を占めると言う商品群になると思われます。

 その印象を皆さんにも持っていただくために、あえて「BALMUDA Technologies」と命名したのです。

 ジャンルが違っても同じブランドでいいじゃないかと思われるかもしれません。

 でも、たとえばトースターは、日本で年間200万台販売されています。一方、スマートフォン(の国内年間販売数)は3500万台です。規模が全く違う世界なんですね。

 家電のバルミューダでは、ある程度、ポピュラリティ(知名度、評判、人気)という、なるべく広く好かれ、かつ良いと思われて使っていただきたいと考えてブランド戦略を取ってきました。それでも市場シェアでは数量は低い。スマートフォンでは、さらに数量シェアが低くなります。

 いきなりトースターや他の商品で持っているようなシェアを獲得できれば逆に大変なことになりますし、そうもいかないだろうなと考えています。強いブランドがたくさんあるジャンだとも思っています。

 つまりブランディングが違うということなんですね。「BALMUDA Technologies」のロゴマークからも想像いただけるかもしれませんが、家電でやってきたバルミューダよりも少し先鋭的であり、かつ先進的であるというブランド戦略をとっていこうと。

 同じブランドではこれはできないなという風に思ったのが、このブランドを分けた原点です。

 そしてもうひとつ、付け加えたいのが「世界を見ている」ということです。

 家電のバルミューダは、海外でも販売はしていますが、主に日本のお客様を見て商品を作ってきました。

 一方、「BALMUDA Technologies」というブランドで作る商品は、世界のお客様を見て作っているつもりです。そこで表現する言語が変わってきたり、行動が変わってきたり、見せ方が変わってきたりというのは当然必要だろうなと。

 このことからもブランドを分ける必要があるだろうということで、本日発表した次第です。

――「BALMUDA Technologies」での今後の売上、利益の立ち上がり方について、1年、2年、3年後などのイメージがあれば。

寺尾氏
 答えるのは非常に困難な質問です。市場規模が非常に大きい世界で、どれぐらい伸びるのか、甘めの計画を立てるとホラ吹き少年になってしまいます。といってあまりに保守的でもおかしいのでは? と言われるでしょうから非常に難しい。

 とはいえ、現在の家電事業の売上規模と早く同等にして、なおかつ追い抜いていきたい。それをなるべく早く、というのが私の仕事なのではないかなと思っています。

――「BALMUDA Technologies」では集積度が非常に高い製品とのことだが、既存製品と比べかなり利益率は高くなるのか?

寺尾氏
 そうでもないです。既存より低いこともありません。集積度が高いとはいえ、スマートフォンでは、すでに非常に安いモデルもあります。そうした製品はとても利益率は低いと思います。

 スマートフォンといえどもコモディティ化してきているという状況にありますので、各社さんは、そんなに利益率が取れてないではないかなと想定しています。

 その中で私たちとしては、基本的に体験価値をお客様に提案する、機械でなく体験を買っていただくという考え方はこれまでのバルミューダと全く変わりませんので、その意味では比較的、利益率は良好に保っていけるんじゃないかと考えています。

――「BALMUDA Technologies」では「世界を見ている」とのことだが、スマートフォンは韓国や北米と同時に発売することになるのか。

寺尾氏
 いえ、しません。同時発売はしませんが、なるべく早いタイミングで、海外でも発売したいなと考えています。

――「BALMUDA Technologies」のロゴが、楽器に記されているようなデザインになっている。

寺尾氏
 私、ミュージシャン出身ですので、こういったロゴマークに非常に親しみを持っています。で、今回、新しいブランドを作ろうとなった時に、いろいろなことを考えました。

 できればですね、この世の中に、一般的な企業が使うロゴタイプとロゴマークがありますけれども、できればグラフィック的なものを出せればいいなと。何しろ、人の記憶に残るという意味では、文字より絵の方が強いですから。

 でも、なかなかしっくりくる案がありませんでした。そこでいっそのこと、「文字自体をグラフィックにしたらどうかな」という考えで……これは実際に私の手書きでの文字が元になっているんですけれども、いっそこれをグラフィックにしようと。

 「BALMUDA Technologies」で皆さんにお見せしていきたいものは、「自由や可能性を信じること」です。個人的にはロマンチックだなという思っているんですけれども、ロマンティックさをブランドとして表現していきたい。そんなところから、採用したという経緯です。