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KDDIの21年3月期決算は増収増益、通信収入減も成長領域伸びる
2021年5月15日 06:00
KDDIは、2021年3月期の決算を発表した。売上高は5兆3126億円で前年比1.4%増。営業利益は1兆374億円で前年比1.2%増の増収増益の結果だった。
発表の場には、KDDI 代表取締役社長の高橋誠氏が登壇した。
成長領域が業績を牽引
高橋氏は、増収増益の要因として激変する環境下において成長領域が牽引した結果と説明。
au通信ARPAは、8444億円。低廉な料金プランや格安スマートフォンへのシフトの結果、減少傾向が続く。一方でライフデザイン領域やビジネスセグメントを含めた成長領域は1兆2164億円の売上高と増収。
モバイル通信関連は409億円の減収となったものの、エネルギー事業除く成長領域およびその他事業の収入で全体は122億円の増益となった。高橋氏は、エネルギー事業についても今後、電源調達の対策を実施するため一過性の減収と説明した。
今期の業績予想については、売上高は5兆3500億円。営業利益は1兆500億円を見込む。とくにライフデザイン領域については2500億円増益と前期比26.3%プラスを目指す。
通信料金値下げ、競争環境の激化、コロナ禍などの環境変化を事業機会と捉えると高橋氏。今後の持続的成長に向けて成長領域の拡大、コスト削減推進、安定的なキャッシュフロー創出による株主還元強化を進めるという。
通信を軸に成長領域も拡大
今後の戦略としては、既存事業の安定成長と成長領域の拡大を目指すと高橋氏。通信事業を軸に5Gを積極推進。au、UQ、povoのマルチブランド戦略を推進。コスト削減により安定成長につなげる。
ライフデザイン領域においてはユーザー接点とポイント流通によるau経済圏の拡大を目指す。au PAYの会員数は現時点で3200万超、auスマートパス会員も1500万を超えており、今後も利用可能店舗を拡大。ポイントの流通で金融・コマース・エネルギーで拡大を目指す。
今期売上高は1兆5000億円、営業利益は2500億円とともに二桁成長を目指すとした。21年3月期では、金融事業が190億円のプラス成長。利益に大きく貢献しており、今後さらなる成長として520億円の増益を見込む。
決済・金融取扱高は、9兆円。コロナ禍による巣篭もり需要で「auかんたん決済」が伸びたという。加えてauじぶん銀行における住宅ローンやauカブコム証券との取り組み強化も大きく影響した。
povoの契約数は100万近くに
5Gエリアは、鉄道の大阪環状線の全駅周辺で3月末から利用可能になった。またJR山手線においても5月末より利用可能になる見込みという。生活動線を重視したエリア展開として、今後、主要鉄道路線に順次拡大していく予定。
全国展開については2022年3月末までに基地局数は約5万局、人口カバー率およそ90%を目指す。5G用に割り当てられた周波数のほか、既存周波数も転用し展開を進める。5G SAについては今年度後半をめどに展開するとした。
4Gと5Gをあわせた累計契約数は、2887万。うち5G端末販売数については、2021年3月末時点で240万台を突破。auブランドから発売する端末はすべて5G化したことなどが影響して伸びを見せた。
今後も、au、UQ、povoのそれぞれの特色を活かした戦略で総合ARPUの成長を目標とする。povoの契約数について、高橋氏は100万が見えてきているとコメント。割合としては既存ユーザーの移行が多いという。
また、povoの店頭サポートについては今後のニーズを踏まえて検討していくとした。
特長でもある「トッピング」については今後も順次追加を予定。ユーザーとの共創の場として「povo Lab」で、ユーザーやパートナーとのコラボレーションでアイディアを生み出していく。
NEXTコア事業を推進
ビジネスセグメントでは、通信・IoTを軸にした事業ドメインの拡大を目指す。今期の目標売上高は1兆200億円。目標営業利益は1840億円とビジネスでも二桁成長を目指す。
通信・IoTを軸として、コーポレートDX、ビジネスDX、事業基盤サービスの3つで成り立つ「NEXTコア事業」を展開していく。いずれも既存の通信サービスを活かした「付加価値ソリューション」。
IoT回線契約数はソラコムとの合算で2100万を突破。中期目標の1800万を前倒しで達成した。
22年3月期においてはビジネスセグメント売上高の3割超を占める拡大を目標としている。
このほか、企業価値向上へ向けた取り組みとして、収益性・効率性の改善。KDDI Sustainable Actionを通じて、災害対策、地球環境保全、多様性の尊重などさまざまな課題解決へ取り組んでいくとしている。
質疑応答
――今期ARPUが4200円と21年3月期から200円減と下げ幅が他社より大きいが根拠はなにか
高橋氏
マルチブランド戦略により、au、UQ、povoの比率を考えるとこれくらいの見通し。auユーザーの10%ほどが他ブランドへ移っていくのではと見ている。
――3Gの巻取り状況はどうなのか
高橋氏
コンシューマーもビジネスでも順調に推移している。多少コロナで遅れた部分があるが、機種変更数ももとに戻りつつあり、進めていける。
――通信費低廉化による収益減少への対策は?
高橋氏
合併以降、持続的成長を続けてきており、その結果。昨今、通信への値下げ要請が強くあり、ライフデザイン・ビジネスを早めに定義しその成長で補えたのが今回の結果。今後は、今年度は中期計画の最終年。次の中期経営計画を1年かけて作っていく。金融であれば、
――今期の端末販売の計画などがあれば教えてほしい
高橋氏
2022年の3月末時点で累計700万台超を目指していく。SA時代を見据えてコンシューマーだけでなく法人ユーザーにも積極推進していく。鉄道沿線にこだわってエリアを拡大している。これにより利便性も高まっていくのではないか
――トッピングの利用率は?
高橋氏
数字については言えないが、結構トッピングしてもらっている。特に24時間使い放題が好評。次なるトッピングについては絶賛検討中。かわいいキャラクターもいるので「楽しいトッピング」をpovo Labで議論している。単純に通信・料金だけではないものをいろいろできたらと思っている。
――楽天モバイルがローミングを早い段階で打ち切り始めているが、ローミング収入のアテが外れたということはあるのか
高橋氏
収入面では稼働数が想定よりも若干増えている。エリアカバーはされているが、まだまだローミングが使われている。楽天モバイルとは5年間の契約を結んでおり、ビジネス条件もあり、早期にローミングを打ち切られても我々の収入が大幅に減るというものではない。
――NTTと総務省の接待問題で通信行政が歪められているという指摘があるが見解は
高橋氏
総務省が第三者委員会で検証中なので、その結果を聞いた上で議論したい。4月に21社連名で声明も出したが、NTT 澤田氏の会見を聞くと「春に統合を予定していた」というので驚いた部分もあり、本当にこのような形で進んでいっていいのかという疑問もあり、提出した意見書の見解を聞き、議論していきたい。
――UQ mobile統合の効果はどうか
高橋氏
正直言って「やっておいてよかった」と思っている。UQのシンプルさを期待していたauユーザーもいた。1600店舗ほどのauショップとau STYLEで200店舗、UQ スポット200店舗をあわせて全国2000店舗でUQへ申し込める。au・UQの良さをともにみて選べる体制ができつつあるのではと思っている。
――ドコモがKDDIと関わりの深い三菱UFJ銀行と提携した。環境はどう変化していくか
高橋氏
ドコモの動きは、KDDIと三菱UFJの関係に影響を与えるものではない。これは三菱UFJからも説明を受けている。KDDIとしてはau じぶん銀行という銀行がある。ソフトバンク、楽天モバイルも同様だが、ドコモは銀行を持つ予定がないと思われ、そこでdポイントで三菱UFJの口座をつくるという関係と聞いた。
我々はau じぶん銀行やau カブコム証券の共同出資者。クレジットでもプラットフォームを借りるなど関係は万全であり影響はない。戦略的な違いは銀行の有無になる。