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楽天決算、モバイル事業の好調さをアピール
2020年第3四半期は増収減益
2020年11月12日 20:40
楽天は、2020年第3四半期決算を発表した。売上は前年同期比+13.2%の3614億円、営業利益は前年同期比-409億円の-398億円で赤字だった。モバイル事業の設備投資を加速させたことが影響している。
なお、本記事では主にモバイル通信事業に関する内容を中心にお伝えしていく。
楽天の成長
決算発表はオンラインで実施され、冒頭に楽天代表取締役会長兼社長の三木谷浩史氏が、楽天のこれまでの軌跡について解説した。
1997年に2人で設立した楽天は、グローバル利用者数14億人に上るなど成長した。
楽天エコシステムのさまざまなサービスを通じてメンバーシップ制度やブランド、データを分析するプラットフォームを構築しており、インターネットサービスとフィンテック、コンテンツ&コミュニケーションの3本柱で展開していく。
また、新規事業の急成長とともに、トラベルや銀行など伝統的な産業からのマーケットシェアも獲得しており、業界全体の成長率を超える成長を達成している。
楽天では、オンラインとオフラインを問わない楽天エコシステムのグローバル展開を加速し、楽天IDのメンバーシップ制度による顧客獲得コストの削減や、楽天モバイルにおける完全仮想化ネットワークなどのコスト削減により、ポイント還元や利用料金の低廉化でユーザーに還元していくとしている。
楽天モバイルは基地局展開を前倒し
楽天モバイル代表取締役社長の山田 善久氏は、楽天モバイルが追加料金無しで無制限の5Gプランを実現できたのは、基地局の仮想化で設備運用コストを削減できたからと強調する。
また、これまでのプラン料金1年無料や国内通話無料に加え、事務手数料やSIM交換再発行、MNP転出、契約解除に関わる手数料をすべて無料にする「ZERO宣言」を展開。契約を検討するユーザーの障壁を低くし、ユーザー数獲得を加速させるという。
また、ユーザーからの評価も上々と山田氏はコメントする。MMD研究所が6月に発表した調査によると、楽天モバイルは総合満足度第1位となり、多くの楽天ユーザーにとって満足できるサービスを提供できているとした。
顧客獲得に欠かせないエリア展開だが、同社が当初掲げていた「2026年夏に自社回線での人口カバー率96%」の目標を5年前倒し、2021年夏に達成できるよう、基地局整備計画を加速させている。
なお、ユーザー数は2020年11月時点で累計契約申込数160万件を突破したという。実際の契約ユーザー数は非開示となったが、楽天の三木谷氏によると、端末の欠品などもないため実際のユーザー数とかけ離れた数字ではないとしている。
設備投資額の推移をみても、2020年第3四半期は四半期比で過去最高の固定資産取得額となっており、設備投資が加速していることがわかる。
RCPのローカル5Gとグローバル展開
楽天モバイルのもう一つの柱として据えているのは「Rakuten Communications Platform(RCP)」という、仮想ネットワークのプラットフォーム。
楽天モバイルのMNO事業は、RCPを利用してサービスを提供しており、このRCPを海外のキャリアに展開することで、グローバル展開を図るという。
効率よくエリア展開できるRCP
楽天モバイル代表取締役副社長兼CTOのタレックアミン氏は、RCPは高いパフォーマンスとセキュリティを確保できているO-RANネットワークであると説明する。
また、オープンシグナルが発表したネットワーク調査結果によると、RCPを利用している楽天モバイルのサービスは、世界のキャリアと比較しても高い評価を得られているという。
楽天モバイルの基地局は、ロケーションにより適切に周波数帯域を管理できており、効率的かつ高出力の基地局を整備できるという。これにより、従来より少ない基地局数で全国をカバーできるという。
また、基地局の整備にかかるアクティベート時間も従来より削減できており、基地局の展開速度は月間750局から1500局に増加している。これにより、エンジニアの人員も他社の1/20に抑えられ、その分ユーザーに還元できるという。
5Gのエリア展開
楽天モバイルの5Gエリアも、完全コンテナ化VoRANにより展開している。
また、5Gの運用全体をサポートするRGS+とRGS-eの2つの仮想エッジサーバーを新たに導入、世界初の完全にコンテナ化された5G仮想化O-RANスタックで、ネットワークのパフォーマンスや基地局設置時の効率などが向上するという。
なお、楽天モバイルの5G基地局展開では、4Gのインフラを活かすことができる。楽天モバイルの基地局は、2タイプのハードウェアのみで展開しているといい、4G基地局の設備を5Gでも最大限に活用できる。
さまざまなシーンでRCPを展開
楽天の三木谷氏は、RCPは3つの分野で活躍が見込まれるという。
まずは、ローカル5G。ローカル5Gにより産業機械の自動化などが期待できるが、専門知識がなければ構築や管理が難しいという。RCPはプラットフォーム化されており、管理も簡単に行えることから、日本国内でも展開していくとしている。
次に、通信インフラの一部にRCPを導入するケース。コア部分のみRCPで構築したり、基地局部分のみや、基地局の一部のみRCPで展開できるため、既存のキャリアでも導入できる。
ネットワーク全体をRCPで構築する方法は、当初発展途上国のキャリアや政府をターゲットとしていたが、先進国のキャリアからも引き合いがあるという。11月時点で中東のキャリアなど数社から話があり、順調に推移しているという。
ドコモの完全子会社化や総務省の政策
ドコモ完全子会社化への意見書
11日、KDDIやソフトバンクなどと共同で、「NTT(持株)によるNTTドコモ完全子会社化」に関する意見申入書を総務省に提出した。
これに関する受け止めを問われた三木谷氏は、「NTT法は(公正な競争環境の構築という)意味を持って施行されており、今回(の完全子会社化は)逆回転するものだと思っている」とコメント。NTTの前身の電電公社では、国のお金で設備を展開してきた経緯を踏まえ、国として通信業界をどう捉えているのかを確認したいとした。
また、楽天モバイルの山田氏は、「公正な競争環境が担保されるよう『オープンな場での議論』を求めていきたい」とコメントした。
総務省の政策と他社の20GBプラン
総務省は、携帯電話料金に関するアクションプランを発表した。
これに沿う形で、KDDIとソフトバンクはそれぞれのサブブランドから「データ容量20GBで約4000円」のプランを提供する。
これに関しての受け止めを問われた三木谷氏は、「本来は総理大臣(や政府)からのプレッシャーではなく、競争を通じて値下げとなるのがよいのだが……」と指摘しながら、日本の携帯料金が高かったとエンドユーザーが気づけた点はよいのではないかとコメントした。
また、楽天は、「自社エリア内無制限」「海外ローミング2GBまで無料」「国内通話が無料」「各種手数料無料」でサービスを展開しており、できるだけ摩擦なく楽天モバイルに入れるオープンなサービスでファンを増やしていきたいとした。