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ARで街の過去を見る、シューティングゲームまで楽しめる――auが沖縄で実験

 最先端のメガネ型デバイス「nreal light」を身につけてゾンビと戦い、スマホを街にかざせば、そこで撮られた昔の街の様子がわかる――。

 そんなイベントが23日、沖縄県沖縄市の「沖縄国際カーニバル」で開催された。仕掛けたのは、KDDIと沖縄セルラー。AR技術を駆使し、5G時代を見据えたエンターテイメントを体験できる機会となった。

ARゴーグル「nreal light」とスマホでゾンビをやっつける

 会場の一角で、ARゴーグル「nreal light」を用いて提供されていたのが、ARマルチシューティングゲーム。

 ARゴーグルをかけ、スマホの画面に指を走らせれば、ゴーグル内で表示されるゾンビの大軍に爆弾を投げつけて撃退していく。

 実際は何もいないのに、目前に続々と現れるゾンビ。倒しても倒しても、なお表れるゾンビに爆弾を投げつけるというシンプルな操作は、緊張感と爽快感というゲームらしい体験を味わえる。

 デモではソニーモバイル製の5Gスマートフォンを活用。ただし、今回は5Gの電波は利用されておらず、4G回線経由でコンテンツを利用する形。マーカーを認識してゾンビが出現する場所を設定、同時に2人プレイする形で、いつでもどこでも、いわばゲームセンターのような体験ができる。

 今後、もし商用化されることがあれば、夏祭りの会場で楽しむ、といった風景が広がるかも、と想像が広がる技術だ。

VPSで街を認識

 一方、ARで「昔の街の写真を見る」というイベントでは、AR(拡張現実)を実現するため、VPSと呼ばれる技術が用いられた。

 VPSは、バーチャルポジショニングサービスという意味。これは、カメラで捉えた風景から特徴点を抜き出し、事前に用意されている3Dマップと照合して、現在地を割り出すという技術だ。

【VPSの説明動画】

 同様の仕組みは、グーグルが2017年に発表し、AR技術に取り込んだ。現在では、ストリートビューで収集した写真をもとに、スマホ版Googleマップで「ARナビ」として利用できるようになっている。

 一方、KDDIでは今年6月、Sturfee社と提携。Sturfeeの技術の特徴は、衛星写真をもとに街の3Dマップを生成するという点。衛星写真を提供する事業者のデータをもとにすることから、実際に街を調査せずとも、低コストでVPSを実現できる。

「屋内は初めて」、商店街でのVPS

 過去の写真は、沖縄市コザの街並みに、専用アプリをインストールしたスマートフォンをかざすだけで楽しめる。

 スマホの画面上には、空中にARオブジェクトが浮かんでおり、その場で昔撮影された写真、つまり昔のコザの様子を確認できる。写真は琉球放送やプラザハウスショッピングセンターから提供されたものだという。

 写真を的確に表示するため、専用アプリでまず目の前の風景を撮影。アプリ上で特徴点を抽出し、クラウド上の3Dマップデータをマッチングして、ARオブジェクトを合成する。3Dマップデータは、そのままポリゴンとして利用できるとのことで、たとえばキャラクターなどのARオブジェクトが建物の影に隠れる、といった演出も実現できるという。

 こうした取り組みは、KDDIでもすでに渋谷や札幌で実施済みだったが、今回の沖縄市では、初めて屋根の下でのVPSを実現した。

 これは、商店街のアーケード内でスマートフォンやタブレットをかかげるとAR表示を楽しめるという形。

 事前に、スマートフォンと専用アプリでアーケード内を撮影しておき、そこから3Dマップデータを生成した。3Dマップの生成は数時間かかるとのことだが、それでもスマートフォンひとつでデータを作り出せるという身軽さは、さまざまな場所でのイベントで活用できそう。

 今回は、アーケード内の一部だけで実施されたが、5G時代になれば、クラウドにある大容量の3Dマップデータを参照することも容易になるとみられる。

異国情緒ある沖縄市で

 近隣に米空軍の嘉手納基地があることもあってか、米国風の店が多くあるなど、異国情緒を感じられる沖縄市。沖縄市観光物産振興協会の島袋隆氏によれば40カ国以上の人が沖縄市に暮らす。

 平成5年から続けられてきた国際カーニバルに対し、観光協会から沖縄セルラーへ出展が打診され、ARイベントが実施されることになった。500名に体験してもらうことを目指しているとのことで、取材時(23日夕方)までに200名弱が楽しんだ。

上月氏(左)と、沖縄市観光物産振興協会の島袋隆氏(右)

 ARイベントを実施する上で、いかに効率的に3Dマップを用意するかが課題、と語ったのはKDDIパーソナル事業本部 プロダクト開発1部副部長の上月勝博氏。

 すでに渋谷、札幌で同様のイベントを実施していたことから、今回、技術的な課題は少なかったようだ。

 とはいえ、リアルタイムに天気情報を取得し、スマートフォンを空に向ければ画面上に気温などを表示するようにする、といった機能は新たに実装されたポイント。着実に改善を進められているとのことで、商用化に期待がかかる技術だ。