特集:5Gでつながる未来

スマートグラス「nreal light」、5Gを想定したサービス

ARで道案内、街頭広告、メルカリの買い物体験が可能に

 KDDIは27日、5Gへの取り組みを紹介する法人向けイベント「KDDI 5G SUMMIT」を開催した。同イベントでは、KDDIとパートナーシップを締結した(関連記事)nreal(エンリアル)がスマートグラス「nreal light」を出展し、実現されるサービスについて紹介された。

nreal lightを装着している様子

 nreal lightは、USB Type-Cケーブルでスマートフォンと接続して使用するスマートグラス。単体では使用できないが、その分、本体が軽量であり、価格も比較的安価だという。

 会場では、ソニーモバイル製のAndroidスマートフォン「Xperia 1」が接続され、デモンストレーションが行われた。同端末は、市販されている端末とは異なり、専用のソフトウェアで動作していた。

 デモでは、机に置かれたARマーカーを認識し、nreal light上に、猫などのオブジェクトやスクリーンが表示されていた。スクリーンは2D表示で、スマートグラス上には2~3m先に100インチの大画面があるかのように表示される。

nreal light上で表示される映像
ARマーカー

スポーツ観戦や街頭広告にスマートグラスを、実用化に向けた展示

 nreal lightを活用した実用化に向けた取り組みも展示されていた。

 スポーツ観戦での利用を想定した取り組みとして、スマートグラスをかけると、スタジアムのフィールドにいるかのような映像が楽しめるコンテンツが用意されていた。スマートグラスをかけた状態で、実際に頭を動かしたり、歩いて移動したりすると連動して映像が変化する。

nreal lightで見える映像
収録された映像

 デモでは、収録された自由視点映像が利用されていたが、将来的には5Gを利用した映像配信を実現する。

 ARを活用し、実際の風景と連動した道案内や、街頭に広告表示をする仕組みも紹介されていた。この仕組みには、GPSよりも高精度な位置情報を実現するVPS(Visual Positioning Service)が利用されている。

 VPSは、現実世界の3Dマップと、スマートグラスからのカメラ映像とを照合し、向きや方位を含んだ位置情報を特定できる技術。KDDIは、VPSに利用する3Dモデルを衛星写真から生成できる技術を保有しているSturfeeとパートナーシップを締結しており、Sturfeeの技術と5Gを利用し、スマートグラス上でARを利用した道案内、屋外広告を実現する。

メルカリの商品検索をスマートグラスで実現

 ほかにも、スマートグラスを活用した実証実験として、メルカリが実際の商品を認識し、出品されている商品を検索できる「merukari Lens」を出展していた。メルカリは、nreal lightを活用した実証実験パートナーとして参画している。(関連記事

 スマートフォンで、商品を認識させると、スマートフォンやスマートグラス上で、メルカリに出品されている商品がARで表示される。実際の商品と一緒に出品物が比較でき、出品物の価格情報も表示される。

商品を認識させてスマートフォン上に表示しているところ。同じ映像がスマートグラス上にも表示される

 出品物の情報をリアルタイムで共有するシーンを想定しており、友だちがカメラで欲しい商品をスマートフォンで認識させ、相手のスマートグラス上に表示させることで買い物相談が実現できるという。

手に入りやすい価格でユーザー層を広げる

 KDDI 5G SUMMITにあわせて、nreal CEO Chi Xu氏が来日し、スマートグラスの市場性などの質問に答えた。

nreal CEO Chi Xu氏

 現段階のスマートグラスの市場性については、「大きなマーケットを期待している。将来的にはスマートフォンよりも増えるのでは」と指摘した。続けて「画面が小さいスマートフォンよりもスマートグラスは(仮想的に大きく表示でき)アドバンテージになる」と述べる。

 ユーザーに広めていくためには、購入しやすい価格が重要であると語り、5Gとの組みあわせてより充実したサービスを提供できるとも続けた。

 スマートグラスなどを手掛ける他社と比べた際のnrealの優位性については、手に入りやすい価格を挙げる。また、顧客体験を重要視しており、一部のコアなユーザーだけでなく、ユーザー層を広げたいと語った。加えて、「スマートグラス業界に参入する会社が増えるのはウェルカムで、競争は大歓迎。市場を一緒に作っていきたい」とも述べた。

 今後の課題として、最適化がまだ必要であり、つけ心地、視野角、(スマートフォンと接続せず)無線での動作を挙げた。まだわからないことが多いというのが正直で、検証していきながら進めていきたいと語る。

 nrealとKDDIとの提携について、KDDIの上月氏は「早い段階からやり取りはしていた。5Gに向けたスマートグラスを提供できないか一緒に進めてきた」と語った。

 8月からデモキットがグローバルで提供される予定で。KDDIもその時期に合わせてパートナーとともにデモキットを作り、2020年に向けてサービスを検討するという。