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ソフトバンクが上場後初の決算、「利用シーンの拡大」でスマホ戦略に自信
2019年2月5日 20:54
ソフトバンクは、2018年度第3四半期の決算を発表し、2018年12月の東証一部上場後では初めてとなる、同社単独での決算会見を開催した。
会見の冒頭には、ソフトバンク 代表取締役社長の宮内謙氏が、ステージに登壇した5人の経営陣を紹介。PC、インターネット、ケータイ、スマートフォンと常に変化する市場で事業に取り組んできたことや、そこを主戦場としていることがDNAであるとした上で、通信事業は踊り場に差し掛かっているのではないかという市場の懸念に対し、今後はAIやIoT、ロボット、5Gなどによりパラダイムシフトが起こると予測、それらをつなぐインターフェースとして「スマートフォンはまだまだこれから発展する。もっと大きなビジネスチャンスが来る」と、利用シーンの拡大に努めていくというスマートフォン戦略への自信を語った。
5G時代にむけ利用シーンや“価値”を拡大
新たな事業にカテゴライズする5Gについては、2019年度に試験サービス、2020年度に商用サービスを開始する予定。「今後3~4年で、スマホに5Gが標準搭載されるようになる。スマホは飽和しているという声もあるが、今後5Gスマホが世界中を席巻する。そのために利用シーンの拡大を行っている」と語り、現在のYahoo!と連携する取り組みやレンディング、PayPay、DiDiなど、さまざまな分野のサービスの拡充も、きたるべき5G時代を見据えた施策であると位置付けた。
スマートフォン
現在のスマートフォン事業については、「ソフトバンク」は大容量でビジネスユーザーにも向けたサービス、「ワイモバイル」は低価格で中容量、ライトユーザー向けの格安スマホ、「LINEモバイル」はさらに低価格で小容量、チャット中心のSNSユーザー向け、という3つのブランドの位置付けを示し、「それぞれのカテゴリーでナンバー1を目指す」とした。
「ソフトバンク」と「ワイモバイル」間の契約の移行数についは、2016年度や2017年度はワイモバイルへの移行が多かったものの、2018年度はワイモバイルからソフトバンクへの移行も相対的に増加して均衡に近くなり、戦略が功を奏していると分析している。
ARPUは上がり、スマートフォン解約率は下がっているとのことで、事業の特徴が評価されているという認識。
完全分離への対応
また、総務省が開催する会合で“緊急提言”として端末・通信サービスの完全分離が求められている点について、「ソフトバンク」では「ウルトラギガモンスター+」などで端末分離を実施済みという説明。端末の4年の割賦販売については継続する意向を示している。
「ワイモバイル」については、“緊急提言”に関連したガイドラインや省令の策定、ドコモが予告したの4割値下げへの対抗などから、2019年度上半期に対応するという方針を明らかにした。同時に1~2割の値下げも見込む。ただ、詳細なガイドラインや省令が明らかになっていないため、具体的な策は今後検討することになるとしている。
法人事業
法人事業では、AIやロボット、クラウドなどの事業を強化しており、企業や省庁と連携する事例、地方自治体と連携する事例も急速に増加。これに5G時代が到来することで「新たなパラダイムシフトが起こる。ビジネスチャンスは膨大にある」とした。
設備投資額は今後5年間で、今年度の3800億円をベースとして安定的に推移する見込み。基地局や鉄塔といった施設への設備投資は、プラチナバンドの獲得に関連して2012年度からの数年間に実施した大きな設備投資が、5G時代にも活かされるとしている。
ほかにもWeWorkは「オフィス版のAWS」だとアピールし、1カ月単位、デスク単位で事務所を用意できる機動性を強調し、その席数は2019年度に4万席、将来的には10万席を目指しているとした。
第3四半期決算
同社の第3四半期決算は増収増益で、純利益やフリーキャッシュフローも拡大。通年の業績予想に変更はなく、各目標値は達成できるとしたほか、好調なフリーキャッシュフローから「成長と株主還元を両立させる」と意気込んだ。
端末は正価販売、“店頭サービス”は有料化を示唆
総務省の“緊急提言”で求められている、端末と通信サービスの「完全な分離」については、どの程度の“完全分離”になるかによって、対応が異なるという立場。
質疑応答の時間に宮内氏は、「完全分離という形で動くと思う。端末は端末として、粗利をとって売るという絵に収束していくのではないか。我々の努力により、安くて良い端末を開発するなり見つけてくるなりすることになるだろう。車などでも、安くて品質のよいものから、高いブランド物でもいいという人もいる」などとし、正価販売を基本に、元の価格が安い端末を拡充するなどして、バリエーションを出していく方針を示した。
4年契約の割賦販売については、高額な端末を買いやすくするという観点から、「継続してやっていくべきでは」という方針を示している。
一方で、店舗で現在提供しているような、多くのユーザーが必要としているというデータや設定内容の移行といった比較的手厚いサービスは、有料化を検討していることも示唆している。
緊急提言では、販売代理店を届出制にするなど、厳しいチェック体制に移行することも盛り込まれており、「今まで通りのパターンではないかもしれない。お店は、サービスを提供する拠点になるのではいか。(端末の)値段競争は、今のような形ではなくなるのではないか」との見方を示している。
政府をはじめとした料金値下げの要請に対して、「ソフトバンク」ブランドでは値下げしないのかという問には、同じ会社のブランドである「ワイモバイル」が以前から対応しているという立場。両ブランド間を移動するには契約の移行などのハードルが残っているが、「ワイモバイル」のブランドを無くすことは、マーケティング上ははまったく得策ではないとしている。
PayPay、今後さまざまなサービスが登場
子会社であるPayPayについて、赤字かどうか、資金調達などを目的に上場を計画しているかどうかが聞かれた。宮内氏は、株式の公開は検討していないとした上で、「今は赤字だが、数年後には黒字に転換する計画。今はQR決済だけだが、本当は、ここからいろんなサービスがいっぱい生まれる。(ソフトバンクにとって)大変大きな貢献をする事業だと思う」とし、さらなる事業の拡大をアピールした。
悪いのはエリクソン!
2018年12月の大規模通信障害について、主要な原因になったエリクソンに対して損害賠償などを求めるのかと聞かれると、宮内氏は「完全にノーコメント」と、対応については口を閉ざした。
ただし、「悪いのはエリクソン! 僕らではない。あり得ないようなことが起こった」とし、ソフトバンクに料金を支払っていた約3060万回線の被害者に対し、自分たちには非がないことを強調した。
ファーウェイ製設備への対応
各国で協調して、ファーウェイ製の基地局設備などを排除する動きがある中、ソフトバンクでは4Gの設備の一部にファーウェイ製の設備があるとした上で、現在の議論は4Gの設備が対象になっていないことなどから、CTOの宮川氏は「巻き取るという判断はしていない」という方針を明らかにしている。一方、「5Gでも使う経路については、アップグレードする予定でもあったところを、十数億円の投資をする」とし、一部は政府の方針に同調する見込み。