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ソフトバンクの宮内社長と宮川CTO、中国メーカーへの対応は「日本政府のガイドラインを待つ」

 19日、ソフトバンクの株式上場にあわせて開催された記者会見の席上で、宮内健社長と宮川潤一CTOが中国機器メーカーの製品の取り扱いに関する質問に応えた。両氏は「政府の正式なガイドラインを待ちたい」と述べた。

宮内社長

 中国危機メーカーへのスタンスは? と問われた宮内社長は「政府のガイドラインを見極めたい」とコメント。宮川CTOとともに政府関係者と会ったことを明らかにした上で、「リスクを伴う。どういう形にするか、さまざまなオルタナティブ(代替手段)を検討している。我々のスタンスとしてコアの部分はやはり欧州ベンダーに変えざるを得ないかなと思っているが、早計には決められない」と述べた。

宮川CTO

 続いて宮川CTOは「今現在、ネットワークにファーウェイ、ZTEの基地局が受け持っているエリアはある。基本は欧州ベンダーの構成が中心だが、8年ほどファーウェイの基地局を運用しており、ものすごく技術力が高く、価格も安い。お付き合いしたい気持ちはやまやま。でも日本政府の方針に従いたい。それが出てきたら、それに沿って取り組みたい」と中国機器メーカーへの高い評価を示しつつ、現時点では、政府の正式な方針を待っており、正式には決まっていないものの、方針が明示されればそれに従う意向を示した。

5G機器のベンダー選定はこれから

 2020年の商用化を目指す5G(第5世代の携帯電話向け通信システム)のネットワーク機器ベンダーについて宮川氏は「現在6社と話をしているが、まだ決めていない」と説明する。

ファーウェイ製品の除却、「最大で1000億円」

 政府では12月10日、サプライチェーン・リスク(機器製造時に不正プログラムやバックドアを仕掛けられるリスク)を避けるために省庁間で申し合わせをしたばかり。そこでは具体的な企業名は挙げられていないが、米国政府の方針をもとに、ファーウェイやZTEといった企業の製品を日本でも排除する方針と報道されている。

 宮川CTOは、政府が正式なガイドラインを出すのを待って、その方針に従う考えを示したが、万が一、政府が中国メーカーの製品を排除すると決めた場合、ソフトバンクへの影響はどうなるのか。

 これはいくつかのシナリオで、金額感が変わってくる。現在のソフトバンクのネットワークでは、多くを欧州ベンダーの製品が占めている。しかし、それでも“プレ5G”とも称される先進的な技術である「Massive MIMO」や、一部地域の基地局でファーウェイ製品が採用されている。

 たとえばソフトバンクが運用する周波数帯8つのうち、欧州ベンダーの基地局は6つ、中国ベンダーは2つの周波数をカバーする形になっている基地局であれば、中国ベンダーの機器を取り除くとしても、欧州ベンダーの基地局にソフトウェア更新をする程度で、金額ベースでの影響は少ない。これからの5Gに向け、設備のリプレースにあわせていければ、5Gの展開に必要な投資計画で吸収でき、現在の計画から大きく外れることはない。

 しかし、もし現行のネットワークに採用されている中国ベンダーの機材をすぐ除くという場合は、「最悪の場合、1000億円」(宮川氏)という規模で追加投資が必要になるという。

 また、今後予定する4Gネットワークのパケット交換機におけるマルチベンダー化では、現在のエリクソンに加えて、欧州系ベンダーと米国系ベンダーの2社のうちどちらかを選定する方向で検討中であることがあわせて明らかにされた。

機器ベンダーの不正、オペレーターは見抜ける?

 機器ベンダーが仮に情報を抜き取るなど、不正行為を試みようとする場合、通信事業者(オペレーター)は気づかないものなのか。質疑で問われた宮川CTOは「4Gと5Gでは仕組みが違う」と語る。

 宮川氏は「LTEの4Gネットワークでは、コア側で暗号化し、端末には(VPNのような)トンネルでデータを転送する。(世の中には)いろいろな人がいるので断定は難しいが、私ならできない」と解説する。

 その一方で、5Gについては「MEC(モバイルエッジコンピューティング)が始まると(処理の必要な場所にサーバーが設置されることから)サーバーの場所が変わる。あり得るかなと思う」と述べ、米国政府の懸念に理解を示した。