インタビュー

「Xiaomi 14 Ultra」キーパーソンインタビュー、ライカとシャオミはどんな考えでカメラを開発したのか

 シャオミは25日(現地時間)、スペイン・バルセロナでフラッグシップスマートフォンの「Xiaomi 14」シリーズのグローバル向け発表会を開催した。

 質疑応答には、シャオミのインターナショナルコミュニケーション ディレクターのダニエル・デジャーレイ(Daniel Desjarlais)氏と、ライカのモバイルエンジニアリングおよび開発をリードするパブロ・アセベイド・ノダ(Pablo Acevedo Noda)氏が応じた。

アセベイド氏(左)とデジャーレイ氏(右)

――デュアルISOテクノロジーについて教えてほしい。どう機能しているのか。センサーに付属するものであれば、シャオミで開発し、ダイナミックレンジを向上させるものなのか。

アセベイド氏
 デュアルISOテクノロジーはセンサーに搭載されている。基本的には、2つのISO(感度)を得てイメージをキャプチャーしている。それを合成して、高いダイナミックレンジの写真にできる。

――追加の画像処理チップなどはある?

アセベイド氏
 そうした点は答えることはできない。

――Xiaomi 14 Ultraをまるで本物のライカのカメラのようにするキットが発表された。

アセベイド氏
 フォトグラフィーキットのデザインの設計には関わっていないんだ。

デジャーレイ氏
 デザインを見ると、伝統的なカメラから受け継がれていることを多く反映させたいと考えていることが見て取れる。

――カメラの品質に関する開発、コーディネイトのプロセスはどういうものになっている?

デジャーレイ氏
 ライカ側は、非常に厳しい基準を持っている。個々の製品の製造は、私たちが特定の品質基準を守って行っている。

アセベイド氏
 実はドイツと中国の両方の施設にカメララボがあり、エンジニアは両方の場所で一緒に働いているんだ。

 シャオミは中国に複数のラボを持っていて、複数の開発チームとエンジニアがいる。基調講演の中でも言及されたように、北京が彼らと仕事をする主な場所だが、もちろんドイツにも、シャオミのエンジニアがライカの施設に来ることがある。

――AI機能について教えてほしい。

デジャーレイ氏
 AI機能は、(シャオミのデバイス向けソフトウェアプラットフォームとされる)HyperOSに直接組み込まれている。HyperOSに特化して、すべてをコーディングしてきた。

 だから、AI機能はHyperOSと一緒に発表されることになったんだ。

 ソフトウェアだけでなく、SoC(チップセット)のハードウェア機能も使っているため、AI機能が搭載されるデバイスがどれになるか、別途、検討する必要がある。

――AI機能についての今後のスケジュールは?

デジャーレイ氏
 HyperOSにあわせていくことになる。OTAでアップデートされない機種は、そのデバイスによる。

――アップルやサムスンに次いでグローバルで3位のシェアになったとのことだが、シャオミの課題は?

デジャーレイ氏
 私たちが続けているのは、スマートフォン全体に特化したポートフォリオを開発すること。

 我々はここ数年、スマートフォンのプレミアム・セグメントで非常に大きな進歩を遂げた。スマートAIoTデバイス、スマートフォンについては、世界中で可能な限り、より多くの異なる製品カテゴリーを提供していくつもりだ。

 しかし、それらは我々が行っている2つの全く異なること。6億9900万台の端末で、世界中でAIoT(AIを活用するIoTデバイス)の1位を維持する。そういう意味では、「何かが足りない」という感じはあまりしていない。

――ライカにとって、AIを駆使する写真の未来をどう見ているのか。シャオミとの協力が、モバイルイメージングにどう有益と考えているのか。

アセベイド氏
 業界全体がAIの恩恵を受けるのは確かだ。これまで、他社が開発したAIは、最終的な品質という点では少し疑わしいものがあったからだ。

 100年ちかく写真に関わる企業として、一瞬の瞬間を捉えることを心情にしているが、過多なAIによる加工は求めていない。

――ライカはレンズの設計など対して非常に厳格だ。では、AIがもたらすボケ効果のようなものに対して、どういった視点を持っているのか。

アセベイド氏
 ユーザーが写真撮影について期待しているものである限り、私たちは常に前向きに取り組んでいる。技術が最高の結果をもたらすか、期待するような高い品質基準をもたらすのでなければ、採用しない。

 最高の画質をユーザーに提供することを保証しなければならない。だから、いくつかの機能は役に立つかもしれないが、ちょっとした問題があるかもしれない。だから、その問題が解決されるかどうかがはっきりしないうちは、搭載には少し慎重に進めている。

――スマートフォンでの写真撮影の品質の将来について、どういった意見を持っているのか。さらに優れたソフトウェアの統合や、AIの搭載、新しいハードウェアでの技術向上がさらに変革するタイミングなのか。基本的な考え方はどういったものになるのか。

アセベイド氏
 ハードウェアかソフトウェアか。僕はいつも、「適切なハードウェアがなければ、決していい結果は得られない」と考えている。

 ソフトウェアを使って同じような処理をできるが、写真をキャプチャするための適切なハードウェアがなければ、もちろん最高の画質を達成する可能性はない。

 最高のハードウェアを手に入れたら、最高のソフトウェアも一緒に使って、処理、つまりキャプチャーから生成までのパイプライン全体が完璧に機能するようにしなければならない。

 私たちは、最高の画質に対する信念を追求している。

 写真とは一瞬を切り取る芸術であり、ユーザーが長くにわたって追い求めているものだと信じている。

――スマートフォンのカメラの未来像について教えてほしい。光学的にはもっと大きなレンズが優れているだろうが、フォームファクターなどはどうなっていくだろう?

アセベイド氏
 確かに、より大きなレンズの方がより良い画質になる。

 だが、“プロ仕様”は多くの人にとっては適していない。スマートフォンのサイズが大きくなることを許容できる人はいるだろうが、多くの人はポケットに入れられるサイズを求める。

 スマートフォンが写真撮影にぴったりなもっとも大きな理由のひとつは、「カメラが一緒になっている」ということ。もし、ほかのものを持ち歩く必要があれば、日常生活に支障が出るよね。スマートフォンはカメラとしての役割も果たし、それだけで済むんだから。

――新型のイメージセンサーについて、どう捉えているのか。

アセベイド氏
 よりダイナミックレンジの広い映像が撮影できるようになった。ただ、プロユーザーにはその良さがよく理解してもらえるだろうが、多くの人にとっては「ちょっと画質がよくなった」と見るかもしれない。

――カメラのフレア現象(強い光源を捉えたときに発生する現象)にはどう対策しているのか。また、ライカはフロントカメラの画質には協力しないのか。

アセベイド氏
 少なくともレンズを含めたカメラモジュールで、フレアだけではなく、すべての試験を実施している。

 レンズを保護するガラスも含めたもので、不完全性や収差を最小限に抑えるようにしている。

 フロントカメラについてだが……私たちはメインカメラに注力している。写真を撮るという基本になるところだからだ。

 フロントカメラがセルフィーや、ショート動画の撮影などに多く利用されているが、コンテンツを作成するためのもので、確かにあなたが言うように将来的にはそうなる(ライカが協力する)かもしれないけど、何も決まっていない。今はメインカメラにフォーカスしているんだ。

アセベイド氏
 我々は「画像を加工しすぎない」ことへ、非常に注意を払っている。

 もちろん、より鮮明な画像を見たいというユーザーもいるかもしれないが、それは後処理で簡単にできる。

 私たちが心がけているのは、自然なルック、あるべき姿を正確に保つことだ。

――ポートレートモードについて教えてほしい。最近では、肌をより滑らかにするようになっている。

アセベイド氏
 さまざまな選択肢があり、そのための設定もある。カスタムして撮影することもできるし、撮影後に調整することもできる。

デジャーレイ氏
 美肌モードをオフにすることもできる。

 ポートレート・モードは私たちにとって大きな焦点だった。そのなかで、「本物であり続けること」に重点を置いていた。“人のように見える写真”ではなく、「その人らしい写真」を提供したいと思っている。

――ToFセンサー(光を当てて時間差で深度を測るセンサー)について教えてほしい。

デジャーレイ氏
 いくつかの手法があるなかで、ToFセンサーを使うこともあれば、使わなくても素晴らしい写真が撮れる。必要ではないが、マイナスになるわけでもない。

アセベイド氏
 どんな技術をミックスしていくか。今回、ポートレートモードには必要がなかったということになる。

――ズミルックス(Summilux)レンズとズミクロン(Summicron)レンズの違いは?

アセベイド氏
 ズミクロンレンズは、(Xiaomi 14 Ultraで採用される)ズミレックスレンズより口径が小さい。

 つまり、ズミルックスレンズは、より多くの光を取り込める。カメラ業界で言うところの「速いレンズ(Faster lens)」であり、被写界深度が浅くなり、シャープなイメージが得られるように感じる。