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米国発のスマホメーカー「Orbic」が日本に上陸した理由

 米国でスマートフォンなどを手掛けるOrbic(オルビック)の日本法人Japan Orbicは、日本での展開を発表した。スマートフォン「Fun+4G」などの製品が順次発売される。Japan Orbic社長兼Orbic EVPセールス&オペレーションズのダニー・アダモポウロス氏が日本で展開する理由を説明した。

左からOrbic ケィラブ・エドリン氏、Japan Orbic/Orbic ダニー・アダモポウロス氏、Japan Orbic 島田日登美氏

Orbicとは

 Orbicは、2006年に米国で誕生した、スマートフォンなどモバイルデバイスを手掛けるメーカー。ベライゾン・ワイヤレスなどへ端末を供給しており、日本ではまだ耳馴染みが薄いものの着実にシェアを伸ばす新興メーカーのひとつ。

 6月1日、その日本法人となるJapan Orbicが正式に日本展開を発表した。6月下旬より順次スマートフォン「Fun+ 4G」のほかタブレット「TAB8 4G」などが発売される。

 このほか、独自のクラウドサービス「Orbic Cloud」とOrbicの姉妹会社でサステナビリティに配慮したアクセサリーを手掛けるdbramante 1928(ディブラマンテ)の製品もあわせて展開する。

 米国で人気を誇る同社の折りたたみ式のフィーチャーフォンは、今回のラインアップには入っていない。これについてアダモポウロス氏は「新しいプロダクトを今後、日本に導入することもある」とするにとどめた。

なぜ今、日本なのか?

 「日本市場は期待値が高い」というアダモポウロス氏。Orbicはなぜ今、日本へ展開するのか。同氏は、日本のモバイル市場を大きく変えている要因のひとつを5Gへの転換と語り、地政学的な要素や半導体不足、コロナ禍、ロシア・ウクライナ戦争などもそのひとつと説明。一方で高齢化や行政手続きのオンライン化など生活面でも多くの変化があり、そのうえでもっとも大きなインパクトは「円安」で海外製品が高価になることだとした。

 端末の値下げ規制が大きく制限されるなど、スマートフォン市場が変化を迎えるなか、高価格なハイスペック製品に注力するメーカーも多い。アダモポウロス氏は小売店などとのヒアリングで聞こえてきたのは「多くの日本で展開するメーカーは消費者の意向とかけ離れているのでは」と、高価格帯に集中する姿勢への指摘だったと明らかにする。

 加えて経済停滞ものしかかる。スマートフォンの買い替えサイクルは徐々に伸びつつあり、以前は14カ月サイクルだったというが2019年以来、長期使用が増える傾向にある。アダモポウロス氏によれば、ひとつの機種を18~20カ月使うという調査があるという。

 加えて、テレワークなどの定着によりタブレットの需要にも高まりがあることを説明。こうした現状から、アダモポウロス氏はユーザーが必要としているのは「毎日のタスクのための基本的機能、リアルな機能、毎日の意味がある機能」として、手頃な価格で提供することへ自信をのぞかせる。安く必要な機能を満たす端末が少ないとして、そうした低価格帯市場で勝負に出る姿勢を明らかにした。

Orbicが実現したいこと

 Japan Orbic ビジネス・ディベロップメント・マネージャーの島田日登美氏からいつも「近江商人のようなスタンスで意思決定を」という言葉をもらうとアダモポウロス氏。そのうえで「三方良し」なブランドの信頼を築く意思を示す。

 モトローラ出身であるアダモポウロス氏は、自身を「歴史の長い会社の出身」と紹介し、Orbicを「100年以上続くブランドにしていきたい」と信念を表した。

 Orbicは自社でハードウェアやソフトウェア、RF設計、試験・認証などの部門を内部に持っており、決して他社製品を自社ブランドで売っているわけではないとアダモポウロス氏は強調。「外部業者にまかせていることはない」と品質を重視してブランド価値を作り上げていく姿勢を示す。

アダモポウロス氏自身をゆるキャラ化してプロモーション

 一方で端末メーカーを取り巻く状況は厳しい。直近でも、低価格帯の端末を市場に送り出してきたFCNTや京セラが経営破綻もしくは個人向け市場を撤退した。

 そうしたなかでのチャンスを「撤退する企業があるということは、我々に機会があるということになる」と状況認識を示し、そのスキマをOrbicが埋めると意気込む。さらに「すでに日本のキャリアとも今後の話を進めている」と将来的には、キャリア向け端末の市場にも進出する可能性を示唆した。