【Mobile World Congress 2017】
「日本とグローバルのニーズをうまく組み合わせたい」、ファーウェイ呉波氏インタビュー
2017年3月3日 22:15
MWC 2017開催に合わせ、フラッグシップモデル「P10」「P10 Plus」などを発表したファーウェイ。日本法人で端末部門を統括するデバイス・ プレジデントの呉波(ゴ・ハ/Wu Bo)氏に、P10シリーズと今後の展開について、話をうかがった。
「日本市場のニーズに応える」とは
――こちらで26日に開催されたP10/P10 Plus/Huawei Watch 2の発表会はたいへんな盛況でした。これらの商品は日本市場向けに投入される予定はあるのでしょうか。
呉波氏
今回の発表はグローバル市場に向けたものなので、日本市場向けについてはまだ何もアナウンスがありません。でも、可能性はあると思いますよ。
――発表会後のタッチ&トライでデモ機を触りましたが、どちらも完成度の高い製品ですね。ぜひ、日本でも出して欲しいと思います。
呉波氏
P10もP10 Plusも自信を持ってお届けできるスマートフォンですが、特にライカの新しいレンズが搭載されているP10 Plusを試していただきたいですね。
――今回発表された2機種の内、防水性能のことを考えると、P10の方が日本市場にマッチするように思うのですが……。
呉波氏
防水については、日本の基準が厳格で、P10 Plusは生活防水のレベルです。今後は日本で一般的なIP規格の防水にも必ず対応します。ファーウェイの端末は消費者のニーズに確実に応えていくことが原点で、コンシューマーのみなさんからの声を非常に重視しています。日本でSNSなどを拝見していると、防水に関するニーズがよく語られていることもちゃんと把握しています。
――ということは、SNSなどで要望を出せば、必ず応えてくれるのでしょうか?(笑)
呉波氏
novaシリーズを発表したときにもご説明しましたが、当社では「Voice of Customer」というしくみがあり、いつも消費者のみなさんの声を確認していて、できる限り、ご要望に応えようとしています。「VoCに挙げられた機能だから、すぐに機能を搭載する、実装する」というわけではありませんが、日本法人を統括している立場ですので、日本のユーザーのみなさんのニーズには応えていきたいと考えています。ただ、グローバル市場にはグローバル市場のニーズがあるので、これらを組み合わせる形で応えられるようにしていきたいと思います。たとえば、日本市場のためだけに製品を開発すると、価格も含め、競争力がなくなってしまいます。これはお客さんにとっても良くないですよね。だから、グローバル市場のニーズに日本市場のニーズをうまく組み合わせ、ミックスさせるような形で、みなさんのご要望に応えていきたいというわけです。
――日本市場は成熟しているので、防水やFeliCaなどが多くのユーザーに使われています。これらをグローバル市場に展開することは、ファーウェイにとってもプラスになるのでは?
呉波氏
おっしゃる通りです。防水機能は世界中のユーザーにとっても有効な機能であると考えています。では、防水機能が日本で標準的なものなのに、なぜグローバル市場ではまだなのかというと、おそらくビジネスモデルの違いに寄るところが大きいとみています。私はすでに50以上の国と地域を担当してきましたが、他の国と地域では防水機能がないため、故障修理の原因は水濡れや水没が多くを占めています。この故障修理で誰が恩恵を受けているかというと、実は修理を担当する企業なのです。こうした企業は水没したスマートフォンを修理することで、大きな利益を上げているわけです。もし、防水機能を搭載し、こうしたビジネスモデルを変えようとすると、修理を請け負う企業の立場を危うくすることになります。しかし、コンシューマーにとってはメリットがありません。ですから、私は常々、社内で「防水機能は日本だけのニーズではなく、グローバル市場のすべての消費者が求める機能である」と訴えています。
――そうすると、修理や保守による収益というのは少なくなるわけで、日本法人のような保守体制がグローバル市場での展開されることになりそうですか?
呉波氏
日本のアフターケアの方法は、何か機能を載せる際、必ずその後ろにはエコシステムというのがありまして、そこで利益が生まれるようになります。ですから、単に防水機能を推すということだけでなく、ビジネスモデルそのものを推進したり、パートナーと協力していく必要があります。ただ、ビジネスというものは絶えず成長していく必要、前進していく必要があります。仮に成長を止めてしまうと、短期的に利益を増やすことができるかもしれませんが、永続することはできません。ビジネスモデルは状況に応じて、少しずつ変化していく必要があるでしょう。私の責任は日本のニーズをシンプルに取り出して、「この機能を載せてくれ」ということではありません。
私は以前、中東で仕事をしてたとき、こんな話をきいたことがあります。中東は石油で富豪が多く、彼らは何人もの使用人を雇って、暮らしています。そこで、富豪のために、宝石をちりばめた冷蔵庫を売り出したところ、まったく売れなかったそうです。なぜかというと、冷蔵庫は使用人が使うもので、富裕層の人たちが直接、触れることはなかったからだそうです。つまり、簡単にニーズだけを伝えれば、商品が売れるわけではないということです。
Pシリーズのポジション
――今回のP10シリーズはPANTONEとのコラボレーションで、鮮やかな色のカラーバリエーションがラインアップされています。ご自身ではどの色がお好みですか?
呉波氏
どのカラーもいい色ですが、個人的にはグリーン(Greenery)とブルー(Dazzling Blue)の2色が好きですね。実は、私の普段の服や靴もグリーンやブルーが多いんですよ。また、女性にはホワイトやローズゴールドをおすすめしたいですね。今回発表したP10/P10 Plusは8色の展開になっていますが、ファッション性やカメラ機能も重視されているので、男性だけでなく、多くの女性の方にも使っていただきたいですね。
――従来のPシリーズは男性ユーザーが中心だったのでしょうか?
呉波氏
そうですね。日本でPシリーズをお買い求めいただいたのは、やはり、男性が多かったですね。しかし、2月に日本市場で発表したnovaとnova liteの2機種は、当初の予想通り、多くの女性ユーザーにもお買い求めいただいています。また、家電量販店のコーナーでは、多くの女性のお客様がnovaシリーズを手に取って、試しているところを拝見しています。
――これからは女性ユーザーにも拡げていきたいというお考えなのですね。これはMVNO各社が女性ユーザー拡大を狙っていることとも連動しますか?
呉波氏
これもカスタマーニーズですね。メーカーである以上、パートナーのマーケットプランに合わせていく必要があります。novaシリーズは昨年のIFAで発表したのですが、日本での発表が2月になったのは、ここに理由があります。
大手キャリアでのラインアップは?
――ファーウェイのスマートフォンはSIMフリーとして、MVNO各社で取り扱われていますが、これだけの人気なら、MNO(大手キャリア)各社が取り扱いたいという話もあるのでは?
呉波氏
各社とはNDA(秘密保持契約)があるので、MNOからご要望があるかどうかも含め、残念ながら、お答えはできないのです。いつもみなさんの取材を受けて、記事が掲載されると、翌日にはMNOの方から連絡があり、「アレ、言ったね」と言われてしまいます。昨年も防水やFeliCaの話をインタビューでお答えしたら、すぐにMNOの方から連絡があり、「ニュース見たよ」と言われてしまいました(笑)。
ファーウェイはSIMフリーの分野での存在感や知名度向上は、結果的にMNO各社とのビジネスを成長させる要因のひとつになるだろうと思っています。現在においてもファーウェイの日本のビジネスは、MNOから来ているというのが実状です。
今後の目標
――先日のnovaシリーズの発表会で、呉波さんが社内で年末に「今年も生き残ることができた」と話しているというエピソードを紹介していました。今後、ファーウェイとして、日本市場にどのような位置付けになりたいのか、シェアトップを狙うのか、法人ビジネスを拡大したいのかなど、目標があれば、教えてください。
呉波氏
社内では毎年、この先5年間の計画を決める「SP」というものを決めています。さらに、1~2年の短期的な「BP」という計画も立てます。6年前に私がはじめて日本に赴任したとき、これらの計画で「MNO向け」「MVNO向け」「法人向け」のいずれもやると書いていました。
また、日本は自動車大国なので、自動車メーカーとのビジネスをすることも決め、社内にそのための部署も設立しました。これらの部署はまだ『ふ化』の段階にあり、具体的な成果を上げることができていません。端末というと、スマートフォンをすぐに思い浮かべてしまいますが、我々は約8~10種類のデバイスを日本市場向けに供給しています。このラインアップの広さは世界でもトップクラスにあります。そのいずれ分野においても最大限に力を入れて、頑張って行きたいですね。
――今回のMWC 2017では「THE NEXT ELEMENT」がテーマとして、掲げられていますが、ファーウェイにとっての「THE NEXT ELEMENT」はどんなものでしょうか?
呉波氏
ファーウェイ・ジャパンとしては、これからも新しい機種を継続的に日本市場に投入して、より良いユーザー体験をみなさんにご提供していきたいですね。ファーウェイの社是に「カスタマーファースト」という言葉があります。お客さんのことを中心に考えるという意味ですが、これは私にとっても重要なことだと考えています。
――今日はありがとうございました。