【IFA2013】

IFA期間中にテスト、「Xperia Z1」ファーストインプレッション

 国内でも大ヒットした「Xperia Z」や、タブレット端末の「Xperia Tablet Z」、6.4インチの大画面スマートフォン「Xperia Z ULTRA」に続く、ソニーモバイルのフラッグシップモデルとして開発された新しいXperia。それが、「Xperia Z1」だ。本誌に掲載されたソニーモバイル田嶋知一氏のグループインタビューでも触れられていたように、「Z1」の「1」には、ソニーグループが一丸となって“フルスイング”で開発した初号機という意味合いが込められている。

ソニーの技術を凝縮させたカメラを搭載した「Xperia Z1」。ディスプレイにも「トリルミナスディスプレイ for mobile」や「X-Reality for mobile」が採用されている

 その成果が結実したのが、Xperia Z1に搭載されている高性能なカメラだ。カメラにはソニーのイメージング技術を凝縮。F値2.0、広角27mmで、非球面の「Gレンズ」や、1/2.3型で2070万画素の裏面照射型CMOSセンサー「Exmor RS for mobile」、信号処理エンジンの「BIONZ for mobile」を採用。ソニーのCEO、平井一夫氏をして「コンパクトデジカメ並み」と言わしめた画質を持つ、撮影にこだわった1台だ。

カメラにはソニーの技術を結集させた。Gレンズのロゴとセンサーサイズ、画素数が刻印されている

 質感にこだわったデザインも、Xperia Z1の特徴と言える。ベースのデザインはXperia Zから始まった「オムニバランスデザイン」だが、フレームにアンテナにもなるアルミ素材を使ったことで、質感の高さは先代のXperia Zを大きく超えた。また、Xperia Z ULTRAに搭載された映像補正技術の「X-Reality for mobile」や、イヤホンジャックのキャップレス防水を受け継いでいるのも、ポイントだ。

本体のフレームにはアルミ素材が採用され、高級感はXperia Zより上がった
防水仕様ながら、イヤホンジャックはキャップレスになった。ただし、microUSB端子やSIMカードスロットなどにはキャップがある

 ソニーグループが総力を挙げて開発したXperia Z1は、どのようなスマートフォンなのか。筆者はIFAでのプレスカンファレンス後に、ソニーモバイルから欧州版の実機を提供され、数時間ではあるが“メイン端末”として利用することができた。この端末を使って、ドイツ国内ではあるが、実利用環で試したXperia Z1のファーストインプレッションをお届けしたい。

ボディはやはり大きめ、検討時に確認を

 まず真っ先にカメラの性能をチェック……といきたいところだが、その前に、手にした際の持ち心地に言及したい。Xperia Z1はXperia Zと同じ、5インチ、フルHDのディスプレイを搭載しているが、サイズは一回り大きくなっている。Xperia Zが71×139×7.9mmなのに対し、Xperia Z1は74×144×8.5mmと、数値の上では、縦も横も厚みも少々増加している。

 筆者は比較的手が大きいためXperia Zでもかろうじて片手で操作できていたが、日本国内用のメイン端末を「GALAXY S4」に機種変更した後、改めて振り返ると「やはりXperia Zはボディが大きかった」と感じていた。それだけ、カーブを多用したボディのGALAXY S4が画面サイズの割に持ちやすいということでもある。同様に、今回のXperia Z1も、手の大きさによっては、片手持ちは少々厳しいかもしれない。

 一方で、サイズなどのスペックから受ける印象よりは、握り心地がいいと感じたのも事実だ。その理由は、アルミボディがラウンドしているためで、ディスプレイ下部のスペースもXperia Zからそれほど広くなっていないからでもある。

 ラウンドしたツートンのアルミフレームは、視覚的な薄さも強調される。改めてXperia Zと並べて厚みを比べてみたが、むしろXperia Z1の方が薄く見えたほどだ。ただし、そうは言ってもXperia Z1の持ちやすさは、Xperia Zと同等レベル。同じ5インチスマートフォン同士で比べると、ボディをラウンドさせ、ディスプレイのベゼルを細くした端末の方が当然持ち心地はいいし、操作もしやすい。この点は、個人の感覚にも関わるため、購入時には必ず確認しておくことをお勧めしたい。

 なお、Xperia Z1はフレーム全体がリング状のアンテナの役割を果たす、特殊な構造になっているが、実際に使ってみると、握った手で電波状態が悪くなる、いわゆる「デスグリップ」は特に感じられなかった。利用したネットワークがドイツのT-Mobileであることや、通信方式もLTEではなくHSPA+だったため、日本国内版もまったく同じとは限らないが、少なくとも握り方によって極端に電波感度が落ちることはなさそうだ。

「プレミアムおまかせオート」でカメラ性能をチェック

 次に、カメラで撮った写真を見ていこう。Xperia Zは、2070万画素のカメラを搭載しているが、初期状態の「プレミアムおまかせオート」を設定したままにしておくと、写真のサイズは800万画素相当になる。2070万画素のセンサーの中央800万画素分を切り出し、画像処理をかけることで、超解像ズームや手ぶれ補正、高感度を実現しているのだ。画素を大きくした分をそのまま画像サイズに反映させず、画像処理に使っていると考えれば理解しやすい。そのプレミアムおまかせオートで撮った写真は以下のとおり(作例のリンク先の画像は3840×2160ドット)。まずは、光量も十分で、比較的カメラに優しい環境で撮影してみた。

作例1:シュニッツェルの衣のディテールまで、しっかり表現されている
作例2:屋外マーケットで取った野菜や果物。手前のニンジンがやや飛び気味だが、全般的に色がきれいに出ている

 スマートフォンのカメラが苦手としている、低照度時の写真はどうだろう。まず、明かりを一段落とした屋内で、料理を撮影した。その作例は以下のようになる。

作例3:1つ目のシュニッツェルよりややノイズは多いが、十分実用に耐える画質。コンパクトデジカメ並みといえるだろう
作例4:やや照明の落ちたソニーブースも、この画質で撮れた

 次に、夜景を撮ってみた。昼間や屋内の写真に比べるとノイズは増えているが、従来のスマートフォンよりは格段にキレイに写っている。手ぶれもしづらく、何枚か撮ってみたが失敗が少ない印象を受けた。

作例5:明るい店舗はきっちり写っており、ノイズも少ない
作例6:ここまで暗くなってくるとディテールは甘くなるが、小さなサイズで見るには十分

 同じシーンを撮ると、低照度時は、同時に発表されたソニーのレンズ型カメラ「DSC-QX10」の方がキレイに仕上がることも多い。QX10のスペックはXperia Z1に近いが、レンズや、BIONZの差分はある。それでも、Xperia Z1がサッと取り出せて肌身離さず持ち運べるスマートフォンであることを考えれば、この画質は十分合格点といえるだろう。

 ただし、コントラストが大きい場面では、プレミアムおまかせオートの設定の影響か、仕上がりの露出に難点もあった。ピントを合わせた場所に露出が合えばいいが、オート設定ではそうではないと考えられるため、全体的に暗く写ってしまう場面がある。この傾向は、Xperia Zでも同じだったが、ほかの機種の場合は、より全体を明るくしてくれることもある。カメラのハードウェアスペックが上がっているため真っ暗になってしまうことはないが、結果だけを見れば残念な仕上がりだ。理屈を考えると仕方がないかもしれないが、気軽に、それなりにキレイな写真を撮れるカメラをスマートフォンには求めたい。そう考えると、オート設定ならもう少し気を利かせた処理をしてもいいのではと思えてくる。

作例7:ベルリンの壁
作例8:角度をずらすと仕上がりが大きく変化
作例9:ベルリン世界時計
作例10:角度を変え、コントラストが大きくなると暗部が見づらくなる。理屈を考えると仕方がないが、オート設定ならもう少し気を利かせた処理を期待したい

 また、プレミアムおまかせオートに設定すると、画角が16:9に固定されてしまう。確かにスマートフォンの画面やテレビで見るにはいいが、縦に持って撮った写真は(縦に長く)違和感がある。画角は、選択できるようにしてもいいのではないだろうか。

プレミアムおまかせオート適用時は、設定できる項目が非常に少なくなる

 一方で、Xperia Z1には撮った写真を解析して情報を表示する「Info-eye」や、連写機能の「タイムシフト連写」、被写体にCGを重ねる「ARエフェクト」などの機能が搭載されている。これらの機能が意外と楽しく、しかも簡単に呼び出せる。まだ使い始めて間もないため断言はできないが、キレイに撮れるだけでなく、遊べるカメラにも仕上がっていると言えそうだ。

「Info-eye」で、ベルリンのブランデンブルク門を検索してみた。付近のレストラン情報まで分かるので、休憩するときに便利だと感じた
「タイムシフト連写」があれば、とりあえず写真を撮っておき、あとからベストショットを選択できる。ただし、画像のサイズはフルHDに固定になる
Facebookで動画の生中継を行う「Social live」。あらかじめFacebookのアカウントを登録しておけば、ワンタッチで動画中継が始まる。ニコ生やUstream的にFacebookを使えそうだ

「Snapdragon 800シリーズ」搭載、アプリの起動速度も高速に

 カメラ以外の部分でXperia Zより変わったとすぐに分かったのが、アプリの起動の速さ。ブラウザやメールも、一瞬で立ち上がる。あえてXperia Zと同時にChromeのアイコンをタッチしてみたが、ブラウザが表示されるまでの時間には歴然とした差があった。これは、Xperia Z1がチップセットに「Snapdragon 800シリーズ」を採用しているため。以下のように、ベンチマークの結果も良好だ。Xperia Zで不満だったカメラの起動の遅さも、改善されている。

「Quadrant」でベンチマークを測定したところ、スコアは2万を超えていた

 ユーザーインターフェイス(UI)のベースは、Xperia Zと同じだ。ただし、ホームアプリはXperia Z ULTRAで取り入れられた改善点が踏襲されている。たとえば、アプリ一覧のメニューは、一番左の画面をさらに左方向に進もうとすると現れる。ここで、アプリの検索、アンインストールに加え、並べ替えも行える。

ホームアプリのルック&フィールはXperia Zから大きくは変わっていない。ただし、機能面はXperia Z ULTRAに近い

 また、国内ではXperia Aから取り入れられた、通知ボタンの編集機能や、「POBox Touch」でバイブの強さを変更できる機能も利用できる。Xperia Zもソフトウェアアップデートで対応できると思うが、現時点でこの機能を利用できるのはうれしい。特にPOBox Touchのバイブの強さは、調整できないと文字入力の際のストレスにつながる。筆者はXperia Zのバイブの強さが相性に合わず、別の文字入力アプリを入れていた。それだけに、この機能追加は歓迎したい。

通知上のボタンは変更することが可能
文字入力時のバイブの強さも変更できる

 一方で、以前のXperiaにはなかった細かなバグも見つけたため、ここで指摘しておきたい。1つがカレンダーの表示に関して。筆者はGoogleカレンダーに日本のタイムゾーンのまま予定を追加して、海外にいるときはスマートフォン側のタイムゾーンに合わせないような設定にしていた。標準搭載のカレンダーだと、「設定」を開き「所在地のタイムゾーン」にチェックをつけ、日本のタイムゾーンを選択すればOKだ。

 ところが、今回提供されたXperia Z1では月表示にすると、強制的にタイムゾーンが端末本体のものに合ってしまう。結果として、海外にいると月表示で時間を把握するのが難しくなる。発売までまだ時間があると思うので、ここはぜひ修正してほしい。

タイムゾーンの固定が月表示の場合のみ、反映されない

 ソフトウェアに関しては、「Walkman」「アルバム」「ムービー」のソニー製アプリもレビューしたいところだが、筆者が日本のアカウントしか持っておらず、これらのアプリでシームレスに利用できる「Sony Entertainment Network」にドイツからきちんとアクセスできていない。オンラインサービス以外の基本的な機能は、Xperia Zから大きく変わっていないため、ここでは評価を差し控えておきたい。

写真のサムネールのサイズが気持ちよく変わる「アルバム」や、音質がいい「Walkan」、動画管理用の「ムービー」は健在

 ここまで述べてきたように、端末の持ちやすさは今一歩だが、ボディの質感やカメラの画質は現行のスマートフォンでトップクラス。ディスプレイのクオリティも、Xperia Zより上がっている。Android端末の中では抜群に完成度が高く、所有欲も満たしてくれる。国内版の仕様や、秋冬に発売されるすべてのラインナップが判明したわけではないが、少なくとも現時点では筆者がもっとも購入したい1台だ。

石野 純也