【CES 2020】

Bluetooth SIG、ブロードキャストにも対応する「LEオーディオ」を発表

発表会でLEオーディオを説明するBluetooth SIGノマーケティング担当副社長のKen Kolderup氏

 Bluetooth規格を管理する業界団体のBluetooth SIGは、Bluetooth Audioの新仕様として「LE Audio(LEオーディオ)」をリリースすることを発表した。

 LEオーディオはBluetooth 5.2の中で採用され、従来のBluetooth AudioはClassic Audioとなり、LEオーディオはそれにClassicに並ぶ新しいモードとして実装される。

 LEオーディオで採用される新要素は、主に4つある。

縦軸はオーディオ音質評価。LC3は160kbpsでも高い音質を発揮する

 まずは新しいオーディオコーデック「LC3」(Low Complexity Communication Codecの略)の採用。Classic Audioが採用するコーデック「SBC」に比べると高効率化しているのが特徴で、最大345kbpsのSBCと同等の音質を、160kbpsのLC3で実現できるという。これにより、バッテリ消費の低減も期待される。

マルチストリーム対応。現状では片方のイヤホンを経由している

 次にマルチストリームへの対応。スマートフォンから複数のBluetoothへ同時にオーディオストリームを送信することができるようになる。たとえば左右分離型のBluetoothイヤホンは、現在は左右のどちらかが中継器となり、もう片方へ転送する形式だが、LEオーディオではスマートフォンから左右それぞれに直接接続できるようになる。ストリーム間の音のずれは10ms以下に抑えられ、左右分離型イヤホンだけでなく、5.1chなどのスピーカーシステムのワイヤレス化にも応用できる。

ブロードキャストへの対応。新しい利用シーンを生み出す、もっとも大きな変化とも言える

 通信範囲内のLEオーディオ機器すべてにオーディオを提供するブロードキャスト・オーディオにも対応する。これにより、たとえばスマートフォンの音声を周囲に居る友人と共有したり、バーや空港待合室のテレビの音声をLEオーディオで送信することでうるさい環境あるいは逆に静かな環境で映像の音声を楽しんだり、映画館や演劇などで言語ごとの音声を別チャンネルで配信し、ユーザーが任意の言語で楽しめるようにしたり、博物館のオーディオガイドに使ったりと、さまざまな用途での応用が可能となる。

補聴器への対応。スマート補聴器はCESでも年々増えつつある分野でもある

 さらにLEオーディオは補聴器もサポートする。補聴器がBluetooth接続に対応することで、利用者はスマートフォンやほかの機器の音声を直接聞きやすくなる。とくに前述のブロードキャスト対応もあるので、たとえば映画の音声をLEオーディオとして補聴器が受信し、補聴器が音声をチューニングしてユーザーが聞きやすいようにして出力する、といったことも可能になる。また、補聴器となると左右分離型が一般的で、一日中装着するものでもあるため、前述のマルチストリーム対応や新コーデックLC3による低消費電力かも、補聴器のBluetooth対応をより容易にしている。

仕様(Specification)は段階的にリリースされ、各メーカーはそれに従って製品開発をすることになる

 LEオーディオの仕様は段階的にリリースされていく。まずLEオーディオに対応したコア仕様のアップデート仕様はすでにリリース済みで、LEオーディオの仕様は今年の第1四半期から複数回に分けてリリースされる。

 仕様がリリースされてから、各チップベンダーが対応し、次にモジュールベンダーが対応し、実際にLEオーディオ対応のヘッドセットが登場し、スマートフォンやパソコンがLEオーディオに対応するのは1〜2年後になると想定されている。

LEオーディオ対応製品登場まではチップセット対応、ファームウェア対応、モジュール対応と段階を踏んで行く

 なお、主要なベンダーによる最新のBluetoothチップセットは、周辺回路とソフトウェアによってBluetooth 5.2に対応できるものが多く、発表会の会場では既存のチップ、それも広く使われているクアルコムのQCC5100シリーズやNORDICのnRF52832などを利用してLEオーディオのデモンストレーションも行なわれていた。