石野純也の「スマホとお金」
「iPhone 17/Air」使うなら知っておきたい「MVNOのeSIM」手数料やクイック転送の今
2025年10月2日 06:00
eSIMは、大手キャリアだけでなく、大手キャリアから回線を借りるMVNOも対応を進めています。eSIM専用モデルになったiPhone 17シリーズやiPhone Airも対応しており、物理SIMから切り替えるだけで利用できます。
iPhone自体を販売しているMVNOはないものの、Apple Storeなどで端末だけを購入し、プロファイルを書き込めば通信はできるようになります。
ただし、大手キャリアほど至れり尽くせりではないのも事実。
eSIMクイック転送に対応しているMVNOは非常に限定されており、基本的には各社のマイページから再発行の手続きを取らなければなりません。
また、回線によってはeSIMに非対応だったり、再発行手数料がかかるところも少なくありません。では、各社はどのような対応を取っているのでしょうか。特徴的なところを取り上げていきます。
実はeSIMクイック転送に対応するあのMVNO、大手傘下のメリットか
eSIMクイック転送は大手通信事業者だけのものと思いきや、実はごく限られたMVNOでも利用ができます。1つがビッグローブの運営するBIGLOBEモバイル。もう1つが、JCOMのJ:COM MOBILEです。
2社とも、iPhoneのeSIMクイック転送対応をうたっており、アップルのサイトにも対応通信事業者として記載されています。もちろん、eSIMクイック転送を使った場合には、再発行手数料などはかかりません。
この2社という時点で勘のいい方はすでにお気づきかもしれませんが、ビッグローブもJCOMもKDDI傘下の通信事業者。MVNOではありますが、親会社は回線を貸すMNOという立場でもあります。同じKDDIから回線を借りているIIJのIIJmioやオプテージのmineoは、eSIMクイック転送には非対応のため、2社が優遇されていることが見て取れます。
ただし、現状ではAndroidのeSIM転送には非対応。BIGLOBEモバイルに関しては、KDDIだけでなくドコモからも回線を借りるマルチネットワークのMVNOですが、eSIMクイック転送が利用できるのは au回線を使う「タイプA」だけ になっています。また、eSIMクイック転送を介さないeSIMの再発行には、料金がかかります。
そのため、対応するiPhoneを持っているのであれば、極力eSIMクイック転送を使った方がいいでしょう。
BIGLOBEモバイルの場合、eSIMプロファイル発行料として433.4円の手数料が設定されており、ドコモ回線、au回線を問わずに料金が発生します。申し込みの都度かかってしまう手数料のため、複数台の端末でプロファイルを入れ替えながら使うというのは向きません。
これに対し、J:COM MOBILEではマイページからのeSIM再発行が無料に設定されており、同じMVNOでも対応が分かれています。
再発行手数料がかかるMVNO、金額には差も
とは言え、BIGLOBEモバイルが特殊というわけではなく、MVNOではeSIM再発行にも手数料がかかるのが一般的。これは、大手キャリアから設備を借り、再発行にコストがかかっているのを回収するためです。
以下は、ドコモがMVNO向けに公開している資料になりますが、金額は記載されていないものの「eSIMの付与に係る費用」としてSIMカードと同様に料金がかかることが記載されています。
例えば、MVNO最大手のIIJmioでは、ドコモ回線を使う「タイプD」は433.4円、au回線を使う「タイプA」は220円の手数料がかかります。タイプDの433.4円がBIGLOBEモバイルと同額なのは、この手数料がほぼほぼ原価にあたるキャリアへの支払いに近い金額なのでしょう。同様に、MVNEを使うイオンモバイルもドコモ回線には440円、au回線には220円の手数料がかかります。
金額には多少の差もあります。
オプテージのmineoでは「eSIMプロファイル発行料」として、ドコモ、au回線のどちらでも440円の料金が発生。
NUROモバイルは、ドコモ回線のみeSIMに対応しており、こちらも再発行には440円がかかります。
また、9月にeSIMのサービスを開始したばかりのトーンモバイルでは、「eSIMプロファイル発行料」が352円と、やや安めに設定されています。
一方で、HISモバイルのようにeSIMの再発行に1100円の手数料が設定されているMVNOもあるため、注意が必要。端末を入れ替えなら使うと、その都度この料金がかかってしまうのがネックです。
料金がかかるだけでなく、MVNOによって、eSIMに対応している回線の種類が異なることもあります。上記のように、ドコモ回線やau回線がeSIMに対応しているMVNOは多い一方で、ソフトバンク回線でeSIM対応のMVNOはなかなかありません。
ここまで名前が挙がってきた中でソフトバンク回線に対応しているのはmineoとNUROモバイルの2社ですが、どちらもソフトバンク回線はeSIMに非対応です。
また、NUROモバイルのように、ドコモ回線のみeSIMに対応しているMVNOもあり、対応状況はまちまちです。ドコモ回線やau回線は比較的eSIMを利用できることが多い一方で、現時点ではeSIM自体をサポートしていないMVNOも存在します。
このようなMVNOでは、eSIM専用のiPhone 17やiPhone Airは利用できないため、MNPなどを検討する必要がありそうです。
日本通信は3回まで無料、mineoは期間限定キャンペーンを実施中
SIMカードであれば自分で入れ替えるだけで済む一方で、eSIMだと手数料がかかってしまうのはユーザー視点だとやや納得がいかないのも事実。システムを利用するためのコストがかかっているとはいえ、端末を変更するだけでお金がかかるのは避けたい人もいるでしょう。オンラインで手軽に契約できるeSIMですが、こうした不便さも残っている点には注意が必要です。
ただし、MVNOの中にはこうした事情を考え、手数料を無料にしている会社もあります。
老舗MVNOの日本通信は、そのようなMVNOの1社です。同社の「日本通信SIM」は、eSIMの発行手数料が年3回まで無料になります。4回目以降は1100円と比較的高額なものの、年1回、最新のiPhoneにeSIMを移すといった使い方であれば、料金はかかりません。
いったん機種変更する端末にeSIMのプロファイルを移してしまったものの、端末のセットアップが終了せず、再度前の端末にeSIMを戻してその日を過ごしたあと、セットアップを終えて再び機種変更後の端末にプロファイルを移す――再発行が3回まで無料だと、こんなシーンにも対応できます。SIMカードのように頻繁に入れ替えることはできないものの、機種変更時に1往復半するといった場合には無料になります。
無制限に無料化してしまうと、日本通信側のコストが青天井になってしまいますが、そこにキャップをかけることでリスクを回避した、いい落としどころと言えるでしょう。端末を変えるだけで料金がかかるのは納得いかないというユーザー心理に配慮した仕組みと言えるかもしれません。
また、iPhone 17やiPhone Airが登場したことを受け、キャンペーンを行っているMVNOもあります。
例えば上記に挙げたmineoは、11月25日までeSIMの契約事務手数料やプロファイル発行料が無料になります。回線種別を変えるのも無料。機種変更に伴うeSIMプロファイルの再発行はもちろん、eSIM非対応のソフトバンク回線からドコモやauに切り替えるといったことも無料でできます。
とは言え、こうした対応ができているMVNOは一握り。eSIMクイック転送も広がっておらず、大手キャリア4社に比べるとiPhone同士の機種変更でもマイページでの手続きが必要など、ひと手間かかります。そのぶん、毎月の料金は大手キャリアより安いのですが……。eSIMクイック転送をMVNOにも開放するなど、キャリア側のさらなる対応も求められるようになりそうです。










