石野純也の「スマホとお金」
「シンプル3」は料金据え置き? 割引前提になったワイモバイル新料金のカラクリとは
2025年9月11日 00:00
キャリア各社が料金改定をしているなか、ソフトバンクもついにこうした動きに追随します。まず、新料金プランを導入するのはサブブランドのワイモバイルです。9月25日に提供が開始されるのが、「シンプル3」という料金プランになります。その名称からも分かるように、現行の「シンプル2」から大枠は変わっていません。
大枠どころか、各種割引適用後の料金も同じ。クレジットカードやSoftBank光、SoftBank Airなどの固定回線は必要になりますが、わずか1078円で維持できます。各社が“料金値上げ”を実施するなか、踏みとどまった価格設定と言えるでしょう。一方で、よく言えば経済圏重視、悪く言えば縛りが厳しくなっている部分もあります。その特徴を見ていきましょう。
王道感ある3プラン攻勢や割引後の金額は維持
シンプル3は、S/M/Lの3つからなる料金プラン。Sプランは5GB、Mプランは30GB、Lプランは35GBで、それぞれの金額は割引適用前で3058円、4158円、5258円になります。各プラン間の差額は1100円。割引まで含む仕組みがシンプルかどうかはさておき、スマホの料金プランとしては王道感があります。
SプランとMプランの差が25GBあるのに対し、MプランとLプランの差が5GBしかないのは、Lプランがやや特殊な扱いになっているため。このプランにのみ、10分間の音声通話定額がつきます。元々は純粋な容量別の料金体系でしたが、ahamoやUQ mobileに対抗していく過程で、Lプランのみこのような通話込みの料金になった経緯があります。
10分の通話が無料になる「だれとでも定額+」のオプション料金は880円。Mプランにこれをつけた方が、料金的には安くなります。ただし、その差は220円。これでデータ容量が5GB増えます。ギリギリまで安さを突き詰めるならMプラン、データ容量重視ならLプランという選択ができる料金体系になっています。
料金につく割引は主に2つ。1つがクレジットカード割引の「PayPayカード割」、もう1つが固定回線とのセット割である「おうち割光セット(A)」です。シンプル3では、それぞれ330円、1650円の割引になります。また、「シンプル2」までと同様、おうち割光セットの代わりに、家族割引を選択することもできます。
ただし、家族割引はメインブランドのそれと違い、割引されるのは2回線目以降。しかも、金額は1100円とおうち割光セットよりも少なくなるため、あまりお勧めはできません。とは言え、家族で契約するだけでいいため、敷居が低いのはメリット。固定回線のように別途料金もかからないので、割引を受けやすい特徴はあります。
この2つの割引を加味した際の料金は、Sプランが1078円、Mプランが2178円、Lプランが3278円になります。割引額は3プラン共通のため、割引後の金額もプランごとに1100円ずつ変わってきます。この割引後の金額については、シンプル2と同じ。数字だけを見ていると、料金プランが変わったことに気づかない人もいそうです。
基本料を値上げして割引で相殺、特にSプランは値上げ幅が大きい
とは言え、シンプル2からの移行だと、値上げになってしまうケースもあります。各種割引適用前の基本料は、S/M/Lの3つとも上がっています。特に影響が大きいのはSプラン。MプランとLプランが143円の値上げにとどまっているのに対し、Sプランは2365円から3058円へと大きく値上げされています。その差額は693円にものぼります。
Sプランは元々の金額が安かっただけに、値上げ率がもっとも大きくなってしまいました。そのぶん、増額されているのが割引です。シンプル2のときには、SプランとM/Lプランで割引額が異なっていました。金額が異なっていたのは、おうち割光セット。ほか2プランが1650円の割引だったのに対し、Sプランのみ割引額が1100円の小さくなっていました。
シンプル3では、Sプランのおうち割光セットも他のプランと同じ1650円に増額され、値上げぶんを相殺できるようになっています。プランごとに割引額が異なるというのは、やや分かりにくい部分もありましたが、その意味ではシンプル3の方が、よりシンプルになったと言えるかもしれません。
これまでのSプランは、どちらかと言えば、モバイル回線のみでも気軽に契約できた料金プランでした。単身でかつあまりデータ通信を使わない層を取れる料金プランだったと言えそうです。一方で、割引前の基本料が3000円を超えてくると、その敷居が高くなった印象も受けます。より割引前提の料金プランになったと言い換えられるかもしれません。その意味で、シンプル3はSプランの位置づけが大きく変わったと言えそうです。
また、3プラン共通でPayPayカード割も187円から330円に増額されています。勘のいい方はもうお気づきだと思いますが、MプランやLプランの値上げぶんである143円は、このPayPayカード割の増額で相殺されるようになっています。PayPayカードを使わないと値上げになってしまうという点では、より経済圏との連携が重視されていると言えるでしょう。
ゴールドカード割引やPayPay決済回数との連動で経済圏との親和性を高める
経済圏重視という意味では、シンプル3からPayPayカード割が2つに分かれ、ノーマルカードとゴールドカードで金額が変わってきます。ここまで記載してきたPayPayカード割は、ノーマルカードのもの。ゴールドカードではこの割引が550円にまで増額されます。
割引後の料金据え置きというのは、あくまでノーマルカードでPayPayカード割を適用した場合の話。PayPayカードゴールドの割引増額まで加味すると、シンプル3はシンプル2のときよりも値下げになります。Sプランは858円、Mプランは1958円、Lプランは3058円までその価格が下がります。
ただし、年会費無料のPayPayカードとは異なり、PayPayカードゴールドには毎年1万1000円の年会費がかかります。両者の割引の差額は220円。1年に換算すると2640円です。1回線の割引だけでは、年会費を取り戻すことはできないと言えるでしょう。
PayPayカードゴールドには、PayPayの還元率が0.5%アップする特典もありますが、仮に毎月10万円ぶん決済したとしても還元額は年6000ポイント。割引と合算しても8640円ぶんで、年会費を下回ってしまいます。1回線かつ、割引や還元を目的にした場合だと、ゴールドカードは少々負担が重い印象です。
一方で、PayPayカード割は複数回線に適用されます。夫婦と子ども1人の計3回線をワイモバイルにするという場合には、話が変わってきます。割引の増額ぶんだけで、年7920円になるからです。これだと、毎月5万円程度の決済で年3000ポイントになるため、年会費をほぼ帳消しにできます。これを上回って使えば使うほど、年会費を超える還元を得られるというわけです。
注意したいのは、PayPayカードで料金を支払った際の還元率が、10%から1%になっている点。元々、Mプランでも10%還元だと毎月200ポイントほどが貯まるため、PayPayカード割の増額とほぼトントンになります。Lプランだと、現行のポイント還元の方がお得になります。その意味では、料金が安く、還元も微妙だったSプランのお得度が増していると言えます。
また、シンプル3では、PayPayの決済回数に応じてデータ容量が付与される「PayPay使ってギガ増量キャンペーン」も実施されます。Sプランの場合は1GB、M/Lプランは30回以上で10GB(10回以上で1GB、20回以上で5GB)と、大きな追加容量がもらえます。筆者のように、「PayPayステップ」を毎月達成しているようなPayPayヘビーユーザーには、うれしい特典と言えるかもしれません。
ソフトバンクの「ペイトク」は、PayPay側の還元率を5%上げる料金プランでしたが、シンプル3はPayPay側ではなく、通信側にデータ容量を付与することで、通信と決済を連動させた格好です。PayPayカード割やPayPayの決済回数によるデータ容量付与によって、より経済圏との結びつきを強くしたと言えるでしょう。こうした使い方がフィットするのであれば、料金プランを変更してもいいかもしれません。










