石野純也の「スマホとお金」

"Z世代限定”の0円SIM「みんギガ」、通信速度や使い勝手を徹底レポート

 「0円」で使える通信には、これまでさまざまな企業が挑戦しつつ、失敗を重ねてきた歴史があります。楽天モバイルが1GB以下0円で提供した「Rakuten UN-LIMIT VI」が記憶に新しいところ。povo2.0の「ギガ活」も、その一種と言っていいかもしれません。MVNOでは、かつてnuroモバイルが500MBまで無料の「0 SIM」を展開していたこともあります。

 一方で、ユーザーから代金を徴収しないこともあり、上記のサービスはどれもほぼ終了しています。利用者が殺到したものの、帯域を増強するコストをかけられないこともあり、0 SIMは通信速度の低下も目立ちました。このような中、Z世代にターゲットを絞り、新たな0円SIMを提供する会社が登場しました。編集や空間プロデュースなどを手がけるBAKERUの「みんギガ」がそれです。このサービスを実際に使ってみることができたので、その実態をレポートしていきます。

0円で使えるZ世代限定のみんギガ。mineoの新規事業創出プログラムである「DENPAto(でんぱと)」を使って実現した

毎月最低500MBが無料、コンセプトは「ギガ不足の解消」

 みんギガは、Z世代に向けた無料の通信サービス。初回は500MBが無料でもらえるほか、アンケートに回答することで、データ容量が追加される仕組みで、BAKERUは企業側から調査依頼を受けることでマネタイズするビジネスモデルを採用しています。「Z世代をギガ不足から解放!」というコンセプトのとおり、あくまで2回線目狙い。毎月のデータ容量が足りなくなった際に、みんギガに切り替えて使うユースケースを想定しているそうです。

アンケートに回答するごとに、500MBもらえる仕組み。BAKERUは企業からのアンケートを受託することで回線コストを捻出するビジネスモデルだ

 BAKERUは通信事業者ではありませんが、このサービスには、「mineo」でおなじみのオプテージが回線を提供しています。オプテージは法人事業の一環として、こうしたコラボレーションを推進しています。みんギガはいわばB2B2Cのビジネスモデル。オプテージはBAKERUを支援し、BAKERUがアンケートを利用した企業から収益を得つつ、コンシューマーに通信サービスを提供するという座組になっています。

mineoの新規事業創出プログラムから生まれたサービス。同社の法人向け回線を活用している

 こうした背景もあり、みんギガにはmineoの法人向け回線が利用されています。データ容量が不足した際の2回線目というコンセプトのため、回線は データ通信専用で音声通話には非対応 。物理的なSIMカードはなく、eSIMオンリーというのもこうした利用スタイルに合った提供形態と言えそうです。なお、現在はβ版としてサービス中。ここでの成果を踏まえて、正式サービスに移行するようです。

 残念ながら筆者はZ世代を大きく超えているため、通常だと回線を契約することはできませんが、今回、BAKERUおよびオプテージの協力で特別にサブ回線としてみんギガを試用してみることができました。申し込みやアンケートなども一通り試しています。

 まず、申し込みですが、これにはLINEを利用します。方法は簡単で、みんギガのアカウントをフレンド登録して、トークに送られてきたURLから必要事項を入力するだけ。

申し込みのほか、アンケートの取得にもLINEを活用する。こうした手軽さがZ世代向けだ

 Googleフォームで氏名や職業、生年月日、使用端末などを入力すると、その後、本人確認書類の提出を求められる流れになっています。筆者は正直に年齢を申告したところ、お断りのメッセージが届いてしまいましたが(笑)、対象年齢である18歳~25歳であればそのまま契約に進めるそうです。

 今回は、申し込み手順を一般のユーザーと同じように入力したうえで、別途eSIMのアクティベーションコードを送ってもらいました。LINEを使い、手軽に契約できるようにしているところはZ世代向けと言えそうです。

LINEから送られてきたGoogleフォームのURLを開き、必要事項を入力していく

 ただし、eSIMのプロファイルは「LPA」で始まる文字列で送られてくるようです。この部分のハードルが少々高く、「LPA:1$」以下の「SM-DP+アドレス」と「アクティベーションコード」をそれぞれコピペする必要があります。一般的に使われるeSIMをアクティベーションするためのQRコードには、こうした文字列が格納されているだけですが、その方が手順が簡略化されるのも事実。幅広い層に向けるのであれば、要改善と言えそうです。

SM-DP+アドレスとアクティベーションコードが送られてくるため、これらを手動で入力する

auのエリアでつながって速度も十分、ただしiPhone利用には課題も

 筆者がみんギガのeSIMプロファイルをインストールしたのは、iPhone 16 Pro。普段は主回線としてauを利用しています。先ほど述べたようにみんギガはmineoの法人向け回線になるため、iOSの場合はAPNを設定するためのプロファイルが必要になります。プロファイルは、一般ユーザー向けのものと同じ。このサイトからauプラン(Aプラン)用のものを選び、QRコードを読み取ってダウンロードします。iOS用の手順も、このページで解説されているとおりです。

iPhoneで利用するには、構成向けプロファイルのインストールが必要。mineoのサイトからダウンロードできる

 注意点として挙げておきたいのがiPhoneとの相性。iPhoneはその仕様上、2つの構成プロファイルを入れ、それぞれの回線に適用することができません。筆者の場合、auとmineoという形になったため、通信ができましたが、主回線がmineoやその他MVNOだと同時利用が不可になってしまいます。回線を切り替えるたびに構成プロファイルを入れ直す手もありますが、さすがに少々面倒。Androidでは同様の問題が発生しないため、MVNOユーザーは端末を選ぶ必要がある点には注意が必要です。

Q&Aにはmineo回線を使っていない端末と記載されているが、これはiPhoneで構成プロファイルが必要なMVNOを2回線同時に利用できない制約のためだとみられる。auとみんギガの組み合わせは問題なく利用できた

 ちなみに、仕様上、みんギガは5Gにも対応しているようですが、今回試した限り、iPhone 16 Proでは常時4Gのままでした。auの5Gエリア内であることは主回線で確認していますが、みんギガに切り替えると4Gになってしまいました。iOSのせいなのか、回線に何か不具合があったのかは不明ですが、auの周波数が混雑している場所では速度が変わってくる可能性もあることは念頭に置いておきたいところです。

 とは言え、4Gだけでもエリアは十分広く、試用中に圏外で困るといったことはありませんでした。周波数を束ねるキャリアアグリゲーションも利用できるため、通信速度も十分です。場所によっては、回線を提供している大元であるはずのauより速かったことすらありました(笑)。

左がみんギガ(mineo)、右がau。同じ時間帯、同じ場所だがmineoの方が速度が速かった。au側が電波の弱い5Gをつかんだままになっていた可能性がある

 これはおそらく、au回線が電波の弱い5Gにつながっていたためです。このスピードテストは室内で実施しましたが、5Gの基地局が遠かったためか、au回線の上りの速度が特に遅くなってしまいました。5Gでよくあるパケ詰まりで、ドコモ回線で問題になっていたのと近い現象が起こっていたような印象を受けました。KDDIは首都圏でのSub 6エリアを広げたばかり。まったく通信ができなかったわけではないものの、チューニングには改善も必要と言えそうです。

 とは言え、これは室内でのまれなケース。基本的には、5Gにつながった純正au回線の方が速度は上でした。また、MVNOは回線を貸す大手キャリアとの間の帯域に限界があり、通信が集中すると、ここが詰まってしまいがちです。そのため、一般的には、大手キャリアよりやや速度が遅くなる傾向はあります。一方で、アプリのダウンロードでも十分な速度は出ており、時には100Mbpsを超えることもありました。ベンチマーク的な速度比較では大手キャリアに及びませんが、通常利用にはまったく問題ない通信速度でした。

左がみんギガ(mineo)。auより速度は出ていないものの、実利用には特に問題のない数値だ

お昼も満足できる速度が出た! 残量通知は今後の課題か

 一般的にMVNOが混み合うお昼休みの時間帯も、特に速度低下が顕著になるといったことはありませんでした。以下は12時台前半に測定した結果ですが、100Mbps以上の速度が出ています。速度調査では7Mbps程度になったこともありましたが、これは元々auの電波が弱かったため。au回線に切り替えても、13Mbps程度しか出なかったため、MVNO特有の速度低下とは言えません。これでもWebサイトの閲覧には十分で、比較的快適に使うことができました。

お昼休みは速度が7Mbps程度まで低下したように思えたが、筆者が利用した飲食店が奥まった場所にあったため、単純にauの電波が弱いだけだった。その証拠に、右のauも速度があまり出ていない
電波環境がいい場所では、12時台でも100Mbpsを超えた

 そんなこんなでスピードテストをしていたら、あっという間に初回で付与された1GB(正確な使用量が分からないため推測になりますが、端末側の使用量を見る限り、現在実施中のキャンペーンで1GBになっていたようです)を使い切ってしまいました。

 ただし、β版のサービスはデータ残量を知らせる機能がなく、ユーザー側の判断材料が通信速度しかありません。OS側のデータ使用量で把握することも可能ですが、iOSには特定の日にリセットするといった機能がなく、データ使用量は全期間の累積になってしまいます。OS側の通信量測定は事業者側の数値と一致しないこともあるため、今後、LINEなどで通知する機能は必須になりそうです。

 データ容量を使い切ると、通信速度に制限がかかります。実測値での速度は、0.13~0.16Mbps程度。128Kbpsより、やや速度は出ていました。このぐらいの速度があれば、やや時間はかかりますが、メールなどの受信は可能。Webサイトの閲覧やアプリのダウンロードには厳しい速度ですが、最低限の連絡はできます。とは言え、一般的なキャリアやMVNOでもこのぐらいの速度は出るため、あえてサブ回線であるみんギガを使い続けるメリットは薄いかもしれません。

容量超過後の速度。0.1~0.2Mbps程度まで制限がかかるようだ

 速度制限を解除したいときには、アンケートに回答します。筆者試用時には、「Z世代の消費に関する意識調査」と「商品購入に関するアンケート」の2つが配信されていました。このアンケートも、LINEで簡単に確認できます。前者は10問超、後者は数問程度の短いアンケートで、どちらも選択式のため、回答にはそれほど時間はかかりません。

筆者が確認した際には、2つのアンケートが配信されていた

 ただし、アンケートで付与される500MBは即時ではなく、5営業日以内となっているため、速度制限がかかる前ではなく、毎月定期的に確認して、あらかじめ回答しておいた方がよさそうです。なお、BAKERUによると、アンケートは毎月2つ程度、配信されているとのこと。コンプリートすれば1GBになります。これだけで済ますのは少々難しいものの、月末のデータ容量不足を解消するには、十分な容量と言えるでしょう。

消費に関する意識調査は全14問程度。選択式のため、すぐに回答できた

 Z世代にターゲットを絞っているためか、現状ではユーザーが殺到し、速度が低下するといったことはありませんでした。eSIMの設定やデータ残量の通知機能などにはまだ改善の余地はあるものの、月末のギガ不足を解消するという用途には十分です。これがサステナブルに回るかどうかは、BAKERU側が企業からアンケートをきちんと取ってこられるかどうか次第。ユーザーにとってはメリットも大きいため、正式サービスへの移行にも期待したいところです。

石野 純也

慶應義塾大学卒業後、新卒で出版社の宝島社に入社。独立後はケータイジャーナリスト/ライターとして幅広い媒体で執筆、コメントなどを行なう。 ケータイ業界が主な取材テーマ。 Twitter:@june_ya